須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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35 嵐の前の

「え、合宿ですか!?」

 

そう声を上げているのは、清澄高校麻雀部一年生の須賀京太郎、合宿があることを告げられて驚いているようだ。

それもそのはず、猶予は数日あるとはいえ、こういう一大イベントがあるときはもう少し早く教えてくれていたものだ。

 

「ええ、突然のことになってごめんなさいね」

「やけにシルバーウィークの予定を聞いてくると思ったら、そういうことだったんですね」

 

竹井久はわざわざ突然のお知らせになった理由は言わずに、ただ謝るだけに留める。余計な気遣いをしてほしくないのだ。

京太郎は彼女からの謎のラインの訳が知れてホッと一息、確かに何回も『ちゃんと空けてるよね?』というラインが来るのは怖いものである。

…いや、怖いってレベルじゃないかもしれない。竹井久よ、不安なのは分かるが程々にな。

 

「で!今回の合宿のコンセプトはこれよ!」

「えーと、なになに…『須賀京太郎強化計画』?」

 

彼女はカバンから書類を取り出し、彼にそれを手渡す。

彼はそれを見つめると、その表紙を訝しげににらみつける。どうやら胡散臭く思われているようだ。

 

「なによー、その目は」

「いやぁ、だって…」

 

そんな彼の様子に不満そうに文句を言う部長であったが、内心は気に入ってくれなかったんじゃないかとか、迷惑だったかしらとか、もうビクビクである。

 

(あ…お気に召さなかったみたいね、そうよね、急に強化合宿とか言われても…)

 

内心を見せるとこんな感じ、しょぼくれているのが分かる。

彼女は彼に雑用を押しつけてしまったことを悔いており、それゆえ彼からの評価は低いと思っているので、彼の言動には一喜一憂しやすい。

なんとまあ、いじらしいというか何というか…ギャップ萌えが半端ない、その内面を見せたらいいのに。

因みに擁護するわけではないが、雑用は彼が自ら進んでやっていたし、彼からの部長の評価はかなり高い。雑用を引き受けていたのも、彼女が最後の夏を全力で楽しんでほしいという思いからである。

そんな後輩が、自分のための強化合宿と言われて面倒に思うだなんて、あるわけない。

 

「なんかこれ、恥ずかしいっていうか…なんていうか…」

 

ただ単にそういうことである。確かに大々的に『須賀京太郎強化計画』なんて書かれている企画書を渡されるなんて、普通に恥ずかしい。

顔から火が出るほどではないが、どうしても赤みがかってしまう。それは羞恥心だけではなく、喜びの表れでもあるのだが、そんかことは彼すら知らない。

そんな彼の言葉に一安心し、そしてニヤニヤし始める。他人がこうやって困っている様を見るのは楽しいものだ。

 

「あら、いいじゃないの、ちなみに他の部員にはもう見せたわ」

「うえぇ!?マジですか!?」

 

どうやら他の部員に見せる前になんとか訂正させようと画策していたようだが、時すでに遅し。

うわー、これもう見られてるのかー…っという感じで少しだけ欝な気分になる京太郎。ただまあ、恥ずかしいといえども嬉しいものは嬉しいわけであり、心の奥から沸々とやる気が湧いてくる。

そんな彼の様子を満足そうに見つめる彼女、合宿自体には喜んでいるそうでなによりだ。

 

「じゃ、そういうことだからよろしくね?」

「分かりました!」

 

ささ、合宿の旨も説明したわけだし、あとは当日までに準備して、合宿を待つのみとなった、楽しめるといいものだが…

 

「いっちばーん…じゃなかったじぇ!」

「須賀君と部長は先に居たんですね」

「ええ、合宿の概要は伝えておいたわ」

「おっ、京太郎!ビシビシと鍛えてやるから覚悟しておけよー!」

「くくく、この合宿でお前を超してやるぜ!」

 

部室も賑やかになってきて、今日も今日とて麻雀をやろうではないか。

彼の強化合宿も確定したわけだし、それに向けて腕を鈍らせないよう磨き続けないとならない。

さっさと卓について…

 

「じゃあ須賀君、早速練習しましょ?」

「ちょっ!?なななんで腕を!?」

「部長、須賀君が困っています」

「そういうのどちゃんも胸元開けすぎだじぇ!」

「へ?マジで!?」

「え…?ああ!?こ、これは暑かったから開けていただけです!変な意味はありません!」

「迷子になってた咲を拾ってきたけぇ…なんじゃこれは?」

「むむ!優希ちゃん、京ちゃんにくっついてないで早く自分の席につこうよ!」

 

ついて…

 

「まあまあ咲ちゃん落ち着こう、今日は私が教えてあげるじぇ、ダーリン!」

「おう!なんかよく分からない説明を多いけど頼む!」

「じゃ、わしはここに座ろうかのぅ」

「ぐぬぬ…」

「むむむ…」

「ちょ、ちょっと待ってください…ボタンが閉まらない…」

「てい!」

「いたい!痛いです咲さん!やめてください!」

 

ついて?早く麻雀やろうよ?

