ホームズ家長男は家出中 作:太陽が嫌い
「おい、聞いたか?」
「聞いたって何が?」
その言葉に対して、リーフパイを頬張っていた小柄な少女、間宮あかりはこてんと首を傾げる。
「何がってお前な~今日は転校生が来るって話だよ」
「ああ、だから朝からみんな騒いでるだ」
「おいおい武偵ならしっかりと情報を把握しとけよな」
ライカは呆れながら、続ける。
「そんなんだから、Eランクのままなんだぞ」
「うぐッ・・・」
「あ、あかりちゃん!?」
痛いところを突かれたあかりは、リーフパイをのどに詰まらせる。慌てて、志乃が水を差し出す。
そう。いろんな意味で中途半端なこの時期に、転校生が二人もこのクラスにやって来る。今はまだ4月の半ば。まだ始まったばかりの時期にだ。
「何でも、家の事情かなんかで日本に着くのが遅れたとか何とか」
「ええ!?外国人なの?わ、私、英語できないよ?」
復活したあかりが、何とも方向違いな心配をしていた。
「まあ、その辺は何とかなるだろ、たぶん」
あれから五分。
「は~い。おはようございます。今日は、転校生の紹介です」
ホームルームが始まる時間になって担任の先生も入ってきた。先生とともにに白い髪に蒼い瞳前後の少年と銀髪の少女が入ってきた。
「うわ~お人形さんみたい~」
「見て、結構イケメンよ~」
「あの子結構可愛いぞ」
「やったぜ、美少女だ」
一気に教室がざわついた。
かくいうあかりも二人の雰囲気に圧倒されていた。
少女の方は腰を越えるほどに長さを持つ美しい銀色の髪に、孔雀の羽をあしらった鍔広の帽子。
軽くかかった前髪から覗くコバルト色のジト目も、彼女の纏う雰囲気によく似合っていた。140cm強の自分とそこまで変わらないであろう背丈も、彼女の美少女具合に拍車をかけている。
だが少し冷静なものならば、彼女の可愛らしい容姿以上に目につくのは、背に携えた矢の入った矢筒と彼女の背丈より長大な長洋弓だ。
少年の方は、短くもなく長くもない白髪の隙間から覗く蒼い瞳は、宝石のようで不思議な魅力を孕んでいる。美しさの中に、意志の強さが垣間見える。身長は少し低めの160位だろうか?
あまり共通点がない二人だが、ただ者ではない雰囲気をはらんでいる。何というのだろう、存在感が違うのだ・・・。
す、すごそうな子が来ちゃった! とあかりは少しばかり興奮していた。
「セーラ・フッドさんとエレジー・フッド君です。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
「・・・・・」
「あ、あら?」
何も言わないセーラに、担任を含む教室中が少しばかり戸惑いの様子を見せるが、セーラは一向に口を開く素ぶりを見せない。自己紹介の時間だというのに、セーラは特に何も言うことなく、黙りこくっている。
「セーラ・・・」
見かねた、エレジーが声を掛けセーラを窘める。すると渋々、セーラは短くあいさつした。
「セーラ・フッド。よろしく」
「あー、エレジー・フッドです。こいつは、妹のセーラ。人見知りが激しいもんで許してやってください。よろしくお願いします」
エレジーのあいさつで、教室の雰囲気が元に戻る。「よろしく~」などと、挨拶が解される中セーラはそのまま指定された空席―――あかりの前の席に座った。
「よろしくね、セーラちゃん! あたし、間宮あかり!」
勇気を出したあかりは当たり前のようにセーラに話しかける。なんとなく、彼女とは仲良くなれる気がしたのである。
しかし、現実はそう甘くなかった。
「・・・・・」
「え、えーっとー」
「・・・・・・・・・」
「あの~」
「・・・・・・・・」
「う、ううう」
「セーラちゃん?」
悲しいことに、セーラからの反応は得られなかった。言葉を発するどころか、視線すら送ってくれない。話しかけたのに返答がないことに対する気恥ずかしさと、鉄壁としか評する事のできないほどの心の壁。あかりの目の端には涙がたまっていた。
「セーラ・・・いい加減にしろ」
「ハァ~、よろしく、あかり」
渋々といった感じに、返答するセーラ。
「う、うん。よろしくね、セーラちゃん!!!」
パァーっと嬉しそうにはにかむあかり。若干引き気味な、セーラ。端から見ればなんとも面白いことになっていた。
あれからかなりの質問攻めにあったが、何とかさばききった。さて、俺がなぜ、フッド・・・などという名を名乗ったかという疑問に答えるには少し時間をさかのぼる必要がある。
転入二日前―――――
「武偵高?」
「そうそう、武偵高。教授が、行ったほうがいいっていうからさ。一応行っておこうかなって思ってな」
「エジーに武偵なんてできるの?」
「まあ、武偵高に在籍するってだけで資金集めは他のことをするから、武偵の仕事をやるわけじゃないし。大丈夫だろう」
「エジーがそういうならいいけど・・・」
少し不満そうな顔をするセーラを見ていると少し笑ってしまう。
「それからな、俺とセーラが初めっから仲がいいのは不自然だし、かといって仲良くないふりをするのも面倒だからさ、兄妹って設定でいこうと思うんだ。それに、いろんな意味でホームズの名前は名乗りたくないしな」
「兄・・・妹?」
セーラは、コバルト色の瞳を大きく見開きキョトンと不思議そうに首をかしげる。うむ、相変わらずの破壊力だ。
「そう、兄妹。これからはお兄ちゃんと呼びたまえ」
「こんな兄はいらない」
「辛辣だな~」
クスっとセーラが笑ったように見えた。
「・・・・・・じゃあ、
「ガン無視かよ・・・まあいいや。よろしくな
といった経緯があったのだ。あの後は驚くほどすんなり、転入できた。まあ、大きな要因としてはイ・ウー時代に築いておいた人脈と校長が話の分かるタイプだったことだ。おかげですんなり、ことを進めることができた。ただ一つを除けば・・・
まさか、こんなところにいるとは思わないだろう。神崎・H・アリア。自分の姉に会う危険性があるとは・・・このことを知って、教授は俺がここに行くように助言したのだろうか?だとしたら、相当性格が悪い。最悪、向こうの出方によっては殺したくなってしまうかもしれない。