須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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24 攻城戦(後編)

その京太郎、勇敢にも目の前の魔王をしっかりと見つめ直し、そしてはっきりと

 

「そのな咲」

「でも」

 

言葉を紡ごうとするも魔王に言葉を被せられる、ガーンだな出ばなをくじかれた。

これには心の中でズッコケる京太郎、いやはやビシッと決めたかったのだろう、だが魔王は傍若無人なのだ。そんなの関係ない。

さてさて、この魔王は一体何を紡ぐのだろうか

 

「京ちゃんは自分で選びたいんだよね?」

 

少し黙るか、真面目な話のようだ。

 

「京ちゃんが困ってるから、いっそのこと私が…って思ったけど、京ちゃんはそんなのは嫌なんでしょ?」

「せっかく選ぶなら、しっかりと考えて、自分の気持ちを確かめてから…って感じなんでしょ?」

 

確かめるようにして言葉を投げかける宮永咲、その声色はとても優しい。

どうやら幼なじみには彼の考えてることなんて、マルっとズバッとお見通しのようだ。

 

「そう…なんだよ、俺って最低かな…優柔不断だし」

 

どうやらそんな状態であることを誰よりも責めているのは彼自身のようだ。

色んな人から好意を貰っているのに、それに対し真摯に対応できないのが申し訳ないらしい。

しかも彼は純情だ、純情も純情、NTR物なんて読めたもんじゃない、浮気なんて許せない、そのレベルである。

なんともまあ可愛らしいというか、いかにもな好青年って感じである。それゆえ、この状況は許せないが、誰かを選べるわけでもない。

プロローグでも申したが、彼が悪いのではない、周りの少女たちが魅力的すぎるのだから仕方ないのだ、許してやってくれ。

 

「うん、サイテーだね」

「ぐっ!?」

 

この魔王、そんな傷心している少年の心を容赦なくえぐる。ここまで鋭い一言があるだろうか。

これには京太郎、たまらず短い悲鳴をあげ心に致命傷を負う。彼のメンタルはボロボロだ。

 

「色んな人に愛想ふりまいちゃってさ、それなのにこうなったらこれだもん」

「うぐ…」

「ほんと、選べないから待ってくださいだなんて、待ってる方がどんな気持ちか分かる?愛想つかされてもしらないよ?」

「ぐうの音も出ません…」

 

だがだが、彼女の言うことはごもっともだ、ぶっちゃけ彼の責任もある。

このまま色んな女を引っかけて、青春時代を浪費させ、やっぱいいやバイバイとかするなんて、スケコマシどころでは済まない。

まあ、彼は自分がモテるだなんてつゆにも思わず、ただ単に皆と仲良くなるために接してきただけなのだが、それはそれ、これはこれ。

彼もどうやら反省したようだ。だが人の性格というのはそうそう変わらない、彼はこれからも優しくあり続けるだろう。

そんなことは彼女も分かっている、ここからが本題だ。

 

「でもね、もし京ちゃんが皆から見放されちゃってもね、私だけは待ってるからね」

「だから、返事はいつになってもいいよ、返事が来るまでは私は…ずっと待つから」

 

このヒロインムーブである、これには京太郎もドキッとするというか、軽く心臓が破裂する。

なんともまあ健気な少女だこと。想い人が他の女にも現を抜かしているというのに待ち続けるだなんて、涙が出てしまいそうだ。

彼女は彼を理解している、だからこそ無理にせかしたりしたくないのだ、彼の意志で選んでほしいのだ。

いや、本心ではせかしたいし、さっきのように自分を選ばせたいのだ。だが、そんな我儘を我慢するほど彼を愛しているのだ。

 

…ん?愛が重い?まあ否定はしない。なんでこんなことになったかは京太郎に聞いてくれ。彼も分からないと思う。

 

「ごめんな」

「むー、違うでしょ?」

「ああ、ありがとな」

「ふふふ、こちらこそ」

 

