月になる物語   作:オティンティン大明神

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平和の象徴 上

オールマイト。彼のことを聞けば誰もが口を揃え、賞賛と共に栄光を称えた称号を口々に話すだろう。

 

曰く 最も偉大なるヒーロー

曰く 絶対的なヴィランへの抑止力

曰く No.1ヒーロー

曰く 宇宙一安心出来る「私が来た」

 

他にも彼を称える称号は文字通り山の如く存在する。彼が行った善行はそれこそ世界レベルの偉業と共に、その称号は膨れ上がっているのだ。

 

普通の職場で就労が果たせない社会的弱者の為への為に資金を惜しみなく投入し、結果として1つの市場を生み出したり、事件や事故によって家族を失った子ども達の為の児童養護施設並びに、心身に障害を持った人達の為への就労施設を全国各地に建設したりと。彼が行ってきた社会奉仕を挙げれば文字通り日が暮れてしまう。

 

文字通りの社会への滅私奉公。彼が放つ絶対的な安心感と、全てのヒーローが束になろうとも超える事が出来ない社会貢献の数々。この個性社会に産まれた英雄だと誰もがオールマイトを称えた。

 

他の追随を許さぬ圧倒的な戦闘力に、どんな中でもユーモアを忘れない精神。それは人々に安心と安寧を齎すようになり、何時しか彼はこう呼ばれるになる。

 

曰く 平和の象徴と。

 

平和の象徴オールマイト。彼がソレを初めて見たのは雄英高校ヒーロー科の入試試験だった、弟子の育成と後進の育成の為に根津校長から進められた教職での初めての仕事は受験生の合否に関わる事。モニター越しに様々な受験生を見、点数を出していく。

 

そんな中で1人の少年を彼は見た。高層ビルをも超えた巨体を持った鉄の巨人へと挑み、撃墜に至った益荒男。鉄の巨人を打ち倒したのは自分の弟子含めてこれで2人目。

撃墜p並びに救助pを含めての堂々の入試試験1位。これ程の期待の新星がいるものかと。一部の教員達が喜ぶ中、合格者の出願書の確認を行うオールマイトの目にそれは映った。

 

生徒会長兼風紀委員長に、様々なボランティア活動への積極的な参加。それらは確かに好印象を感じる経歴だったのだが、それよりも小さく書かれてあった一点に彼は目を奪われた。

記入必須の個性欄に書かれてあった文章。

 

『無個性』

 

文字数にしてたった3文字、他に書かれてあった輝かしい経歴と比べれるとそれは酷く小さな物だったが、彼にとってその言葉はどんな言葉よりも大きく見えた。

 

「無個性……ッ!? 彼が無個性だと!? 」

 

オールマイトの絶叫にも似た悲鳴に職員達の意識が集中し、誰もがオールマイトが見ている書類を見て声を失った。

 

無個性、それは力なき者の総称。雄英高校ヒーロー科の基本理念として、最大限まで個性を伸ばし。卒業後、第一線で戦えるヒーローを育てるを根底に置いてある。鍛える個性がなければ実力を伸ばしても、個性持った者と比べ、その成長は微々たるものだ。

それほどまでに個性持ちと無個性には差があるのだ。

 

ここで合格確定で未来のホープとまで思われていた少年の入学の是非が問われ始める。意見は完全に2つに別れた。一つは雄英高校の理念である『plus ultra』の精神をもって合格とし、彼に誰よりも苦難の道を与えるのか、それとも、別にいる将来性に溢れた生徒を彼の代わりに合格とするか。ヒーロー科では、個性を伸ばすのが大前提。ない物は伸ばせない、故に不合格にするか。

 

「ハァァァン!? テメェら脳味噌腐ってんのかアァ!? さっきまで賛成してただろうが! 文句言いたいなら校長血塗れにして言いやがれファ○キンサノバビ○チ! 」

 

合格派筆頭のプロヒーロープレゼントマイクが罵詈騒言を反対派へと言い放ち、血塗れ宣言した校長が困ったように両肩をあげ、困り果てた声色で言葉を零した。

 

「……これは想定外だったねぇ。受験生が12000人もいるからろくに書類なんて見れないし、実力主義で決めるから書類なんて後で見れば良いさの精神がここで仇となるとは」

 

「……くだらん、ヒーローの本質は個性の有無じゃないだろうが。役に立たない個性を鍛えるよりも身体を鍛えるほうが合理的な場合もある。

俺の戦闘スタイルは基本的に体術に依存している、基本的に無個性の奴と同じだ」

 

基本的な戦闘スタイルが体術故に、イレイザーヘッドも賛成の意を示す。

 

「しかしなぁ……無個性がヒーロー活動を行うというのは個性を持っている者達や雄英を落とされた者達から反感を買うぞ。下手すれば卒業し、ヒーローとして活躍する彼が一般人に襲われる可能性もある。それに個性がなければ限界突破は出来ない。つまり短期間での実力アップが図れないんだ。これはデカいぞ、他の者達が個性を使い続け実力を磨きあげる中、自分だけは身体と技術しか鍛えられない。戦闘で切れる手札が肉体のみなんだ」

 

プロヒーロースナイプが合格にするべきではない。と、声を上げた。無個性は世間一般的に弱者の扱いを受けている。力なき者が、ヒーロー科の花形である雄英高校を合格し、プロになれば嫉妬心から襲われたり嫌がらせを受けたりするかもしれない。スナイプはそこを危険視していた。

 

