須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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46 参謀

__いてて…

 

後ろ手を引かれ、マットに足を掬われ、背中から派手に転んだ京太郎。

ゴンっという鈍い音とともに頭には激しい痛みが襲いかかり、そのせいで状況を見失ったのか

 

__っと、起き上がらないと

 

手を地に着き、よっこらせと起き上がろうとし始める。

 

ささ、ここで状況を確認しよう。

彼は彼女――福路美穂子に後ろ手を思い切り引かれたため転んでいるのである。

片手は体側に。では、もう一方の手の行く先はどこであろうか…?

 

「いたた……え?」

 

「ん?」

 

必然、胸である!

胸部、乳房、おっぱい……一説によると二の腕と同じぐらいの柔らかさである部位。

その柔らかな感触、ふにふにとした感触、その触覚が素早く手から脊髄を通過して脳内に到達!この間わずか0.01秒。

福路美穂子もまた同様に胸部に感じる触覚がうんぬんかんぬん

 

念願の夢が一つ叶った京太郎、そんな彼は本日幾度目の思考停止

 

「きょ、京太郎くん!?」

 

「……はっ!?す、すみません!!」

 

すぐに再起動し、その手をすぐさまどけようとするが

如何せん、彼女が腕を掴んでおり

 

「いたっ!み、美穂子さん!なんか極まってます!」

 

「ご、ごめんなさい!すぐに…」

 

なんか凄い体勢で腕を捻りあげられてるため、全くもって動けない!

少し動くだけで肩関節を襲う激痛!可動域はすでに限界間近であり、これ以上の動作を許さない!

天国のような感触と地獄のような痛み!放したくないけど放して欲しい!そんなジレンマが彼を襲う.

彼の悲鳴を聞いて,そんな状態であることに漸く気が付き、手を放そうとしたその刹那

 

「な、なにがあったし!」

「キャプテン大丈夫ですか!?」

 

来るわ来るわ乱入者

倒れた時の悲鳴を聞き、すぐさま駆けつける後輩たち!

なんともまあ心優しき後輩たちよ、これも彼女の人望であろう。

 

だがしかし、現在の状況は非常にまずい

男女がくんずほぐれつ……というよりか、女が男を捻りあげているようにしか見えない

 

「きゃ、キャプテンが須賀君を……?」

 

「……文堂、そっとしておくし」

 

「ち、違うの!これは事故で……」

 

「いたい!!いたたたた!!た、助けて!」

 

「ほっといて大丈夫ですかね?」

 

「しーらない」

 

助けを叫ぶ京太郎。

涙目で弁解しようとする福路美穂子

そんな二人を傍観するしかない文堂星夏

池田華菜は面倒事だと感じ取り、ため息をついて、知らんぷりを決め込んだ。

 

―――――――――――――――――――――

 

なんやかんやで救出された須賀京太郎。その隣には福路美穂子。二人仲良く正座中。

そして対面には風越の方々が並んで事情聴取中。

 

「えーとつまり…」

「須賀君と二人でお話ししてたら」

「誤解されて、そのまま逃げられそうになったので」

「腕を掴んだら、須賀君が転んでしまって」

「ああなった…というですね」

 

どうやらそういうことになったようだ。

須賀君が覗きをしてしまった話は彼の名誉のためにも省略され、その代わりにキャプテンが彼を誘ったことになっている。

そしてその後は説明通りである。

 

「ま、まあそんな感じです」

 

「そ、そうなの…別に京太郎くんに何かしようとしてた訳じゃなくて」

 

おどおどしつつも弁解をする福路美穂子

彼女は自分の名誉…というよりか、隣にいる彼に変に思われないよう必死であるのだが

 

「それで、誤解って何だったんですか?」

 

「えっ、あ、あの、それは…」

 

「須賀が逃げ出すって、よっぽどだし…」

「確かに、何があったらそんなことに」

 

どうしてもこうなってしまう!

