さてはて、ここは清澄高校麻雀部、旧校舎のてっぺんに位置する部屋である。
そんな部屋の一角にはなぜかベッドが置いてある、これは果たして誰が持ってきたのか。某議会長が持ってきたのだろうか。
しかし、そんなことはどうでもいい。この男、須賀京太郎はこのベッドですやすやと寝息をたてている。
先ほどの半荘がよっぽど堪えたのであろうか。もう既に夢の中へ、夢の中へ行ってみたいと思ったらしい。
そんな京太郎、当然意識はない、もちろん周りで何が起こっているか分かっていない。
さてさて、今回は視点を変えて、この部室でのやり取りを見てみようか。
卓では早速次の半荘が始まって…いない。それどころか、誰も卓に座っていないのである。
「え、えーと、私が抜けますね、一位になりましたし」
「いやいや、私はタコスが切れたから買ってくるんだじぇ!打ってていいじぇ!」
「あら、そんな遠慮しなくていいのよ?私はもう引退したような身だし、四人で打っていいのよ?」
「わしは少し疲れたから休んでもええか?その四人で打っといてくれ」
「でしたら、少しお茶でもいれましょうか?」
どうしたのであろうか、このジャンキー達、なんと席を譲りあっているのである。
まさしく天変地異、三度の飯より麻雀が好きと言いだしそうな五人が皆揃って卓につこうとしない。
こんな状況で原村和はお茶を淹れにいき、片岡優希はタコスを買いに行き、宮永咲は本を読み始め、染谷まこはソファーに寝転がり
竹井久は…おっとこの議会長、スッとベッドの方に進路を定めて歩いている。
そんな部長に対し、ソファーに転がる染谷まこ
「おう、どうしたんじゃ久?そっちはベッドしかないぞ?」
こう発言し、竹井久に干渉する。
「え、ええ、須賀君の様子をみようかな、って」
この議会長、意外にも素直な返答、それに対し染谷まこ
「そんなこと言って悪戯とかせんじゃろうな?」
この言い草である。一年以上の付き合いなのにこの信頼度、いや、だからこそと言うべきか。
「そんなことしたらいけませんよ、須賀君は疲れていますし、しっかりと休息を取らせるべきです」
ここ原村和、そんな会話を聞いていたのか、部長に対し釘を刺すように忠告をする。
「し、しないわよ!というか酷くない?私ってそんなに信用できない?」
この集中砲火に対し竹井久、涙目になりながら否定している。かわいい後輩たちに信用されてなくてショックを受けてるらしい。
女三人寄れば姦しいとはよく言ったものだ、寝ている京太郎をよそにワイワイと騒いでいる三人組。
おや、片岡優希はタコスを買いに行っているから、部室には四人いるはずである。もう一人は何をしているのだろうか。
その文学少女、何ということであろう、ステルスモモもビックリなスニーキング技術によって、ベッドに腰掛けているではないか!
これに気づかず騒ぐ三人。それも仕方ない、三人からはベッドの位置はつい立によって丁度死角になっている。
この文学少女、それも計算しているのか、中々なやり手である。伊達に魔王と呼ばれていない。
さてさて、絶好のポジションを得た幼なじみ、果たして京太郎の隣に座って何をするのだろうか…
おおっと!撫で始めた!髪の毛を優しく撫で始めたではないか!その表情は慈愛に満ち溢れている。
触られているのが心地よいのか、須賀京太郎は安らかに眠っている。そんな顔を見る魔王、何か辺りを気にしている。
三人がまだ騒いでいるのを確認して、少し深呼吸し、そして、その顔にゆっくりと顔を近づけて…
「タコス買ってきたじぇ!」
バンッと大きな音と共に帰ってきたタコスの化身、片岡優希のお戻りだ。
これによって宮永咲、ビクンと大きく体を跳ねさせ、慌てて小説を読んでるフリをする。
しかし悲しい哉、その小説、逆さまだ。伊達にポンコツ扱いされてない。
そんな咲ちゃんを見つける優希。扉の位置からは死角ではないので、おかしな状況に首を傾げて
「咲ちゃん、何をしているんだじぇ?」
そんな言葉にハッとなる三人組、慌てに慌てる宮永咲、タタッと近づく片岡優希。
原村和、こんな咲の様子を見て、ジト目で何かを訴えかける。
染谷まこ、逆さになってる小説に思わずツッコミをいれてしまう。
竹井久、咲の動揺っぷりとポジションから何かを察する。
片岡優希、何かを勘ぐる。
そんな四人に対し、宮永咲、こう証言する。
「べべべべつになにもしようとしてないよ!」
嗚呼愚か也。ホントに何もしようとしてない人は、どもりながらこんなことは言わないのである。
確信する四人、始まる尋問、さあさあ楽しい時間の始まりだ。麻雀は知らん!
「へぇ、何をしていたのかしら」
「そうじゃのう、小説を逆さに読むぐらいじゃから、そうとう慌てとったみたいじゃな」
「咲さん、もしかして須賀君に変なことをしようとしてたのでは…」
「もしかして、チューしようとしてたのか!?」
このタコス、ど真ん中にド直球を放り投げた!もはや尋問どころではない!
「ぅええ!?ししししてないよそんなこと!!」
このテンパりようである。原村裁判長、判決を下す。
「咲さん、こっちに来ましょうか」
ソファーを指差す裁判長、いそいそと魔王を運ぶワカメとタコス、何かを探す議会長。
「え、えーっと、何をするのかな?」
この魔王、魔王とは言っても、勇なまの魔王のようである。
「あ、筆あったわよ」
「お、いいもん持ってるじゃないか」
「そりゃもちろん、悪い咲ちゃんには」
「罰を与えませんといけませんね」
ガシッと四肢を掴む片岡と原村、筆を持つは染谷と竹井。四人ともいい笑顔である。
慌てる宮永、裸足にさせられる宮永、服を軽くはだけさせられる宮永。
ガッチリと抑える片岡と原村、露出した肌にそっと筆を沿える染谷と竹井、そしてそのまま筆を…
突如響き渡る笑い声、痙攣する魔王、喜々として拘束する同級生、上級生に慈悲はない。
さてさて、そんなに騒ぐとどうなるか。ここで京太郎起床する。
寝ぼけまなこを擦り、何が起きているのかとスッとソファーを見てみると
そこには五人がまぐわりあっているではないか!
ああ、どういうことだと混乱する京太郎。
ここで京太郎、寝ぼけた頭でこう思考す。
__ま、まさか、『麻雀が強い人がいい』ってそういうこと…?
ああどういうことなのか、そういうことではないぞ京太郎、勝手に他人の性癖を決めるな京太郎。
__そ、そうか、それなら納得かも…
何を言ってるんだ京太郎、勝手に納得するな京太郎、咲を総受けにするな京太郎
__和は前から咲に対して様子がおかしかったし、あ、あり得るかも…iPS細胞とかの話も
ああ悲しい哉、原村和、勝手に同性愛趣向認定されてしまう。その行動は友達が少ない故の距離感を測り間違いなのに。
__見なかったことにしよう
そう思い不貞寝する須賀京太郎、いかん!このままではそういうことになってしまう!
「や、やめて!もうくすぐらないで!」
一際大きく響く声、それを聞いた京太郎
__あ、なんだ、ふざけてるだけだったのか
勘違いも解けたようだ、良かった良かった、あのままだったらギクシャクしていたであろう。
ここで須賀京太郎、ベッドからのそのそと降りるとソファーに向かって歩きだす。
そんな彼に誰も気づいてない様子、さあさあ、どうなることやら。
次に続く