死が二人を分かつまで【完結】   作:garry966

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死が二人を分かつまで 第十話中編「What are we fighting for?」

 ビルを出て数キロ歩いた。都市の中心部に近づくにつれて廃墟と呼ぶにふさわしい風景になっていく。壁面は風化し、コンクリート片が傷だらけの道路にまき散らされている。爆風で完全に倒壊してしまった建物も多い。グリフィンも鉄血もこの地域に興味を示さない理由が分かる。ここには利用価値のあるものなど何もないのだ。

 

 指定された集結地点はハンバーガーショップだった。一階建ての小さな建物で、核攻撃の後もなぎ倒されずにそこそこの状態を保っているようだ。いつか指揮官が買ってきたハンバーガーの包みに印字されていたのと同じ黄色いロゴが看板に描かれている。もちろん営業はしていないが、すでに先客がいた。グリフィンの人形部隊が店を占拠して四方を固めている。金髪の人形が走り寄ってきて私たちを店内に出迎えた。

 

「増援部隊だよね、待ってたよ。私はK5。この部隊の小隊長だよ。この辺りでパトロール中だったんだけど、指揮官から命令を受けてここに派遣されたの」

 

「私はM4A1。AR小隊の小隊長です。司令部から命令を受けて来ました。状況は?」

 

 私はM4の表情を横目で見た。少し気がはやっているのかもしれない。いつもローテーションのような任務を司令部から与えられて、それを淡々とこなすだけだった。今回のような突然の事態は初めてだ。落ち着かないのも無理はない。

 

「まだ聞いてない?じゃあ説明するね。救難信号を出した施設は情報部の前線基地デルタ、略称FOB-D。ここから運河を渡って10キロほど東に行ったところにあるよ。そんなところに基地があるなんて知らなかったし、指揮官たちも知らなかったみたい。混乱して対応が遅れてる。詳しい状況は不明だけど鉄血の襲撃を受けたんだと思う。廃ビルの地下を改装して利用してるみたい。駐屯しているのは人間が二十名、戦術人形が十体。今は通信が途絶してる」

 

「連絡がつかないの?誰とも?それに鉄血の襲撃ってどういうこと?」

 

 M4が矢継ぎ早に質問した。

 

「端末を見てみて。さっきまでそんなことなかったのに通信状態が著しく悪いの。指揮官ともつながりにくくて指示が受けられない。鉄血からジャミングを受けてるとしか考えられないよね。グリフィンが使ってる長距離通信の周波数を狙い撃ちにされてる。今までこんなことなかったのに……情報が漏れてるとしか思えないな。鉄血の部隊は実際に目で見て確認したよ。私が偵察に出たけど運河の沿岸に沿ってイェーガーが配置されてる。これが包囲の外環だと思う。FOB-Dは包囲下にあるよ。基地の位置を特定しているみたいな動きだね。救難信号が出る以前から知っていたみたいな感じがする。指揮官も知らなかったのに何かおかしな感じ」

 

 K5はそう言って東に目をやった。心配しているというよりは疑念のにじんだ表情をしていた。その時、遠くから銃声が聞こえてきた。K5が見ているのと同じ方角だ。連続した激しい発砲音、両陣営の人形たちが戦っているのだ。まだ生きている人形たちがいる。

 

「グリフィンの仲間が包囲されているなら助けに行かないと……!グズグズしてる暇はないわ!あなたの部隊とAR小隊で包囲を突破しましょう。指揮官と連絡がつかないなら私が代わりに指揮を執るわ。私には指揮能力があって、緊急時には指揮を代行する権限も付与されています。私は救援という任務を与えられているから条件は揃ってるわ。作戦を立てたらすぐ行きましょう」

 

 M4は興奮しているようだった。彼女は本部に居た時に指揮訓練もこなしていたし、指揮官から直接指導も受けていた。グリフィンで最も優秀な指揮官の一人から教育されたのだから、成長を実感しただろうしそれなりに自負もあるだろう。しかし、実戦に投入されてからその能力を発揮する機会はなかった。AR小隊以外と関わることすらほとんどなかったし、与えられたのは細かな任務ばかりだった。今回は力を発揮するのに絶好の機会というわけだ。

 

「包囲を突破するならとりあえず運河を渡らないとね。すぐそこに橋があるからそれを渡ればいいんだけど……私たちは行かないよ。ここに待機する」

 

「そんな……どうして?助けを求めている仲間がいるなら助けないと……でないと見捨てたことになるわ」

 

 言い切ったK5にM4が食ってかかる。K5は真剣な眼差しでM4を見据え、はっきりとした口調で説明した。

 