「……僕もスナイプ先生の意見と大体同じです。ヒーローでない者にも危険な個性を持っている人はいます。もしもそんな人達が彼に危害を加えでもすれば……ただでさえ無個性の話題はデリケートなのです。下手をすれば雄英高校の存在意義に発展する可能性があるかもしれません」

 

自身の凶悪過ぎる個性故に、そんな可能性を示す13号。

 

喧々騒々とボルテージが上がっていく会議、一触即発とも言える険悪な空気が彼等を支配していく中でオールマイトは考えていた。

 

「(彼は……あの時、緑谷少年によって初心を思い出した。ヒーローを目指すのに個性は関係ない、だが……世論は無個性がヒーローになるのを認めていない。 私達ですら対立するのだ)」

 

彼は国民の平和の象徴となる為に走り続けた。不動のNo.1ヒーローとなり、自分こそがヒーローの体現者となるべく走り続けた先にあった世界は、幼い頃に目指した世界になっているのか?誰もが怯えずに暮らせる世界は成されたのか?

 

「(無個性だからと道を閉ざされる。本当にそれで良いのか? )」

 

『──個性がなくても、貴方みたいなヒーローになれますか!? 』

 

脳裏に思い浮かべた弟子の姿に苦笑する、あの時は無理だと言ってしまった。本来、私だけは他の誰かに何と言われようとも肯定すべきだったのに。

 

「(……ヒーローとは、難しいものだ)」

 

 

「ヒーローってのは力云々じゃねぇだろうが! 」

 

誰かが言えば

 

「その結果、あの子に被害が及ぶ可能性がある。と言ってるんだ」

 

誰が返し

 

「……ヒーローになるんなら個性があろうがなかろうがその覚悟はするべきだ、合格にしない理由にはならないだろう。あの成績で合格にしないのならば、他の奴の個性もヒーローに向いているか否かを論ずるか?

全くもって合理的じゃない……ヒーローをヒーローたらしめるのはその意思、ただ一つだ」

 

「……それは先輩の言う通りです。しかし、無個性はそうなる可能性が余りにも高い。誰かを助ける為に戦う背中に市民の刃が刺さる可能性、それはヒーロー社会の死と直結する可能性がある。幸いにも彼は、非常に優れているようです。あの経歴があるなら何処でも頭角を現すと思います」

 

返し、返し合い。

 

「教員が生徒の道を閉ざそうとしてどうするのだ……ッ! 俺達は教師でありヒーローだぞ! 子どもを育て、守る義務がある! そこに子どもの個性の有無など関係ない! 」

 

激昂し。

 

「ケケ……それほど無個性っていう事が面倒臭いって事だろ。下らねぇ、サポート科にそんなのはないから、気が楽だナ」

 

話題そのものが下らないと一蹴する。

 

最早爆発寸前、誰かが何かを言えばこの場は戦場になる。辺り一面が殺気に満ちた緊張感に支配され、一秒が永遠に感じられる程の緊迫感の中、鼠が声をあげた。

 

「──君達の意見は良ーく分かったのさ! これ以上、話し続けても結果は出ない! そうじゃないのかな? 」

 

無言を肯定と受け取り、鼠は話し続ける。

 

「……ここはもう君達が決めるのではなく、この場で最もヒーローであり続けた彼に決めてもらおうじゃないか! 」

 

そう言いながら鼠はオールマイトを指す。この場にいる誰もがオールマイトを見詰めたのを確認し、ゆっくりとこの場にいる全員に、言い聞かせるように、言葉を続けていく。

 

「彼はこのヒーロー社会を作り上げたと言っても過言ではない存在。そんな彼が無道一夜君と話を行い、その中で決めた答えこそが、この場の中で最も正しいと僕は思うのさ! 皆はどう思う? 」

 

平和の象徴 オールマイトが答えを決める。その言葉を聞き、爆発寸前の空気は少しずつ抜け出し、最初に返事をしたのはプレゼントマイクだった。

 

「……ウーム。まぁそれなら仕方ねぇか、俺はノーマンタイだ、オールマイトなら公平な答えを出すだろうしな」

 

「……まぁ、オールマイトさんが出す答えなら、こんな決着のつかない無意味な会議をするよりも合理的だ。俺も異議ありません」

 

誰もがその言葉に同意し、鼠はオールマイトをへと指令を出す。内容はただ一つ、見定める事。無個性であろうとも、ヒーローになるに相応しい器を秘めているのかの確認。

 

「オールマイト、君が個人で行う初めての仕事なのさ! 内容はただ一つ。無道一夜が真にヒーロー科に相応しいのか見定める事! 宜しく頼むよ? 」

 

「……分かりました。無道少年と話をしてみます」

 

元は無個性だった自分が、無個性の少年がヒーローに相応しいのか見定める。余りにも皮肉が効いているとオールマイトは内心で笑い、了承した。

 

だが、彼と話をしてみたかったのも事実であった。

個性を持たないただの少年が鉄の巨人に立ち向かい勝利する。言葉にすれば簡単なものだが、現実的な話をすればこの個性社会に於いてもそんな奇跡は物語の中でしか起こりえない。一体どれ程の修練に身を費やしたのか、どれ程の堅い決意を秘めてこの雄英高校に入学しようとしたのか、それが気になっていた。

 

「(無道少年……! 君の全てを聞かせて貰うぞ! )」

 

 

無道一夜 面接試験突入決定。

 




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・(無個性なので個性持ちと同じように合格するのは)駄目です
・オールマイトは大英雄
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