if "双王" 作:おすまし
□■戦場
フォルテスラの超級進化。
リソースを爆発的に増加させたフォルテスラに対し、【グローリア】の対応は速かった。
喉元からのブレスを吐き、最速の一撃で葬りにかかる。
「―――フッ!」
三極竜最強の一撃に、フォルテスラの動きはよどみない。
肉体の欠損など微塵も感じさせず、完璧に動いてみせる。
大地を踏みしめ跳躍一番、
高熱を持つブレスを、いやそもそも光を踏んで走れるわけがない。
すなわちこれが超級進化によって追加されたスキルの効果。
どんな地形も踏破し、固体液体気体問わずにその上を無傷で走れる能力。
何物をも越えて征く意思の具現。
「《オーヴァー・ランナー》」
フォルテスラは止まらない。
瞬く間に光の道を走りきり、そのまま首に着地、右手に持った剣を振るう。
ネイリングの外見にさほどの変化はない。
ほんの少し、刃が広く長くなっただけ。
しかし込められたリソースが格段に上がっていることを、【グローリア】は感知している。
故に、三極竜の対処は迅速だった。
最小の動作で肉体を傷付け、《起死回生》の効果を強化、その上で全力で体を振る。
規格外のSTRで振るわれた首に、同様にステータスが上昇しているはずのフォルテスラは留まれない。
あくまで《オーヴァー・ランナー》の無敵範囲は足限定だ。
手で掴めなくては体勢を維持できるはずもない。
あえなく落ち、そこをブレスで狙われる。
竜のAGIもまた上がっている。避けられない攻撃のはずだった。
『《
「なら、試してみるか」
空を蹴り、フォルテスラは【グローリア】より速く動く。
強化されたはずの三極竜を容易く超え、肉体を何度も傷つける。
同じく上がった防御力を無視し、その斬撃は鱗を断ち骨を割った。
【グローリア】が唸り、全ての能力を駆使してフォルテスラを狙う。
両腕での連撃、全身のブレス、巨体での体当たり、喉からの光線。
その全てが、新たにアクティブスキルを使うまでもなく避けられ、流され、あしらわれた。
極竜は驚き訝しむ。
だがすぐに、進化により強化の度合いが上がったのだと理解する。
それは事実だ。
敵より劣るステータスに補正を加える《オーヴァー・チェイサー》のスキルレベルは、第六形態時の6から10に上がった。
100%の上乗せで、一部のステータスは素の二倍以上に上昇。
【ネイリング】が剣として持つ装備補正も向上している。
ならば、対処は簡単だ。
HPが減り続ける現状に対し、既に《起死回生》は発動済み。
【グローリア】に傷を付ければ付けるほど、そのステータスは上昇していく。
これまでの戦いで把握した《超克を果たす者》の仕様は"剣を折った時点の敵手の能力の代入"。
このまま行けば、【グローリア】が最終的には上回る。
共に相手の攻撃は回避は出来ても防御不能。AGIを上回った方が勝つのが道理。
すなわち【グローリア】の勝利が決まる。
故に消極的な戦いを続け、コアへの致命傷を避ければこの敵を倒せると。
先程までの戦いから、【グローリア】はそう看破していた。
だが何故だろう、両者のAGIの差は一向に縮まらない。
【グローリア】のステータスは順調に上昇している。
それでも何故か追いつけない。
当然だ。
今の《超克を果たす者》は、先刻までとは格が違う。
書き換えられたその効果は、効果時間中、自身を破壊した者の攻撃力を自身の防御力に、防御力を攻撃力に、速度をAGIに加算。
そして
《起死回生》でいくら【グローリア】が強化しようと、その分フォルテスラも強化される。
もはや【グローリア】ではフォルテスラには届かない。
《オーヴァー・エッジ》の使用により長さを増した剣が、続けて【グローリア】を切りつける。
《超克を果たす者》の効果でフォルテスラの攻撃力も速度も【グローリア】を超えた。
三極竜の攻撃は回避され、フォルテスラの攻撃は回避を許さない。
この瞬間、フォルテスラは【グローリア】を完全に凌駕していた。
彼の通り名、"凌駕剣"の名に相応しく。
それはまさに、"神話の戦い"だった。
巨大な敵に、ちっぽけな人が挑む。
竜の広範囲高威力な攻撃を人はかわし、手に持つ剣で傷つける。
巨竜は次第に全身に傷を負い、男は動きのキレを増していく。
攻撃を一撃でも喰らえば男の命はない。だが、男が負ける姿は想像できない。
それは必ず勝つことを定められた英雄の如く。
運命を勝ち取った男と、選別のために造られた竜。
勝敗は決まりきっていた。
竜は考える。どうすべきかと。
"一本角"の光線は強い。だがこの相手には当たらない。
