ホームズ家長男は家出中   作:太陽が嫌い

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家出少年は蠍に会う

「しっかし、近頃の政府関係者は一人殺すだけなのに数百万も出すんだな」

 

「金塊のほうがいい・・・」

 

不満げな声が、インカムから聞こえてくる。

 

「闇商人の独自ルートで金塊が報酬の仕事もあったんだけどな?かなり胡散臭くてな、まあ、次の仕事はそれでもいいんだけどさ」

 

「見つけたぞ!!!打てぇぇぇぇ」

 

セーラの声ではなくもっと荒らしく野太い男の声が聞こえる。突然の声に振り向いてみると、どうやら防衛の兵士らしい。

 

殺しきったと思ったんだけどな・・・。

 

人数は2人、防弾チョッキを着て、こちらにマシンガンを構えて発砲する。通路じゃあ確かに避ける場所なんてないし、向かってくるとしても一方向だけだから撃てば当たる。

 

俺は、本来球を見てから避けられるほど人間は辞めてない、だけど、それくらいできないと俺の目的は果たされない。だから、俺は手を伸ばした。

 

人が踏み入るべきでない領域に。それを知っていながら、決して握ってはいけない、悪魔の手を取って。

 

「接続開始・・・同期10%」

 

体が、何か別のものと交わっていくのを不快感と反比例して、力がわいてくる高揚感を感じ取る。

 

俺は両手にサバイバルナイフを持って、そこに向かって獣のように駆ける。見える、見える、見える・・・俺には弾の弾道が見える。当たりそうな弾丸は切り裂き、迫る。

 

俺が近づく度に二人の兵士の顔が驚きと恐怖に染まって行く。

 

距離が縮まり・・・・兵士と兵士の間を風のように通り抜ける。そして、少しの静寂。

 

プシュッ――

 

そんな音が僅かに聞こえた時には、彼らの首から鮮血が流れる。

 

いや、鮮血が舞う。

 

そして糸の切れた人形のようにバタリと倒れ、沈んで逝く。

 

再び静寂に包まれた通路を俺は進む。

 

しばらくして、重厚そうな隔壁のような白い扉へとたどり着く。扉を開くと、大きな部屋と人影が視界に入った。月明かりだけが部屋を照らしている。薄暗いながらも確かに見える人影、そしてこちらを確かに見ている感覚がある。

 

そして、その2つの 双眸から来る視線・・・殺気だ。

 

イ・ウーにいた俺からすれば、大したことはない殺気でもやはり、感じのいいものではない。

 

「セーラ」

 

今にも、駆けださんとする人影をセーラの矢が打ち抜いた。

 

「ナイス、ヘッドショット」

 

「当然・・・」

 

哀れにも、抵抗を許されなかった亡骸を見ながら手をかざす。次の瞬間、俺らの襲っていた屋敷は、炎の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

武偵高入学から、少し経った。カルッテトとか色々あったが俺は無事アリアに会わずに済んでいる。ていうか正直、武偵高にいる意味があんまりない。セーラが、少し気に入っているようだからまだいるがアリアとの接触が避けられなさそうなら出ていこうかとも考えている。だいたい、あかりの戦姉妹なのが悪い。何度遭遇しそうになったか。まあ、もうそろそろイギリスに帰るという話を聞いているし、問題はないだろう。

 

ここ数日で気になる存在を見つけた。峰理子だ。この少女、仏国の大怪盗アルセーヌ・リュパンの曾孫である。だが理子本人は「リュパン4世」と呼ばれることを激しく嫌っており、4世ではなく、理子個人として扱われたいと願っている。そのため、ホームズの末裔を倒し初代リュパンを超えることを目標としているはずだ。少し親近感がある。個人的にだが。同じ落ちこぼれとして、同類なんじゃないかと思っていた時期もあった。

 

だが、違った。足を止めてしまった俺とは違い、理子は必死に足掻いている。悪魔の手を取った俺とは違う存在だ。きっと、彼女のほうが俺よりも心が強い。

 

 

「あかり、これ見たか?」

 

 

「何?」

 

そんなことを考えていると あかりとライカの会話が聞こえてきた

 

「アリア先輩、前年度第4四半期の最優秀学生武偵に選ばれてたぞ」

 

そう言ってライカは、あかりに受かりに記事を見せる

 

「うわー」

 

「強襲成功率も世界ランカーだし負傷したことすらほとんどないらしいぞ」

 

「何より武偵法違反が0の方が素敵」

 

目をキラキラさせながら語るあかり。

 

「まさに完全無欠の武偵」

 

興奮するあかりを横目で見ながら、文庫本を開く。今日はもう予定はないし このままダラダラして帰るか そんなことを考えていると 車輛科のヘリの音がした。どうやら何か事件があったらしい。サイレンの音を聞きながらそんなことを考えていると あかりが教室から飛び出していった。セーラも先に帰っていると言っていたし、学校にいる意味はあまりない。面白そうだしついてくか。

 

雨の中をなるべく濡れないようにしながら走る。すると、人だかりと救急車が見えてきた 人垣の隙間から中を覗くと、そこには注意を促した姉の姿があった。

 

姉を抱えながら、状況説明をしているのはこの間強襲科で見た遠山 キンジだろうか。野次馬の会話から察するに武偵殺しにやられたらしい。 どうやら理子のしてきた努力が実を結んでいるらしいな。少し複雑な思いを抱えながら、俺はそのまま帰路に着いた。見覚えのある、黒いセーラー服の少女とすれ違ったの見なかったことにして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰ると誰もいなかった。おかしいな?セーラは帰っているはずなんだけど。

 

そう思い、ケータイを開くとメールが五件も入っていた。

 

「・・・うわ、夾竹桃からだ。後は、セーラと・・・誰だこのアドレス」

 

知らないアドレスからもメールが入っていた・

 

一通り目を通す。夾竹桃からは、呼び出しで、セーラからは高千穂に呼ばれたから出かけてくるっという要件だった。他三件からは空メール。高千穂 麗・・・武装弁護士の家系出身で、武装検事を父に持つ志乃とは父親同士が裁判所で犬猿の仲。あかりに執着するレズ。・・・セーラに何の用だろう?は!?まさか、セーラにも興味がわいててをだすんじゃあ・・・。何気に、姉気質な高千穂のことだ。もしかしたら、お姉ちゃんなんて呼ばせているのでは?

