須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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__こ、これはいったい…?

 

須賀京太郎、あまりの出来事に理解が追い付いてないもよう。

折角連絡先を差し出してくれているのにも関わらず、ポカンと紙を見つめるばかり。

この英数字の羅列は何なのだろうかと思っているのだろうか、その文字列自体には意味はないぞ京太郎。

 

「あ、あの、須賀君?もしかして嫌だったり…」

「いえいえいえ!全然全然大丈夫であります!ありがたく頂戴致しますです!」

 

なかなか連絡先を受け取ってくれない彼を見て不安に思ったのであろう、福路美穂子は目に涙をためて苦しそうにそう尋ねるも

その言葉に我を取り戻した京太郎、食い気味に、いやもう食ってるレベルで言葉を被せ、有難い連絡先を頂戴仕った。

あまりのテンパりように口調がぐちゃぐちゃというか、なんか敬語が重なっているが、そこはご愛嬌。

 

「ちょっと待ってくださいね…どうですか?メッセージ送れてますか?」

「え、えーと…これを触って…あ、来てるわ!」

 

さてさて連絡先を手に入れたんだ、早速友達登録してメッセージを送ってみる。ちなみに内容は普通だ、そこでアイラブユーとか送れるようなタマではない。

それに対し確認しようとスマホを動かす美穂子、左手でしっかりもって右手で丁寧にタップしていき、もたもたしつつも何とかラインを開くことに成功す。

前はパソコンに近づくだけで、らめぇ!パソコン死んじゃうのぉぉ!ってなっていたのに、今やもうスマホすら使えている美穂子。

どうやら裏で後輩たちと練習してきたのであろう。

 

「じゃあ私も…あれ?なんか動かなくなったわ」

「えっ」

 

なにか変な電波でも発しているのだろうかこの女、普通はそんなこと起きないぞ。

 

「あ、あのー、美穂子?」

「あ、久、ごめんなさいね急にこんなことしちゃって、迷惑だった?」

「いや、そうじゃなくてのぅ…」

 

さてさて、こちらは置いてけぼりをくらった竹井と染谷、こちらも突然の出来事に困惑している。

それもそのはず、第一級危険人物を京太郎から隔離しようと策を奏してたのに、何故か急接近されているのだ。

催眠術とかオカルトとか、そんなちゃちなものではねぇ、もっと恐ろしいナニカの片鱗を味わったのである。

このままだと須賀君が堕とされてしまう!と思い、とりあえず話を中断させようと話しかけるも何も思いつかない竹井久。

しかし染谷まこの咄嗟の判断力はそこのポンコツ部長とは違う。

 

「ずっと立ち話というのもなんじゃし、そろそろ卓に着かんか?」

 

「それと京太郎はあっちの対応頼むわ」

「あ、分かりました!すぐに行きます!」

 

ごくごく自然な流れで雀卓へと誘導させる彼女、店の売り上げにも貢献できて、京太郎と美穂子を離れさせられるので一石二鳥である。

それに対し福路美穂子、彼女は好意を素直に受け取る人間だ、感謝の言葉を軽く述べながら雀卓の方へと歩み始める。

この対応には思わずこっそりとまこにサムズアップする久、そんな彼女を見て

 

「お前が連れて来たんじゃ、責任もってどうにかせい」

「ええ任せなさい」

 

ボソッと皮肉ぎみに囁くまこ、しかし部長もそのつもりのようだ。確かにこのままだと勝手に付き合いかねない。

さてはて、そうこうしつつも卓に着くは風越の部長と清澄の部長。他の二人にはテキトーなオッサンを詰め込もうとする…が

 

「あ、あの、出来れば須賀君と一緒に打ちたいのだけれども…ダメかしら?」

 

スマホを持ちつつ恐る恐ると感じで聞いてくるのは風越の部長、上目づかいで胸に手を当て尋ねてくる。

これに対して染谷まこ、女性ながらも少しドキッとしてしまう。なるほど、京太郎がデレデレするのも分かると一人勝手に納得する。

さてはて、清澄の部長はどうするのだろうか。

 

「いやねぇ、須賀君は今日がバイト初日でね、研修とかも兼ねてるみたいなの」

「色々とやらなくちゃいけないことがあるだろうし、また今度にしましょ?」

「あ、そうなの…それじゃあ仕方ないわね」

 

とても落ち着いた対応である、一片の隙もない理論武装だ。

しかも無理にお願いできないよう、店にも京太郎にも迷惑がかかることをそれとなく伝えている。

こういう駆け引きの上手さはキラリと光るものがある、流石は部長だ。

さてさて、そんな風に伝えられたら性格上諦めざるを得ない福路美穂子、そもそもワガママを言うこと自体が非常に珍しいのだ。これにはサッと引き下がる。

しかし誰かを忘れていないか

 

「あー、そめ…」

「…」

 

