死が二人を分かつまで【完結】   作:garry966

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C97二日目南ラ08bにてAR-15の小説本を頒布します!三冊セット¥3000の予定です!

後日談『死が二人を分かつとも』より二編まとめてサンプル投稿します。
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詳細はTwitterにて!
https://twitter.com/garry966_966/status/1207584444791455745?s=20




【サンプル】死が二人を分かつとも「アイデンティティ」「夢みる機械」

アイデンティティ

 

 

 

 標的をスコープの中心に捉え、トリガーを引く。左肩にズシンと衝撃が伝わった。弾丸はホログラムで表示された標的の頭部を撃ち抜いた。水泡が弾けるみたいに標的はふわりと消える。スコープを覗いていない右目をぎょろりと動かして次のターゲットを探す。

 

 ターゲットレンジに私の銃声だけが響き渡る。人型の簡易標的が現れては消えていく。銃口から噴き上がる発砲炎が途切れることのないように次々と標的に狙いをつける。長距離戦を想定しているから標的の大きさは豆粒ほどにしか見えない。その頭に寸分の違いもなく銃弾を叩き込む。

 

 もう慣れたものだ。私はこの訓練を幾度となく繰り返している。仮想現実の中で戦う模擬訓練よりも、実際に身体を動かせるこの射撃演習の方を好んでこなしている。いつでも実戦に出られるようにだ。

 

 私が赴くことになる戦場を想像する。私の性能はエリートと言って差し支えない。精鋭の中の精鋭とも言うべき高スペックを誇っている。暇さえあれば訓練に没頭し、経験も積んできた。頭で考えるより先に身体が反射的に動く。きっと戦場に出ても私は活躍することができる。誰にも恥じず、あの人に認めてもらえるほどに。

 

 しかし、私が出撃する機会は巡って来なかった。戦闘に駆り出される部隊を何十回と見送ってきた。その度に私は歯噛みして、次の機会こそはと腕を磨くのだった。

 

 最後の標的を撃ち抜き、訓練が終わる。記録保持者がランキング式に表示された。上位は私の名前で埋め尽くされている。今回は記録を更新するには至らなかった。後半、邪念を抱いて集中を切らしたせいだ。

 

「精が出るわね。あなた一人で弾薬備蓄を使い切りそう」

 

 後ろから声がした。ぎょっとして飛び上がりそうになる。私の背中が震えたのを見て声の主は小さく笑った。

 

「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったのだけど」

 

「グローザ、足音を消して忍び寄るのはやめて。ぞっとしないわ」

 

 振り向くとグローザが口元を指で隠してクスクス笑っていた。夕陽に照らされた小麦畑みたいな金髪を二つに結わえていて、笑う度にゆらゆら揺れている。初めて会った時は鋭い橙色の瞳から冷たい印象を抱いたが、ただの勘違いだった。茶目っ気があって、なぜか私に世話を焼きたがる、そんな人形だ。

 

「集中しているようだったから邪魔してはいけないと思って」

 

「まったく。それで?待っていたということは何か話があるんでしょう」

 

「そうよ。お茶でも飲みましょう、AR-15」

 

 彼女は微笑みながら私の名前を呼んだ。もう少し訓練を続けてもよかったが、私は彼女について行った。グローザは人付き合いが達者とは言えない私の数少ない友人だ。経験豊富な先輩でもあるし、形式上は上司ですらある。待たせるのは悪い。

 

 連れてこられた先は広々としたカフェテリアだった。普段は人形も人間もなく多くの利用客でにぎわっている。もう夜も遅いのでがらんとしているが、まだ営業していた。グローザがコーヒーカップを二つトレーに載せてやって来る。

 

「ミルクはいつも通りでいい?」

 

 私が頷くとグローザは粉末ミルクの封を切り、半分だけ私のカップに注いで残りは自分のカップに入れた。

 

「それで話って?」

 

 スプーンでミルクをかき混ぜながら聞くと彼女は苦笑いを浮かべた。

 

「単刀直入よね。あなたらしいというか……そうね。内勤は不満?」

 

