須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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17 雀荘にて

さてさて、時間は少し飛んで、とある日のこと。

この男、須賀京太郎は彼女も欲しいが、お金も欲しい。

彼はまだまだ遊び盛り、それゆえお金も湯水のように消えていく。

さてさて、ここで貯金を確認すると…なんと、あとラーメン3杯しか食べれないではないか。

これには京太郎も流石にヤバいと思い始める。この調子で使ってしまうと今月の中旬には無くなってしまう。

まあ、なぜこんなに金欠なのかは、東京に行った時に無駄に…いや、無駄ではないが無駄遣いしたのが原因である。

さて、その話は置いといて、こんな状況ではどうしようもない、交通費すらろくにない。

とは言っても、バイトを始めてしまうと麻雀に費やす時間も減ってしまう。さてどうするか…そんなこんなで悩んでいると

清澄高校麻雀部の良心、染谷まこ、こんな提案をする。

 

「そうじゃ京太郎、わしの実家でバイトせんか?」

 

ああ何ということだ、地獄に仏と言うべきか、何というべきか、これ以上にないタイミングの良さである。

これには京太郎、二つ返事で了承して、すぐさま詳細を聞き始める。この食いつきようには少し驚きつつも嬉しそうに対応する染谷まこ。

言い忘れていたが、彼女の実家は雀荘?である。少し色物ではあるがしっかりとした店であり、もちろん卓に入ることもバイト内容の一つだ。

 

__ありがとうございます、染谷先輩…!

 

京太郎、心の中で彼女にお祈りし始める。彼の眼には菩薩に映っているようだ。

おや、染谷まこは何やら企んでいるのだろうか、何やら意味深な笑みを浮かべて、楽しみじゃな、とこっそり呟いている。

一体何をしようとしているのだろうか、変なことでなければいいのだが…

 

そんなこんなでバイト初日、朝から夕方までシフトを入れてもらった京太郎、いそいそとまこの実家に顔を出すと

 

「おう、来たか、こっちじゃこっち」

 

何やらご機嫌でテンション高めの染谷先輩が手を握ってグイグイ引っ張るではないか、これには少しドキッとして、すぐに平常に戻る。どうやら耐性がついてきたみたいだ。

店の裏側的なとこまで連れていかれて、はてさて何をするんだろうか思う京太郎、そんな彼をよそに何かを持ってくる染谷まこ。

その手には一着の服が…いや、この服はもしや…

 

「ほれ!着てみんさい!丈合わせはしてあるけぇ、恐らくピッタリじゃと思うわ」

 

その言葉に従っていそいそと着てみると…あっという間に金髪執事の完成である。これには京太郎も少し気恥ずかしいのか

 

「ほ、他に普通の服とかないんですか?」

 

少しオドオドしつつ、こう聞くも

 

「メイド服ならあるけぇ、そうかそうか、京太郎はそっちが良かったか!ちょいまちんしゃい…」

「いえいえいえ!執事服めっちゃ気に入りました!チョーカッコいいー!」

 

この女、途轍もなくヤバい代替案を提案し始める。これには京太郎、咄嗟に執事服を気に入り始める。

染谷まこ、そんな京太郎を見て、似合うと思うんじゃがなぁと残念そうに言葉を溢す。

というか、なぜ京太郎が着れるメイド服があるのだろうか…このワカメもしや、最初はそのつもりだったのでは…?

 

__さ、流石にメイド服着させられたらたまったもんじゃない!

 

どうやら京太郎に女装癖はないようだ、残念だったな!まあ、少し女顔だから似合わなくはないであろう。

ささ、一通り仕事を教わり、そろそろ営業時間の開始だ。染谷まこはいつの間にかメイド服になっている。

 

「染谷先輩ってメイド服似合いますね」

「それなら京太郎も中々に様になっとるじゃないか」

「そうですか?ハギヨシさんと比べると…」

「あれは本職じゃし、そんなかでも特にヤバい方じゃろ…」

 