こんなにも幼なじみが想っていてくれてるだなんて思いもよらず、京太郎の口から謝罪の言葉が出るものの、頬を膨らましてそれを咎める幼なじみ。

そんな彼女を姿を見て感謝の言葉を言い直す。そんな彼の言葉に微笑みながら言葉を返す、こちらこそとは何のことだろうか、彼女にしか分からない。

お互いに微笑みながら時間が経つ、時計の針はチクタクと、彼らの会話はポツポツと、静かな空間ではあったが、決して重苦しくはなかった。

彼の表情はとても明るく穏やかで朗らかであった、彼女の表情もまた然り、心地よさが辺りを包み込む。

 

「ねね、京ちゃん、隣に座ってもいい?」

「ああ、いいぜ」

 

会話の合間にわざわざ確認する幼なじみ、もうわだかまりは消えたのだ、断る理由は何もなくあっさりと了承する京太郎。

その言葉にぱぁっと笑顔を咲かせ、ウキウキしながら隣にポスンと体重をかける。さっきのように寄りかかりはしない。

流石に自重しているのであろう、ただまあ折角想いを告げたのだから多少は積極的になっても文句は言われないだろうに、いじらしいというかなんというか。

 

「ねえ、さっきはいきなりごめんね」

「いいっていいって、咲も思い詰めてたんだろ?仕方ないぜ」

 

あのことを謝罪する宮永咲、お互い様だと言わんばかりあっさり許す京太郎。

よくよく考えれば、あの雷鳴がなければあのままイチャコラ…R-18のタグを追加しなければならないとこだった、雷様様だ。

 

__でも…あのままいってたら…

 

どうやら同じことを考えている京太郎、先ほどのことを思い出し悶々とし始める。

下腹部に感じた重み、柔らかさ、吐息すら触れ合う至近距離、そしてその先は…

男子高校生だから仕方ないが、ちょっと妄想しすぎじゃないか?どうした京太郎、お前の好みの体型とは離れてるはずだろ?

さてさて、何やら血行がよくなり始めてる彼をよそに、彼女は

 

「京ちゃん、こっち向いて」

「え、ああ、なんだ?」

 

俯いている彼の顔をこっちに向かせて

 

「んっ」

 

その頬にキスをした。

 

__…は?

 

京太郎、思考停止、心臓破裂、享年15歳、惜しい人を亡くした。即死であっただろう。

と、まあ、京太郎は生ける屍と化してしまった、暫くはまともに声をも発せないだろう。

別に頬にキスされたのは初めてではないが、この流れからのそれは禁止行為というかなんというか、即死魔法というか、極悪コンボというか…

とりあえず、今の京太郎にとっては一撃必殺であることには変わりない。

さてさて、こんな不意打ちをした魔王

 

「じゃ、じゃあ、今日はもう帰るね!」

 

顔をこれまでかと言わんばかりに真っ赤にして、トマトも真っ青になるぐらい真っ赤にして、慌てて身支度をし始めるではないか。

慌てすぎて逆に散らかし始めるが、そんなことはお構いなし、ドタバタと階段を降りて転びそうになり、それを反射的に京太郎が手助けし、またまた頭が沸騰して、終ぞやフードを被り顔を隠して玄関から逃げるように去ってしまった。

ボーっとしつつそれを見送る京太郎、10分ぐらいしてハッとすると、頭を掻いて玄関の戸を閉ようとする、が

 

__あ、咲のやつ、傘忘れてやがる

 

そこには見慣れない大きな傘が刺してある、おっちょこちょいだなぁと思いつつ、彼女の去った道を見る。

勿論の如く、彼女の姿はそこにはなかったが、大きな虹が橋を架けていた。地平線の彼方まで架かっている。

そんな極彩色に思わず感嘆の声をあげる。しかし燦々と輝く太陽にやられたのか、いそいそと家に入り戸を閉める。

どうやらまだまだ暑くなりそうだ、彼の火照りは当分冷めそうにない、これからもそうであろう。

 

次に続く

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