染谷先輩に声をかけようとするも不満そうに見つめられる京太郎、慌てて彼女を呼び直す。

 

「ま、まこさん」

「おう、なんじゃ?」

 

明らかに上機嫌で返事をするまこさん、花が咲いたような笑顔と共に用件を聞いてくる。

これには少し前のことを思い出し少し血行が良くなるが、それは一旦置いといて

 

「福路さんと同卓したいんですが…ダメですかね?」

 

無理を承知で同卓をお願いする京太郎、せっかくバイトさせてもらっているのにこんな頼みをすることが後ろめたいようだ。

どうやらさっきの会話を聞いてたらしい、折角の福路さんからのお誘いなのだ、どうしても一緒に打ちたいのだろう。

まあ、こんなお願い受け入れられる訳もなく、しかも危険人物と同卓だなんて以ての外、さあさあ染谷まこはこの申し出を

 

「ふむ…まだヘルプには入ったこともなかったし、丁度いいタイミングじゃな」

「え、ということは」

 

「そうじゃな、わしも一緒に同卓するけぇ、マナーとかをチェックさせて貰おうかのぅ」

「分かりました!すぐに準備します!」

 

どういうことなのか染谷まこ、なんとなんと承諾してしまったではないか。

彼もまさか了承を得るとは思わなかったらしい、驚き半分嬉しさ半分といったハイテンションですぐさま準備にかかり始める。

別にヘルプの研修は今でなくともいいはずだ、それとも…何か策でもあるのだろうか?

その染谷、いそいそと準備にかかる背中を、何やら可愛らしい我が子を見るかの如くの眼差しで見守っている。

そんな彼女にコッソリ近づく影が一つ

 

「ちょっと、どういうことよ?」

 

その口調はどこか刺々しく、まこの鼓膜をチクチクとつつく。

 

「すまんすまん、あんな風にお願いされると断れんくてのぅ」

 

そんな彼女に対して飄々と対応するまこであったが

 

「ふーん、自分だけポイント稼ぎですか『まこさん』」

「ぐっ!?」

 

皮肉をたっぷり込めて、更には痛いところ突く重い一撃、これには染谷もたまらずよろける。

 

「そりゃ余裕よねぇ、私が来る前にたっぷりと須賀君と触れ合っていたのでしょ?」

「名前呼びなんてさせてる程だしね、もしかして私が来た時はかなりいい感じだったのかな?」

「まあ、それで私を恨むのはお門違いじゃない?私だって妨害するために来た訳じゃないんだし、それなのにあれはねぇ」

「それにそれに、いつの間にか須賀君を自分ちのバイトに誘ってるなんてね…完全に出し抜く気満々じゃないの」

「確かに『まこさん』は須賀君と仲が良いみたいだから美穂子なんて怖くないよねぇ」

「ひ、久、すまん悪かった」

「でも、だからと言って美穂子と須賀君を近寄らせるのは傲慢じゃないかしら?」

 

竹井久、かなり察しがいいようだ。そしてフラストレーションが溜まっていたのであろう、図星を突いて突いて攻勢を貫いていく。

普段の様子からはあまり分からないが、彼女は溜め込むタイプなのだ、爆弾ゲームがここで炸裂。

言いたいことは吐き放題、後輩からの扱いが散々だったのも相まって容赦なく言葉を投げかける。

直接的な暴言は一切使わず、皮肉をふんだんに使った言葉責めのフルコース。久々に久に恐怖を感じる染谷まこ、ダジャレではない。

とはいえ、その最後の言葉に対しては口を開いて

 

「いや、京太郎は麻雀を純粋に教わりたいから同卓したいんじゃろぅ」

「それなら、あいつのためにも協力してやろうかと思ってな…邪な感情で言ってるなら話は別じゃったが」

 

こう反論する。どうやら彼女は彼の思いをそう受け取ったのであろう。ホントかどうかは彼にしか分からない。

 

「そう…分かったわ、それなら私も協力するわ」

「それと…ごめんね、少し言い過ぎちゃったわ」

「いや、わしも悪かった、流石に扱いが雑なことが多かった」

 

どうやらその言い分には納得したようだ、それもそのはず、前に咲に言われたことである。

京太郎が麻雀を上手くなろうとしているのを私たちの感情で邪魔しない、たとえ誰であっても破ってはいけない不文律だ。

それを思い出したのか、冷静になり、先ほどの発言も反省して、しっかりと謝罪する竹井久。

それに対し染谷まこも謝罪する、気心知れた仲とは言えども礼儀を欠きすぎたと反省する。

たとえ友達であろうと謝り合えるというのは大事である、これが出来ないと徐々に亀裂が入っていくのだ。

さて、そうこうしてる間に卓の準備は出来たらしい。京太郎がお二人に声を掛けると二人は小走りで卓に向かった。

 

次に続く

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