自傷によりかわせないほど照射口を増やすにしても、隙を突かれコアを破壊されるのが目に見えている。
最強の鎧たる《極竜光牙剣》も防御としては役に立たない。
"二本角"の《絶死結界》は現段階では意味がない。しかも最も狙われているのがこの首だ。
このままでは"二本角"の秘奥を使う前に破壊されるのは目に見えていた。
"三本角"の《起死回生》も、今のこの男相手では敵に塩を送るようなもの。
技巧に優れた"四本角"が生きていれば、まだやりようもあっただろうが……最初に殺されているのだからどうしようもない。
完全なメタ。
フォルテスラはこの【グローリア】に対し極めて高い相性を持っている。
もはや勝ち目は万分の一もない。
だが【グローリア】には、諦めるわけにはいかない目的があった。
かつてモンスターとして未熟で、今のような力は持っていなかったころ。
奇形として生まれた彼は、【天竜王】とその追手に追われ、殺されそうになっていた。
【天竜王】達は彼を守った両親を殺し、彼もまた殺そうとした。
死の寸前、管理AIを名乗るジャバウォックに助けられ、彼は生き延びることが出来た。
だが、その恨みは決して消えてはいない。
両親を殺し、自身を追放した【天竜王 ドラグヘイブン】を滅ぼす。
そのために管理AIと契約し、改造を耐え、数多のモンスターを殺してきた。
自身より格上の<イレギュラー>と闘い、死力を尽くして勝利し<SUBM>にまでなった。
あとは王都に到達し、破壊すればいい。それだけで解放される。
だから、
その瞬間、【グローリア】は諦めた。
三本の首が揃って生きることを―――諦めた。
そして、
一本角のコアが切り裂かれ、一瞬でステータスが跳ね上がる。
フォルテスラが予想外の強化に驚き戸惑った隙に、全力で突撃を仕掛ける。
狙い通りにフォルテスラを吹き飛ばし、そのまま―――
脳裏からフォルテスラの存在を消し、『敵は吹き飛ばした』として『敵と戦う』指令を回避。
フォルテスラに殺される前に、王都へ到達し、命令を解除して【天竜王】を倒す。
活路はその一点にしかない。
窮地は焦りを生み、焦躁は失態を生む。
そう、フォルテスラ一人に集中し、彼から離れた時点で……敗北は確定していた。
「《イマジナリー・メテオ》―――
『エネルギー充填、一二〇%! 【超重砲弾】……発射!!』
フォルテスラから一キロ半も離れた時点で、二つの遠距離究極攻撃が飛来する。
一つは結界上空に待機していた【大賢者】から。
フォルテスラの奮闘で余裕が出来た時間を使って四発同時発射の用意をしていた巨大隕石。
【グローリア】の速度を踏まえ放たれた四撃は、前後左右から竜を囲い迫る。
一つは結界ギリギリで、500カンストを遂げた者のみで砲台を用意していた皇国の部隊から。
距離の調節、発射後即撤収の用意を終え決死の覚悟で放たれた砲弾。
着弾した場所を超重力で圧縮消滅させる幕引きの絶撃。
一撃ですら神話級を完全消滅させる攻撃が、重ねて五つ。
狙い
消滅したことは……疑いようがなかった。
□■アルター王国・<ノヴェスト峡谷>
王都の北西、クレーミルと王都の直線状に挟まれるように存在する峡谷。
それがこの土地、<ノヴェスト峡谷>だ。
幅も長さもキロ単位、深さでさえも数百mはある巨大な谷が無数に存在するため、人はこの谷を通るのを避けてきた。
それにより周辺地域より強力なモンスターが巣食い、なおのこと近寄られなくなった。
そんな深く大規模な谷の中。
二本の首が、寄り添うように落ちていた。
そう、それは【三極竜 グローリア】の"二本角"と"三本角"。
人々が寄ってたかって倒そうとした存在が、巨大な谷の底にひっそりと隠れている。
何故、王国の超級魔法と皇国の超級兵器に滅ぼされたはずの首が、戦場から遠く離れたこの場所に存在するのか。
その理由は、竜が攻撃を受ける寸前に巻き戻る。
極竜を隕石が囲み、超重力で空間ごと圧縮消滅させられる、直前。
【グローリア】は己に残る首を二つ纏めてもぎ取り、王都に向けて投げつけた。
首の一つを破壊され、神話級から強化されたSTRとAGIによる投擲。
もがれた首は比較的短くなり、その速度は音の十倍近い。
結果として誰の目にも止まることなく、こんなところにまで飛んできた。
戦場は遠く、距離は十kmを優に越えている。
ここまで探しに来るのも、見つけるのも容易ではない。
しかも念には念を入れ、逃亡直前には《絶死結界》を一時消し、今も展開範囲を半径数mに狭めて使用している。
近寄るモンスターこそ死ぬが、周囲一帯にはそこまで大きな影響を与えていない。
