三話目です。
あまり進みませんがそれではどうぞ。
それは唐突に始まった。
きっかけは遠藤教諭の一言。
「本日、二年生が試召戦争を行っていますが、一年生は時間割通りに授業は行います。多少騒がしいかもしれませんが、皆さん普通に授業を受けてください」
そんな連絡が五限の英語の授業の初めからされた。
試召戦争……。
それは、この学校が取り入れてる独自の教育システムだ。
何でも、科学と偶然とオカルトによって開発されたシステムらしい。
まあ、俺も実際見たことないし、チラッと学校紹介のパンフレットに載っていたのを読んだだけだからよく分からん。
とりあえず、二年生のどっかのクラスが新学期早々に試召戦争をおっぱじめたらしい。
正直俺には若干の心当たりがある。
おそらく十中八九、雄二の所属したであろう二年Fクラスであろう。
雄二の奴は、朝から妙に張り切っていたし、今までの行動からしてこんな初日から戦争を吹っ掛けるド阿呆はあいつ以外に考えられん。
まあ、あいつ以上に阿呆な奴が居たのなら話は別だが。
何はともあれ、戦争を起こしたのはあいつのクラスに間違いなさそうだ。
俺には関係ないが。
そんなこんなで本日の授業は驚くほどスムーズに進んでいった。
試召戦争をしてるとはいっても、やっているのは二年生だ。
一年生である俺には関係ない。
授業とはいっても、初めのほとんどは担当教師の自己紹介や、教科の説明。
後はやっても中学の頃の復習みたいな事しかしなかった。
そんな退屈な授業の最中、俺は欠伸を堪えながら肘を突きながら遠藤教諭の眠気を誘う呪文のような言葉を聞いていた。
と、そんなとき。
ピンポンパンポーン《連絡いたします》
突如スピーカーから校内放送のアナウンスが流れだした。
普通、校内放送と言えば大抵休み時間に流される。
そのせいか、教室内も何事かとざわめき始めた。
《船越先生、船越先生》
どうやら、教師への連絡のようだった。
火事や不審者などを想像していたせいか、俺自身も少し安堵する。
《吉井明久君が体育館裏で待っています》
……は?
《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》
ザワッ!!!!!!!!
喧騒が一気に教室内を駆け巡った。
いやいやいやいや、ちょっと待て。
なんつー事を校内放送で流してんだ。
別に男女の交際に、俺は何これ言う立場でも無いが、全校生徒に聞かれちゃ不味いんじゃないのこれ。
「皆さん静かにしてください」
若干うるさくなった教室で、遠藤教諭がパンパンと手を叩いて鎮静を図る。
「騒ぎたくなる気持ちも分かりますが、今は授業中です。静かに受けるように」
遠藤教諭のその一言で喧騒も収まり、所々私語が話されてはいるが一応静けさを取り戻した。
だが、遠藤教諭よ。
貴女は何か無いのか。
と言うよりも、さっきの放送を聞いて何か考えることが無かったのか?
