須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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37 大嵐

さてさて、色んな高校を回ってみたところで、少しばかり時を進めてみようか。

そう、お待ちかねのシルバーウィーク!毎年あるわけではないので、皆もウッキウキ。

こんな連休にやることといえば…そう、旅行である。色んなところを回ってみたが、皆さん旅行に赴くようだ。

この清澄高校の麻雀部部員達も例外ではない。『須賀京太郎強化計画』などと銘打って、皆で二泊三日のお泊り旅行。

場所は…どこだったっけ?まあ、なんか良さげな避暑地であることは確かである。そうそう、山の中にあって温泉もあるという良さげな宿だ。

外界からも隔離されており、少し歩くと自然豊かな散策コースに行けるのだ。麻雀で疲れた頭をリフレッシュするにはもってこいだ。

ささ、そんな場所にはバスで行き、バス内は他の客も居るから流石の彼女らも静かにしていて、彼の隣を勝ち取った染谷まこも大人しくしていた。

 

(ふふ、寝顔はとてもかわいいのう)

「…zzz」

 

正確には、大人しく彼の寝顔を堪能していた。純粋無垢な子供のような寝顔をしている京太郎、とてもかわいらしく、見ていると庇護欲が湧いてくる。

思い切り抱きしめてやりたい衝動に駆られる彼女であったが、チラリと逆隣を一瞥すると

 

(あそこでパーを出しとけばよかったじぇ…)

(須賀君の寝顔をもっと近くで見たいです…)

(くっ、まこ!そこ代わって!)

(京ちゃんかわいいよ)

 

四人がジッとこちらを見つめているではないか。これでは変なこともできない。抱きしめたい欲望を胸に押しとどめ、肩に頭をのせる程度に留めておく。

これに対し、思わず声を上げてしまいそうになる片岡優希、不満そうに顔をしかめる原村和、軽く睨みつけてくる竹井久、なぜか何のアクションも起こさない…というかずっと京太郎を見ている宮永咲。

そんな彼女らの様子はほおっておいて、彼の肩を枕に寝に入ろうとする染谷まこ、至福のひと時である。そんな彼女を四人はただ見ることしかできない。

というかなんだこの絵面、すげえ怖いな!ずっと横を見てるなんて普通じゃない。他の客からはなんと思われているのだろうか…というか顔バレしてるかも…

 

まあ、そんなこんなでバスは車体を揺らしつつ山を登り林を抜け、どうやら目的地に着いたようだ。

 

バスから降りると宿はすぐそこ、外見は中々に綺麗なようである。これなら内装も期待できそうだ。

 

「おー、いいところですね!」

「ふふ、喜んでくれてなにより、頑張って取ったのよ」

「こりゃまた、立派な旅館?ホテル?じゃな」

「ふーむ、風情があるじぇ!」

「そうですね…涼しくて過ごしやすいです」

「大きい…」

 

彼らもそんな外装を見てテンションアゲアゲなようだ、残暑厳しい今の時期でも涼しいというのもポイントが高い。

さて、さっさと中に入ってチェックインして、早速麻雀を打とうではないか、皆でその扉をくぐると

 

「あ、久じゃない!」

「へ?」

 

あれ、どういうことだろうか?ここには知り合いなんているはずないのに、何やら幻聴が聞こえるではないか。

そうだそうだ、まさか偶然、旅行先で今一番会いたくない友にあうなんてそんなオカルト…

 

「え、あ、清澄だし!!」

「え、うそぉ!?」

「ほ、ほんとですか!?」

「ということは…」

 

そんなオカルト有り得たよ!なんだこれ!?まさかの風越とのブッキングである!これは厳しい!痛恨のミスだぁ!