 グローザはそう言ってカップを口に運んだ。私は思わず身構える。

 

「もしかして、これは人事面談?注意するよう指揮官に言われたとか……私の態度が問題なら、すぐに改めるわ」

 

 今までのことを思い返す。ずっと本部に留め置かれて内勤続きであることは不満に思っていた。それでも職務は全力でこなしてきたはずだ。どこかで顔に出してしまっただろうか。私が考え込んでいるとグローザは頭を振った。

 

「違うわ。そういうのじゃない。友人として聞いているのよ。本音を言っても指揮官に告げ口したりしないわ、絶対ね」

 

 グローザは私を安心させようと微笑んだ。そうは言っても、彼女は指揮官の副官だ。あの人の右腕として本部の人形たちを取りまとめている彼女に不平を述べるのは憚られた。しかし、誰かに愚痴をこぼしたい気分でもあった。グローザは嘘をつくような人形ではないし、内偵ではないと思う。

 

「……指揮官が決めることに口を挟む立場ではないことは分かってるわ。でも、私は戦術人形よ。事務仕事は本来の役割じゃない。前線から上がってくる報告書をまとめるのは私の仕事では……」

 

「あなたのおかげで私はだいぶ楽になったけどね。仕事が早いもの。指揮官も助かってる。前線から遠く離れた本部で戦況を正確に把握するのは大変だから」

 

 グローザはカップの水面に視線を落とした。その声にはどこか力がなくて、私を説得しようという力は感じられなかった。

 

「そういう活躍の仕方もあるのは分かってる。でも、私は戦闘で勝利に貢献するために製造された。自分が他の人形と比べてかなり高価だって知ってるわ。ここでの仕事は私でなくたっていいはず。自惚れかもしれないけど、ずっとここにいたんじゃ持ち腐れよ。配備された意味がない」

 

「戦うために作られたから戦わなければならない、あの人が聞いたら怒るかもね」

 

 グローザは目を閉じてコーヒーを一口飲んだ。あの人、私たちの指揮官のこと。以前の戦いの功績で出世し、作戦本部長を務めている。そんな人の近くにいて、使ってもらえているのだから光栄に思うべきかもしれない。

 

「でも、事実みんな戦っているじゃない。例えば、ネゲヴたちは指揮官のもとで活躍している。私は彼女たちが出撃するのを何度も見送ったわ。私だけずっと本部にいる。実戦を経験していない人形なんて私くらいよ」

 

 でも、私は戦場で活躍したかった。自分が特別な人形だと示したかった。あの人に認めて欲しい、私はずっとそう思ってきた。私が出撃メンバーに選ばれないのは見込みのない役立たずだと思われているから、そう考えて訓練に明け暮れてきた。でも、私が選ばれたことは今までで一度もない。

 

「私もずっと実戦に出ていないわよ。そうね、もう二年くらいになるかしら」

 

 グローザはそう言って私の不服を受け流した。

 

「あなたは不満じゃないの?戦場から遠ざけられて。あなただってエリート人形でしょう」

 

「私は現状をとても気に入っているわ。前の職場よりずっとね。戻りたいとは思わない」

 

「それはあなたが副官の立場だからじゃないの……」

 

 私はいじけてそう言った。指揮官と言うとほとんど常にグローザが隣にいるイメージがある。グリフィン内の事情に精通した彼女は指揮官に必要とされる存在だ。一方の私は下働きに等しい。誰でもできる仕事を任されていて、必要不可欠な役目とは言い難い。私はそう思っている。

 

 グローザはカップを指で打ち、波紋の広がる水面を見つめていた。迷っているようだったが、顔を上げて私の方を見た。

 

「隠していたことだけど、指揮官はあなたを副官にするつもりよ。近いうちに引き継ぎをすることになる」

 

「えっ。そうしたらあなたは?」

 

「あまり変わらないわね。監査に専念することになるかも」

 