「橋の向こう側は鉄血も防御を固めてるよ。道の両側にイェーガーが配置されたスナイパーストリートになってる。橋以外の地点を渡ってもいいけど敵前渡河になる。私たちはそんな訓練を受けてないし、絶対に損害が出る。私は指揮官の部隊を任されてるから仲間全員を守る責任がある。リスクは冒せない。それに私たちは指揮官の命令を受けている。悪いけどあなたに指揮権を譲り渡す気はないよ」

 

「我が身可愛さで仲間を見捨てる気!?この銃声が聞こえないの!?まだ中で戦ってる!」

 

 M4が基地の方角を指差して叫んだ。銃声は次第に散発的なものに変わっていた。

 

「仲間か、そうだね。今あそこで戦ってるのは同じグリフィンの仲間だね。でも、全員守ることなんてできない。私たちにそんな力はないよ。守れる範囲のものだけ守る。それに……私は私の指揮官のために戦う。指揮官から信頼してもらって、部隊を任せてもらっているから。その期待に応えるために戦う。グリフィン全体のことは……よく分からないな。あと、これは直感だけどもう間に合わないよ。時間が経ち過ぎた。今から助けに行ってもほとんど生き残りはいないと思う。私たちが行ってもミイラ取りがミイラになるだけ。だから私たちはここで待機する。あなたたちとは行かない」

 

 唖然とするM4をよそにK5を見た。M4には悪いがこれが普通だ。彼女は前線でしっかりと経験を積んでいるのだろう。グリフィンへの忠誠も薄れ、次第にもっと小さな範囲のもののために戦うようになったのだ。M4はまだ経験が浅い。押し付けられたグリフィンへの忠誠を疑うことをまだ知らない。能力に裏打ちされた万能感もある。相容れないのは当然だ。私もグリフィンの人形すべてのために命を張る気はない。

 

「M4、何を言っても無駄よ。この部隊は動かない。私たちだけで出来ることを考えましょう」

 

 悔しそうなM4をなだめる。他の部隊を指揮するという夢は潰えたのだ。何でも上手くいくわけじゃない。

 

「M4、あんたはどうしたいの?包囲されてる連中を助けたい?」

 

「ええ、そうよ。AR-15は違うの?普通のことだと思ってたけど……」

 

「何のために?」

 

「何のためって……助けたいと思うのは当然だと思うわ。助けられる命があるなら、助けたい。助けられるのに見捨てて後悔したくないわ」

 

「……そう」

 

 これでグリフィンのため、とだけ言うのならしつこく質問攻めにしてやろうかと思っていた。だが、予想していた答えとは少し違った。後悔したくないからか。私は指揮官の部隊のことを思い出していた。失ったものは取り戻せない。指揮官の後悔は想像もつかない。私も彼女たちを使い捨てにしたグリフィンを恨んだはずだ。包囲されている人間や人形も誰かの大事な存在なのかもしれない。今、ここで何もしないでいれば私も同じになってしまうのではないだろうか。また指揮官に会った時、顔向けが出来なくなってしまうのではないか、そんな想いに駆られた。

 

「M4、これだけは言っておくわ。K5が言った通り、全員を助けることはできない。私たちは救世主ではないのだから。それでもあんたが誰かを助けたいと言うのなら……協力するわ」

 

「ええ、私は誰かを助けたい。あなたが言っていた戦う理由というのも、きっとそこにあると思う。私も好きに生きるわ」

 

 私はその言葉に頷いた。彼女もただ命令されたから戦うわけではないのだ。感情があるのだから、それを無視して生きることはできない。これはM4が自分で考えた選択肢のはず、成長している証だ。今はまだ彼女の言う“私たち”は範囲が広い。グリフィン全体をも含んだ言葉だ。戦っていくにつれて自分でその言葉の対象を決められるようになる。だから、戦いから逃げていてはだめだ。危険だとしても私たちにとって必要なことのはずだ。

 

 端末から付近の地図を呼び出してAR小隊に共有する。基地の正確な位置をマッピングした。

 

「ここが目標地点。まだ基地で戦っているのか、すでに脱出しているのかは分からない。とにかく包囲の内側に入って状況を確認しないと。K5、他にも増援は来る予定なの?」

 

「不明。でも私たちを筆頭に付近の部隊は全部呼び出されたはずだよ。私たちは本隊の到着と指示を待つ」

 

「そう。本隊が到着しても攻勢に打って出る前に偵察が必要でしょうね。まだ敵の戦力も分かってない。手をこまねいている時間はない。なら私たちが先にやっておくべきでしょう。AR小隊の本分は敵前線後方での行動よ。斥候も担えるはず」

 

「そうね。でも、どうやって包囲を突破すれば?橋の先がスナイパーストリートになっているのなら私たちの戦力で正面突破は難しいわ。迂回して別の橋を見つける?あまり時間はないと思うけど……それとも運河を泳いで渡る?狙い撃ちにされるわよね」

 

