さてさて、色んな高校を回ってみたところで、少しばかり時を進めてみようか。
そう、お待ちかねのシルバーウィーク!毎年あるわけではないので、皆もウッキウキ。
こんな連休にやることといえば…そう、旅行である。色んなところを回ってみたが、皆さん旅行に赴くようだ。
この清澄高校の麻雀部部員達も例外ではない。『須賀京太郎強化計画』などと銘打って、皆で二泊三日のお泊り旅行。
場所は…どこだったっけ?まあ、なんか良さげな避暑地であることは確かである。そうそう、山の中にあって温泉もあるという良さげな宿だ。
外界からも隔離されており、少し歩くと自然豊かな散策コースに行けるのだ。麻雀で疲れた頭をリフレッシュするにはもってこいだ。
ささ、そんな場所にはバスで行き、バス内は他の客も居るから流石の彼女らも静かにしていて、彼の隣を勝ち取った染谷まこも大人しくしていた。
(ふふ、寝顔はとてもかわいいのう)
「…zzz」
正確には、大人しく彼の寝顔を堪能していた。純粋無垢な子供のような寝顔をしている京太郎、とてもかわいらしく、見ていると庇護欲が湧いてくる。
思い切り抱きしめてやりたい衝動に駆られる彼女であったが、チラリと逆隣を一瞥すると
(あそこでパーを出しとけばよかったじぇ…)
(須賀君の寝顔をもっと近くで見たいです…)
(くっ、まこ!そこ代わって!)
(京ちゃんかわいいよ)
四人がジッとこちらを見つめているではないか。これでは変なこともできない。抱きしめたい欲望を胸に押しとどめ、肩に頭をのせる程度に留めておく。
これに対し、思わず声を上げてしまいそうになる片岡優希、不満そうに顔をしかめる原村和、軽く睨みつけてくる竹井久、なぜか何のアクションも起こさない…というかずっと京太郎を見ている宮永咲。
そんな彼女らの様子はほおっておいて、彼の肩を枕に寝に入ろうとする染谷まこ、至福のひと時である。そんな彼女を四人はただ見ることしかできない。
というかなんだこの絵面、すげえ怖いな!ずっと横を見てるなんて普通じゃない。他の客からはなんと思われているのだろうか…というか顔バレしてるかも…
まあ、そんなこんなでバスは車体を揺らしつつ山を登り林を抜け、どうやら目的地に着いたようだ。
バスから降りると宿はすぐそこ、外見は中々に綺麗なようである。これなら内装も期待できそうだ。
「おー、いいところですね!」
「ふふ、喜んでくれてなにより、頑張って取ったのよ」
「こりゃまた、立派な旅館?ホテル?じゃな」
「ふーむ、風情があるじぇ!」
「そうですね…涼しくて過ごしやすいです」
「大きい…」
彼らもそんな外装を見てテンションアゲアゲなようだ、残暑厳しい今の時期でも涼しいというのもポイントが高い。
さて、さっさと中に入ってチェックインして、早速麻雀を打とうではないか、皆でその扉をくぐると
「あ、久じゃない!」
「へ?」
あれ、どういうことだろうか?ここには知り合いなんているはずないのに、何やら幻聴が聞こえるではないか。
そうだそうだ、まさか偶然、旅行先で今一番会いたくない友にあうなんてそんなオカルト…
「え、あ、清澄だし!!」
「え、うそぉ!?」
「ほ、ほんとですか!?」
「ということは…」
そんなオカルト有り得たよ!なんだこれ!?まさかの風越とのブッキングである!これは厳しい!痛恨のミスだぁ!