 

『セーラ・・・私にすべてをゆだねなさい・・・』

 

『お姉ちゃん・・・・・私・・・』

 

「ゆ、許しませんよ。お兄ちゃんそんなこと許しません!!!」

 

「何、人の義妹に手出してんだ!!!高千穂ォォォォ」

 

は!?思考がトリップしてた。冷静にならないと・・・

 

なんだか一人で叫んでしまったが、ありえない話だ。下手に手を出せば、一瞬で殺されるのは高千穂だ。ていうか、誰もいない家で、一人で叫んでいる高校男子ってヤバイな。今日はテンションがおかしい。少し冷静になってみよう・・・

 

「問題は夾竹桃の方だよな~。仕方ない、会いに行くか」

 

っとその前に少し調べ物をしてからだな。

 

 

 

 

 

 

 

俺の目の前には、夾竹桃がいる。セーラー服を普段着としている。日本人形の様に切り揃えられた黒髪を持つ少女だ。クールな雰囲気の美少女に見えるが、実年齢は24歳。「この世に自分の知らない毒が存在することが許せない」と公言するほどの毒使い。イ・ウー時代は、この女の毒にお世話になったものだ。何せ、解毒薬から体を活性させる毒薬、はたまた、一滴で、クジラを殺す毒まで何でもござれだ。落ちこぼれの身としては、手札を増やしておきたかったため、色々教えてもらった。

 

「わざわざ、ホテルに呼び出すとか・・・しかも、怪しげな毒とか作ってそうな妖しさ満点の私室だし」

 

「あら、女の私室に入っておいて、もっといい感想はないの?」

 

夾竹桃はほほを膨らませ不満げな顔をする。

 

「こんな色気のない部屋の感想を言えと・・・」

 

「冗談よ。久しぶりにからかいたくなっただけ」

 

薄く笑いながらも、人形じみた美しさは変わらない。

 

 

「聞きたいことがあるんだが?」

 

「どうして、あなたがここにいるのを知っているかって話かしら?教授から聞いたの。ここにあなたがいるってね」

 

「・・・なるほどな」

 

予想はしていた。そこまで意外な話ではないだろう。俺の動き位推理できて当然だ。もはや驚く気にもなれない。だが、気になることはまだある。

 

「その前に、いいかしら?」

 

「・・・ああ、すまないな。淑女の話を遮って、こちらからばかり質問攻めにするのはいささか英国紳士らしくなかった」

 

夾竹桃は少し意外そうな顔をする。

 

「あなたの、今の仕草教授に似てたわ」

 

「まあ、一応血がつながっているらしいからな。それで本題は?」

 

「私は、花を摘みに来たの。数年前に種を植えた花を」

 

「狙いは間宮 あかりか」

 

「あら、調べたの?」

 

煙管の煙を吐き出しながら、俺に視線を向ける。

 

「まあな、元よりお前たちが二年前どこかの里を滅ぼしてきたのは知っている。それで?俺に協力しろと?」

 

「いいえ」

 

夾竹桃は首を横に振る。サラサラと空中を流れる黒髪が部屋の薄暗い明りに反射して美しい。

 

 

「やっぱり、黒髪には白いリボンだよな・・・」

 

あのリボンは昔、ちょっとした事故で夾竹桃のリボンを壊してしまった時に代わりに俺が渡したものだ。自分で言うのもなんだが、いい趣味だったと思う。

 

「あなたはなんの話をしているのかしら?」

 

少しあきれたように、額に手を当てる夾竹桃。

 

「話を戻すわ。協力は必要ない。所詮花を摘むだけの簡単な作戦。理子たちに比べれば、難易度は低いわ」

 

「・・・油断は、足元をすくうぞ」

 

「問題ないわ。あなたに頼みたいのは、この件に関して不干渉でいてほしいだけ」

 

「構わないが・・・いいのか?」

 

「ええ、いいのよ」

 

「じゃあ、俺から言うことはない。元から干渉する気もないしな。理子の方も結果は見えている」

 

「あら、理子の方は結構うまくやっているって聞いたけど?」

 

「ああ、理子の努力が実を結んだのはうれしく思うが、アリアには勝てないだろう」

 

「言い切るのね」

 

意外そうな顔をする夾竹桃。

彼女はこう言いたいのだろう・・・『アリアのことを嫌っているのにどうして理子のことを信じてやらないのか』と。答えは簡単だ。知っているからだ。

 

「神崎・H・アリアという人間はどうしようもなく天才なんだ。それでいて、才能以外にも恵まれているんだぜ?」

 

「家では、あまりいい扱いは受けていなかったと思うけど?」

 

「ああ、そういうことを言いたいんじゃないんだが・・・まあ伝わらないならいいさ」

 

夾竹桃は、怪訝そうな顔をしている。

 

「理子には勝ってほしいけど、近くで見てきた俺は知っているんだ。アリアが、どれだけ残酷な(・・・)までに天才なのかを」

 

俺は目線をそらし、窓から見える曇天の空に向けた。

 

「そう・・・」

 

横目で盗み見た夾竹桃の顔は、少し悲しげな表情をしていた。

 

 

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