ホームズ家長男は家出中 作:太陽が嫌い
あの後、夾竹桃と別れ帰路に着いたのだが、重要なことに気づいた。夾竹桃は高千穂に会ったと言っていた。つまり、セーラへの要件というのは夾竹桃関連だろう。マズいな・・・干渉しないって言ったはずなのに、セーラが協力でもしたら問題だ。セーラは、気づいてないかもしれないが、意外とあかりのことを気に入っている。
「十分あり得る話だよな~」
最悪俺は、夾竹桃の協力者としてセーラを抑えに行かないといけないかもしれない。
そんな面倒事にはなってほしくないな~と思いながら確認のためセーラに連絡すると、案の定あかりに協力する感じになっていた。
無駄にプロ意識が高いセーラは
「一度受けた仕事はよほどのことがない限り、辞退しない」
っと返してきた。俺は余りの面倒くささに帰りたい衝動にかられたが、そういうわけにもいかないので夾竹桃のホテルにとんぼ返りすることにした。
俺が現場に戻った時にはすでに、手遅れで
「――さあ、遊びましょ」
そう言って夾竹桃があかりに背を向けて、ワイヤーを飛び移りながら降りて行く所だった。
「接続開始、同期 20%」
先ほどとは打って変わり、フル回転する頭が瞬時に夾竹桃を狙撃するのに最適な位置を割り出す。
「あそこか」
来ると分かっていれば、この状態の俺ならばそう問題はない。案の定飛んできた矢を、コルトM1851を打ち、弾丸ではじいた。昔、カナが見せたビリヤード打ちだ。最初に見た時は同じ人類なのかと目を疑ったものだが同期を20%まで引き上げた状態なら再現可能だった。落ちこぼれの俺にこんなことを可能にさせるのだからつくづく、俺の手にした力は悪魔的だと思う。
キィン―――――ー
金属同士が、弾かれた音が響くが、夾竹桃は一瞬後ろを見ただけですぐに敵に視線を戻した。あかりの仲間であろう風魔の子は狙撃が何者かにより弾かれたことを悟り、対処しようとはしたものの動揺してしまい隙が生まれた。それは夾竹桃にとってはチャンスで、風魔の少女にとっては致命傷だった。
ガス缶から毒ガスを浴びている。夾竹桃の前で、毒を浴びれば最後対毒経験があろうが意味を成さない。あっという間に、無力化されてしまった。
「さて、俺も俺の仕事をしようかね」
セーラの待機している狙撃場所はもう割れた。恐らく、セーラは移動を始めているだろうが大方の予想は付く。
「とっとと片しに行くか」
迫りくる無数の矢。超能力によって強化されているそれを弾丸で撃ち落としていく。
あの建物か・・・七階建てのビルを視界にいれる。屋上にはセーラが髪のはためかせ、こちらを狙っている。
「同期 30%」
現段階で引き上げられる最高の値まで、同期を引き上げる。湧き上がってくる高揚感と不快感。
少しだけ口角が上がっていくのを感じる。
「行くぞ・・・セーラ」
ビルとビルの間を、壁キックをすることで俺はビルを上っていく。
「終わりだ!!!」
屋上にたどり着き、銃口を向ける。セーラはすでに、矢をつがえておりどう考えてもセーラのほうが有利だ。普通なら、今の俺は良い的でしかない。だが・・・
「甘いな、セーラ」
「ッ・・・」
目を見開き、セーラは硬直した。俺が、セーラの放った矢を素手で止めたからだ。
「すんでのところで、俺に気を使ったな。超能力で強化していない矢なら、今の俺には止められる」
硬直したセーラに、俺は銃口を向けた。
「撤退しろ、セーラ」
結局、夾竹桃は負けた。夾竹桃の敗因は・・・相手の力量を見誤っていたことだろう。最初から、相手を格下だとなめてかかるからこうなる。あとは、間宮の秘毒とやらに拘り過ぎてたことだろう。様子を見るに思っていたモノと違ったみたいだし。
双眼鏡を下ろし、高みの見物を終了する。隣でムスッとしている、セーラを見て少し苦笑した。やはり、不満だったらしい。
「悪かったよ、セーラ。そう怒るなって」
「・・・あかりに連絡してくる」
そう言って、ビルを降りていくセーラを見ながら改めてさっきの戦闘を振り返る。セーラが本気だったなら、俺が勝てていたかどうかは何とも言えないだろう。セーラは、最初の狙撃をのぞいて、明らかに手を抜いていた。俺と殺し合う気がなかったというのもあるだろうが、それ以上に・・・やめておこう。考える必要性はない。
少し頭を切り替える意味もあり、夾竹桃の言っていたことについて考える。彼女の言うことが本当ならば、今頃理子はアリアと戦っているのだろう。まあ、十中八九勝てないだろうな。
「ブラドが動くのか・・・対策しておくかな」
そんなことを考えていると、piriririr。
携帯が鳴った。
「誰だ」
「ハロー、エジー」
電話の向こう側では、彼女のにやけた顔が目に浮かぶ。
「ラース」
「正解ー、それよりどうかね?調子は?計画通りに事が運んでいるかな?」
やはり、あの空メールの送り主は彼女か。
「大まかには」
「それは僥倖だ。私も、一仕事終えたところでね。どうだい?そろそろ、合流しないかい?」
「お前今どこにいる?」
「イギリスのロンドン」
「なるほど、性格の悪いことで」
「淑女の誘いを蹴る気か?紳士を自称するのには足りないな~」
「俺はいま日本にいるんだ。今そっちに行く気はない」
「だろうね、知ってる。でも、君は来るさ。いや、来ざるおえない。絶対に」
「何?」
「君のお目当ての聖剣が見つかった」
「ッ!・・・なるほど」
クフフフフっとなんとも悪役らしい笑いが聞こえてくるが、スルーする。
「楽しみだな~、君がここに来ればMI6の00セクション、それに君の妹が動くだろう。その時に君がどんな表情で苦悩するのか実に楽しみだよ」
楽しそうに語るこの少女は、本当に真性のサディストだろうと実感する。本来なら、関わり合いたくないやつの一人だが、何せ驚くくらい優秀で彼女の力抜きでは俺の計画は進まない。それほどまでに、俺の所属する組織の中で彼女は優秀だ。性格には難ありだが。
「ほかの構成員は、今どの辺にいる」
「アイアースは、ドイツ、ロムルツは中国の秘密結社、ナナリスは私も感知していない。あ、あと穂香は自称ヒーローのところにいるらしいぞ」
「ヒーロー・・・ね」
「まあ、日取りが決まったら教えてくれたまえ。君、普通の手段じゃ、入国できないだろ?」
「・・・そんなに目をつけられてたか?」
「君が直接ってわけじゃあないが、『R』の構成員はこの国では警戒されているんだよ。特にそのボスが来るとなれば・・・」
「殺されちゃうかもよ?」
「予定が固まったら、連絡する」
「ハハハ、少しは動じてくれよ~」
不満そうな彼女の声を聴きながら、電話を強制的に切る。
「さて、どうするかね」