即死の効果範囲から【グローリア】の位置を割り出すのは不可能だ。
射程が十km以上の探知能力など、この世界でも数えるほどしか存在しない。
探知系の超級職でも一日では見つけられないだろう。
そして一日もあれば、【グローリア】の調子は十全に戻る。
破壊された"一本角"は戻らないが、それを差し引いてもあまりある性能。
首以外が根こそぎ破壊された結果、"三本角"と"二本角"の能力はかなり強化されている。
失ったHPこそそのままだが、既に首からは手足が生え、動けるようにはなった。
半日はここで休んで完全に肉体を取り戻し、もう半日で移動しつつ王都に向かうことにした。
【グローリア】はフォルテスラを怖れている。
準<超級>の時点であれだけ粘り、<超級>となった今は最悪の天敵となったのだ。
苦手意識も危険意識も尋常ではない。
必殺スキルの効果期間が分からず、その能力の全てがつまびらかになっていない以上、未だ見せていない能力にすらメタを持っているかもしれない。
極竜は、そのごくわずかな可能性を本気で考慮していた。
彼との戦いはなるべく避けたい。
十全な体を取り戻して、ひそかに王都に辿り着き、彼が出てくる前に早々に立ち去る。
《絶死結界》があれば一瞬で都市の壊滅も可能。勝算はかなり高い。
フォルテスラが極竜に与えた"恐れ"は、強い自負を持つ"三本角"にさえ安全策を取らせるほどのものだった。
このままでは、クレーミルは救われても、王都は破壊を免れないだろう。
王国に眠る災厄も、目を覚ましてしまうかもしれない。
十キロ越えの射程を持つ探知力。
HPの大半を失い、十万以上にまで上がったステータスに対処する力。
非戦闘の最高峰と戦闘の最高峰。
加えてその長い距離を走りきり、逃がさないための速度。
そんな尋常外が都合よく今ここに揃わない限り、王都の破壊を止める方法はない。
その全てを揃える都合の良い存在はこの王国には……
竜をめがけ、角錐型の突起物が降って来る。
音速の数倍を超える速度のそれは、もう一端が見えないほどに長い
結界外からの攻撃は"二本角"には効かないが、分かたれたままである今の"三本角"にはその効果は作用しない。
上がったステータスで対処するも、不意を打たれ受け切れず相当の
回避しても曲がって追って来る鎖を破壊しようとするが、その前に鎖は引いていった。
脅威を感じ、全方位を警戒する二体の【グローリア】。
今の存在はなんだったのか。野良の<UBM>が自分を狩りに来たのか。
或いは……<マスター>が速くも察知し殺しに来たのか。
結界内の存在を感知することに長けた"二本角"とは違い、"三本角"に気配察知能力は無い。
だが、その高まったステータスが目の前の存在を見逃すなどありえない。
そう、ありえるはずもない。
"己の目の前に立つ男が現れた瞬間を見逃す"ようなことが、あっていいはずもないのだ。
「君が【グローリア】か、はじめまして。
しかし本当に強そうだ。フォルテスラもこれに勝つとは流石だね」
目の前に立つ男。
レベルは【剣王】よりは多いが、【大賢者】ほどではない。
装備のリソース量も中々だが、<SUBM>たる【グローリア】には劣る。
隠蔽系能力の使い手か、と竜は推測する。
竜を欺くほどの隠蔽能力、なるほどたいしたものだ。
だが、こうして竜の前に姿を現した時点でその全ては無に帰す。
悠然と佇む男の胸の【ブローチ】が割れる音がした。
"二本角"が《絶死結界》の展開範囲を広げたのだ。
否、ただの《絶死結界》ではない。"二本角"のHPが超減少した結果、その秘奥は既に明かされている。
その名は《真・絶死結界》。
HPの低下とともに《絶死結界》の判定レベルが上がっていく最凶のスキル。
既に合計レベル1000以上さえ殺せるようになっている即死の法則が男を襲った。
【グローリア】は嗤う。
【ブローチ】で一瞬耐えようと、その一瞬が過ぎ去れば絶対に死亡する。
たとえ超音速で動こうと、咄嗟に一つ動作をするのが精々だろう。
必殺スキルどころかアクティブスキルの一つも発揮できぬまま、死ぬ。
嗤う"三本角"の後ろで爆発音がした。
振り返ってみると、目の前に居たはずの男がそこにいる。
そして、そこに居たはずの"二本角"の姿は見えない。
"二本角"の居た場所には巨大なひび割れが残っている。
『男が"三本角"の目にも止まらぬ速度で動き、一撃で"二本角"を破壊した』ことに、"三本角"は数秒かかってようやく気付いた。
「危ない危ない、即死の判定も上がっていたのかな?