向こうもとても驚いているようである、突然のことにアタフタしたのちに、なにやら丸くなって会議を開き始めた。

さて、清澄の部長は…頭が真っ白になっている。せっかく策を講じたのにこんなことになるなんて…やはり悪待ちすべきだったかと後悔している。

 

「久もここに旅行しにきたのね!なんて偶然かしら!」

「え、ええ、ほんとにそうね!あはははは!」

 

そんな彼女の内心もつゆ知らず、旅行先で親友に偶然出会えたことを純粋に喜んでいる福路美穂子。

その自慢の眼でよくよく見てみろ、そこの竹井久の笑顔はやけくそだ。頭の中で思考を放棄し始めている。

竹井久よ、いいのか?そんなに呆けていたら…

 

「あ、須賀君!」

「福路さん!いやー、また会いましたね!」

「ホントにそうね!今回で八回目かしら?」

「いやもう、なんか運命的なの感じますねェ!」

「ふふふ…私たちなにかあるかもしれないわ」

 

ほーら言わんこっちゃない、キャップが京太郎を捕捉してしまったではないか。京太郎もなんともまあ調子のいいこと言いやがって、彼女の心を動かす。

しかも、質の悪いことに彼は何も考えずに言葉を発しているのだ。そして観察眼が鋭いキャップとのコンビネーションでどうなるか分かるだろうか?

 

「須賀君って、案外メルヘンチックなのかしら?」

「ええっ!?そうですかねぇ…?」

 

そう、彼が本心からそう言っていることが分かってしまうのだ。好感度上昇が更に倍に!もう、キャップには勝てないのか…?

この二人、相性がいいのであろう、会話が簡単には途切れない。話の切れ目に干渉しようと狙っていた四人であったが、なかなか隙が見当たらない。

痺れを切らした染谷まこが声をかけたのと同時に

 

「おい、なにデレデレしと…」

「え、もしかして…京太郎さんっすか?」

「ぉおっ!?」

 

後ろからひょっこりと、影を潜めた少女が声をかけたではないか。これには染谷まこも思わず驚き、変な声が出てしまう。

この影の薄い少女は東横…あれ?どうしてここにいるのだろうか?彼女は鶴賀の生徒である、風越ではない。つまり…

 

「あ、お久しぶりです」

「ワハハー、まさかの出会いってやつだなー」

「え、えぇ!?こんなところに清澄の方々と会うなんて…」

 

ここで鶴賀の登場だ!三者三様の反応であるが、その視線は一点に、そうステルスモモの想い人の方に注がれている。

その眩しいばかりの金髪を見て、モモの好きなタイプはこんな感じなんだなーって思っている。

 

「お、東横さんじゃないか!なんか凄い偶然だな!」

「いやー、ホントに運命的なのを感じますね!っと!?風越のキャプテンさんも居るっす!すごいっす!」

「東横さんも旅行にきたのね!あと、呼び方は美穂子でいいわ」

「了解っす!」

「そ、その、もしよければ須賀君も美穂子って呼んでくれないかしら?」

「じゃあ、美穂子さんも下の名前で呼んでくださいよ!」

「え、じゃ、じゃあ、京太郎くん…」

「むっ…私もモモって呼んで欲しいっす!」

「え、ああ、じゃあ…モモ?」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、私もモモちゃんって呼んでもいい?」

「もちろんっす!」

 

さて、こちらの三人は…旅行だからテンションが上がっているのだろう、いつもよりもハイペースに、そして大胆に話を進めていっている。

東横桃子はようやく名字呼ばれから脱却できてご満悦の様子。福路美穂子もお互い名前呼びに出来たので、一歩前進ね、と心の中でガッツポーズしている。

いかん!このままでは物凄いハイスピードで距離を詰められてしまう、そう思い動こうとするのは一年生三人組。

この二人を京太郎から引きはなすべく、声をかけようと…

 

「きょ」

「おおっ!京太郎、京太郎じゃないか!!」

 

出来ない!

