続・二人の魔女   作:ADONIS+

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30.接触①

 21世紀の地球に行くことになった私は監察軍の一個特務基幹艦隊を動かすことにした。この特務基幹艦隊というのは巨大な機動要塞一基と約500万隻にもおよぶ大規模なバイドで構成されている。

 

 本来ならこの特務基幹艦隊はベヅァー対策に用意されたものであるが、ベヅァーが出現していない時は1000個もの特務基幹艦隊は待機状態でまったく有効に使われていないため、平時であれば比較的簡単に動かすことができた。

 

 そして特務基幹艦隊はステルス機能を一切用いることなく地球近郊に展開していた。当然そんなことをすれば月人どころか地球人でも丸わかりな為に大騒ぎになっているだろう。

 

 ここまで派手な事をしたのは日本に対する砲艦外交のみならず、その他の地球各国や月人を牽制するためである。

 

 特に月人はなまじ高度な文明があるので地球外文明が中途半端な戦力で地球に干渉するとこちらにちょっかいを出してくる恐れがある。その為、圧倒的な物量を見せつけで牽制させる必要があった。

 

 

 

 その特務基幹艦隊が出現して二日後。地球と月に特務基幹艦隊の情報が十分に伝わるだけの時間がすぎた為に、私とアイシャが乗っている巡洋艦を大気圏に降下させた。その降下地点は日本の北海道だ。

 

 最初は東京にしようかと思ったが、よくよく考えると世界有数の大都市東京に全長380mの巡洋艦を着地させるスペースがある場所など空港しかないが、さすがに勝手に空港に着地させるわけにはいかない。そんなことをすれば当然ながらその空港は使えなくなるから非常に迷惑をかけてしまうことは想像に難くないからだ。

 

 その点、北海道ならば広い空き地もそれなりにあるから適当な場所に着地させることができるのだ。勿論、その空き地も国有地か私有地なのだから国か地主に迷惑を掛けてしまうのは避けられないが、空港に着地させて国際線及び国内線の運航状況に悪影響を与えるよりはマシです。

 

 さて、ステルスを用いず、地球に降下した挙句ゆるりと北海道まで乗り込んで堂々と降下している為、当然ながら私たちの乗る巡洋艦は日本政府に捕捉されている。当然、しばらくすれば自衛隊なり役人なりがこちらに来るだろう、と判断してしばし時間をつぶすことにした。

 

 案の定一時間もせずに自衛隊らしき姿が現れた。外部モニターの映像からも日本人ぽい顔の迷彩服を着た集団だった為、間違いないでしょう。ここで米兵が来ていたらちょっと面倒だったけど、さすがに日本国内で自衛隊よりも早く動くことはなかったようだ。

 

 これが北海道ではなく米軍基地が密集している沖縄とかだったら話は別だっただろうが、米兵がほどんといない北海道なら自衛隊の方が動きが速いのだろう。それはともかく、せっかく来てくれたのだから接触することにしましょう。私たちは巡洋艦から降りて自衛隊と会うことにした。

 

 そんなわけで外に出た私とアイシャであるが、白人の美少女にしか見えない私たちの外見が想定外だったのか自衛隊の隊員たちは私たちにすごく驚いていたようだ。

 

 どうせグレイみたいな宇宙人がでてくると思っていたのだろう。そんな顔をされるのなら彼らの期待に応えてグレイみたいな仲間を使者に送るのもありだったかもしれないと、つまらない事を考えてしまうのだった。

 

 

 

 こうして、私たちは21世紀の地球人と接触したのだった。その後、日本の役人が来たり、役人に適当な旅館に案内されたりした。流石になにもない空き地で交渉する気はなかったのだろう。

 

 その旅館にはいつの間にか国際色豊かな人々が集まったりしていた。多分、私たちがここの旅館に案内したことを日本政府が各国に伝えたのだろう。正直言うと今回の要件が神社の分社を扶桑国に建てるというものからすれば日本以外と話す事がないから、他の国の役人が来ても意味がない。