向こうもとても驚いているようである、突然のことにアタフタしたのちに、なにやら丸くなって会議を開き始めた。
さて、清澄の部長は…頭が真っ白になっている。せっかく策を講じたのにこんなことになるなんて…やはり悪待ちすべきだったかと後悔している。
「久もここに旅行しにきたのね!なんて偶然かしら!」
「え、ええ、ほんとにそうね!あはははは!」
そんな彼女の内心もつゆ知らず、旅行先で親友に偶然出会えたことを純粋に喜んでいる福路美穂子。
その自慢の眼でよくよく見てみろ、そこの竹井久の笑顔はやけくそだ。頭の中で思考を放棄し始めている。
竹井久よ、いいのか?そんなに呆けていたら…
「あ、須賀君!」
「福路さん!いやー、また会いましたね!」
「ホントにそうね!今回で八回目かしら?」
「いやもう、なんか運命的なの感じますねェ!」
「ふふふ…私たちなにかあるかもしれないわ」
ほーら言わんこっちゃない、キャップが京太郎を捕捉してしまったではないか。京太郎もなんともまあ調子のいいこと言いやがって、彼女の心を動かす。
しかも、質の悪いことに彼は何も考えずに言葉を発しているのだ。そして観察眼が鋭いキャップとのコンビネーションでどうなるか分かるだろうか?
「須賀君って、案外メルヘンチックなのかしら?」
「ええっ!?そうですかねぇ…?」
そう、彼が本心からそう言っていることが分かってしまうのだ。好感度上昇が更に倍に!もう、キャップには勝てないのか…?
この二人、相性がいいのであろう、会話が簡単には途切れない。話の切れ目に干渉しようと狙っていた四人であったが、なかなか隙が見当たらない。
痺れを切らした染谷まこが声をかけたのと同時に
「おい、なにデレデレしと…」
「え、もしかして…京太郎さんっすか?」
「ぉおっ!?」
後ろからひょっこりと、影を潜めた少女が声をかけたではないか。これには染谷まこも思わず驚き、変な声が出てしまう。
この影の薄い少女は東横…あれ?どうしてここにいるのだろうか?彼女は鶴賀の生徒である、風越ではない。つまり…
「あ、お久しぶりです」
「ワハハー、まさかの出会いってやつだなー」
「え、えぇ!?こんなところに清澄の方々と会うなんて…」
ここで鶴賀の登場だ!三者三様の反応であるが、その視線は一点に、そうステルスモモの想い人の方に注がれている。
その眩しいばかりの金髪を見て、モモの好きなタイプはこんな感じなんだなーって思っている。
「お、東横さんじゃないか!なんか凄い偶然だな!」
「いやー、ホントに運命的なのを感じますね!っと!?風越のキャプテンさんも居るっす!すごいっす!」
「東横さんも旅行にきたのね!あと、呼び方は美穂子でいいわ」
「了解っす!」
「そ、その、もしよければ須賀君も美穂子って呼んでくれないかしら?」
「じゃあ、美穂子さんも下の名前で呼んでくださいよ!」
「え、じゃ、じゃあ、京太郎くん…」
「むっ…私もモモって呼んで欲しいっす!」
「え、ああ、じゃあ…モモ?」
「ありがとうございます!」
「じゃあ、私もモモちゃんって呼んでもいい?」
「もちろんっす!」
さて、こちらの三人は…旅行だからテンションが上がっているのだろう、いつもよりもハイペースに、そして大胆に話を進めていっている。
東横桃子はようやく名字呼ばれから脱却できてご満悦の様子。福路美穂子もお互い名前呼びに出来たので、一歩前進ね、と心の中でガッツポーズしている。
いかん!このままでは物凄いハイスピードで距離を詰められてしまう、そう思い動こうとするのは一年生三人組。
この二人を京太郎から引きはなすべく、声をかけようと…
「きょ」
「おおっ!京太郎、京太郎じゃないか!!」
出来ない!