 私は動揺した。グローザが嘘を言っているようには見えないし、それは事実なのだろう。どうして私が。疑念と共に懸念が浮かんでくる。もし副官に任ぜられたら、戦場がさらに遠のいてしまう。グローザは二年も戦闘を経験していないと言っていた。自分の戦闘能力を示せないまま副官になるのは嫌だ。

 

 私が固まっているとグローザが子どもに尋ねるような声で聞いてきた。

 

「……そんなに戦場に出たい?」

 

「それは……そうよ。私だって戦場に行きたい。戦って活躍して、指揮官に認めてもらいたい」

 

 私の言葉を聞いたグローザはため息をついた。

 

「例えば、AR小隊みたいに?」

 

 半ば呆れるような声だった。AR小隊は人形だけで構成された自律部隊だ。二年前、指揮官の命令で鉄血本社を強襲し、エルダーブレインを討ち取った。グリフィンの人形なら誰もが憧れる英雄部隊だ。私もその例に漏れず、彼女たちに対抗意識を燃やしていた。

 

「あの射撃演習に熱中しているのも記録上位保持者にM4A1がいたから?」

 

「え、ええ。そうだけど……」

 

 誰にも話していない胸の内を言い当てられてたじろぐ。いつもそうだ。隠し事をしていても、大抵グローザには気づかれている。事実その通りでM4A1の成績がランキングに載っていたから追い抜かしてやろうとあの訓練に打ち込み始めた。今では私の方が上だが、彼女はもうずっとあの訓練をやっていない。最近のAR小隊は常に前線にいるという噂だからそのせいだろう。

 

「まあ、確かに本人の意志を無視して縛り付けておくのも問題よね。直接言ってみたら?」

 

「直接って……人形が口出しすること?愚痴ならそれで済むけど、指揮官の決定に異議を唱えるなんて」

 

「いいイベントがあるのよ。明日はバレンタインデーでしょう。知ってる?」

 

 グローザは急に乗り気になってぐいぐいと私を誘導しようとしてきた。でも、私は指揮官に直接文句を垂れる気にはならなかった。

 

「知ってるけど……チョコを贈る習慣でしょう。だけど、それは大切な人に想いを伝える行事なんじゃ」

 

「似たようなものでしょう?一度くらい実戦で経験を積ませて欲しいと言えばいいわ」

 

 とても似ているとは思えないが。それじゃまるで賄賂を渡すから便宜を図って欲しいと言ってるみたいだ。

 

「それに、あながち嘘でもないでしょ?あなたも指揮官のことをもっと知りたいはず。あの人に認めてもらいたいなら、気を惹かないとね」

 

「うーん……」

 

 私は腕を組んで唸った。指揮官のことを思い浮かべる。確かに憧れの人だ。グリフィンの中でもとりわけ優秀な指揮官で、英雄だと思われている。だが、そう言われるとひどく寂しそうな顔をするのでみんな面と向かっては言わない。きっとものすごく謙虚な人なのだろう。

 

 不思議な人だ。人形をまるで人間を相手にするみたいに対等に扱っている。部下をいつでも気に掛けていて、それぞれに合った役割を与える。間違いなど犯さない、完璧な人に見えた。だからこそ私が今の立場にいることに納得がいかない。前線で活躍したいとは思う。でも、指揮官が見出した私の役割が事務仕事ならそれに従うべきなんじゃないか。どうにも折り合いがつけられない。

 

 それに、私はあの人に避けられているように感じる。指揮官はどの人形にも分け隔てなく接して、いつも柔和な笑みを浮かべている。でも、私を前にするとそれが崩れてしまうのだ。外見上はほとんど違いがないが、少しだけ引きつって見える。その表情には怯えにも似た何かがある。仕事は全力でこなしているし、ミスをしでかしたこともない。そんな風に思われる謂れはないはずだ。私が内心不満を抱いていることを見抜かれているのだろうか。それとも名誉を追い求める私の野心を軽蔑しているのか。答えは出ない。

 

「やるとしても、私は料理なんてしたことないけど」

 

 結局、私はグローザの提案に乗っかることにした。認めてもらうためには指揮官に近づいてみるのもいいかもしれない。さっきは驚いて受け流してしまったが、私が副官に任命されるというなら指揮官のことをもっと知らないと。内心の複雑な想いは置いておいてグローザに従ってみるのがいいと思った。