そこの宮永咲は腹いせに他人のおもちを叩いたらダメだからね?咲さんには分からないかもしれないけど、そこにも痛覚あるんだよ?

なんだかそこのスケコマシのせいで半ば崩壊しているようにも見えるこの部活、まあ、描写外ではしっかり練習している!…はず。

 

 

~~~~~~

 

 

たまには見る場所を変えてみようか、ここは清澄高校麻雀部からやや離れたところにある、鶴賀学園麻雀部。

この高校、中高一貫の女子校であり、もちろんの如く女子しかいない。そんな高校の麻雀部、最近できたばかりの麻雀部であり

 

「はぁ…」

 

そんな麻雀部が県大会決勝まで行けた大きな要因である少女が一人こっそり影を潜めてため息一つ。

いつもそんなに快活なわけではないが、今日はやけに沈んでいるような、どうしたのだろうか?

 

__最近、京太郎さんに会えてないっす…

 

どうやら恋の病のようである、ああ彼に会いたいが会う手段がない、なんともまあ可哀想なことよ。

全くないというわけではない、清澄高校にいってみたり、なんなら家に押しかけたりすればすぐにでも会えるだろう。

しかしだ、彼女も彼からの好感度が高くないことは分かっている、そんな関係で突然押しかけたらドン引きされてもおかしくない。

彼女も人間関係の作り方には自信はない、ついこの前まで友達ほぼなしボッチ状態だったのだ、そんな少女が他校の男性にアタックするなんて酷な話だ。

 

「ワハハ、どうしたんだモモ?」

「うひゃぁ!?」

 

いつの間にか背後にいたのは蒲原智美元部長、いつもは驚かれる彼女が驚く側に回っている。

というかどこから入ってきたこのワハハ、あと、当たり前のようにステルスを見破るな。

 

「い、いえ、ちょっと考え事を」

「恋の病かー?」

「モモちゃん、好きな人が出来たの?」

「そういえばこの前、清澄の方に一人で行ってなかったか?」

「え、待て、モモに好きな人だって…?」

 

いつの間にかぞろぞろと、全員集合しているではないか。

金髪眼鏡でおもち大きめな少女の妹尾佳織、麻雀初心者だが豪運の持ち主。そこの元部長とは幼馴染。

なんか凄い前髪しているポニテの少女は津山睦月、他の四人に比べて特徴がないことを気にしていたりいなかったり。現部長である。

そして我らがぶちょ…ではないが、取りまとめ役の加治木ゆみ、凛としたというのを体現したかのような女性である。かっこいい、惚れてまう。

ただまあ、今ばかりは少し慌てているようだ、周りに置いてけぼりにされてどういうことだ?と混乱している。

 

「最近のモモの行動が完全に恋する乙女のそれなんだ、ワハハ-」

「おい、モモ、どこの馬の骨だ?私が見定めてやる」

「ちょ、ちょっと!?先輩何言ってるんっすか!?」

 

どうやら状況を把握したようだが、何やら様子がおかしい。いつもの冷静な彼女は何処に行ったのだ?

 

「私の可愛いモモを嫁に出すだなんて、そんなの認めん!」

「先輩!?一体どうしたんですか!?」

「加治木先輩いったん落ち着きましょう!」

「おおおお嫁さんだなんて…えへへ…」

 

なんということだ、てっきりモモがゆみに依存しているかもと思っていたが、実際はその逆だったようだ。

まあ、女性同士の愛情っていうわけではなく、父親的な愛情を抱いてしまったらしい。

そりゃまあ、こんな可愛い娘がいたら離したくなくなるのも分かる。影薄めでいつも引っ付いてきて、おしゃれしたときも自分のためと言ってくれる、何それかわいい。

でも加治木ゆみよ、それはお前の娘ではない。たとえお前の娘だとしても、彼女はもう巣立ちの時だ、見送ってやれ。

ほら、そこのモモを見てみろ、愛しの彼のお嫁さん妄想してトリップしているぞ、諦めろ。

 

「モモ!?何を言ってるんだ、考え直せ!お前にはまだ早い!」

「うわうわわ、揺らさないでほしいっす!」

「ユミちん、そんなことしてないで、今度の旅行の説明始めるぞー」

「そうですよ!ほら、モモちゃんを離してあげましょう!」

「まさか加治木先輩がこんなに錯乱するとはな…」

 

どこもかしこも騒がしい、こんなので大丈夫なのだろうか…?

ま、仲良さそうでなによりではある。少なくとも清澄の内乱状態よかマシであろう。

 

次に続く

 




加治木さんはモモのお父さんだった…?

いつもお気に入り登録等ありがとうございます!
感想もいつも書いてくれてありがとうございます!もっと書いて?

ささ、次も清澄から離れて別のとこにいきますよー
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