颯爽と三人の間を走り抜け、思い切りジャンプして彼に飛びかかる一つの影。
彼はそんな影をキャッチして、困った風にこう注意する。
「っとと、いきなり危ないですよ衣さん!」
「すまんすまん、京太郎を見たら居ても立っても居られなくて、つい…」
「む…龍門渕の子供さん、京太郎さんが困ってるっす!離れるっす!」
「子供じゃない!衣だ!!」
「あら、衣ちゃんじゃないの!お久しぶりね!」
「ちゃんではなくて…衣だ!」
「ほら、衣さん降ろしますよ」
影の正体は天江衣、子供じゃなくて衣である!突然飛び掛かった衣を難なくキャッチした京太郎は、彼女をスッと地面に降ろす。
そんな彼女に警戒心をあらわにする東横桃子、彼女の本能が危険と言っているのであろう。福路美穂子は純粋に再会を喜んでいる。
衣はそんな二人の呼び方には不満があるものの、京太郎と出会えたことで頭がいっぱいのようだ。ぴょんぴょんしながらお話ししている。
「お、マジかよ」
「へぇ…これはいいチャンスじゃないの?」
「…恋敵が多そう」
「あら、これは好機ですわ!今回の旅行は衣応援大作戦といきましょう!」
で、この龍門渕である。もうナニカする気満々。この偶然を活かすほかないと言わんばかりに意気込んでいる。
この出会いを驚くのではなく、冷静に分析している時点でなかなかにヤバい。絶対に合宿中にやらかしてくる。
さ、こんな状況になってしまった清澄高校麻雀部、その部長の竹井久は悲しみに打ちくれていた。
__どうすればいいのよ…
今のこの状況では、部員達を出し抜いて、須賀京太郎とイチャイチャすることすら厳しくなった。彼女の理想とする、合宿でのムフフイベントは消滅したのだ。
思わず涙が出てきそうになってしまう、上を向かねば、上を向いて歩こうではないか、涙がこぼれないように、だから頑張れ竹井久よ。
それに、この出会いは敵しか持ってきたわけではない。
「おい、久」
「」
「久!」
「えっ、ああ、ゆみ、何かしら?」
魂抜けてる彼女を叩き起こし、何やら文句ありげに睨んでいるのは加治木ゆみ。
どうしたのかしらと思っていると
「あれをどうにかしてくれないか?」
「あれって…須賀君のこと?」
「ああそうだ、モモをどうやらたぶらかしているようだな」
「えっ」
「知らないのか?彼はうちの可愛いモモを取ろうとしているんだ」
おやおや、何やら面白そうなことになっているではないか
「えーと、つまり須賀君をモモから離してほしいってこと?」
「流石だな、そういうことだ、話がはやい」
これには彼女も生気を戻し、生き生きと
「わかったわ!なんとかして須賀君と彼女を引き合わせないようにするから、ゆみもお願いね?」
「うむ、頼んだぞ久」
「まっかせなさい!」
こう言うではないか。思わぬ味方が居て大喜びしている彼女、強力な恋敵一人を抑え込めれるアテを手に入れたのだ、そりゃ嬉しい。
にしても、加治木ゆみはまだ諦めきれないのだろうか、確かに可愛いモモを手放すのが辛いのは分かる、けれども彼女の幸せを望むのが親ってもんだ。
東横桃子は大変そうだ、憧れの先輩からの妨害を躱さなければならないなんて…あれ?ステルス使えばらくしょーなのでは?
…ま、いいか、細かいことは気にしない。
(ゆみって彼女のこと好きだったのね…ま、応援してるわ、私のためにも頑張ってね?)
さて、我らが部長の竹井久、絶望の淵に立たされていたが、親友の思わぬ助けにより見事復活を遂げる。
参謀というのは佳境にこそ栄えるものである。ささ、その手腕でどう切り抜けるのか、はたして彼を守ることはできるのか。
次に続く
登場人物が多いとどうしても長くなってしまう。
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この合宿、収拾つくのだろうか…?
ヒロイン集めすぎてなんか凄いことになりそう…
ま、なんとかなるでしょう、乞うご期待