 M4が口に手を当てて悩む。遮蔽物の無い橋の上をイェーガーの銃火に身を晒しながら走り抜けるというのはぞっとする。渡河も危険だ。夜ならともかくまだ明るい時間帯だ。見逃してくれるほど鉄血も間抜けじゃない。私は別のルートを提案することにした。都市を東西に貫く線が地図に描き出される。

 

「地下鉄を使いましょう。この街の地下にはアリの巣みたいに地下鉄網が走ってる。鉄血もすべてを警戒することはできないはずよ。この店のすぐそばにも駅がある。運河の下にもトンネルがあるわ。それを辿りましょう。上手くいけば戦わずして包囲の内側に飛び込めるかもしれない。情報を収集し、機会があれば味方を助けましょう。そのまま見つからずに地下鉄で撤退する、これがプランよ。その後、本隊と合流して攻撃に出ればいい。出来ることをしましょう」

 

「地下鉄……そうね。地上でイェーガーから十字砲火を受けるより地下を通る方が安全かもしれないわね。分かった。ありがとう、AR-15。姉さんもSOPⅡもそれでいい?」

 

 M4が尋ねるとSOPⅡは自信満々という風に親指を立てた。

 

「もちろん!早く鉄血をやっつけよう!実戦に出たのに最近つまらなかったからね。これならシミュレーションの方が楽しかった。もう戦いたくてウズウズしてるよ!」

 

 SOPⅡは自分の銃を愛おしそうに撫で上げながら言った。横でM16が肩をすくめる。

 

「私はM4の判断に従うさ。だがな、SOPⅡはこう言ってるがあまり戦うべきじゃないな。包囲のただ中に飛び込むんだ、危険だぞ。今までとは比べ物にならない。迅速に行動して速やかに脱出しよう」

 

「そうね、私も同意見よ。極力戦闘は避けましょう」

 

 私はM16の意見に賛同を示す。M4も頷いて方針が決まるがSOPⅡだけは不満そうに頬を膨らませていた。行軍用のバックパックはその場に置いて身軽になる。侵入に気づかれて囲まれる前に素早く任務をこなそう。店から立ち去る前にM4が再びK5に確認した。

 

「K5、私たちは行くわ。あなたたちは来ないのね?」

 

「うん。私たちは敵前線後方への浸透とかそういう訓練は受けてないから。行っても足手まといになるだろうし。あと、通信状態について確認しておくよ。長距離通信は使えない。もっと古い型の通信機器でも持ってくればよかったかな。それなら使えたかも。人形間のデータリンクは使えるけど、これは短距離にしか対応してないし。包囲の内側に入ったら多分私たちとも通信できなくなる。包囲されてる部隊の情報もあまり入って来てない。向こうのアドレスが分からないから通信できない。全部手探りになると思う。それに鉄血がかなりの規模の部隊を動かしているなら指揮しているエリート人形がいるはず。これとは戦うべきじゃない。普通の鉄血人形とは能力が桁違いだから四人じゃ勝てないよ。あまり行くのはおすすめしないけど、止めはしないよ。幸運を。運命の導きがありますように」

 

 K5に見送られ、私たちは地下鉄の駅に向かった。鉄血のエリート人形、私たちはシミュレーションでそうした相手と戦った経験がない。その能力はまだまだ未知数なところが多いからだ。シミュレーションで再現できるだけの情報がまだない。指揮官の部隊はエリート人形とも戦っていた。恐らく並の相手ではない。いくら私たちがハイエンドモデルだといっても戦うのは避けるべきだ。敵地で戦うのだから戦闘に時間をかければかけるほど不利になる。こんなところで死ぬのはごめんだ。まだ私はやり残したことがいくつもある。指揮官にだってまた会いたいのだから。

 

 

 

 

 

 地下へと続くエスカレーターを下る。延々と続く段を一歩一歩踏みしめる。入口付近は日の光が差し込んでいたが、次第に闇が深まっていく。漆黒に向かって突き進んでいるかのようだ。核シェルターとしての役割も果たすように設計されているこの地下鉄は地表から遠く離れた場所にある。そのため内部の状況は外よりも格段に良い。電気が通っていれば営業も再開できるだろう。

 

 下り終えて駅のホームに出る。もちろん照明などついていない。完全な暗闇がそこにあった。暗視モードを起動してはいるが視界がほとんど利かない。データリンクでお互いの位置を把握しておかなければすぐに見失ってしまうだろう。こんな状況で鉄血に待ち伏せを食らったら一巻の終わりだ。銃の安全装置を外しておく。暗闇の中からM4の声がした。

 

「暗いわね……フラッシュライトをつけるべき?」

 

「だめね。トンネルの先で待ち伏せられていたら明かりで位置がばれるわ。このまま行きましょう。接近戦にならないこと祈るわ。聴覚を研ぎ澄ますしかない」

 