 

 グローザは手と手を合わせてニッコリ笑った。

 

「大丈夫、私が教えるから。善は急げよ、今からやりましょう。もう材料も用意してあるわ」

「……グローザ、初めからそのつもりだったわね」

 

「さあ?気のせいじゃない?」

 

 彼女ははぐらかすと立ち上がった。私はため息をついて後を追う。どうせ彼女には勝てないので追求しなかった。

 

 

 

 

 

夢みる機械

 

 

 

 黒々とした廊下を赤い非常灯がぼんやりと照らしている。人間性を排除した機能的デザインは反乱後に建造された鉄血の施設の特徴だった。私たちは無人の廊下を突き進む。施設防衛に配置された鉄血人形たちは外にいるグリフィンへの対応ですべて出払っていた。攻撃を仕掛けているグリフィンの人形部隊が囮になっているうちに、私たちは空調ダクトを通じて内部に潜り込んだ。

 

 目標はただ一人、この付近の鉄血部隊を指揮しているエリート人形、ウロボロス。私は司令室へと通じるドアの横にへばりつき、後続の仲間たちに視線を送った。M16姉さんが頷き返す。言葉を交わさずとも突入の意思は伝わった。私はドアのコンソールを操作して一気呵成に室内に踏み込んだ。

 

 広々とした司令室の中には巨大なモニターが三つ設置されており、画面には外の鉄血部隊の様子が表示されていた。腕組みしながらそれを眺める人形の後ろ姿が視界に入った。特徴的な長いツインテールでそれがウロボロスだと分かった。彼女はドアの作動音に気づき、こちらに振り向こうとした。だが、私がトリガーを引く方が早い。

ACOGの赤い照準にウロボロスの胴体を合わせ、引き金を絞った。サプレッサーに抑制された発射炎が微かにきらめいて暗い室内を照らす。五発続けざまに発射し、肩に叩きつけるような反動が伝わった。弾丸の束を受けたウロボロスの身体がくの字にひん曲がる。

 

フォアグリップを握る右手に力を入れ、跳ね上がった銃口を引き下げる。つんのめって宙に浮くウロボロスの背中に照準を定め直す。撃ち出した銃弾が精確に背骨を打ち砕いた。人形も人間と同じように脊椎を通る神経が寸断されれば立って歩くことも叶わなくなる。

 

 奇襲は成功し、ウロボロスはうつ伏せで床に倒れた。指示するまでもなく仲間たちが部屋をクリアリングし始める。情報通りウロボロスは一人を好むようだった。司令室には彼女以外誰もいない。

 

 地べたを這いずるウロボロスのもとに近づいて顔を覗き見た。彼女は恨めしそうに私を見上げている。

 

「おぬしは……M4A1……不意打ちとは卑怯な……」

 

「卑怯?これは将棋じゃないの。勉強になった?」

 

 私はウロボロスの頭に銃口を突き付けた。彼女は眉間に幾重もの皺をよせて歯を食いしばる。

 

「外の連中は囮か……!はなから私が狙いだったのだな。武装ユニットさえ装着していれば……いや、鉄血の組織が万全なら侵入など……!」

 

 ぶつぶつと負け惜しみを垂れるウロボロスの額に銃口をぐりぐりと押し付ける。私が聞きたいのはそんなことではない。

 

「そんなことはどうでもいい。あなたには聞きたいことがある」

 

「はっ!おぬしらに教えることなど……」

 

「AR-15はどこ?彼女はどこにいるの?鉄血のネットワークのどこに隠れているの?」

 

 ウロボロスは一瞬困惑の感情を顔に表した。すぐに険しい顔を浮かべて私をにらみ付け始める。

 

「何のことだ。そやつのことなど知らぬ!」

 

「知らないふりならしない方がいいわ。あなたに悪いことが起きる」

 

「知らぬと言っているだろう!たとえ知っていたとしても、おぬしには何も言わん」

 