まさかとは思うが、こんな事が日々日常的に行われている訳ではないよな……。
いや…だとしても……。
さすがに焦るだろ。
生徒が教師に、あんな愛の告白紛いなことをされたら。
いかん……。
なんだか頭が痛くなってきた……。
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そして、時が経つのは早く既に放課後。
俺は鞄を持つと、帰り支度をしていた。
『あの校内放送……ビックリしたな』
『ホント、大胆だねー』
『吉井明久って言ってたっけ?たぶん二年生だよな』
あの恐怖の校内放送の一件以来、吉井明久という生徒の事はクラスの中でも話題の中心となっている。
「健太~」
そんな事を考えていると、真琴が鞄を肩にかけながら、此方の席へ歩いてきた。
「今日健太の家によってくから。晩御飯のおかず買いに行こう」
笑顔でそう言う真琴。
ガキの頃からこいつとは、よく遊んでいた。
まあ、俺と二人だけという訳ではなく、雄二と翔子さんをよく巻き込んでいたが。
場所は決まって俺の家。
そのせいか、今でも真琴はよく俺の家に夕飯を作りに来る。
まあ、問題ない。
とりあえず付きあってやろう。
「上から目線でいやな奴ぅ。正直になればいいのに」
正直も何もこれが俺の本心だ。
「はいはい、それじゃさっさと行こう」
真琴はそう言うと俺の腕を取り、さっさと教室を出て行ってしまった。
強引な奴だ。
別にいつもの事だがな。
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「それにしても、ビックリだよね。あの校内放送」
「ああ、まったくだな」
帰り道、俺と真琴は雑談をしながら近所のスーパーへと続く道を歩いていた。
雑談の内容と言えば、あの校内放送について。
正直あれには度肝を抜かれた。
「もしかして、あれって雄二君が何かやったのかな?」
……まあ、考えられないことでも無いな。
あいつは曲がりなりにも小学校の頃は、勉強は出来た。
頭の回転はそこそこ速いであろうし、悪知恵もかなり働く。
そして、今日は初日にも関わらず試召戦争を行ったクラスがある。
つまり、今日のあの放送は雄二の考えた訳の分からん作戦の一つかもしれない。
というのが俺の見解だ。
「それが本当なら雄二君、結構なりふり構わず試召戦争してるよね」
苦笑しながら、真琴は言う。
確かに……。
幾ら昔は勉強が出来たとはいえ、中学生の頃あいつが机に座っている姿は全く見ていない。
そんなあいつが上位クラスに真っ向勝負を挑む訳がない。
それにしても。
幾ら作戦とはいえ、仲間を売るような行為はどうかと思うが……。
「あれ、あそこに歩いてるの雄二君じゃない?」
真琴のその言葉にふと前を見ると、そこには赤い短髪をツンツンに立てた無駄にデカイ男と、若干癖っ毛な茶髪の男子が歩いていた。
茶髪の男子には見覚えは無いが、あの赤髪は見覚えがある。
なんせ、生まれてからずっと見続けてきたモノなんだから。
あの髪形、あの無駄にでかい身長はウチの残念な兄に間違いない。
「おーい。雄二くーん」
大声で……。
相変わらず無駄にでかい声で、真琴が雄二を呼んだ。
あの大声なので、すぐに反応したのか、大男がこちらに振り向いた。
隣の茶髪の男子は、何事かとちょっと驚愕の表情を見せつつも、此方に顔を向ける。
「何だ、お前らか……」
何だとはなんだ、この兄は。
いくら真琴の声がバカでかいからってそんな反応は無いだろう。
もう少し態度を改めたらどうだ、残念な兄よ。
「その言葉、そっくりそのままお前に返すぞ健太」
何を言う。
俺がいつお前のような無礼な態度を取った。
「お前のいつも俺に対する態度だよ!明らかに兄に接する態度じゃねぇだろ!」
いや……。
お前は勘違いをしている。
俺はちゃんと目上の人間には敬意を払っているし、失礼な態度は取ったりしない。
だがお前は残念で…そして残念なのだ。
そんな残念な兄に敬意を払った態度が出来るか。
否…出来ない。
「ふざけんなテメェ!!」