京太郎、天然ジゴロを発揮するも染谷まこはいたって冷静に返している。しかし、その顔には少し笑みが浮かんでいる。

そんな感じで他愛ない会話をしていると、ポツポツと客が入ってくるではないか。慌ててお客さんに対応する京太郎、特に問題はなさそうだ。

彼の人柄がにじみ出ているのか何なのか分からないが、どうやら常連客にも気に入られ、馴れ馴れしく話しかけられるように。

そんなおっさんたちにも京太郎は愛想よく対応し、さらに印象が良くなっていく。彼に惚れる少女が多いのも頷ける。

 

「おい執事さん!もしかして、まこちゃんのこれか?」

 

とある常連客が小指を立てながらこんなことを聞いてくる、流石はオッサン、少し古臭い。

これには困った京太郎、誤解されないためにも否定しようとするも

 

「そうじゃのぅ、今からそうなるか?」

 

__へ?

 

この女、かなりしたたかである。完全に不意を突いた攻撃、これには京太郎も啞然とする。

しかし彼はうろたえない、数多の女子と接してきたわけだ、こんな不意打ちなんて気にもしない。

 

__ここここれはからかってるだけだよな?そうだよな?

 

なんか動揺している風にも見えるが気のせいということにしよう。

さてさて、彼は冗談だと捉えたようだ。すぐさま返答する。

 

「ちょ、ちょっと、からかわないでくださいよ!」

「ほう」

 

少し口調を強めにそう訴える京太郎、しかし、まこは短く相槌を打った後、

 

「本当にからかっているだけじゃと思うか?」

 

体をスッと近づける、イタズラっぽい笑みを浮かべながら上目づかいで彼の顔を覗き込む。

完全に予想外の行動であったのだろう、彼は石のように硬直し全くもって動かない。心臓だけは激しく動いている。

 

__お、落ち着け、これはそういうのでは…

 

何とかして平静を保とうとする京太郎、しかし彼女は攻め手を休めない。

 

「ふふ、顔を真っ赤にしてかわいいのぅ」

 

彼女は笑みと共にそう呟くと、彼の頬に手を添えて、そのまま撫で始めたではないか!

慈愛に満ち溢れたような、それでいて嗜虐的な含みを持たせた声色が耳に響く。

頬を撫でる感触はほんのり温かく、絹のような心地よさが残る。

 

__まままままって

 

悲しい哉、いくら念じても時間は止まらない、考える猶予なんて一秒もない。

まあ、ここまで混乱するのも仕方ない。あのオッサンの一言からこんなことになるなんて誰が予想できるのか。

平常時からの突然の切り返し、緩急を使った鋭い攻め、これには京太郎もタジタジだ!

店内のオッサンどもは空気を読んで黙々と牌を切っている。伊達に数十年も社会に出てない。

 

「そ、染谷先輩、ちょっとまっ…」

「まこ」

「へ?」

 

「まこって呼んでくれんか?」

 

ジッと見つめる。京太郎の瞳を覗き込むようにして真っ直ぐ見つめる。

その頬はほんのり赤みがかっており、先ほどまでの余裕はなく、どこか真剣な雰囲気をかもちだしている。

 

「ま、まこ、さん」

 

京太郎はそんな雰囲気に気圧されつつも、何とかして喉から言葉を絞り出す。

女子を下の名前で呼ぶのには慣れている京太郎ではあるが、基本的に目上の人をそう呼ぶことは少ない。

とはいえ、名前を呼ぶだけでこんなにも緊張したのは初めてだ。まるで恋文を読み上げるような恥ずかしさが込み上がる。

 

「ふふ、なんじゃ京太郎?」

 

この返答に満足したのか、少し笑みを浮かべた後、いじわるな感じでそう聞き返してくる。

しかし染谷まこ、顔の赤さと口元のにやけは隠しきれてないぞ。

 

「あ、い、いや、名前を呼んでみただけといいますか…」

 

だが京太郎はメチャクチャ動揺しているのだ、そんな彼女の様子には気づかず、どもりながら返答する。

 

「じゃあ、わしからいいか?」

 

彼女は何か意を決したように

 

「そのな、京太郎、もしお前さえ良ければ…」

 

言葉を紡ぎ、そして一息吸って

 

「まこー!遊びに来たわよー!!」

 

…なんか邪魔ものが現れた!

 

次に続く

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