 私はそう言ってホームから線路に飛び降りた。靴底がコンクリートの地面に当たってトンネルに音が響き渡った。全員分の足音がトンネルにこだまする。この調子ではライトをつけていなくても先にばれるのはこちらだ。足音を極力抑えようとしても静寂に支配されたトンネルでは少しの音も目立ってしまう。コツコツと靴を打ち鳴らしながらトンネルを往く。

 

 まとめてやられることを避けるためお互いに少し距離をとり、ひし形の陣形で進む。先頭はM16で殿が私だ。あまり警戒する必要もないのだが頻繁に振り向いて後ろを見た。闇の中にいると存在しないものまで恐れてしまう。誰かに見られているような、漠然とした不安に取り憑かれる。鉄血のみならず何か別のものに襲われるのではないかとまで思う。たとえば……映画に出てくるような超常の化け物とか。馬鹿らしい考えだ。しかし、私は天井の排気口にまで目を光らせていた。一番後ろにいるといなくなっても誰にも気づかれないかもしれない、そんな気がした。もちろんデータリンクがあるのでそんなことにはならないけれど。それでも私は不安だった。言い出しっぺではあるが早くもトンネルをルートに選んだことを後悔し始めていた。暗いのが怖いなどと言ったら馬鹿にされるな、そう思って平静を装う。思えば本部にいた時もシミュレーション・ポッドの暗闇が怖かった。あのポッドの中で何度も何度も死を経験したのが軽いトラウマになってるのかもしれない。

 

 どれもこれも指揮官のせいだ。私の想像力を豊かにしすぎたのだ。指揮官と一緒にいた時間は楽しかったな。一緒に映画を観て、食事をとって、おしゃべりして。いかなる悪意が介在していようともあの日々は本物だった。またあの時間に戻りたい、一歩闇を進むごとにそんな想いが強くなっていった。早く指揮官と再会して、よく頑張ったと頭を撫でてもらいたい。子ども染みた妄想が襲い掛かって来た。頭を振って雑念を払う。こんなことで弱気になっていてどうする。私は自らの責任を果たすと指揮官に誓ったじゃないか。

 

 突然足元で何かうごめいた。拳より大きな何かが私の足にぶつかって、動いた。生温かい何かが私の靴の上を這い上がった。

 

「ひっ……!」

 

 思わず上ずった声を上げて銃口を足元に向けた。暗闇の中に何か光る点が浮かんでいるように見えた。瞬時に照準を合わせ、引き金を引きそうになる。だが、よく見るとくすんだ体色をしたネズミだった。すぐにちょろちょろと私の足から離れ、闇の中へ消えていった。私は深くため息を吐き出した。恐ろしい化け物か何かだと思った。この地下鉄も街も人間が放棄しただけで他の生き物は残っているのだ。怖がり過ぎだ、自分で自分をたしなめる。

 

「AR-15?どうしたの?」

 

「何でもないわ、何でも」

 

 M4に心配されたが何も言わなかった。殿で助かった。今のを見られていたらまたからかわれるネタが増える。

 

 懸念に反して鉄血には遭遇しなかった。自分で言った通り、複雑に絡み合った路線をすべて警戒しておくのは無理だ。私たちは二駅分歩き、運河を越えた。ここを上がれば包囲網の中だ。

 

「待て、何かある」

 

 M16が緊張をはらんだ声で言った。すぐさま私も向かう。人型をした何かが枕木の上に転がっていた。M4がフラッシュライトでそれを照らし出す。人形の死体だった。赤いジャケットを羽織った金髪の人形だ。頭と胸、脚を撃ち抜かれ息絶えていた。

 

「これは……鉄血の人形じゃなさそうね。元々ここにあったというわけでもない。人工血液がまだにじんでる。銃から察するにステンね。グリフィンの戦術人形でしょう」

 

 私は死体のもとにしゃがみ込んで様子を調べた。9mm弾の薬莢がそこら中に散らばっていた。ここで戦闘があったのだ。地下鉄を通じて脱出を図り、追いつかれてやられたのだろうか。単独だったのか、仲間がいたのか、追っ手はどこにいったのか、疑念が渦巻く。上に上がったとしていきなり追っ手と鉢合わせではかなわない。

 

「……死んでしまっているの?」

 

 ライトの光でM4の顔は見えなかった。少し動揺のにじむ声だった。私たちがグリフィンの人形の死体を見るのは初めてだった。

 

「コアもメモリもやられてる……ダメね」

 

 私は頭を振る。明確な殺意がそこにはあった。復元できないように重要な部分を潰されている。どこかにバックアップがあったとしても彼女は消えてしまったのだ。人形もまた不死ではない、指揮官がそう言っていたのを思い出す。間に合わなかったのだ。見知らぬ人形だとしてもやり切れない気持ちになる。それはM4も同じなのか不安そうに言った。

 

「どうしよう、回収すべきよね」

 

