お風呂覗き大作戦,大成功(大失敗)
木の上に一人、その男スマホを手に持ちけり、そのスマホの向く先に女ありけり。
その女、黄金色の髪をなびかせ、その色違いの瞳で木の上の男を目視する。
硬直する二人。
そして男に浮かぶ言葉
(あ、死んだ)
この一言に尽きる。
客観的に見れば、どこからどう見ても須賀京太郎がなぜか風呂にいる女性の裸体を盗撮しているようしか見えない!ド変態!
確かに女性の裸体に興味がないわけではない、だが犯罪者になりたいわけじゃない!こんな風にホントの犯罪をしたいわけではない!
ましてや相手は他校の――遠目でも分かるあの瞳、福路美穂子である。
ようやく最近仲が良くなってきて、距離も詰まってきて、あっちも良く接してくれて、もしかしたら、もしかしたら…なーんて考えていたのだが
それも今、水泡と帰した。
慌てて木から落ちる京太郎、何も知らぬ片岡優希は目を光らせており
「どうだったじぇ?」
と聞いてくるが、もはやそんな場合ではない。それどころではない。
「…いた」
「…へ?」
「美穂子さんがいた…」
「…じぇじぇ?」
「目ぇ合っちゃった…ははっ…どうしよう……」
「あ、あー、京太郎、その…」
「どうしよう、完全に変態だよ…どう弁解するんだよ…」
「……わ、私と一緒に謝りにいくじぇ!!」
「いやだって、もう完全に変態……」
「私が無茶言って景色撮って貰ってたって説明したら大丈夫…いや、それしかないじぇ!」
「スマホのデータも全部見せて、しっかり弁解すれば、あのおねーさんなら分かってくれるはず!」
「ははっ…もうダメだ…俺の人生おしまいだ…」
「きょ、京太郎!しっかりするんだじぇ!そんなとこで座ってる場合じゃないじぇ!」
この始末。
完全に心が折れる。人一倍責任感が強い彼にとってこの行為はあまりにも重すぎたようだ。
木の下で体育座り、膝を抱えて頭をうずめる、もはや何もやる気がしない、現実見たくない、しにたい…彼の心はもうボロボロだぁ!!
片岡優希はそんなテコでも動かない彼をなんとか動かそうとするも、うんともすんとも言わない。地面と一体化してしまっている。
頭を抱える二人、事態は停滞してしまっていたが
~♪
彼のスマホが音を発した。
なんだなんだと開いてみると、福路美穂子から新着メッセージが届いているではないか。
その内容を恐る恐る確認すると…
『さっきのことでおはなししたいことがあります』
『いまどこにいますか?』
全部ひらがなである。
その異様さがより一層恐怖を際立たせ、そのせいか、手は震え、血の気は引き、もはやまともにスマホすら持てない京太郎。
そんな彼を見守ることしか出来ない片岡優希
「その…部活の皆には私が説明しておくじぇ」
「うん…」
刑の執行を待つだけとなった京太郎、肚を括るしかない京太郎、頭が真っ白になる京太郎、先ほどまでの楽しかった時間は今何処。
片岡優希、実はライバルが勝手に脱落する可能性もあるこの状況は好都合なのだが……ひどく落ち込む彼を見てそんなことは思いも浮かばず、そっとしておくことにした。
――――――――――――――――――――――――――
あれから数十分後、ただ一人で呼び出され、約束の場所へと歩む。
会うお相手は福路美穂子、とあるお部屋で二人きり、密会と言っても差し支えない、が
その足取りはまるで死刑台に昇る囚人かの如く重い。ずしん、ずしんと地を踏みしめる。
(ははっ…なに言われるんだろ…)
渇いた笑いしが出てこない、そうでもしないとやってられない。
密会は密会でも逢引的なサムシングではない、交渉…いや尋問的なサムシングである。
そして漸く部屋に着く。一息深呼吸し、その戸を叩き、返事を待つ。
「どうぞ」
帰ってくるのは固い返事。
いつもの彼女であればトテトテ近づき、その扉を開けて『いらっしゃい』と朗らかな笑顔で対応するであろう。
が、今回は返事のみ。
ゆっくりと戸を開ける。
そこには彼女が片目を瞑ってちょこんと佇んでいる。可愛らしくも思えるが
「そこに座ってください」
「はい」
威圧感。
朗らかな表情は鳴りを潜め、凛とした表情で彼をジッと見つめる。
お互いに向い合せで座る、沈黙が辺りを覆う。
「京太郎くん」
彼女が口を開く。そして
「さっきのことですが」
目を開く。
「故意…でしたか?」
その色の違う瞳で見つめられる、ただ見つめられているのではない。
心の底の本心すらのぞき込まれているような、奇妙な感覚。
「…いえ、もしかしたら見えるかもとは思っていましたが、お風呂の時間外なので誰もいないと思ってました」
子供諭すかのように聞かれてしまい,母親に叱られているかのように錯覚してしまう。
心を読まれている。答えざるを得ない。自然とそう思い,真実を答える.
