久しぶりの投稿です。
ちょいと短めです。
決着は呆気なくついた。
2年生の試召戦争、Aクラス対Fクラスの結果は3対2という結果。
形だけ見れば接戦ではあった。
だが、最終戦。
つまり、代表同士の戦いで雄二と翔子さんが戦った訳だが……。
雄二の奴は普通に戦っても勝てないと踏んでか、小学生レベルの歴史のテストで戦いを挑んだ。
そりゃあ、小学生レベルのテストならそんなに実力差が無いとは思うが…。
ここに雄二の残念さが発揮された。
いくらなんでも何年も勉強せずに、テストが解けるわけがない。
それが小学生レベルであってもだ。
結果、
翔子さん…97点。
雄二………53点。
アホだ。
何で少しは勉強しなかった。
そうすればもう少し、ましな点数は取れたであろうに。
「で、ここまでの俺の見解に何か反論する余地でもあるか?我が残念すぎる兄よ」
「……言い訳はしねぇ」
当たり前だバカ野郎。
現在、俺は自宅の食卓を挟んで目の前でうなだれている雄二に問い詰める。
何故かは知らんが、雄二の隣の椅子には翔子さんが鎮座して、その手にはぶっとい鎖が持たれている。
その鎖の先は…
新しい趣味にでも目覚めたのであろうか。
雄二の両腕には木の枷がはめられており、そこから延びる鎖が翔子さんの手に握られているのだ。
「それにしても翔子ちゃんが女の子好きだと思われていたなんてね~。いい迷惑だよ」
「……私は気にしてない」
何故かしれっと俺の隣に座っている真琴は、目の前の翔子さんとガールズトークに華を咲かせている。
おい…俺がおかしいのか?
真琴、何故お前はこの状況に疑問を感じない……。
翔子さんと雄二のこの状況に……。
「だって、雄二くんすぐ逃げるじゃん。翔子ちゃん可愛いのにもったいない。雄二くんヘタレだからこれぐらいしないと」
暴論だな……。
「俺は……無力だ」
コイツ……。
もうだめだ。
さすがに気の毒になってきた。
まあ、それはともかく……。
「でも、3対2かぁ~。翔子ちゃんのクラスがそんなに追いつめられるなんてね~」
まあ、それには俺も少しばかり驚かされた。
片やエリートの集まりのAクラス。
片や底辺のFクラス。
よくそこまで追い詰めたものだ。
雄二達はよくやった方だと思うがな。
「…畜生、俺の自由は無くなるし、明日から鉄人の補修が入るし…散々だ」
鉄人……なんというあだ名であろうか――――。
何度かそのあだ名は俺も聞いた事がある。
去年、コイツから散々愚痴を聞かされてきたからな。
鉄人こと、西村宗一教諭。
俺は実際にあっていないが、とりあえずすごい人と言う事は聞かされている。
筋骨隆々のアスリート並みの体格に、並外れた運動神経の持ち主。
その上、生活指導の教師としてかなり頭が良い。
まさに文武両道を体現した人物らしい。
そんな人が、Fクラスの担任へと移り変わったと言うのだ。
まあこの試召戦争で、Fクラスは勝利の代償にかなりの問題を起こしたらしいからな。
一年でも結構噂になっている。
Bクラス戦でクーラーの空調を破壊した。
はたまた、壁をぶち抜いて奇襲を仕掛けた。
これだけでも充分、問題行動だ。
そりゃ、厳しくもなるだろう。
とりあえず自業自得だな。
「空調機はともかく壁をぶち抜いたのは明久だ!俺じゃねえ!!」
でも、Fクラスの代表はお前だろう。
代表として責任を取るのは当然の義務であろう。
「………クソッ―――――」
こいつも、かなり追いつめられてるようだ。
さすがに敗戦後にこんな仕打ちを受けているからな。
さっきまで、翔子さんに引っ張りまわされてかなり衰弱している。
