2.神具(神殺しの魔王編)
新たなる旅に出た私は、『カンピオーネ!』世界のイギリスはコーンウォールにアイシャとアントニオを連れて転移した。時期は原作開始の一年前の21世紀で、まずはこのコーンウォールで下準備を行うことにした。
その準備はそこいらにいる適当な一般人に暗示を使って資金調達することである。といってもその一般人には私たちが用意した宝石や貴金属類を現金にしてもらっただけである。
ここで何故その程度の事で無関係の一般人を使うのかと思うかもしれないが、異世界から来た私たちは当然ながら戸籍がない為、その手の換金すらできないからだ。
これが戸籍がしっかりしていない時代なら問題ないが、21世紀の先進国では大問題である。
さて、私たちがコーンウォールにきた理由は、ここにはカンピオーネであるアレクサンドル・ガスコイン率いる魔術結社『王立工廠』の拠点があるからだ。
もはや常套手段となっているが、お金にものをいわせて現場の魔術を学ぶ為に王立工廠を選んでいた。世の中なんだかんだと言ってもやはりお金が物を言うのだ。お金を積めば大概の事は穏便にできるわけだ。
勿論、魔術結社ならどこでもいいというわけではない。赤銅黒十字や青銅黒十字のような昔からある名門の魔術結社だといくらお金を積んでも身元不明な不審者が魔術を学ぶのは無理だろう。
しかし、王立工廠は結成されたばかりで名門とはいいがたく、そういった意味では格式張っておらず柔軟な魔術結社なのだ。
そんなわけでアントニオにはお金を武器に王立工廠と交渉させた。シナリオとしてはオカルトマニアの資産家が娘たちに魔術を学ばせたいと考えて交渉に来たという話になっている。
アントニオの交渉能力もあるだろうが、やはり大金を積んだのがよかったらしく、王立工廠が所有する魔術関係の書物を読む許可があっさりと下りた。これが私たち二人ならばこうも上手くいかなかっただろう。
私たちは魔術の能力こそ長けているが、その外見から交渉の場などでは侮られやすいのだ。といっても、元々その手の面倒事は好んでいないので、アントニオに押し付けたわけである。
言うまでもないが、王立工廠の有する書物の閲覧はそれほど時間はかからなかった。この世界の魔術はデモンベイン世界の魔術と違って閲覧するだけで負担がかかるという代物でもなかったので、速読で一気読みすれば簡単に習得できる。後は別の場所で一通り実践してみればいいだけだ。
しかし、それで得た魔術は私たちから見ると物足りないものだった。まあ、原作知識からもこのカンピオーネ世界の魔術はショボいというかなんか地味な代物だから仕方ないけどね。とはいえ、ここまでは前座のようなもので、本命は神具です。
この世界では神に関係する様々な神具が存在しており、それらのいくつかは王立工廠に収蔵されている。何故、結成したばかりの魔術結社にそんな代物があるのかと思うかもしれないが、単にトップのアレクサンドル・ガスコインがあちらこちらから強奪した代物を保管しているだけなのだ。
ぶっちゃけ大英博物館のような感じで被害にあった魔術関係者たちに思いっきり喧嘩を売っているが、トップがカンピオーネだから迂闊に手を出せずにいるのが現状であった。
私たちはそれらの品々を是非とも解析しておきたい。何しろ神具は様々な能力があるだけでなく不朽不滅の属性を有する代物が珍しくない。この不朽不滅の属性を有する神具はまつろわぬ神やカンピオーネでも破壊不可能というとんでもない代物だ。
いくら私でも物品に不朽不滅の属性を与える事はできないので、その仕組みを解析しておきたいのだ。そうすれば今度の物作りに大きな利点になるだろう。
その交渉をアントニオにやらせたところ王立工廠の魔術師たちの監視下で見るだけならという条件でクリアできた。勿論、大金を積んだのは言うまでもない。まあ、これが王立工廠を交渉相手に選んだ最大の理由だったわけだし、上手く行ったのは良い事です。