「まあまあ落ち着いて雄二君」
顔を真っ赤にしながら怒る雄二を、真琴がなだめる。
全く、カルシウムが足りてないのか。
最近こいつは怒りっぽくなった。
「えっと……」
ふと、雄二の隣で茫然と俺達のやり取りを見ていた茶髪の男子が眼にとまった。
キョトンとした眼で俺達を見ている。
「……雄二まさか」
彼は雄二と真琴を見ると、唐突にこんな事を言いだした。
「貴様、そんなゴリラみたいな風貌で、姫路さんだけでなくそんなカワイイ娘にまで…」
……
俺沈黙。
訳の分からん呟きをする茶髪の男子。
よく見るとかなりアホっぽい顔をしているし……。
いや、直感的に俺は思った。
アホと言うよりもこの人は馬鹿だ。
それも超ド級の。
変な妄想を膨らましてるし、よくこの行動でそんな事を考えられたな。
そもそも、真琴は俺と一緒に帰っていたのだから、雄二の彼女だと思われるのも筋違いだ。
「雄二、誰だこのバ……人は」
とりあえず雄二に聞く。
雄二と下校していたのだから、おそらく雄二の知り合いであろう。
なら、雄二に聞くのが一番だ。
「チッ……二年で一番の馬鹿だ」
舌打ちをしながら、顔をしかめ雄二が言う。
いや、なんつー紹介だよ。
「何言ってるのさ雄二!僕が学年一の馬鹿な訳ないじゃないか!!」
「自覚が無いのが馬鹿だって言ってるんだ」
「なんだと!!」
……
本日二度目の頭痛が俺を襲う。
ウチの残念な兄と茶髪の馬鹿の言い争いがあまりにも不毛すぎる。
なぜ自己紹介でここまで話がこじれるのか……。
「はいはい喧嘩しなーい」
手をパンパンと叩きながら真琴が二人の仲裁に入った。
馬鹿二人は互いに手を握り、今にも殴り合いに発展しそうだったが、真琴の仲裁でどうにか手を引っ込めた。
「あ……ご、ごめん。つい雄二の馬鹿のせいで」
「テメェが馬鹿すぎるからだろ明久」
「はいはいもうお終い」
何とか矛を収める二人。
まあ、女子にそんな事言われたら引くしかないからな。
ん……明久……?
「吉井……明久」
「あれ?なんで僕の名前知ってるの?」
俺がポツリと出した名前に明久と呼ばれた男子が反応する。
そうか、彼が。
「午後の校内放送で流れてた吉井明久って」
「グ……」
そう言うと、彼は胸を抑えながらプルプルと震えながら俯いた。
どうやら、彼があの悪夢の校内放送の張本人らしい。
「あの大胆な告白をした吉井明久って貴方だったんですか」
真琴がオブラートに包むことなく、直球でその吉井明久に言葉を投げつけた。
その一言が決定的だったのか、彼は悲壮的な表情を浮かべながら…。
「ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
体をくねらせながら絶叫した。
気持ち悪い。
思わず真琴と共に一歩後ろに下がる。
「落ち着け馬鹿」
そう言うと、雄二が結構な勢いで彼に拳骨を入れた。
ゴツンッと鈍い音を立てると、吉井明久は動きを止め、前のめりにふら付いた。
「なにすんだ雄二。馬鹿になったらどうするんだ」
「安心しろ。―――――――お前は既に馬鹿だ」
いかん、このままじゃまたこの二人の漫才が始まってしまう。
「……とりあえず、あんたが吉井明久で良いのですか」
「え……あ、うん。僕が吉井明久だよ」
なるほど。
やはり彼があの吉井明久で間違いないようだ。
「あー…ハジメマシテ。そこにいる残念な兄の一応弟の坂本建太デス」
俺も一応挨拶をする。
二年という訳で、一応先輩なのだから一応敬語を使う。
「えっと…よろしく」
俺のギクシャクの敬語に違和感を感じなかったのか、吉井先輩も俺に挨拶を返す。
すると、俺の横から何かが俺の視界を遮った。
「始めまして!あたしは北条真琴と言います!!」
礼儀正しく、真琴が頭を下げて吉井先輩に頭を下げた。
相も変わらずでかい声で。
「あ…うん。よろしく……」
さすがに吉井先輩もビックリしたのか、若干引き気味になりながら真琴を見る。
「ちなみに、あたしは雄二君の彼女
「え……あ~うん」
真琴…。
もしかしてさっきの吉井先輩の呟きが聞こえていたのか?
