続・二人の魔女   作:ADONIS+

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11.魔精霊アトン

 カストゥール王国は絶頂期になってからわずか50年で滅亡の時を迎えることになった。きっかけは精霊都市フリーオンで起きた。この精霊都市はその名の通り様々な精霊を使役してその力によって維持されていたが、その中にいた地の上位精霊ベヒモスが突如変異して、他の精霊たちを次々に吸収していき、魔精霊アトンへと変貌したのだった。

 

 カストゥール王国の魔術師たちはこの脅威に立ち向かうも次々に返り討ちになったために、総力をもってあたった。それは当時の魔法王の身体を素材にファーラムの剣を作り上げたのだ。

 

 文字通り王ですら身を捨ててこの危機に対応した結果、何とか魔精霊アトンを倒すことに成功したが、その為にあまりにも膨大な魔力の消費されてしまい、それに耐え切れなかった魔力の塔が崩壊してしまったのだった。

 

 これは魔力の塔に依存しきって自力で魔力を用いることができなくなっていた当時のカストゥール王国の魔術師たちにとって致命的なことだった。何しろ魔法を使えなくなってしまった魔術師など何の力もない弱者にすぎないのだから。

 

 そして、そんな魔術師たちに支配されて奴隷として酷使されていた蛮族たちは当然ながらこの機会を逃がす事はなかった。あっと言う間に各地で蛮族による反乱が起こり、貴族だけでなく市民までもが蛮族に殺されていったのだった。

 

 そして僅か数年で繁栄を極めたカストゥール王国は滅亡して貴族と市民たちは蛮族によってごく一部を除いて殺されてしまう。その蛮族たちがサーダイン王国を建国した年を新王国暦元年として魔法の時代が終わり剣の時代が幕を開けたのだった。

 

 ちなみに私たちは魔精霊アトンが出現した直後から姿を晦ませていた。はっきり言ってカストゥール王国の滅亡を救ったり滅亡に付き合ったりする義理はない。

 

 そういえば、カストゥール王国は原作の数百年前に滅びたが、空中都市を浮かべたりした現在よりもはるかに優れた魔法技術を有していた勢力だ。また魔法を使えない人間を蛮族として奴隷のように扱っていたことやその蛮族の反乱が起こった事など【ランスシリーズ】の聖魔教団とダブりますね。

 

 しかし、原作の発売時期から考えるとカストゥール王国が聖魔教団に似ているというよりも聖魔教団がカストゥール王国に似ているのでしょう。

 

 

 

 それはさておき、今私たちの前に一人の蛮族の男がいます。カストゥール王国時代のいかにも魔術師という格好だと蛮族に目を付けられて色々と不味いので、今の私たちは面倒事を避けるために魔術師だと分かるように格好ではなく、ありきたりな町娘といった格好をしていた。といっても私たちの顔を知る者がいればあまり意味がなく、そして目の前の蛮族の男は私たちの顔を知っている為、服装をごまかしてもあまり意味がなかった。

 

 しかし、目の前の蛮族の男は私たちに敵意を向けることはない。何故ならその男はただの蛮族ではなく、カストゥール王国の魔術師に操られている存在だからだ。私はその男の顔ではなく額のサークレットに目を向ける。

 

「久しいわね。アルナカーラ、そのサークレットが貴女の選んだ道だったわけね」

 

「エリーゼ、それにアイシャも、生きていたのか」

 

 アルナカーラが驚くのも無理はない。私たちは魔精霊アトンによる混乱のどさくさまぎれに姿を晦ませていたのでとっくに死んでいたと思われていた筈だ。

 

「私たちがそう簡単に死ぬわけがないでしょう」

 

 実は私たちはアルナカーラと比較的仲がよかった。といっても他の魔術師連中に比べつとという但し書きにつくけどね。私たちとアルナカーラは蛮族に偏見を持たず比較的平等に接してきたというカストゥール王国の魔術師から見れば異端という共通点があったから話が合ったのだ。だからこそ別れの挨拶の一つぐらいはしておこうという気まぐれをおこしたわけである。

 

「そうか、丁度いい。お前たちも手を貸してくれないか?」 

 

 案の定、アルナカーラはロードス島の安定の為に手を貸すように言ってきた。原作でもスレインを仲間にしようとしていたのだ。自分よりもはるかに強力な魔術師である私たちの協力を得たいと思うのは無理もない。

 

「悪いけど、私たちはもう世俗の事に興味はないわ。貴方に会いに来たのも最後の別れの挨拶だもの。貴方に協力しないけど邪魔もしないわ」

 

 そう、もうこの世界に用はないのだ。アルナカーラに付き合うつもりはない。

 

「そうか」

 

 アルナカーラは私たちが乗り気ではないと分かるとあっさりと諦めた。ここで無理に仲間にするという選択肢を選ばないのは私たちの力をよく知っているからだろう。何しろ私たちは魔力の塔ができる前から圧倒的な魔法の力で勇名をはせていたのだ。そんな相手に力尽くなどできるわけがない。それを機に話が尽きて私たちは自然と別れたのであった。

 

 さて、もうこの世界で得るものはない。いい加減この世界から引き上げるとしましょう。

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