「帰りにね。死体を担いで上に行くわけにもいかないわ。彼女は死んでしまっている。悪いけれど急ぎの目標ではない。今は置いていきましょう」

 

「……そうね」

 

 M4はしばらく死体を見つめた後、プラットホームに上がって階段を目指した。私たちも後に続いた。私はステンや指揮官の仲間たちのことを考えた。彼女たちはなぜ死ななければならなかったのだろう。なぜ鉄血と殺し合わねばならなかったのだろう。それが戦術人形の宿命なのだろうか。人間の道具として擦り切れるまで戦う。それが兵器としての定め。では戦術人形は死ぬために生まれてくるのか。そんなのは、ごめんだ。私は歯を噛み締めた。

 

 

 

 

 

 日の光だ。周囲を警戒しながら地下鉄を出る。辺りは異様に静かで敵影は見えない。道路に面したこの場所は見晴らしが良すぎる。奇襲されかねない。道路は南東に伸び、北には荒れ果てた公園が、後背には団地があった。

 

「団地に隠れながら進みましょう。基地の付近まで行って情報を収集し、戻る。それが最善だと思うわ」

 

 M4にそう言って再び陣形を組み、団地の狭い道路を進む。放棄されてから誰も足を踏み入れていなかったのか地面を蹴り上げると砂塵が舞う。埃臭さにむせそうになるが、黙って東を目指した。今、私たちは敵地にいる。張り詰めたような緊張に肌が焼けるようだ。

 

 銃声がした。断続的に街に響き渡る。M4が右の拳を頭上に挙げて、私たちはその場にしゃがみ込んだ。私たちが捕捉されたわけではないようだが、かなり近い距離から聞こえた。

 

「見に行きましょう。まだ助けられるかも」

 

 M4は焦ったように言うと返事も待たずに駆け出した。私たちも追いすがって団地の中のアパートに飛び込んだ。道路を見渡せる一室に入り込み、慎重に外の様子を見た。黒いジャケットを羽織った人形が道の向かいを走っている。次の瞬間、閃光がほとばしった。その人形の右腕が撃ち抜かれて地面に落ちる。バランスを失った人形はその場に倒れた。後ろからゆっくりと鉄血の集団が姿を現す。見覚えのない人形が先陣を切っていた。右腕がアンバランスに肥大化しており、その手で巨大な大剣を逆手に構えている。明らかにI.O.Pの技術体系とは異なる装備、データベースで見たことがある。

 

「鉄血のエリート人形、エクスキューショナー」

 

 私はすぐに照準を頭に合わせた。だが、撃つべきではない。ここで彼女を倒したとしても戦闘音を聞きつけて鉄血の部隊が殺到してくる。退路を失って帰還できなくなる。横目でM4の様子を見た。銃を構えているが発砲をためらっている。ここは抑えなければならない。

 

 エクスキューショナーは人形のもとに近づいていく。人形は這いつくばっていたが、どうにか身体を起こしてエクスキューショナーに向き合った。

 

「ウェルロッド、哀れな人形め。お前の仲間は全員死んだ。俺が生きたまま切り刻んでやった。みんな泣き叫びながら死んでいったぞ。お前の愛しの人間も豚のように死んだ。もうお前には何もない。人間なんかのために戦うからお前たちは弱いんだ。命乞いをしろ。大人しくデータを渡せばペットとして飼ってやる」

 

 エクスキューショナーはウェルロッドと呼ばれた人形を嘲笑った。獲物を追い詰めて油断した様子だ。左手に持った拳銃も空へ向けている。

 

「分かりました……あなたに従います。だから、お願いです。殺さないで……」

 

 怯えた表情のウェルロッドは媚びた声を出して懐に手をやった。瞬きほどの間もなく、ウェルロッドはエクスキューショナーのもとに飛び込んでいた。ばねのように飛び上がった彼女の手元にはナイフがあった。刃がエクスキューショナーの腹部に深々と突き刺さる。

 

「死ね……!鉄血のクズ!指揮官とみんなの仇だ!報いを受けろ!」

 

 闘志を剥きだしにしたウェルロッドがナイフを捻る。エクスキューショナーの顔からニヤつきが一瞬で去り、怒りに歪む。膝でウェルロッドの腹部を蹴り上げ、そのまま突き飛ばした。

 

「このグリフィンのウジ虫が!人間なんかに義理立てしやがって!」

 

 拳銃が火を噴き、ウェルロッドの身体をめちゃくちゃに貫いた。胸が、腕が、脚が、引き裂かれていく。グリフィンの人形が死んでいく様を目の当たりにしていた。引き金にかける指に力を込めそうになる。だが、ここで撃てば私たちも同じ目に遭う。こらえようとした、その時だった。横で銃声がした。サプレッサーをつけていても誤魔化しきれない弾けるような音。M4が引き金を引いていた。