【ブローチ】を装備していて良かったよ」
恐ろしいと、"三本角"は素直にそう思った。
両親を殺した【天竜王】よりも。
これまで見た中でもっともレベルが高かった【大賢者】よりも。
自身を追い詰め、完全に凌駕された【剣王】よりも。
投下してから戦った全ての敵を逆の天秤に載せても余るほどに、目の前の男は恐ろしい。
同時に、悟る。
これは今の自分、最強の自分よりも、圧倒的に強いと。
攻勢と守勢のスキルを無くしただ身体能力だけが残った己を、真正面から叩き潰せる相手であると。
HPのほとんどをなくし、自分以外の首を失い、極限まで強化された己でさえ戦いにならないほどの実力差。
こんな相手は、今までの生涯で一度しか見たことがない。
彼を助けた管理AI。ジャバウォックと名乗った存在。
正体を<
だが、それも当然のこと。
男、【超闘士】フィガロの通り名の一つは、"無限連鎖"。
同じ"無限"と呼ばれる者なのだから。
『GUAHAHA……!』
その体験に、【グローリア】は笑うしかない。
初めて闘争前に心底恐怖を覚えながら、空笑う。
こんなに
対するフィガロは静かに微笑んでいる。
その瞳は【グローリア】を見ているようで見ていない。
遂に<超級>に達したフォルテスラを、限界を超え極竜に勝利したフォルテスラの姿を幻視し、笑う。
約束の時の到来を間近に感じ取り、喜びに顔がほころんでいる。
対照的に笑う両雄が向かい合う。
【三極竜 グローリア】、
【超闘士】フィガロ、
世界屈指のステータスを持つ
彼らは笑い合い、動き出し……勝負は一瞬で決した。
【<SUBM>【三極竜 グローリア】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【フォルテスラ】、【フィガロ】がMVPに選出されました】
【【フィガロ】に【極死竜眼剣 グローリアΩ】を贈与します】
「これで、本当に終わりだね」
戦闘を終え【超闘士】フィガロは一息ついた。
極竜との一戦自体は極短時間で終わったが、それまで三時間以上も戦っていたのだ。
流石に体に疲労が残っている。
「おつかれー」
「トム、お疲れ様。今回は助かったよ」
「まあねー。正直今回は色々言われそうでこわいよー」
「あはは」
笑って誤魔化す。
運営側の存在であるトムに、討伐への間接的な協力とも言えるスパー相手を頼むのはフィガロとしても少し微妙に思ったが、全力で挑む以上手は抜けない。
彼がいなければビシュマルなどの他のランカーに頼むつもりだったが、やはり相手としてはトムが最も適している。
フォルテスラを焚きつけたのだ。少しは協力してくれたっていいだろう。
今回の経緯は、簡単に言えばこうだ。
フォルテスラに『やるなら全力で戦え』と言われたフィガロ。
というわけで、
フィガロの持つスキル、《
"全力"というからにはこのスキルを最大限活かすのは決定事項。
そのためにまず闘技場に行き、そこで売っている修行用の能力制限具を購入。
三時間も強化した装備を付けてはトムでも戦いにならなくなる。
それを防ぐため、制限具を同時に装備することで能力制限も強化して戦闘を続行するためだ。
その後戦闘開始予想時刻から逆算して三時間ほど前から
<バビロニア戦闘団>が戦端を開いたあとも、フォルテスラの戦いの様子をトムの分身の一人に実況してもらいつつ戦闘を続けた。
フォルテスラが勝利した時にはスパーを止めたが、直後装備したままの【
【グローリア】の生存を悟り、《射程延長》によってキロ単位で伸ばしながら自動で敵を追わせ、自身は装備を整え単身突撃。
今に至る、というわけである。
「しかし、十全に準備した君がそこまで強いとは……想像以上だったね」
「僕も、あそこまで強くなれるとは予想外だったよ。
スペックの上昇が高すぎて、かえって制御が難しかったぐらいさ」
【グローリア】と接敵した時、即座に倒さず目の前でつっ立っていたのもそれが原因。
全身に
一歩間違えればそのまま岩盤に激突してもおかしくなかったが、そこは直感と反射に定評のあるフィガロ。
ギリギリで抑え込みなんとか倒したという訳だ。
フィガロとしても、ここまで準備し挑んだことは未だかつてなかった。
