須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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18 来店

勢いよくドアを開けて現れたのは我らが部長の竹井久、かわいい後輩の店に遊びに来たらしい。

 

「…」

「な、なによその目は…?私なんかした?」

「いーや、なんもしとらん」

 

ジト目で睨みつける染谷まこ、とてもいいとこで邪魔されたのだ。いや、いいところというか、一世一代の大勝負をふいにされたというか、緑一色張ったのに卓をひっくり返されたというか、それ以上である。こうなるのは仕方あるまい。

こちらは来店して突然睨まれた竹井久、困惑しつつ訳を聞いてみるも突き放されたような返答。頑張って頭を回して自分の非を探してみるものの思い当たらず更に悩むばかり。その際に最近後輩からの扱いがあんまりなのをも思い出し、なんだか泣きたくなってくる。

しかしそんな気分もすぐに吹っ飛んだ。陰鬱だった気分なんて宇宙の彼方に飛んでった。何故ならそこには京太郎が、その京太郎がなんと執事服を着ているのだ。

 

「すす須賀君!?なんでここに…」

 

須賀君が居るとはゆめゆめ思っていなかった竹井久、驚きのあまり声を張ってしまう。

しかも執事服を着ているのだ、そりゃもうパニック状態よ。ワタワタアタフタしてしまう。

写真に撮っておきたいわね、だとか、この前の妄想が現実になった!だとか、頭の中はぐっちゃぐちゃ。というか何の妄想をしているんだ竹井久、日頃からそういうのを考えているのか竹井久。

さてさて、そんなアタフタとしている部長を眺める京太郎、返答するのも忘れて、こういう部長もかわいいなァとか思っている。

そんな京太郎を見かねてか

 

「今日からここでバイトすることになったんじゃ、まあ、暇な時に入ってもらう感じじゃがな」

「へぇ…なるほどね」

 

代わりにまこが返答する。その返答に納得したように頷く久。

落ち着き払ったような態度を取っているが、内心はまだ興奮している。

 

「いやァ、最近金欠気味でして…」

「あら、そんなにお金を使ってた印象はないけどね」

「まあ、気がついたら無くなってたとかそんな感じじゃろ?」

 

そんなこんなでワイワイと雑談が始まる。学年は違う三人ではあるが、その間に壁は見えない。特にやる業務もなく、止め処ない会話を続けていく。

が、

 

「あのー、久?入ってもいいかしら?」

 

何やら困惑している声色がドアの向こうから聞こえてくる。

 

「あ、ごめんごめん!入っていいわよ!」

 

それに対し、しまったという表情で謝りながら返事をする竹井久。姿が見えないその相手に手を合わしている。

そうしてガチャリと音が立つと、ドアから何やら綺麗なおねーさんが現れる。

 

「あ、染谷さんに…須賀君?」

 

そのおねーさん、染谷まこを視認してパッと笑顔を見せるが、隣の金髪執事に対しては恐る恐ると確認する。

 

「あ、福路さん!お久しぶりです!」

 

思わぬ訪問者にテンションが上がる京太郎、どうやら多少の面識があるもよう。

 

「やっぱり須賀君なのね!お久しぶり、元気にしてた?」

「はい!最近は麻雀ばかりやってますね、ここでのバイトも麻雀出来るからっていう理由ですし」

 

話が盛り上がる金髪二人、お互い近況報告をして他愛のない話をしている。

しかしこの京太郎、何やらデレデレしてるではないか、いつもよりもテンション高めな気がする。

それもそのはず、この福路美穂子は彼の好みにどストライク!しかも原村和とは違ってファッションセンスはまとも。

家庭的で、お淑やかで、美人で、他人想いで、胸も大きい。

そんな女性と話せるのだ、テンション上がらない男性がいようか?いや、いない。

そういう訳で彼は気分が上々である。別に彼女に出来る出来ないは置いといて、そんな女性と会話するだけでも満たされるのが男のサガである。

とはいえども、少し距離が近すぎやしないか?さすがにこの距離は引かれ…ない。いや、お互いに近寄りあっているようにも見える。

これはこれは奇妙なことだ。彼女は誰に対しても親身になって話しかけるが、ここまで近いということは珍しい。しかも異性相手にだ。

一歩踏み出せばゼロ距離になってしまいそうなそんな距離、だというのにお互い離れようともしない。

 