「……そう。なら用はないわ。鉄血のガラクタめ、生まれてきたことを後悔させてやる」

 

 私はナイフを引き抜いて左手に握り込み、ウロボロスのこめかみに垂直に突き立てた。皮膚を突き破った刃先が頭蓋骨に当たって硬い手ごたえを感じる。傷から赤い血を滴らせながらウロボロスは驚愕して私を見上げていた。

 

「何を……」

 

「答えないなら直接あなたのメモリから聞く」

 

 ウロボロスが次の言葉を発するより早く右の拳でナイフの柄を思いっきり叩いた。ハンマーで釘を打ち込む要領で何度も何度も柄を殴打する。刃先が徐々に頭蓋にめり込んでひびが入っていく。刃が半ばまで頭に突き刺さった頃、ついに頭蓋骨が割れた。引き抜いたナイフで皮膚を切り裂き、割れた額の骨を取り除く。頭の中に手を突っ込んでウロボロスのメモリを力任せに引きずり出した。血まみれの手で握り締めたメモリを眺める。これではSOPⅡの残虐行為をとやかく言えないかもしれない。

 

「……終わったか?撤収しよう」

 

 苦い顔で私の“尋問”を見ていた姉さんが言った。右頬には大きく痛々しい傷が走っており、眼帯で抉れた右目を隠している。二年も前からずっとそうだ。

 

「そうですね。帰還しましょう」

 

 鉄血のエリート人形を狙うのはそれだけ多くの情報を持っているためだ。AR-15の消息を知っているかもしれない。私は一縷の望みをかけてエリート人形どもを追ってきた。今のところ収穫はない。ウロボロスもAR-15のことなど知りもしないという様子だった。きっと今回も何も得られないだろう。くそ、こんなことではAR-15を見つけることなどできやしない。

 

「気を落とさないで。また次のチャンスがあるわ」

 

「ええ、分かってる。必ずあなたを見つけ出すから」

 

 ため息と共に言葉を吐き出す。この程度で諦めるわけにはいかない。

 

「M4、どうした?」

 

 誰と話してる、と姉さんが怪訝な顔付きで聞いてきた。

 

「なんでもありません。ひとりごとです」

 

 はっとした。あまりにも自然で、気をつけていないと声に出して返事をしてしまう。私は誤魔化して司令室を抜け、外を目指す。

 

「M4、AR-15のことだが……」

 

 歩きながら姉さんが言いにくそうに切り出した。その先は聞かなくても分かる。私はイラついて口を尖らせた。

 

「諦めろと?そんな話聞きたくありません。可能性が少しでもある限り、私は諦めない」

 

「だがな、もう二年だ。お前がずっとあの時の決断を悔やんでいるのは知っている。私だってそうだ。だがな……どうしようもないことはある。いい加減認める時だ」

 

 普段なら姉さんは私が反論すれば口を閉ざすのに今日に限っては食い下がってきた。腹の底に煮えたぎるような熱さを感じ、彼女をにらみつける。

 

「ふざけないでください!年月の問題じゃない!彼女に助けてもらったなら、一生かかってでも恩を返すんだ!」

 

「それをあいつが望むか?そのことで指揮官と大喧嘩したんだろ……」

 

 怒りの熱が口元まで上がってきた。そのことだけは我慢ならない。

 

「だから何です?私はあの人ほど弱くない!姉さんはあれをAR-15だと認めろとでも言うんですか!?あれは違う!紛い物だ!私は認めない!決して!」

 

 私は姉さんと額が触れ合うほど近くまでにじり寄って叫んだ。たじろいだ彼女にさらに食ってかかろうとしたが、SOPⅡが私たちの間に割って入って制止してきた。

 

「まあまあ。喧嘩は後でもできるから。まだ敵地なんだし……」

 

 私は彼女たちに背を向けて話を打ち切った。みんなが諦めようと私だけは諦めない。AR-15だってみんなから白い目で見られようと一人で戦っていたんだ。彼女の意志は私が受け継ぐ。だから、AR-15。必ず迎えに行くわ。もう少しだけ待っていて。

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