 

「M4!?何を!」

 

「見捨てられない!AR小隊、攻撃開始!SOPⅡ、グレネード!」

 

「分かった!」

 

 SOPⅡのランチャーから擲弾が発射され、エクスキューショナーの後ろにいた鉄血人形たちを吹き飛ばした。エクスキューショナーは身を翻してM4の銃弾をかわす。手負いのくせに素早い。もう手遅れだ、グレネードの炸裂音で鉄血には完全に気づかれた。ならば目の前の敵を倒すしかない。エクスキューショナーの予測位置を割り出し、照準を合わせる。彼女の顔を中心に捉え、目と目が合った。もらった、そう思って引き金を引く。だが、目にもとまらぬ早さで身体を捻って銃弾を回避された。馬鹿な、あり得ない。そんな芸当はグリフィンの人形にはできない。スペックが違う、これが鉄血のエリート人形か。恐怖が襲い掛かってくる。死が鎌首をもたげてこちらを見ている、そんな気がした。

 

 AR小隊による全力の射撃もほとんど命中せず、エクスキューショナーは飛びのいて建物の影に隠れた。

 

「SOPⅡ、スモークを!彼女を助ける!」

 

 M4がそう指示を飛ばし、SOPⅡは素早くグレネードの再装填を済ませると発砲した。ウェルロッドが倒れている付近で灰色のスモークが立ち昇る。次の瞬間にはM4が建物から飛び出していた。

 

「クソッ!」

 

 私もその後ろについて走った。無茶が過ぎる。こんなところで私も彼女も死ぬわけにはいかないというのに。M4が煙の中に突入してウェルロッドを担ぎ上げる。辛うじてつながっていた脚が千切れて地面に落ちた。構わずに全力で引き返す。煙を抜け、ウェルロッドを見た。彼女もまた私を見ていた。人間なら確実に死んでいるであろう傷を受けてもまだ意識がある。

 

「AR-15……何故ここに……」

 

 ウェルロッドは弱々しくそう呟いた。なぜ私の名を知っているんだ。面識はない。疑問がいくつか浮かび、問い返そうとしたが、彼女はもう気を失っていた。今はそんなことを考えている場合じゃない。生きて帰ることだけを考えなければ。

 

「撤退だ!引き返そう!」

 

 M4より一足先にアパートに着いた私は振り返って銃を撃つ。煙の中からうっすらとエクスキューショナーの黒い影が浮かび上がっていた。M16が室内から飛び出してM4を庇うように前に出る。その時、エクスキューショナーが右手の大剣を振るった。煙が引き裂かれてはっきりと彼女の姿が現れる。その一閃が耳をつんざく轟音と共に衝撃波として飛んできた。直撃は免れたが打ち砕かれた壁の破片がM16のふくらはぎを撃ち抜いた。転倒した彼女の襟首をつかんで後ろに下がる。今のは一体なんなんだ。未知の兵器だ、データには載ってなかった。ちらりと斬撃を食らった壁を見た。コンクリートがいとも簡単に破砕され、大穴が空いていた。人形に当たったらバラバラになってしまう。死にたくない、ゆっくりと距離を詰めてくる敵を見ながらそう思った。私はもう完全に怖気づいていた。出来ることならM16を引っ張る手を離して尻尾を巻いて逃げたかった。そうしなかったのはプライドがあったからだ。責任を果たすと指揮官に誓った自分を否定することになる、それも死ぬのと同じくらい嫌だった。

 

「大丈夫だ、基部はやられてない。歩ける」

 

 引きずられながらも発砲していたM16がそう言って立ち上がる。皮膚が抉れて機械部分が露出していたが支障はないようだ。私たちは室内に逃げ込み、後ろにフラッシュバンを投げて時間を稼いだ。アパートを走り抜けて団地の中へ行く。来た道を引き返して地下鉄を目指した。幸いなことに手負いのエクスキューショナーは継続して走れないのかゆっくりとこちらに向かって歩いていた。

 

 だが、安堵したのも束の間、前方から銃撃を浴びせられた。騒ぎを聞きつけた鉄血人形たちが集結し始めていた。銃弾の雨を避けるために建物の影に飛び込む。一つ一つの発砲音が区別できないほどの連続した銃声。一瞬だけ顔を出して確認すると鉄血の機関銃手、ストライカーがいた。大口径のガトリングから放たれる弾丸が壁を突き破らんばかりに叩きつけられている。とても突破できない。退路を断たれた。このままではエクスキューショナーと挟み撃ちだ、殺される。

 

「AR-15、どうすれば!このままじゃ……」

 

 M4の言葉に私は心の中で、死ぬ、そう続けた。こんなところで死んでたまるか、死んだら指揮官にも二度と会えない。また悲しませることになる。まだ私は生き続ける、それが責任だ。

 