ここで「見るだけでそこまでするか?」と思うかもしれないが、私たちの転生特典を用いれば肉眼で直接見ればそれで解析できてしまうのだ。結果として不朽不滅の属性の解析は成功したので収穫は大きかった。
その後は、一年ほどこの世界の魔術の実践をしていたが、コロッセオが破壊されたことから頃合いと判断して東京に行って草薙護堂と接触することにした。
「どうも草薙護堂さんですね」
「ええ、そうですが、どちら様です」
私は東京の街中で見つけた草薙護堂に話しかけた。
「私はエリーゼ・ペルティーニと申します。こちらは妹のアイシャ・ペルティーニです」
「はあ」
護堂はなんかリアクションに困っていた。いきなり見ず知らずの外国人の少女に話しかけられたら対応に困るでしょうね。
「失礼ですが、草薙さんがイタリアの魔術結社からメドゥサの姿が刻まれた、黒曜石でできた拳大のメダルを預けられたと聞き、あなたに会いに来ました」
「えっ、これのことですか?」
と、神具ゴルゴネイオンを見せる護堂。
勿論、私とアイシャはそれを見逃すほど甘くはない。即座にゴルゴネイオンを解析して理解した。この時期の護堂ならば一般人としての感覚が強いのでその手の管理が甘く、あっさりとゴルゴネイオンを見ることができると踏んでいたが予想以上に容易かった。
「やはり神具ゴルゴネイオンですね」
正直言うと護堂にもう用はないが、ここで即座に帰るのはあまりにも不審な行動なので、一応話だけはしておく。
「草薙さん、貴方はイタリアの魔術結社がどういう意図をもってこれを貴方に渡したのかわかっていますか?」
「いや、そんなことをいわれてもな…」
と、護堂は言葉を濁す。
やはり原作通りエリカに唆されて、ろくに裏事情も知らずに東京に持ち込んだのだろう。
このゴルゴネイオンは貶められた女神アテナとメドゥサの徴で失われた地母神の叡智、闇へ至る道標である神具。そしてまつろわぬアテナを招き寄せてしまう厄介な代物だった。
当然そんなものをもっていれば、イタリアがまつろわぬアテナに襲撃されて大きな被害を受けてしまう。そこでゴルゴネイオンを護堂に東京に持って帰らせることで、本来ならイタリアが受ける被害を東京に押し付けるという策略なのだ。
「そんな…」
その辺りの裏事情を親切丁寧に教えてあげると護堂は顔色を変えていた。
「ですから草薙さん。今回の一件は貴方が責任を持って東京に被害がでないように頑張ってください。それが責任の取り方というものです」
まあ、護堂の権能は周囲に被害を与えてしまう代物だから無理でしょうね。そもそもたかが一魔術師と戦う時でも周囲に大きな被害を与える護堂がまつろわぬ神相手に被害を抑えて勝利するなどという器用な真似はできないのはわかりきっている。故に原作通り東京は被害を受けるだろう。
最もそんなことは私たちの知った事ではないので、適当に話を切って護堂と別れた。これでこの世界で得られるものは大体得たので、私たちはこの世界から引き上げることにした。
ちなみに私たちがカンピオーネ世界に来たのにテンプレのように神を弑逆してカンピオーネになろうとしないのは、それが私たちに不都合だからだ。というのも、私たちの身体は転生特典で優れた才能と能力を持っているが、下手に体をいじると逆に弱体化してしまう恐れがあるからだ。
カンピオーネの場合、まつろわぬ神を殺すとパンドラによって体を作り替えられてしまう為、上記の理由からそれを避けていた。護堂にように元は大した能力を持たない者ならばカンピオーネになるのは大幅な強化になるが、死神によって強化された体を持つ私たちの場合はカンピオーネになるのはデメリットが大きいのだ。
ついでに言えばカンピオーネになっても大して強化されないという理由もある。確かにこの世界においてカンピオーネは強者であるが、ドラゴンボール世界の戦士たちに比べるとあまりにも見劣りしてしまう。正直権能が使えるようになったとしても、ちょっとした超能力が使える程度にしか感じられません。