――――――そろそろ助けてやるか。
「翔子さん、そろそろ手枷を取ってやったらどうですか?これじゃ食事も碌に取れませんですし」
その一言を聞いた瞬間、雄二が嬉々とした表情を向けてきた。
おいお前、そんなキラキラした瞳を俺に向けるな気持ちが悪い。
「……でもこれを外したら雄二、また逃げる」
「それに関しては俺が何とかします。もし今雄二が逃げるようでしたらその瞬間……俺の回し蹴りが雄二の顔面を破壊します」
「おい!お前はどっちの味方なんだ!!」
黙れよヘタレ。
「……分かった。それなら…良い」
翔子さんはそう言うと、スカートのポケットから銀色の鍵を取りだした。
そして雄二の手枷をガチャガチャと鳴らしながら外す。
その瞬間、鎖はジャラジャラ音を鳴らしながら床へと落ちた。
「ったく、やっと解放された」
雄二はそう言いながら、手首を擦る。
とりあえず逃げる様子は無いようだ。
「よしっ!それじゃあ晩御飯にしよう。今日丁度、お肉屋さんで安売りしてたから……焼肉でもしよっか」
真琴が立ち上がりながらそう言った。
時計を見るともう時計の針が19時をしめしている。
さすがに腹が減ってきたな。
「翔子ちゃんも食べていく?」
そのセリフは俺のセリフでは無いのか?
と言うか何故お前は俺の家で飯を食う前提で話している。
「良いじゃん、いつもの事だし」
軽いな。
「……私も食べてく」
翔子さんもか。
まあ、いつもの事だが。
「じゃあ、早速準備しなきゃ。翔子ちゃん、野菜切るから手伝って。健太と雄二くんはホットプレートの準備をして。確か今日、お義母さんもお義父さんも遅くなるみたいだし、久しぶりに4人だけだね」
真琴は何が嬉しいのか、ウキウキとしながらキッチンへ向かっていった。
翔子さんもそんな真琴の後ろへ付いて行く。
ダイニングには俺と雄二の二人だけが取り残される。
「雄二、随分と無茶な賭けに出たな」
俺がおもむろに口を開いた。
「……いや、俺は確実に勝てると踏んで勝負に挑んだ」
「中学時代碌に勉強していなかったのにか?」
俺のその言葉に、雄二がグッと唇を噛み締めた。
雄二が中学の時、こいつは勉強もせずに喧嘩ばっかりしていた。
幾ら小学校レベルの問題でも、そんな状態で高得点が取れるわけがない。
「……まあ、とりあえず少しは勉強すべきだったな」
「……そうだな。俺の実力不足だった」
……珍しい。
こいつが素直に俺の助言を聞くとは。
「―――次はこうもいかねぇ」
「次?まだ諦めていないのか?」
「ああ、次はもっと勉強してからAクラスに挑む」
なるほど、こいつは昔から諦めが悪かったな。
「そう言う事なら、俺は何も言わん。頑張れよ」
それを聞いた瞬間、突如雄二が眼を丸くして俺を見てきた。
何だお前?
「いや――――なんかお前にそんな事言われるのが新鮮すぎてな……」
失礼な。
俺だって励ますくらいの事はするぞ。
仮にも兄なんだからな。
「仮は余計だ。仮は」
細かいなお前。
「こらぁ男共!なにサボってんの。早くホットプレート用意しちゃいなさい!!」
キッチンの方から真琴の怒声が飛んでくる。
どうやら、俺達が何の用意をしていない事が御立腹らしい。
その声を聞き、俺と雄二が顔を見合わせる。
そして二人して笑いあう。
「…しゃあねぇ、やるか。女共がうるせぇしな」
そうだな。
またあんな金切り声を出されてはたまらん。
とりあえず今は勉強の話は置いておこう。
お姫様達の機嫌を損なわせてはいけないからな。
久しぶりに此方の方を投稿しました。
少し文字数が少ないですが。
次からは清涼祭編へと入ります。