私たちに取って中世ヨーロッパといえば魔女狩りという嫌なイメージがある。実際、この世界では中世末期の15世紀に〝悪魔と結託してキリスト教社会の破壊を企む背教者″という新種の魔女の概念が出てくるが、大規模な魔女裁判は初期近代の16世紀後半から17世紀にかけて魔女に対する大迫害時代が来る。
つまり、14世紀という時代は魔女に対する迫害が起こる前というギリギリの時期という私たちが活動がするのに都合のいい時期なので、この時代でこの世界の魔導書を収集しておくことにした。
手順としてはいつものように金塊でお金を入手して魔導書を購入しただけである。この時代はまともな印刷技術がないから現代の基準からすれば本がやたら高いが、まだ魔女狩りが起きていないだけに普通に店で魔導書が買えるので、金さえ積めば魔導書を集めるのに苦労はしなかった。
また、この時代のヨーロッパは人間の魔法使いだけでなく、妖怪の一種である魔法使いも普通に巷にいたので、彼らに金を積んで魔導書を見せてもらうという方法も可能であった。
彼らとの付き合いはそれなりに有益であったが、やはり才能の差から妬まれて揉め事になることもあったので、今一損得勘定が難しいかった。この世界の魔法使いたちでも私たちの異常な天才ぶりは規格外なものだったのでしょう。とはいえ、その甲斐もあって30年もすればこの世界の西洋魔法を粗方習得できて、得たものはそれなりの多かった。
しかし、それだけでは物足りないので、更に100年程時間をかけて新たな魔法の開発などをしていたが、キリスト教と民衆による魔女迫害が起こってきて何かとやりにくくなったことからヨーロッパを離れることにした。
別に教会や民衆が仕掛けてきても蹴散らしてしまえばいいのだが、流石に揉め事を抱えてしまうと落ち着いて研究できないからね。
余談であるがこの『東方Project』の世界には神や妖怪が実在しているが、キリスト教の神は実在しない。というのも、この世界の神の仕組みと関係している。
この世界では妖怪は人間の畏れから発生し畏れを力の源としているが、神は人間の信仰心から発生して信仰心を力の源としている為、その力は信者たちから得られる信仰心の量に比例している。
そうなると、例え10億人以上もの信者がいても全知全能の神など存在しえないし、ましてや信仰心よりも科学技術と情報が重んじられるようになった現代では、いくら信者が多くても信仰の質が低すぎて大した力を発揮できないのだ。
いうまでもないが、自然と共に生きて本気で神を信じている古代人と、科学に頼った現代人では信仰心に差があるのは当然である。
また『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』の世界と同じく全能の逆説(オムニポテント・パラドックス)により神々はこのパラドックスの一部によって一元論・一神教を基軸とした宇宙観を構築することが許されない、つまりはキリスト教やイスラム教、ユダヤ教などの全知全能の唯一神は幻想にすらなれず夢想と化してしまっている。
そもそも宗教というのは本来は多神教だったわけで、この世界の神はその名と役割を核に信仰心を得て誕生して、神々は信仰心を糧に奇跡を起こして人間から信仰を得る関係で神話の主神のように多くの権能(役割)を有する神が居ても全知全能はいない。
つまり、この世界では神道や仏教などの多神教なら神が実在するので信仰する意味があるが、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教は神がいないという一神教の信徒たちには涙目な世界なのであった。
解説
■ユダヤ教
ユダヤの神はもともと唯一神であったという考えが広まったのは、ずっと後世のバビロン捕囚以後につくられた常識です。つまりそれ以前はユダヤ教は多神教であったわけですが、人間の都合でヤハウェを全知全能の唯一神にしています。
■全能の逆説(オムニポテント・パラドックス)
いくつかあるパラドックスの中で一番わかりやすいのは「全能者は<重すぎて何者にも持ち上げられない石>を作ることができるか」である。そのような石を作れないなら全能ではない、作れるならその石を持ち上げられないのでやはり全能ではないことになる。
あとがき
『東方Project』では多神教の神々は登場していますが唯一神は登場していないので、この作品では全能の逆説を採用して唯一神はいないと設定しています。