須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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2 昼の学食にて

キーンコーンカーンコーン

 

長く退屈な授業も終わりを告げ、昼休みになった。

そんな解放感からか大きなノビをするのはこの男、須賀京太郎である。

身長が高いのもあって大迫力である。後ろの席の人は思わずたじろぐ。そんなことはいざ知らず、彼はスタスタと教室を抜け出し向かうは学食、どうやら昼飯を食べるらしい。その巨体で軽々と廊下を走りぬき、人混みもサッとごぼう抜き。

 

そんなこんなでやってきました愛しの学食、休み時間が始まったばかりというのにこの混雑。

須賀京太郎は横割りすることなくスッと列に並び、何を食べようか悩んでいる。

 

__今日はスタミナ丼にしようかな

 

そんなことを考えて腹をすかせる京太郎。そして順番が来ると、いつものようにパッと注文し、差し出された料理をもらい、空いてる席に適当に座る。彼は学食に一人で来たが、だからといって友達がいない訳ではない、むしろその逆である。彼は類い稀な人の良さとコミュニケーション能力の高さによって、同じ学年の大半とは知り合いである。彼が席に座ると、そこを中心にコミュニティができる、そんな存在なのだ。

 

さてさて本人はそんなこともいざ知らず、麻雀の教本を読みながらスタミナ丼をかっこむ。そんな彼に興味を持ったとあるクラスメイトの女子生徒が声をかけてみようかと近寄るが刹那、とある存在が視界に入りススっと別方向に進路変更。彼の隣に居た物静かな男子生徒もその存在を目視すると、スッと席を一個詰め、彼の隣を一つ空ける。

 

「もう、京ちゃんったら…お行儀悪いよ?」

 

そんな声にパッと顔を上げる京太郎、そこには見慣れた最終鬼畜嶺上マシーンSAKIがいるではないか。

 

「む、なんか失礼なこと考えてるでしょう」

 

我ながら酷い渾名だと心中で少し反省する須賀京太郎、そんな彼を横目にスッと隣に座る宮永咲。

 

「で、何読んでるの?」

 

ずずいと無遠慮に本をのぞき込んでくる文学少女、彼女がこんなことをするのは隣の金髪少年しかいない。

 

「ああ、麻雀の教本を借りて読んでるんだ」

 

それに対して京太郎、本に集中しつつもしっかりと返事をしていく。

 

「へー、京ちゃんがそういうの読んでるんだ」

 

どうやら麻雀の教本を熱心に読んでいることに驚いた様子、たしかに彼は麻雀に対してそこまで真摯ではなかったので、そう言われるのは必然かもしれない。

 

「ま、咲たちが優勝したしな、俺も頑張らなきゃと思って」

 

そう返す須賀京太郎、その内容は嘘ではないが大きな理由は他にある。そう、とても不純でとても悲しい理由が。

 

「えっ!あ、うん…頑張ろうね!」

 

そんなことは知らない文学少女、その京太郎の言葉を素直に受け止め少し恥ずかしがりながらも微笑みと共に励ましの言葉を贈る。頬に赤みがさしている。そんな表情豊かな彼女を見て癒されるのは須賀京太郎。実は周りもこんなやり取りを微笑ましく見守っているのだが、この二人には知ったこっちゃない。

 

「お、今日のレディースランチも美味そうだな!」

 

突然、京太郎はそう声に出し、となりの幼なじみの皿に箸を向ける。その幼なじみは特に抵抗せず、そのエビフライを差し出して、呆れたような態度を取っている。

 

そんないつもの光景。

そんな二人の後ろにスッと影がさす。

 

「よっ!相変わらずの嫁さんっぷりだな!」

 

高久田である。彼は学年随一の長身でありやや強面だが、その見た目とは裏腹に温厚な奴である。彼はこのカップルを学食で見るや否や、いつもこんなことを言っている。そしてこれを宮永咲が否定するまでがいつものパターン、のはずだった。

 

「お、お嫁さんだなんて、えへへ…」

 

照れくさそうにして呟く咲ちゃん。その顔に明らかな喜びが見え、寝ぐせの部分も嬉しそうにピコピコ動く。まるで恋する乙女のよう。

 

ここで須賀京太郎の心中

 

__アイエエエ!お嫁さん!?お嫁さんナンデ!?

__いつもはもっとツンケンしながら否定してるでしょおお!!

 

ごらんの有様である。いつもと違う幼なじみの反応にノックアウト!

かれはこんらんしている!

この須賀京太郎、宮永咲とは長い付き合いではあるが、素直な好意というのを貰ったことが少ないのだ。また、なんやかんやバカにしたりしてるけど、彼女が美少女だということは認めている。だからこそ、突然こういうことをされると混乱するのである。

 

__いつもは強気でツンケンした咲が…

__おおおおおれに対してここここんな表情ででで…

 

突然のことに思考回路がバグる京太郎!ショート寸前である。

この須賀京太郎、こういう時の対処法は何も知らない。そもそも対処法も何も、素直に好意を受け取るしかないのだが…

 

しかし、迷探偵須賀京太郎はここであることに気がつく。

 

__高久田のやつがいつも通りのニヤつき顔なのはどういうことだ?

 

そう、この状況を作り出した本人、高久田は何も動じていないのである。

 

__これは不自然、あいつにとってもこの反応は予想外のはず。

__されど奴はニヤついている、それどころか何かを期待しているような…

 

__分かったぞ!

 

ここで名探偵須賀京太郎は全ての謎を解いたようだ。そんなものはハナから無いのだが。

 

__咲に違う反応をさせて俺をからかおうという魂胆だな!

 

彼はこの短時間でそういう結論に達したようだ、それが正しいかは知らぬ。さてさて、これに対してどうしたものかと須賀京太郎は考える。

 

__普通に指摘するのは二流のやることだ、やられっぱなしで終わってしまう。

 

思考すること僅か一秒

 

__ここで取るべき行動は…!

 

「おやおや、愛しのお姫様、我が妻になりたいのですか?」

 

なんと漢、須賀京太郎!ここで愛の告白!というわけではない。

悪ふざけに対してノることによって、カウンターを狙っているのだ!

さてさて、そのカウンターの威力は如何ほどか…

 

「え、えええ!!わわわあわわわあわわ!!!!えええ…え…ほんとに…」

 

効果はバツグンだ!矢吹丈並みのクロスカウンターが炸裂!顔を真っ赤にして、そのショコラブラウンの髪を乱れに乱れさせる宮永大魔王。その口からは謎の呪文が飛び出し、ついぞや壊れたラジカセのようにブツブツ呟くのみとなった。

 

そんな様子を見て須賀京太郎、何を思うか。

 

__ふん!咲が俺をからかうなんて百億光年早いわ!

 

ああなんということだ、この男、幼なじみには大層厳しいらしい。あの魔王が普段から素直であれば結果は違ったであろう。とはいえ鈍感にも保土ヶ谷区。

 

さて京太郎は、百億光年は距離であることもつゆ知らず、彼女の心中がどうなっているかもゆめゆめ知らず、大変満足した様子で学食を後にした。残されたのは壊れたラジカセと驚きを隠せない木偶の坊。そしてこの喜劇のオーディエンス達。この木偶の坊、なんとかして壊れたラジカセを修理して、宮永魔王へと復活させた。その魔王、すぐさま幼なじみの姿を探すも形も見えず、あたふたするも彼は見えず。そしてようやくからかわれてたことを察すると、大きなため息をついて教室にトボトボ歩き始めた。それを見ていたオーディエンス、思い思いに心中を吐露しつつ教室への道を紡ぐ。

 

次回に続く

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