「…分かりました、故意では無かったということですね」
本心を答えたことすら見られている。不思議な確信があった.
「はい、ですが…見てしまったのは事実です」
「いえ」
自分を戒める彼を遮る彼女
「事故ということで終わりにしましょ」
「へ?」
唖然、予想外の言葉に口を空けて呆ける京太郎。
そんな彼を放置して言葉を紡ぐ美穂子
「京太郎くんは木を登って風景を撮っていたら、たまたま見えちゃった、それだけよ」
「いや、いやいやいや!だ、だって俺は…」
「それに…」
「京太郎くんになら…ちょ、ちょっとぐらいなら…」
訪れる沈黙。またまた呆ける須賀京太郎。
その言葉を発した後に顔を赤らめ、俯き、恥じらう少女福路美穂子。
「あ、え、えーっと、あははは……」
「……」
「……」
とりあえず笑うものの、またまた沈黙が訪れる。
どうしようもない。どうしたらいいか分からない。その言葉の真意は分かるが…とても信じられない。
あまりにも出来すぎている、まさか性癖ドストライクな年上女性から好意を持たれているなんて…なにそのラブコメ?
そんな須賀京太郎の出した答えは
「ちょ、ちょっと戻りますね、あいつら心配してるだろうし…」
撤退!!
事もあろうか戦術的撤退を選択!ヘタレ!いくじなし!ふぬけ!
「まって!」
「いやちょっとタコスを供給しないと優希がモンスターになるので」
「ち、違うの!さっきのは言葉の綾というかなんというか…と、とにかくそういうことじゃないの!」
「ちょっと咲が迷子になってないか確認を…」
「話を聞いて!」
「いや違うんです、俺もそういう意味で逃げたいというよりか、どうしたらいいか分からなくて」
「そ、その、京太郎くんに気にして欲しくなくて…そういう意味がないといったら嘘になるけど……」
きょうたろうはにげだした!しかしまわりこまれてしまった!
みほこはこんらんしている!わけもわからずじばくした!
この大惨事である.
お互いの思考は合っているのだが、本音と建前がすれ違っているというか、建前と本音を勘違いしているというか…
なんというか、もうメチャクチャである。
「と、とりあえず戻りますね!」
走る京太郎!強行手段に出るものの目指す目標は扉!
そんな彼の手を
「い、一旦ちゃんと話しましょ!」
両手で掴んでグイっと引っ張り
「あっ」
丁度,彼の足元にマットがあったものだから
「やべっ」
「えっ?」
須賀京太郎は足ごと払われ、それに伴い姿勢が傾き、そしてその彼女もまた支えを失い
「うわああああああ!!」
「きゃああああああ!!」
二人仲良く派手に転んだ!
次に続く
お久しぶりです,半年以上ぶりですね,お待たせしてすみません
どうするか悩んだこの作品ですが,相も変わらず終点を決めないまま書くことにました
ですので,ちゃんとしたラストを作ることは出来ないと思いますが,お付き合いして頂けるとありがたいです.
また,感想や評価等ありがとうございます,とても励みになりました.