今のフィガロには、そこまで強化しなければ倒せない相手も、そこまで強化されたフィガロに付き合って戦える存在もいない。
トムとのスパーリングにしても、多数の制限具を強化し続けなければ成立しなかっただろう。
そこまで気を遣った上でも、何度か加減に失敗して分身を全滅させかけている。
体を延々と増やせるトムでもなければ、どこかのタイミングで中断されていたかもしれない。
或いは全裸で戦えば強化は一切反映されないが、それはそれで別の意味で相手がいない。
実際、闘技場への道すがらそれを思いついたフィガロをトムが全力で止めていた。
ともあれ、成すべきことは成し遂げた。
「フォルテスラの挑戦、楽しみだな」
そう笑い、トムと共にギデオンへの帰路についたのであった。
□戦場跡
【<SUBM>【三極竜 グローリア】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【フォルテスラ】、【フィガロ】がMVPに選出されました】
【【フォルテスラ】に【讐譚帰還 グローリアΦ】を贈与します】
「あいつめ」
『借りができちゃったね!』
「すぐに返すさ」
討伐アナウンスを聞き、フォルテスラとネイリングは驚き、すぐに納得した。
フィガロとフォルテスラとの仲は長い。どうして彼が討伐したのかも、どうやって討伐したのかも、だいたいのことは理解できる。
普通なら『俺を信頼していなかったのか』と思ったかもしれない。
だがフィガロは少なくとも、フォルテスラ達が生きている時には挑まなかった。
<バビロニア戦闘団>が壊滅しても、フォルテスラが力尽き倒れても、その姿を現さなかった。
それを信頼と言わずしてなんと言おうか。
自分の意地につきあった上で最善の手を考え行動してくれた。
そのことに対し、フォルテスラが持つのは感謝の念以外無い。
討伐アナウンスが来たことを連絡すると、戦場の皆が集まってきた。
「そうか、討伐されたのか。何よりだ」
「ひとまず討伐お疲れ様です。<超級>への進化を生で見られるとは思いませんでしたよ」
共に戦った【天騎士】と【大賢者】。
「クレーミル、守りきりましたね」
「団長! 特典武具獲得、おめでとうございます!」
結界外に退避していたシャルカと、結界外で支援を続けていた戦闘団の面々。
「すさまじい戦いでした。貴方がたがいなければ我々は民を守れなかった。ご協力、感謝します」
事前準備と戦域封鎖を実行していた王国騎士団員。
【超重砲弾】を撃った皇国軍第二機甲大隊もやって来る。
幸いながら離脱が間に合い、死人は出なかったようだ。
「王都までお送りしましょう。
本来は特典武具を手に入れて我々がやるはずだったパレードの代役、お願いしますよ?」
目的の超級武具を手に入れられなかったにもかかわらず、その顔は喜び一色。
無理はない。あれほどの怪獣を前にすれば、打算など保てるはずもなし。
化物が無事倒された事への喜び、今はそれ以外は何も考えられない様子だ。
フォルテスラはその申し出を受けようとして……一つ、どうしてもやりたいことを思いついた。
「その前に、クレーミルに寄らせてください。見たい顔があるんです」
特典武具を土産にして、愛する妻のもとに帰る。
なによりも先に、今は彼女の顔が見たかった。
アルター王国騎士団員、総数二百十四名。
<マスター>除くアルター王国参加超級職、二人。
ドライフ第二機甲大隊、総数三百六十名。
<マスター>、総数二百五十八名。
クレーミル絶対防衛線―――勝利。
<城塞都市 クレーミル>―――健在。
ティアンの死亡者―――ゼロ。
特典武具獲得者―――二人。
それが、クレーミルでの戦いの結果であった。
さて。
フォルテスラは、"すべきこと"をした。
故にこの後の戦いは蛇足にして本懐。
"やりたかったことをする"決闘である。
さあ今こそ行こう。
闘技場が、観客が、何よりも
VSグローリア戦、決着
あとはEXマッチにエピローグで終わりです
一秒で一%加算とすると、三時間で10800%、初期値の二倍も加えて11000%
装備を五つに絞れば五倍で550倍
一つにつき3000程度の上昇があれば165万とか中々狂気ですよね【コル・レオニス】