須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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26 二歩

この少女、原村和、少々どころかとても奥手すぎて遅れている。

いや、普通のラブコメ漫画とかのヒロインであれば普通の部類かもしれないが、残念ながらここはそんな生易しい所ではない。

恥を捨て積極的に接近する同級生、自分なりにゆっくりだが確かにアピールしていく先輩、もはや想いを告げた魔王系幼なじみ、普通のギャルゲーであれば既に三回ぐらいゴールインしててもおかしくない。

しかし、まだゴールインはしていない。

 

(さて、どうしましょうか、せっかく二人きりですし…)

 

この少女も流石に攻め手を休めないようだ、短い時間ではあるが二人きりになれるのである。

麻雀の解説もひと段落したところで、何かをしようと考え始める。『何か』が何かは決めてない。

 

「お茶でも淹れてきますね」

「え、いいっていいって、俺が淹れるよ」

 

とりあえず、お茶でも飲んでのんびりしようと行動に移す原村和。須賀京太郎はそんな彼女を咎めて代わりに茶を淹れようとするも

 

「いえ、須賀君にはインハイの時期に色々とお世話になりましたので、今度は私にお返しをさせてください」

「…分かった、じゃあ頼むよ」

 

彼女はニッコリと笑顔を顔に浮かべつつ、パパっとお茶の準備をする。

しかも口から出てくるのはこれまでの雑用に対する感謝の言葉、それのお返しをさせてくださいと頼まれたら断れないものである。

京太郎は観念したかのように一息ついて、そんな言葉とともにソファーに腰掛ける。

 

「何にしますか?緑茶ですか?それとも紅茶ですか?コーヒーもありますよ?」

「うーん、紅茶でお願い」

「分かりました、ミルクと砂糖はどうしますか?」

「ストレートでいいかな」

「じゃあ、甘いものでも一緒に出しましょうか」

 

新しく追加された電気ケトルがぐつぐつと音を立て始めると共に、棚を漁りながらそんなことを聞いてくる。

短く返して、返されて、返して、返されて、心地よいテンポですんなりと行われる会話はどこか小気味よい。

ストレートティーだけだと胃が少し痛むかもと思い、食べ合わせのチョコを用意する。

金色の包装紙に包まれたチョコをカラカラと器に盛り、お湯を入れておいたカップからパックを取り出し、お盆に乗せて彼のもとへ。

将来の夢はお嫁さんとはよく言ったものだ、普通の雑用ですら様になる。

これには彼も思わず見惚れ、

 

__やっぱ和いいよなぁ…

 

こんなことを思っている。お前には咲さんがいるだろ!と言ってやりたいが、彼はまだまだ15年しか生きていない。移り気なのは許せ。

仮に彼女と結婚したらこんなのを日常的に見れるのだ。羨ましい。

その後ろ姿はスラッとしており、背筋はピンと伸びていて、女性的な体つきをしている。

しかもだ、後ろ姿にもかかわらずチラッと見えるその果実、今にもはち切れんばかりのその果実、これには京太郎も思わず釘付け。

 

__すげぇ…

 

もはや語彙力を失うほどの感心-関心である。彼の性癖を鑑みたら仕方なし、男の子だしね。

そんなことは何も知らない原村和。余談だが人間に視覚以外に視線を感じる器官というのはないので、見えないところで不埒な視線は感じれないのである。

彼女はお盆をテーブルの上に乗せ、かがむときにそのたわわが少し揺れ、彼女は揺れる髪を整えて、彼はゴクリとつばを飲む。

 

(なんだかこうしていると夫婦みたいですね…)

 

そんな乙女思考によって勝手に頬を赤らめる。なんともまあ可愛らしいことよ。

彼と一緒にこうやって過ごすだけでも幸せな気分になれる、そんな心情を少しでも表に出せれば簡単に陥落できるとおもうのだが…

さ、ふと彼の方に目をやると、何やら視線はやや下に、柔和な顔は一層ふにゃふにゃになっている。

 

(むむ)

 

そんな彼の様子を見て不満げに顔をしかめると、ズイっと近寄り

 

「須賀君、どこを見ているのですか?」

「あ、悪りぃ!」

 

いつものような優しい声ではなく、刺々しい声で彼を詰問する。別に怒っている訳でもなく、そういう目で見られることが嫌なわけでもない。

まあ彼はそんなことは知らないので、咄嗟に謝りバツが悪そうにソファーにもたれかかる。必然的に彼女からは離れることになる。

 

(あ…やはり須賀君は私の胸にしか興味がないのでしょうか…)

 

杞憂も過ぎると嫌味というか、そんなパーフェクトな容姿と育ちの良さを持っていて何を言う。

しかし彼女は彼が離れてしまったことと、胸ばかり見て顔を合わしてくれないことが心に引っかかり、憂鬱な気分になってしまう。

 

__またやってしまった…

 

彼も彼で胸にしか興味がないわけではない、むしろ彼女の仕草や凛とした姿、優しさ、麻雀を打ってる時のカッコ良さ、そういうところに惹かれているのだ。

ただ悲しい哉、男のサガというのは簡単に切り離せるものではなく、その大きなメロンに目が行ってしまうのはなんというか、決して欲情しているだけではないのである。UFOを目で追いかけてしまうようなものだ。

さてさて、お互いに落ち込んでしまい、静寂のまま紅茶をすする二人、とても心地よいとは言えない雰囲気。

これではいけないと思い、何かテキトーに言葉を発する原村和。

 

「そういえば、他の皆さんはまだでしょうか?」

「ああ、確かに遅いな」

 

ふと思ったが、他の部員が全く来ないのはおかしい。もう放課後だし、そろそろ一人や二人は来ている時間だ。

彼はスマホを取り出し、何かしらの連絡が確認すると

 

『前にも言ってたけど、今日は私は生徒会の仕事があるから行けないわ』

『わしも前も言ってたが、実家の手伝いをせんといけないから行けんわ』

『私は風邪を引いちゃったから休みます、ごめんなさい』

『私も補習くらったから行けそうにない…すまぬ…』

 

いつの間にか部活が無くなっているではないか、上二人はそういえば前に言っていたが、下二人は唐突だ。

特に優希、だから夏休みの宿題はちゃんとやっておけとあれほど…と思う二人。咲さんは仕方ない、暑さにやられたのだろう。

 

「ああ、じゃあ二人だけだし、俺らも帰るか?」

 

彼はそう尋ねる、確かに二人だけではやれることも少ない。それに、こんな部屋に男女で二人きりだなんて和も安心できないだろうと気を遣ったってのもある。

この提案、受ければ一緒に帰宅することが出来そうだ。いいチャンスではないか。

 

「いえ」

 

ところで、この原村和のご両親、片方は堅物で片方はおてんばであり、弁護士と検事である。

同じ大学だったのか何なのかはいざ知らないが、一つだけ言えそうなことは

 

「須賀君、今日は二人きりで」

 

どっちかがあれを落としたということだ。そして彼女は

 

「一緒にお勉強しませんか?」

 

その血を引いている。

さあさあ、原村和の出陣である。恋愛クソ雑魚だなんて言わせない。

 

次に続く

 




かなりゆっくりと進んでるけど許して!

いつもお気に入り登録等ありがとうございます。
感想とかもたくさん書いていただきありがとうございます。とても喜んでます!
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