「地下鉄からの脱出ルートは放棄よ!団地はもう敵だらけ、北の公園に逃げ込むわ!M4、しっかりしなさい!あんたがリーダーでしょ!」

 

 泣き言を言わんばかりのM4の胸ぐらを掴み上げて奮い立たせる。私たちは団地を離れて道路に躍り出る。その先が公園だ。SOPⅡを先頭にウェルロッドを担いだM4と動きの鈍いM16を挟んで私が殿につく。代わりの脱出ルートは定まっていない。上手くいくと慢心していた。プランはもっとよく考えるべきだった。どうすればいい、運河に飛び込んで逃げるか。河岸にはイェーガーが配置されているとK5が言っていた。狙い撃ちだ。どこかに立てこもって救援部隊が来るのを待つか。いつ来るか分からない部隊をあてにはできない。四人だけじゃすぐに擦り潰される。見通しが甘かった、涙が出そうだ。感情的になったM4を引っぱたいてでも止めるべきだった。それが私の役割だった。

 

 私が道路を渡っている最中、ストライカーが団地から掃射を仕掛けてきた。道の脇に停めてあった車の影に這いつくばって銃撃を避ける。銃撃は車を軽く貫通し、車体が轟音を立てて歪んでいく。エンジンルームが辛うじて弾丸を受け止めて私の命を救った。貫通した弾でサイドミラーが弾き飛ばされ、私の前に落ちた。ひびの入った鏡に敵影が映る。位置を確認して車体前方から這い出す。赤熱した銃身をこちらに向けるストライカーを照準に捉え、短連射。胴体を貫かれたストライカーは後ろに力なく倒れた。なぜ殺すかなど考えていられない。まずは身を守らなければ。

 

 大きな公園だった。人が手入れをやめ、木々が生い茂り、複雑に絡み合っている様は森さながらだ。迷路のような森の中を木から木へと飛び移って動き回る。鉄血は私たちの居そうな方角めがけてめちゃくちゃに発砲していた。銃弾が木の表皮を抉り、枝をへし折る。木片が辺り一面に飛び散り、吹き荒れる嵐の中にいるようだった。私たちにプランはない。四方八方から吹き寄せる弾丸の風を避け、出来るだけ圧の小さい方角に走っているだけだった。

 

 私はそこで気づいた。私たちはイェーガーが待ち受ける包囲の外環に追い立てられている。鉄血は私たちを挟み撃ちにして一網打尽にするつもりだ。牧羊犬が羊の群れを柵の中に追い立てるように。このままでは殺される、恐怖と後悔、言葉に出来ない感情の束が胸の中で渦巻く。なぜこんなことに、どうして私たちを殺そうとするんだ。だが、立ち止まることも降伏することも叶わない。弾丸一発一発に明確な殺意が込められているのを感じ取っていたからだ。鉄血はこちらの息の根を絶対に止めようとしている。まったく経験したことのないほど巨大な憎悪を向けられて私は震えていた。

 

 私はほとんど戦意を喪失し、必死で誰かに助けを求めていた。誰か、誰か助けて。まだ死にたくない。こんなところで何の意味もなく死にたくない。生まれてきた意味も分からないまま殺されて風景に同化したくない。走りながら今までの思い出が走馬灯のように駆け巡る。ほとんど指揮官のことばかりだ。またすぐに会えると言ったのに二度と会えないまま朽ちるのか、嫌だ!私を探し出して助けると言った指揮官の言葉を思い出す。今、今がその時よ。指揮官、私を助けて。

 

 ほとんど泣きそうになりながら走っているとデータリンクを介した通信を受信した。すがりつくように交信を開始した。

 

『あんたがAR-15?ずいぶんドンパチやってるみたいね』

 

「誰!?なんで私のリンクを知ってる!?」

 

 声の主は指揮官ではなかった。知らない女の声、たぶん人形だった。

 

『説明してる暇はない。ともかくあんたの味方よ。脱出ルートを失ったんでしょう。スナイパーストリートに来なさい。新しい脱出地点よ』

 

「そこはイェーガーがいるんじゃ────」

 

『それから伝言も預かってる。“待たせたな”だそうよ。キザよね……』

 

 声の主は私の言葉を遮り、最後に呆れたように付け加えた。どういうことよ、そう言う前に一方的に通信を切られた。待たせたな?私を待たせてる人物なんて一人しかいない。なら……。

 

「M4!北西よ!スナイパーストリートに向かう!」

 

「え!?そこはイェーガーが……」

 

「いいから行くのよ!」

 

 私は縦列の先頭に躍り出て、小隊を先導した。恐怖と疑念を捨ててただ走る。喜びすら感じている。私が思っている通りの人物なら、私たちはまだ死ななくていいはずだ。公園を抜けて道路に出る。道なりに進めばスナイパーストリートだ。その先に運河にかかる橋がある。普通なら最も防備の厚い場所に何の確証もなく突入するのは自殺行為だ。だが、私は戸惑うことなく道を走った。