 

 いえ、確か21世紀初頭なら日本の神社を統括しているのは日本政府ではなく宗教法人の神社本庁だったはずです。そうなると日本政府と交渉する必要もないかもしれないけど、日本政府まで無視するのはさすがにそれは拙いかな。

 

「どうやら日本だけでなくいろんな国の方々が来たようですが、別に私たちは地球の国家と話し合いに来たわけではありませんよ。ですから、私たちと交渉してうまい汁を吸うのは不可能です」

 

「では、何の為に地球に来たのですか?」

 

 言外に侵略しに来たのかと警戒しているようだ。あれだけの大艦隊で来ればそれを警戒するのも当然か。

 

「その事ですが……」

 

 私はブリタニア帝国や監察軍の概要、そして過去の地球で行った扶桑国建国に関する活動の事を粗方伝えておいた。

 

 しかし、戦国時代に一万光年先の地球型惑星に日本人を移住させた事は信じてくれても、神や妖怪、魔法や霊術の事を半信半疑だった。やはり科学技術や情報が重んじられるこの世界では妖怪や魔法などは迷信扱いなのだろう。

 

 ちなみにこの世界で起こるであろう地球人の自滅においても説明しておいた。というのもどうせ100年と経たずに気づく事だからだ。

 

 本来、知的生命体が文明を発生される場合はその文明の発達と共に自滅のリスクが発生する。そもそも一つの惑星に存在する資源の量や食料生産能力は限られているのだから欲望を抑えることなく好き勝手すれば自滅するのは当然だ。

 

 では、物質文明のあり方はどうすればいいかというならば、まず文明レベルを最低限度に抑えて資源の消費を抑えて細く永く文明を存続させる方法と、母星の資源枯渇が起こる前に宇宙開発を成功させて他の惑星や宇宙空間などに生活の場を広げる方法がある。

 

 前者はともかく、後者は資源枯渇と生態系の破壊のリスクをともなっており、欲望を優先してバランスを誤れば自滅する方法でもあるが、成功すれば大いに飛躍できるもの手段だった。

 

 しかし、この世界の場合はそれは成功する見込みのない致命的な悪手であった。何故ならこの世界の月人は地球人の宇宙開発を許容しないからだ。

 

 穢れを嫌う彼らは地球人が宇宙に進出することで聖地たる月が穢れると判断したのだ。神々の情報でも地球人の宇宙開発の妨害を行い地球人を地球に封じ込めることにしたらしい。

 

 更に面倒なことにすでにアメリカのNASAが月人と武力衝突してしまっている事だ。これで月人の敵意をかってしまい彼らの妨害を止めさせることは無理だろう。

 

 つまり、地球人の選択肢は大きく分けると、【月人の妨害を潜り抜けて宇宙開発を成功させる】【月人を説得して宇宙開発の妨害を止めさせる】【文明を捨てて資源の枯渇を抑える】の三つとなる。

 

 いうまでもないが、この三つはすべて不可能だ。地球人が高度な文明を有する月人に勝てるわけがないし、あの閉鎖的かつ価値観があまりに異なる月人を説得しようがない。ついでにいえば、ここまで物質文明に染まった人類が今更文明を捨てるなどできない。結果として、地球人にできることは将来的に訪れるだろう破滅から目をそらして生きていくしかないのだ。

 

 

 

 その後、交渉そのものは日本以外の国は蚊帳の外となってしまったが、日本政府は案外すんなりとこちらの要求を受け入れた。正直、別に拒絶しても問題ないと伝えていたから断られるかと思ったけど、よくよく考えると神社の分社を建てる程度なら日本政府ではなく宗教法人の神社本庁が頑張らなくてはいけないだけで、日本政府には何のデメリットはないから受け入れやすかったのだろう。

 

 ちなみにその際に私が予備知識として説明した様々な裏事情は地球各国で多少の混乱をもたらすことになるが、それは余談である。

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