颯爽と三人の間を走り抜け、思い切りジャンプして彼に飛びかかる一つの影。

彼はそんな影をキャッチして、困った風にこう注意する。

 

「っとと、いきなり危ないですよ衣さん!」

「すまんすまん、京太郎を見たら居ても立っても居られなくて、つい…」

「む…龍門渕の子供さん、京太郎さんが困ってるっす!離れるっす!」

「子供じゃない!衣だ!!」

「あら、衣ちゃんじゃないの!お久しぶりね!」

「ちゃんではなくて…衣だ!」

「ほら、衣さん降ろしますよ」

 

影の正体は天江衣、子供じゃなくて衣である!突然飛び掛かった衣を難なくキャッチした京太郎は、彼女をスッと地面に降ろす。

そんな彼女に警戒心をあらわにする東横桃子、彼女の本能が危険と言っているのであろう。福路美穂子は純粋に再会を喜んでいる。

衣はそんな二人の呼び方には不満があるものの、京太郎と出会えたことで頭がいっぱいのようだ。ぴょんぴょんしながらお話ししている。

 

「お、マジかよ」

「へぇ…これはいいチャンスじゃないの?」

「…恋敵が多そう」

「あら、これは好機ですわ!今回の旅行は衣応援大作戦といきましょう!」

 

で、この龍門渕である。もうナニカする気満々。この偶然を活かすほかないと言わんばかりに意気込んでいる。

この出会いを驚くのではなく、冷静に分析している時点でなかなかにヤバい。絶対に合宿中にやらかしてくる。

 

さ、こんな状況になってしまった清澄高校麻雀部、その部長の竹井久は悲しみに打ちくれていた。

 

__どうすればいいのよ…

 

今のこの状況では、部員達を出し抜いて、須賀京太郎とイチャイチャすることすら厳しくなった。彼女の理想とする、合宿でのムフフイベントは消滅したのだ。

思わず涙が出てきそうになってしまう、上を向かねば、上を向いて歩こうではないか、涙がこぼれないように、だから頑張れ竹井久よ。

それに、この出会いは敵しか持ってきたわけではない。

 

「おい、久」

「」

「久!」

「えっ、ああ、ゆみ、何かしら?」

 

魂抜けてる彼女を叩き起こし、何やら文句ありげに睨んでいるのは加治木ゆみ。

どうしたのかしらと思っていると

 

「あれをどうにかしてくれないか?」

「あれって…須賀君のこと?」

「ああそうだ、モモをどうやらたぶらかしているようだな」

「えっ」

「知らないのか?彼はうちの可愛いモモを取ろうとしているんだ」

 

おやおや、何やら面白そうなことになっているではないか

 

「えーと、つまり須賀君をモモから離してほしいってこと?」

「流石だな、そういうことだ、話がはやい」

 

これには彼女も生気を戻し、生き生きと

 

「わかったわ!なんとかして須賀君と彼女を引き合わせないようにするから、ゆみもお願いね?」

「うむ、頼んだぞ久」

「まっかせなさい!」

 

こう言うではないか。思わぬ味方が居て大喜びしている彼女、強力な恋敵一人を抑え込めれるアテを手に入れたのだ、そりゃ嬉しい。

にしても、加治木ゆみはまだ諦めきれないのだろうか、確かに可愛いモモを手放すのが辛いのは分かる、けれども彼女の幸せを望むのが親ってもんだ。

東横桃子は大変そうだ、憧れの先輩からの妨害を躱さなければならないなんて…あれ?ステルス使えばらくしょーなのでは?

…ま、いいか、細かいことは気にしない。

 

(ゆみって彼女のこと好きだったのね…ま、応援してるわ、私のためにも頑張ってね?)

 

さて、我らが部長の竹井久、絶望の淵に立たされていたが、親友の思わぬ助けにより見事復活を遂げる。

参謀というのは佳境にこそ栄えるものである。ささ、その手腕でどう切り抜けるのか、はたして彼を守ることはできるのか。

 

次に続く




登場人物が多いとどうしても長くなってしまう。

いつもお気に入り登録等ありがとうございます!
感想も書いていただけると狂喜乱舞します!めっちゃ喜びます!

この合宿、収拾つくのだろうか…?
ヒロイン集めすぎてなんか凄いことになりそう…
ま、なんとかなるでしょう、乞うご期待
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