 

 通りは静かだった。だが、建物の脇から先回りしてきた私たちの鉄血の集団が行く手を遮る。後ろを振り向くとエクスキューショナーとその配下の部隊に追いつかれていた。

 

「馬鹿どもめ。よりにもよってここに逃げ込むとは。俺にとっては都合がいいがな。人間の墓場で死ね、ブリキのクズが」

 

 エクスキューショナーが手を振り上げて攻撃を命じる。勝利を確信した顔をしていた。同時に通りの両脇から発砲炎が上がった。青白い曳光弾の束が吹き出す。だが、それは私たちに向けられたものではなかった。

 

「なっ……!」

 

 掃射が鉄血人形の群れをなぎ倒す。エクスキューショナーの膝が撃ち抜かれ、彼女は驚愕の表情を浮かべた。すぐさま私はスコープを覗き、照準の中心をその顔に合わせた。膝をついていては回避行動はとれまい、ここで死ね。引き金を引いた。撃針が.300BLK弾の雷管を打ち、発射薬に点火。125グレインの弾頭がライフリングに沿って回転しながら銃口を飛び出した。音速の倍で飛翔する弾頭がエクスキューショナーの眉間に着弾し、頭蓋を突き破った。弾頭は変形し、縦横に回転しながらエクスキューショナーのメモリをぐちゃぐちゃに引き裂く。エクスキューショナーは力なく地面に崩れ落ちた。何が起きたのか分からないという風に慌てる生き残りの人形たちも建物からの激しい銃撃に倒れていった。

 

 銃撃が止み、路上に立っているのは私たちだけになった。数瞬の静寂の後、私はため息を吐いた。生き残った。死なずに済んだんだ、私は生きている。助かった。感情が溢れ出しそうになるのを押しとどめ、深く息を吐く。建物から桜色の髪をした人形がこちらにやって来た。私と同じ色だな、ぼんやりしながらそう思った。

 

「上手くいったわね。私はネゲヴ、ネゲヴ小隊のリーダーよ。あんたらを助けにやって来た」

 

 他の建物からも人形が二人出てきた。私は息も絶え絶えだったが何とか疑問を口にすることが出来た。

 

「あなたたちはどうやってここに?ここにいた鉄血は?三人だけで突破したの?」

 

「あんたたちが地下鉄から行ったから私たちは下水から這い上がって来た。人口密集地だったところには必ずあるからね。地下鉄よりも侵入経路が多くて小回りが利く。使えるインフラは何でも使う、都市ゲリラの基本よ。覚えときなさい。エクスキューショナーの奴が猪突猛進の馬鹿で助かったわね。あんたたちを追っかけ回すのに夢中で包囲が内側から食い破られてるのにも気づきもしないで。その間にイェーガーを一匹一匹始末した、静かにね。普通隠密作戦っていうのは静かにやるもんよ。どかんどかん音を響かせないでね。ま、あんたたちをおとりに使わせてもらったわ」

 

「どうして私のリンクを知ってたの?それに、あの言葉は……」

 

「聞かなくても分かってるんでしょう。だから疑わずにここに突っ込んできた。私たちの指揮官はあんたのストーカーだからね。それくらい知ってるわよ。まったく、付き合わされる身にもなって欲しいものだわ。お察しの通り、あんたがよく知ってる人間よ」

 

「そう……そうなのね。指揮官が……」

 

 私は力を失ってへなへなとその場に座り込んだ。胸中に安堵が満ちる。やっと指揮官にまた会える。長かった、死ぬかと思った、怖かった。緊張の糸が解けて涙を流しそうになっていたが、すぐにネゲヴに腕を掴まれて立ち上がらされた。

 

「安心するのはまだ早い。指揮官の見立てではエリート人形は一体だけじゃない。この規模の部隊ならもっといるかもしれない。私たちを排除しに反撃を仕掛けてくるはず。ここで橋を死守して橋頭保にするわ。本隊が到着したら反撃開始よ。鉄血を叩き潰す。腕が鳴るわね」

 

 ネゲヴは闘志に目をギラつかせながら道路の先を見た。そうだ、大元のFOB-Dは包囲されたままだ。まだ戦いは終わっていないのだ。ネゲヴは懐からスモークグレネードを取り出すと道の真ん中で焚き上げた。緑の煙が空に立ち昇る。

 

「これでハンバーガー屋の連中も来るわ。連中も強情なものよ、橋を確保するまでは動かないと協力一つしやしない。まあいいわ。拠点防御に移る。ついてきなさい」

 

 私たちはネゲヴの先導で通りを見渡せる建物に入った。後ろを振り返るとエクスキューショナーの死体が天を仰いでいた。


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