須賀京太郎は彼女が欲しい   作:ファンの人

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先に謝罪しますが,今回は話が全くもって進みません


48 その頃一方

ささ、久々に彼女らの様子を見てみよう

 

ここは山奥にある物静かな旅館……いや、ホテルというべきか。

そのロビーはとても広く、温泉上がりのお客さんがゆったりできるような心地よい空間……のはずである。

 

そんな雰囲気をぶち壊し、ドタドタと走り回る少女たち――お馴染み、清澄高校麻雀部である。

優希と京太郎が居なくなったのに気がつき、やりやがったなと勘づき、鬼の形相で捜索網を敷く清澄の修羅たち。

血眼になってホテル中を駆け回り、ムフフなイベントをこなされないよう警備を強化するも

 

「いた?」

「いーや、こっちはおらん」

「こっちにはいませんでした」

 

尻尾すら掴めず、何も得ず。タコスを置いても現れず。

それもそのはず、あの二人は野外デートをしているのだから。

そら屋内探してもいないものはいない、では何故外の捜索をしなかったのか…

 

「やっぱり、外に出かけたんじゃないかな…ちょっと見てくるね」

 

「まて!早まるな咲!」

「ダメです!こんな山中で遭難してしまったら、どうしようもありません!」

「もう、さっきも迷子になってたじゃないの…」

 

このポンコツのせいである。

ホテル捜索中、どうしてそうなったのか、もはや必然なのかは分からないが、なぜか迷子になる始末。

ここどこ…?というメッセージとともに送られてくるボイラー室の画像、そうそう容易く入り込める場所ではない。

そんな彼女の一種のオカルトが外で発揮されようものなら…遭難不可避!もはや合宿どころではない!

それに、普通に地図が無い状態で山の中に入り込むのは危険行動。保護者役である清澄の部長も

 

(まいったわね…)

 

流石にそれは容認できない。

片岡優希と須賀京太郎の動向も気になるが、まず第一は部員の安全。

彼が一番かわいいが、彼女らもかわいい後輩たち。大変な目には合わせたくない。

とはいえ、あの二人が山の中に入っている可能性もあるのだから…

 

(あー、あーあ、どうしよう)

 

思考は堂々巡り。

部長という役職は見かけによらず大変なものである。胃が痛くなってくる。胃薬残ってるか確認しなきゃ。

そしてこんな騒動の原因となったタコス娘のことを脳裏に浮かべ、二度とタコスを食わさせんぞと大分強めの呪いを込める。

 

そんな彼女らの脇では

 

(今のうちの京太郎さんを見つけたら…むふふ…)

 

むっつりステルス娘がだらしない顔を晒し、彼を連れ去って二人きりで…というやらしい妄想に浸っているものの、認識されないから恥はかかない。

ちなみにネタバレだが、彼女は京太郎とは出会えないのでこの話には関係ない。幽霊のようにホテルを彷徨うのみ。そしてホテル七不思議へと昇華されるであろう。

 

さてさて、そんな彼女は放っておき、

仕方ない、もう一度ホテル内を見まわろうとトボトボ歩き始める魑魅魍魎。

その船頭の彼女、竹井久のスマホが小さく震える。着信だ。

 

お相手は、渦中の少女、片岡優希である。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

かくかくしかじかまるまるうまうま――

かくかくしかじかまるまるうまうま――

かくしかじかまるうまかくうままる――

 

「つまり、その…」

 

「事故で美穂子が入っているところを見てしまったというわけね」

 

「で、須賀君は今謝りに行ってるということですか」

 

ささ、状況を説明しよう!

先ほど、片岡優希から着信が来たのはいいものの、あまりにテンパっているため何を話しているのか理解不能。

ミリオネアのテレフォンよりも使い物にならない。まだバナナの方が役に立つ。

 

仕方ないから部屋で待ち合わせしたところ、全力で走ってきたのであろう片岡優希がゼェゼェしながら到着する。

そして始まる事情聴取。しかし、話し手は片岡優希。話を纏めるのが彼女が息切れしながら、あの状況を分かりやすく説明できることがあろうか?

