須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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21 雨の日にて

さてさて、日々は緩やかに、されでもあっという間に過ぎていく。

須賀京太郎、彼を取り巻く環境はそれに伴い緩やかに変化していくが、果たして自覚しているのだろうか。

とはいえ、彼は何も変わっていないわけではない、周りが変われば自分も変わる、自明である。

ささ、今日は部活もお休みで、他の部員も用事があるようだ。外に出ようにも生憎の雨、気が滅入ってしょうがない。

 

__今日は家でのんびりするか

 

たまにはゴロゴロしてみるのも良い、活発的な彼であるが休養というのも大切だ。

最近はやけに色んな人との距離が縮まり、嬉しいことではあるが慣れないことに精神は擦り減っていく。

ま、アプローチをかけられる度に心臓がドックンドックン脈を打つのだ、そりゃ疲れる。

両親はこんな日にも共働きであり、家に残るは一人だけ、久々に自室で漫画でも読もうかと思っていると

 

 ピンポーン

 

どうやら誰か来たようだ、とはいえ誰とも約束はしていない。

 

__宅急便かな?

 

そう思い、印鑑を持ち玄関までのそりと行ってドアを開くと

 

「暇だから来ちゃった」

 

なんとそこには魔王系幼なじみの宮永咲が待ち構えていたではないか。

彼女の体に不釣り合いな大きめの傘を持ち、よく着ているパーカーを主体にしたラフな格好で佇んでいる。

しかし、下はいつものようなスカートではなく、ショートパンツと言うのだろうか、そんな感じのデニム生地をやつを履いている。

ショートヘアーも相まってか、どこかボーイッシュな印象を受けるファッションだ。

 

「なんだよ、連絡の一本でも入れてくれたら良かったのに」

「まあ、京ちゃんだし、いいかなーって」

 

いつもの彼女とは少し違う雰囲気にドキッとしつつも、冗談気味に文句の一つを言う京太郎。

それに対し、テキトーな返答をしてくる幼なじみ、こんな姿は彼ぐらいしか見れないであろう。

 

「前に似たようなことして、勝手に迷子になったりしてただろ」

「そ、それは昔の話じゃん!」

 

玄関前で他愛ない話をしつつ、スッと一緒に家に上がる。

彼女はスタスタと洗面所まで歩き、手洗いうがいをして、リビングのソファーに勝手に寝転がる。

そんな彼女の後ろをついていく京太郎、首筋の汗が目につくも、慌てて視線をそらす。

さて、寝転がった彼女を見ては、相変わらずふてぶてしい奴だと思いつつ、お茶の一つでも用意しようとキッチンへ。

 

「あ、京ちゃん、これおみやげね」

「ん」

 

そんな彼を引き留めて、スーパーの袋を手渡す彼女。中身を確認するとお菓子が数袋入っている。

そのお菓子のいくつかをキッチンにある箱にしまい、一つを皿に盛りだして、冷蔵庫から麦茶を出してリビングへ。

 

「雨だけど今日も暑いね」

「湿気が増して、むしろいつもよりも暑く感じるなァ」

 

京太郎がテーブルに菓子と麦茶を並べると、それにつられるように彼女は椅子に移動し始める。

ポリポリと菓子を食べつつ、ダラダラと駄弁る二人、生産性なんぞ少しもない。

特に何かをするわけではない、ただただ時間はゆっくり過ぎていく。

菓子が無くなり、ソファーに座り込む京太郎、その隣にポスンと座り込む宮永咲、やけに距離は近いような。

するとなんと、肩に頭を預けはじめたではないか、もはやゼロ距離である。

 

「暑苦しい」

「私も」

 

ただまあ、雨とはいえ残暑厳しいこの季節、こんなに密着したら暑いのは自明である。

そういう訳で文句を一言述べるものの、謎の返答が返ってくるばかり。理不尽である。

離れるのも面倒くさいし、別にそんなに嫌なわけでもないので無抵抗でいることに。

ただ、彼は知っている。彼女がこんなことをするということは

 

「なんかあったか?」

「…」

 

十中八九、ストレスが溜まっているということだ。

彼女は他人に甘えるのがヘタクソであるのを京太郎は知っている。

嫌なことがあっても自分の中にため込んで、ただ無心に本を読んで忘れようと努めるばかり。

昔からそうだった。だからこそ、どうしても他人に構ってほしい時はこんな風にしか出来ないのだ。

難儀な性格だと思いつつも、こんな姿を見れるのは自分しかいないというどうしようもない優越感を感じてしまう。

それに少しの嫌悪感を抱くものの、やはり彼女をよく理解しているのは自分であり、そして

 

「…京ちゃん、最近どう?」

「…」

 

自分のことをよく理解している彼女も恐らく似た感情を持っているのだろうと予想つくから、お互い様だと思えるのだ。

お互い顔を合わせず話し合う、その会話は沈黙が大半であるが、決して悪いものではない。

 

「そうだな…最近は麻雀も上手くなってるし、皆も仲良くしてくれてるし、とても楽しい」

「…」

 

京太郎は先に話し始める、彼女が質問に質問を重ねるということは先に答えなければ話は進まない、彼は経験則からそう判断した。

彼の紡ぐ言葉は全て本音である、が、足りない。彼女はその先があることを知っている。だから沈黙を続ける。

京太郎、少し観念したように一息ついて、その続きを話し始める。

 

「でも」

 

「たまに、どうすればいいのか分からなくなるんだ」

 

彼にだって悩みはあるのだ。常に明るく、お人好しで、社交的で、皆でワイワイするのが好きなそんな人物。

他人のためにせっせと働くことを苦にも思わず、人の悩み事は人一倍心配する。

だからこそ、他人に甘えたりすることは人一倍苦手である、彼女とは真反対にも思えるような彼であるが、彼も彼で難儀な性格である。

 

「それは麻雀関連で?それとも…」

「…麻雀だけではない」

 

彼女はそんな独白に言葉を投げ込む、それに対しやや時間をおいてから短く返答する。

 

「…うん、京ちゃんはそういう人だもんね」

「…うっせ」

 

その返答で十分だったのだろう、彼女は分かった風な口ぶりでそう返す。

京太郎は悪態ついて返答する。少しだけ恥ずかしいのであろう。

 

「でも」

 

「京ちゃんは悩まなくていいと思うよ」

「周りが勝手にやってることだから、それに対して変に責任を感じなくていいと思うの」

 

彼女の忠告はとても甘美で、それでいて、どこか狂気を孕んだような印象を受ける。

 

「だって、そうじゃない?」

「京ちゃんが頼んでやって貰ってる訳でもないし、こっちも何かしなきゃって義務感を持たなくていいんだよ?」

 

この前福路さんに言われたことと被り、ズッと腹に沈んでいく。

 

「いや…それは流石に」

「ねぇ、京ちゃん」

 

「お部屋で話そ?」

 

雨戸を打つ音がやけに響いていた。

 

次に続く




ようやく咲ちゃんのターン!やっぱメインヒロインはわた宮永咲さんだよね!



誤削除について、本当に申し訳ございません。
評価や感想、そして多くのお気に入り登録をふいにしてしまったことは謝りきれません。
こんなポンコツな作者ですが、引き続き読んで頂けるとありがたいです。
また、後書きにつきましてはデータが残ってなかったので完全に復元することは出来ません、ご了承ください。
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