話を聞いて想像しようとすればするほど、ガタイも良くて度胸のある男子高校生が尻尾を巻いて逃げ出す状況が思いつかないのである!

しかもお相手は福路美穂子、外面は清楚で美しく、内面は思いやりに溢れている少女であり、そんな少女がそんな異常事態を引き起こすとは考えにくい…が

現にそれが起きたと説明している当の本人たち。

どうしたらそうなるのか、とても気になるのは当たり前。

 

しかし!それ一から十まで説明したら今度は須賀京太郎の覗き案件で大変なことになるのは目に見えている!

というか、『別に京太郎くんだったら~』発言でも大波乱になるのは目に見えている!

だからといって説明しなかったら後輩たちは納得いかない!

板挟みになるキャプテン!

 

「う、ううぅ…」

 

どうしようもなくなり、顔を真っ赤にして俯くのみ。真っ赤になってお可愛いこと。

そんなキャプテンを見て

 

(((なんかやっちゃったんだろうなぁ)))

 

と察することしか出来ない。下手に触れられるわけがない。

しかし、一人は違う。

 

「キャプテン、ちょっとこっちに」

 

深堀純代である。

ちょいちょいと手招きをして、真っ赤なキャプテンを呼び寄せる。

キャップ、ちょこちょこと移動して、ちょこんと彼女の隣に正座する。

 

「その…彼に何を言ったかは知りませんが…ドンドン攻めるべきだと思いますよ」

 

「ええ!?で、でも…」

 

「この宿に来たときの様子見ると、彼、相当モテてますが、どうやらフリーみたいですし」

「そこから判断するに、たぶん…須賀君は草食系といいますか」

 

「草食系?」

 

「えぇっと、いわゆる奥手な人のことで…とにかく、押しても逃げてくタイプですけど、押さないと取られてしまいそうなので…」

 

「難しいわね…」

 

「でも、話聞く限りキャプテンのことは良く思ってそうですし、多少引かれてもグイグイ距離を詰めるべきかと…」

 

深堀純代、読んだ恋愛小説の数は星の数。

そんな彼女だけはひと味違った。その蓄えに蓄えられた知識をふんだんに利用して、須賀京太郎の恋愛観と境遇を一目で見抜き、キャプテンに的確なアドバイスを送り出す!

風越の恋愛参謀、ここに在り!敵を知り己を知れば百戦危うからずとはよく言ったものだが、個人でそれを実行するのは至難の業。しかし、強力な味方がいるのであれば容易である!

 

実際、このアドバイスは遠からず当たっている。

一見するとイケイケ系な彼が奥手でヘタレであるところも、恋敵が沢山居ることも、そしてキャプテンが良く思われていることも!

 

「…そうね、わかったわ」

 

「では、私たちは撤退するので頑張ってください」

 

福路美穂子が了承したのを確認し、激励の言葉を言い残して、撤収の指示をかける恋愛参謀。

その指示に何故だかは知らないが信頼感を抱き、いそいそと席を立つ風越の部員たち。

 

「では、お二人でごゆっくり」

「ご、ごゆっくり…?」

「ほら、さっさと撤収するし」

「まあ、頑張ってください」

 

「え?あれ?どういうこと?」

 

一人置いてけぼりの須賀京太郎、部屋には二人置いてけぼり。

そして訪れる静寂、気まずい時間。

先ほどまでなら、このまま停滞していたであろう

 

「ねぇ、京太郎くん」

 

 

「もう少しだけ、お話しましょ?」

 

今は違う。

 

 

次に続く




いつも感想等ありがとうございます,もっと書いて書いて!
誤字修正とてもありがとうございます.とても助かっています.
美穂子さんはお淑やかで奥ゆかしいから京ちゃんが襲われるなんてそんなオカルト…?

ほぼその場のノリで話は決まっているので後先は考えていません.
小話の題名も同様です。特に意味はありません。
ゆえに,細かいとこは気にしないでください.

明日も七時に投稿します

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