彼の者は須賀京太郎である、彼女はまだいない。
そう、彼女がいないのである。華の高校生活、入った部活は麻雀部、そして部員は全員女子。
しかし彼女がいないのである。顔立ちは悪くない、性格は良い部類、身長も高い。
だが、須賀京太郎が狙うのはかわいい女子、それも同じ部活のアイドル原村和。
彼女は奇抜なファッションセンスをしてるものの、それ以外は彼の好みにドストライク!
だからといってすぐさま告白し玉砕する彼ではない。そこまでバカな鉄砲玉ではない。
彼が目をつけたのは麻雀雑誌。彼が所属する部活の清澄高校麻雀部がインハイ優勝した際に、彼女らがインタビューに答えていたのを彼は知っていた。
ああいうインタビューには往々にして余分なものも含まれているはずだ、そう思い立ち買ってみた麻雀雑誌。
さあいざ開いてみると、そこはなんと清澄高校特集。これは幸先がいいと思った須賀京太郎、思わず笑みがこぼれる。
しかしそれも束の間、目当てのインタビュー内容…そう、好きなタイプはどんな人かというテンプレチックな質問。
その質問に対する原村和の返答
『麻雀が強い人がいいです』
悲しい哉、彼女は麻雀を愛しすぎている。まさか彼氏にもそれを求めようとは。
しかし諦めるのにはまだ早い、麻雀部にはまだまだ女子は四人居る。彼はそっちにシフトする。
一途じゃないだの浮気性だのと彼を責めないでやってほしい、彼はまだまだ十五歳、思春期真っ盛り、移り気なのは仕方ない。別に付き合えるなら誰でもいいという訳ではなく、あまりにも魅力的な人物が周りに多すぎるだけなのだ。
ささ、ネットでは魔王と騒がれ、テレビでは期待の新星、宮永照の後継者として名高い幼なじみの少女はどうなのだろうか?
まさか咲も麻雀には囚われまい、幼少期は麻雀がきっかけで家族がバラバラになっていたのだ。彼はそう思いページをめくっていく。
『麻雀が強い人がいいです』
そのまさかだった、あの原村和と一語一句同じではないか!どういうことだ!と混乱する須賀京太郎。
彼はもしやと思い急いでページをめくっていく。
『麻雀が強い人がいいじぇ』
『麻雀が強い人じゃな』
『麻雀が強い人よ』
なんということでしょう、彼が所属している部活はジャンキー住まう魔窟だったようだ。
__どうすりゃいいんだ
彼は思わず零してしまう。
この清澄高校麻雀部で彼女という栄光を手に入れることは不可能に近かった。
彼女らの言う麻雀が強い人、それは即ち互いに鎬を削れる人物、そんな男子は高校生にはいない。
これはもう試合終了か、あの魅力的な少女たちには手は届かないのか、そう思う須賀京太郎。
それから雑誌をパラパラとめくっていくが、大体の少女は麻雀が強い人がタイプとのこと。この日本はいつからジャンキー住まう魑魅魍魎の国と化したのか。思わず流れる涙。
インハイではふとしたきっかけで色んな少女と知り合うことは出来た、もしかしたらという可能性は今潰えた。
さあ、ゼロからのスタートだ須賀京太郎!そう自分を奮い立たせ、何とか涙をこらえる。
明日からは切り替えよう、麻雀に集中するんだ。そう思いベットに潜り込む。
__そうだ、麻雀である程度強くなれればモテるかもしれない
__それだけでもステータスになるかもしれない
__そう、あんなに強い仲間達がいるんだ、俺も教えてもらおう
彼は切り替えが早いようだ、彼女を作りたいという欲求をすぐさま麻雀に移し替えた。
彼はすやすやと眠り始めた、その表情に先ほどまでのような焦燥や絶望はない。
彼は切り替えたのだ、この高校三年間は麻雀に精力を尽くすだろう。
彼は諦めたのだ、あの可憐で美麗な麻雀少女たちと付き合うことを。
だがその決断に後悔はない!
…たぶん
………彼は知らない『麻雀が強い人がいい』というコメントは、即ちノーコメントだということを