 

いや、ない。

彼女の国語は赤点である。

 

しかも、自分と京太郎に非難が集まらないよう情報操作をしようとしたため、話に矛盾も入る始末。

錯綜する情報、混乱する部員たち。焦るタコス、チクタクと時は刻む。

そうして約十数分の謎解きを終え、ようやくキチンと整理し終える。

 

「ゆーきが須賀君を連れださなければ…」

「優希ちゃん、ちょっとお話しようか」

「ひぃっ!!」

 

「美穂子の裸をね…ふーん」

「なんもないといいがのぅ」

 

結局全て話すことになり、魔王とデジタル娘に囲まれるタコス娘。自業自得である。

お話とは一体なんなのだろうか…それを知るのは魔王のみ。

 

さて、事情は全て把握したが、もはややれることはない、彼の説教が終わるのを待つが

 

「そもそもゆーきは勝手に動きすぎといいますか、私も誘ってくれたら~~」

「そうだよ!優希ちゃんは京ちゃんのこと独り占めし過ぎだよ!」

「うぅぅ……」

 

おいそこの幼なじみ、お前が言えたことではない。

 

「これこれ、そんなに優希をイジメちゃいかん」

「染谷先輩…!」

「そうよ、というか和なんて事あるごと須賀君を誘ってるじゃない」

「そそそそそんなことありません!!」

「和ちゃんはもっと自粛するべきだよ!」

 

そこの魔王、便乗するのはやめなさい。お前はもっとヤバいことしてただろ。

こうして話を続けるものの

 

「そもそも部活中はそういうこと無しって決めたのに、和は~~」

「それを言うなら部長だって~~」

「おい、熱くなりすぎじゃ」

「なによー、まこだって――もがっ」

(あ、あほ!ここでバラしたらどうなるか分かるじゃろ!)

「……怪しいです」

 

「京ちゃんまだ帰ってこないねー」

「もう一時間近く帰ってこないじぇ……」

 

いくら待っても帰ってこない。

大したことはやらかしたが、それにしても長すぎる。説教にしては長すぎる。

話し込んでいるなら話は別だが、京太郎は平謝りするしかない立場。仲良くお喋りなんてしているわけがない。

いやはや、覗かれた相手と談笑する女がどこに居ようか?どこにいるのだろうか?皆さんは知っているだろうか?

 

そして待ってる間も時計は相も変わらず時を刻む。長針はそろそろ一周してしまう。

それに伴い不安が積もる。

 

「…流石に長すぎませんか?」

「え、ええ…美穂子がそんなに長く説教するなんて思えないし」

「……京ちゃん、もしかして…」

「…うーん?何がどうなったらこんなに長く…?」

 

困惑する少女たち、そのうちの一人は目から光を失っている。急性京ちゃん中毒である。

 

そしてここにもプルプルと震える少女が一人、元凶の片岡優希である。

自分が唆したせいで、彼が覗きをしてしまい、そのせいで小一時間も説教されている…と思っているのだから、罪悪感はマシマシのマシマシである!

居ても立っても居られない、そんな想いが募り募って

 

「わ、私もおねーさんに謝りにいくじぇ!!」

 

立ち上がる少女!駆ける少女!ドアを弾け飛ばす少女!

そのまま部屋を飛び出し、超特急で廊下を駆けては駆けて、あっという間に曲がり角へと消えていく。

 

「お、おい待て優希!」

 

慌てて制止する染谷まこ。だが、いない者は返事をしない。返ってくるのは虚無ばかり。

 

「……部長、私たちも行きましょう」

「え、ええ、もちろんよ」

(咲さんがちょっと怖いです)

 

宮永咲、そのアンテナが何かを受信したのか、風格を漂わせてすくっと立ち上がりそう進言する。

残る四人も部屋を飛び出したはいいものの…

 

「…どこの部屋かしら?」

「え?」

「あ」

「へ?」

 

誰も肝心の部屋を知らない!

どこに居るのだ京太郎!どこに行ったのだ片岡優希!どの部屋なのだ福路美穂子!

先ほどの事情聴取はなんだったのか、一番大事な情報が致命的に抜け落ちていた!

これも、あのタコス娘の陰謀……ではなさそうである。ならわざわざ宣言して部屋を飛び出さない。

 

「たぶんこっちだと思います」

「やめろ咲!お前のこっちはアテにならん!」

 

そうしてオロオロしていると

 

『そこに直れーーー!!』

 

あの可愛らしい声が聞こえてきた

 

次に続く




おはようございます.
清澄書きたかった欲に忠実になった結果がこれです.尺伸ばしだけど許して?

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