そこまで協調しなくても……。
「ったく……もういいか?」
「うん……っていうか雄二って弟居たんだ」
「居ちゃ悪いかよ」
言ってなかったのか。
まあ、別に言わなくても良いのだが。
それにしても…。
「そういえば雄二君、今日試召戦争したんでしょ。どうだった?」
真琴が俺の考えていた事をそのまま聞いてきた。
「ん?ああ、一応勝ったぜ。Dクラスだったから勝てない相手でも無かったしな。っていうか何で知ってんだ?」
何を言ってやがる。
今朝かなり張り切って家を出てたじゃないか。
あの張り切りようじゃ、お前が何かやらかそうとしているって見え見えだ。
そうか……。
一応勝ったのか。
2つ上のクラスに勝つとはたいしたものだ。
まあお前の事だから、何か細かい策でも巡らして勝ったんであろう。
「いや、真正面から叩きつぶしたぜ」
ニヤリと笑う雄二。
おいおい…。
いくらなんでも2つ上のクラスに真正面から戦いを挑んでおいて、それを勝つとは。
いったい何があったんだ?
「まあ…作戦勝ちと言っておこう」
雄二は笑いながらそう言った。
はて…。
正面突破の作戦勝ちとは。
どういう事であろう。
「とりあえず、勝てたんだね。おめでとう」
真琴が賛辞を送る。
「い…いやぁ……」
それに対し、吉井先輩が頬を掻きながら照れを見せる。
……まあ、おそらく真琴の事だから吉井先輩にも言ったと思うが、俺が思うに彼はあんまり働いていないと予想する。
いやだって、この人スゲェ馬鹿っぽいんだから……。
「ま、明日はBクラスに宣戦布告するつもりだからそのつもりで行けよ、明久。とりあえず明日の補給テストはしっかり受けとけ」
「……ぐぅ」
雄二の言葉に吉井先輩がうなる。
まあ、この人は勉強嫌いそうだしな。
大変そうだ。
「ゲームばかりしてないで、寝る前に少しくらい勉強もしておけよ」
「はいはい。教科書くらいは読んで……ん?」
ん?
なんだ……吉井先輩が鞄をおもむろに開き、中を漁る。
「あ!教科書、卓袱台の下に置いたままだった!」
……嘘だろ。
教科書置き忘れるか普通……。
「あほ。さっさと取って来い」
「うぅ……。んじゃ、先に帰っていいよ」
「もちろんだ。待ってるわけがないだろう」
「わかっていたけど、薄情もの」
そう言うと、吉井先輩は踵を返し学校の方向へ走りだそうとした。
「またね~吉井さーん」
「え、ああうん。じゃあまた」
真琴が走りだそうとする吉井先輩に声をかける。
さすがの吉井先輩もここまで気軽に話しかけられる事も無いのか、若干戸惑い気味になりながらも挨拶を返し、学校へと走り去っていった。
「んじゃ、帰るか」
雄二は、吉井先輩が走り去るのを見てクルリと家の方へと方向転換し、そのまま歩き出した。
俺達も雄二に続くように歩き出す。
「よーし。雄二君も今日試召戦争に勝った事だし、明日への英気を養うって意味で今日はあたしがとびっきりに腕を振るっちゃいますか」
「おっ、今日はウチで飯にするのか」
「うん。そうと決まったら、スーパーの荷物運び頼むよ、お二人さん」
真琴はそう言うと、腕捲りをして雄二の先をずんずんと歩き出した。
そんな後姿を見ながら、俺は雄二に一つ問いかけた。
「なあ、雄二…一つ聞いても構わんか?」
「ん?なんだ」
「お前…もしかしてAクラスに挑むつもりか?」
「まあ、最終的な目標はそうだな」
「……勝算はあるのか」
こいつは学業だけが全てじゃないと少し前からそう言い始めていた。
そのため、この試召戦争はこいつにとって重要なものだ。
だが、姦計を巡らせても、AクラスとFクラスじゃああまりにも戦力が違い過ぎる。
「……勝てるさ」
雄二はそう言うと歯を見せながらそう言う。
「俺のクラスは……最強だ」
真っ直ぐ前を見ながら、雄二はそう宣言した。
さて、今回原作主人公のアキちゃんを出してみました。
原作側のキャラ達は、徐々に出していこうと思います。
だが、如何せん学年が違うので、難しいかも…。
感想お待ちしています。