ある日の放課後。
シャリシャリシャリシャリ
今殺せんせーはおやつのかき氷を作っているところだった。茂みの中には数人の生徒達の影。俺はその様子をどうなるかと思いながら見ていた。
「いたいた」
「今日のおやつは北極の氷でかき氷だってよ」
「コンビニ気分で北極行ってんじゃねえよあのタコ」
数人の生徒達はおやつタイムの殺せんせーを茂みより観察し、攻撃の機会を伺っているようだった。
「行くか」
「百億は皆で山分けだ!!」
一人の生徒の合図により、茂みに隠れていた生徒達がいっせいに殺せんせーのもとへと向う。
「先生ー」
「俺達にもかき氷作ってくれよー」
生徒達の顔は笑顔だった。おそらく殺せんせーを油断させるためだろう。しかしそれで殺せるだろうか?...おそらく殺せない。そんな作戦であの先生を殺せるなら誰も苦労しないだろう。
結局生徒達の作戦は失敗に終わった。あの後、殺せんせーに近づきナイフを取り出せたのはいいものの、生徒達のナイフは一瞬にして花にすり替えられてしまった。やっぱりあんなわざとらしい笑顔じゃあの先生を騙すことなんてできないらしい。
しかし同時に殺せんせーは一つミスを犯してしまった。
それは、殺せんせーがナイフとすり替えるために取った花が生徒達の花壇に咲いていた花だったということだ。そのため殺せんせーは今、女子二人にいろいろ言われながら球根を一つ一つ丁寧に花壇に植えていた。とても地球を爆破する超生物とは思えない光景だった。俺はその光景に苦笑しながら、渚を見つけたので渚のところへ向かった。
「よう、渚。何してんだ?」
「あ、紫音。先生の弱点をメモってるんだよ」
「へー、先生の弱点かー。例えばどんなの?」
俺が渚にメモを見せてもらおうとすると、茅野が近づいてきた。
「何してんの?二人とも」
「ん、ああ茅野。実は渚が殺せんせーの弱点メモっててさ、見せてもらおうとしてたとこなんだ」
「...ふぅん」
そう言って茅野もメモをのぞいてくる。
「...でもその弱点、暗殺に役立つの?」
「た、確かに」
そこにはカッコつけるとボロが出ると書いてあった。
しばらく茅野と渚と話していると、球根を植える作業が終わったらしく殺せんせーが姿を現した。
「皆さん、先程は花壇を荒らしてしまい本当にすみませんでした。そこで先生考えました。お詫びといってはなんですが、君たちにチャンスをあげましょう」
そう言って殺せんせーはどこからかロープを取り出し、それを使って自分の体を木に吊るし始めた。
「な、何してんの?先生」
俺はその先生の行動を疑問に思い、問いかけた。今の殺せんせーの状態は自分の体を木に吊るした状態である。その状態でもし撃たれでもしたら避けれるわけがない。
「ヌルフフフフ、言ったでしょう?君たちにチャンスをあげると。さあ皆さん、どうぞ遠慮なく撃って下さい。こんなに身動きがとれない先生はめったにいませんよぉ」
「いや、そんな状態だったらいくら先生でも避けるのは無理だろ」
「それはどうでしょうかね~。紫音君、試しに先生を撃ってみて下さい」
「は、はい。わかりました」
俺は先生に言われた通りハンドガンの銃口を先生に向け、引き金を引いた。
パン
ぬるん
『!?』
その場にいた全員が驚いたであろう。
殺せんせーは体を木に吊るしたまま、華麗に俺の弾を避けた。
「ま、まじかよ」
「ヌルフフフフ、油断しましたね~。先生にとってこの状態で君たちの攻撃を避けるなんて容易いことですよ、紫音君」
殺せんせーは顔にしましまの模様を浮かべ、俺にそう言ってくる。くそ~、ムカつく。
「さあ皆さん、どんどん撃ってきて下さい。そして私に一発でも当ててみなさい!」
こうして俺達E組ではハンディキャップ暗殺大会が開催された。
パンパンパンシャッシャッシャッ
俺達は現在、殺せんせーにより開催されたハンディキャップ暗殺大会にて木に吊るされた殺せんせーを攻撃しているのだが、俺達の攻撃は全て完全に避けられていた。
銃だけでなく、ナイフも使っているのだがそれすらも完全に避けられている。
「どう紫音?」
皆が殺せんせーを攻撃しているとこを眺めていると、茅野が話しかけてきた。
「うん...全然当てれない。ていうかあの状態でよく避けれるな、あの先生」
(でも待てよ。渚のメモでは確か...)
「ヌルフフフフ、甘いですね~E組諸君。そんなんじゃ先生を殺すなんて夢のまた...」
バキッ
「あっ」
殺せんせーが動きすぎたせいで木に負担がかかってしまったらしく音をたてて折れた。
ボトッ
『.....』
生徒と殺せんせーの間に沈黙がおとずれた。
そして、
『今がチャンスだ!殺れーッ!!』
生徒達は一斉に殺せんせーに斬りかかった。
「にゅやーッ!!」
殺せんせーはカッコつけた結果、渚のメモ通りボロがでてしまった。
これから、渚のメモは役に立ちそうだ。
「ちょま...ちょっと待って!縄と触手が絡まって」
殺せんせーは触手絡まった縄をほどきながら皆の攻撃を回避し続けていた。
(にしてもテンパるの早いな~、殺せんせー)
そして数秒後、
ドシュッ
「あ、抜け出した」
殺せんせーはようやく縄をほどき、校舎の屋根の上へと逃走した。
そして一言、
「明日出す宿題を2倍にします」
『小せえ!!!!』
もとはといえば殺せんせーの自業自得である。それなのにあれだけで宿題2倍って、どんだけ器が小さいんだよと思えてくる。
俺達に一言言った後、殺せんせーはとんでもない速さでどこかへ行ってしまった。
(あの先生を卒業までに殺す...か。)
そう思い、殺せんせーの飛んでいった先を見つめていると茅野が、
「紫音」
「なんだ?茅野」
「どう?殺せんせーは。殺せる?」
そんなことを聞いてきた。
そんなの答えはとっくに決まっている。
「殺すさ、絶対に」