「ふーん、いつの間に美穂子と須賀君はそんなに仲良くなってたの?」

 

そんな二人に声を変える影が一つ、少し不満げに疑問を投げかける。仲が良さそうな様を見て、どうやら面白くないようだ。なんともまあ嫉妬深い。ただまあ、彼女の気持ちも分からなくはない。

 

「あ、それはですね…」

「前に買い出しに行った時に偶然会ってね、お互い顔見知りだったから一緒に回ったの」

 

答えようとする京太郎、しかしまたまた先を取られる。どうやら雑用してたら出会ったらしい。

この話しようだと美穂子から話しかけたのであろう。相変わらずのお人好しというか何というか、こういう社交的な性格も彼女の人望が厚い理由でもあるのだろう。ただし同学年の女子は除く。

 

「そんな偶然が…」

「へぇ…その一回だけ?」

 

これには少し驚く染谷まこ、有り得ない話ではないが偶然にしちゃぁ凄いものだ。

この竹井久、彼女の勘か何かが働いたのだろうか、更に質問を重ねる。

 

「あー、何回ぐらい会いましたっけ?」

「そうね…五、六回は会ったような」

 

なんだこいつら、赤い糸でも結んであるのか?いくら偶々と言えどもそんなに出会うことはあるのだろうか?いや、ない。

おい京太郎、ストーカーでもしてないだろうな?いくらタイプの女性といえどもそれは犯罪だ。

 

「京太郎、お前もしや…付けてたりしてないじゃろな?」

「してませんよ!?何言ってるんですかまこさん!?」

「そういえば、よく美穂子のことを見ていたりしてたわね」

「え、そ、そうなの須賀君?」

 

どうやら染谷まこも同じことを思っていたようだ、必然である。百人中九十九人は同じことを思うだろう。

これに対し京太郎、誤解を解こうとすぐさま否定するも、更に誤解を促進させるような部長の一言、それを真に受けるキャップ。

これはヤバいと思う京太郎、まずは味方を増やそうと染谷まこの説得に移る。

 

「まこさん!なんとかしてください!お願いします!」

「うーむ、わしにはどうにも出来ん!解散!」

「須賀君って美穂子のような子がタイプだから、安易に近づくと危険よ」

「え、えええ!?わ、私みたいなのが…?」

 

しかしこの有様、まこは協力する気が毛ほどもない。というか、ことの発端はあんただぞ。

久に至っては美穂子の警戒心を煽ろうとする始末、もはや敵である。仲間とは何だったのか。

これじゃあ折角美穂子さんと仲良くなれたのに水の泡ではないか!そんなことを考えている京太郎、たとえ付き合えなくてもかわいい女の子とは仲良くなりたいものである。

む…もしや、この先輩お二人方、美穂子と仲良くなられたら困るのでこんな風にしているのでは?やはり清澄腹黒い、伊達にインハイ優勝してない。

 

「え、えーと、須賀君」

 

しかし一つ誤算があった。

 

「あああの福路さん、あれはご」

「こ、これ」

 

慌てている京太郎に、何やら文字列の書いてあるメモを渡す福路さん。目を逸らしつつ、モジモジと恥ずかしそうにしている。

そしてチラリと目線を合わせると

 

「ら、ライン?っていうのの連絡先だから、これからはちゃんと連絡して会いましょう?」

 

こんなことを言っているではないか、さあ面白くなって参りました。

 

次に続く

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