ー明久サイドー
僕達はプールで起きた騒動(ムッツリーニの鼻血)の後片付けを終えて家に向かって帰っている途中だった
現地解散になったので今いるメンバーは僕と雄二、伊織、古手川さんの4人だけだ
明久「それにしても疲れたね」
雄二「流石にあれだけ動いた後に説教と掃除だったからな」
伊織「ムッツリーニはいつもあんな感じなのか?」
明久「いつも通りだよ」
雄二「昔も同じことをしてな。あの時は学校のプールを真っ赤に染めてたぞ」
確かあの時は僕が誤って秀吉の水着を取っちゃったんだよね
伊織「あいつ、海に入れなくないか?」
明久「流石に入れるんじゃない?」
伊織「いや、海であの量の鼻血出したらサメが来るだろ」
サメってすごく嗅覚が良いんだっけ
明久「それじゃ一緒に潜れないね」
流石にサメと一緒に泳ぐのは無理だもんね
伊織「何か解決方法はないか?」
僕は考えるが何も案が出ない
雄二「ムッツリーニの体質はどうにかするしかないか」
明久「何かいい作戦あるの?」
雄二「まー俺に任せろ」
こう見えて雄二は神童と呼ばれたことがあるくらい頭の回転は早い
そんな雄二が任せろと言うなら心配ないだろう
明久「伊織はどうだった?」
僕達とは別で練習をしていた伊織に聞いてみる
伊織「あまり水の中に楽しみは見つからなかったな」
どうやら練習の効果はなかったようだ
伊織「というか興味が無くなってきたな」
千紗「・・・・・・」
伊織「どうした?」
千紗「・・・別に」
伊織「?」
雄二「まーまだ海に入ってすらいないんだ、海の中を見たら少しは興味が湧くかもな」
伊織「まず水の中で目が開けれないけどな」
伊織は少し寂しそうに笑った
明久「それじゃ、また明日」
雄二「じゃーな」
伊織「また明日だな」
千紗「また明日」
グランブルーに着いたので僕と雄二は伊織と古手川さんと分かれた
明久「ねー雄二」
雄二「どうした?」
明久「伊織は大丈夫かな?」
雄二「さーどうかな」
雄二は少し投げやりに応える
明久「もう少し真剣に考えてよ」
雄二「そう言われてもな、海の良さを知らない俺達じゃ何も出来ないだろ」
明久「どういうこと?」
雄二「俺達はまだ海の中を見たことないだろ?」
明久「確かに、でもそれだと秀吉もムッツリーニも耕平も無理だよ?」
雄二「お前は忘れたのか?ここには海の素晴らしさを知っている人物がいるだろ」
雄二は改めてグランブルーの方を向いた
ー伊織サイドー
俺は明久達と分かれた後店の中でぐったりしていた
菜々華「どう伊織君?水の中は楽しめそう?」
さっきまで千紗と話していた菜々華さんが話しかけてくる
伊織「いいえ、全く」
俺はさっきプールの中で見た景色を思い出してブルーな気持ちになる
菜々華「じゃあ、私とちょっとお出かけしてみない?」
伊織「・・・・・・?」
伊織「おおーー!!」
俺は視界いっぱいに広がる景色に興奮していた
菜々華「ふふっ、夜の水族館って素敵でしょ?」
隣を歩いている菜々華さんが少し誇らしげに言う
伊織「何か神秘的な感じですね」
俺は素直に思ったことを言う
次に行く所を手元のパンフレットで確認していると営業時間の欄に目がいく
営業時間は10:00〜17:30と書いてある
伊織「閉館時間過ぎてるのにどうして入れてもらえたんです?」
今の時刻は夕方6時を少し過ぎるくらいでもうとっくに閉館しているはずである
菜々華「千紗ちゃんがたまにお手伝いに来るよしみでね」
伊織「手伝い?」
菜々華「ああいうの」
そう言って菜々華さんは水槽の少し上の方を指をさす
そこには魚達に餌をあげているダイバーがいた
伊織「へぇ・・・千紗こういうのやってるんだ」
俺は少し感心する
菜々華「病欠の人が出た時とかに臨時でね」
伊織「(あの千紗が・・・)」
俺はダイバーを眺めているとその視線に気づいたのかダイバーがこちらに手を振ってくれる
俺は千紗が同じことをしている所をイメージしてみるが
伊織「イメージと全然違うな・・・」
どうやっても笑顔で手を振る千紗はイメージ出来ない
菜々華「あら、伊織君ってば意外と女の子を見る目はないのね」
伊織「は?」
菜々華「千紗ちゃん凄い人気者なんだから、お客さんからお手紙貰った事もあるのよ」
伊織「う〜む・・・」
俺は今まで千紗が見せてきた表情を思い返す
汚物を見る目、バカを見る目、呆れた表情、憤怒の表情、変質者を見る目
結果は決まってるよな
伊織「まあ、M趣味の人って結構多いらしいですからね」
菜々華「そういう事じゃないんだけど・・・」
菜々華さんは少し困った表情をする
菜々華「千紗ちゃんは良い子よ、ちょっと素直じゃなくて不器用だけど、海が大好きで凄く詳しいし、可愛いし、優しいし、柔らかいし、いい匂がするし」
菜々華さんはとても優しい表情で千紗のいい所を上げていく
確かに前半の方は分からなくもない
しかし、俺は千紗の笑顔を見たことも優しくされたこともない
しかも最後の2つは俺が言ったら殺されるだろう
伊織「俺の知らないところばかりです」
菜々華「こんな短時間で全部わかってたら私もびっくりだよ」
確かに俺は千紗と再開してからまだ数日しか経ってないしな
それから俺は菜々華さんの解説も聴きながら水族館の中を歩いていた
菜々華「あれはヒトデヤドリエビ」
菜々華さんはそう言ってとても小さなエビをさした
菜々華「あんなに小っちゃいのによく見るとちゃんと爪がついてるのよ」
俺はよく観察してみるが爪を見つけることは出来なかった
菜々華「あっちの寝そべってるのはネムリブカ」
次は底の方でゆっくり泳いでいる魚みたいだ
菜々華「サメだけど凄く温厚よ、岩場の陰でのんびり寝てたりして可愛いの」
確かに映画出みるようなサメとは違う感じがする
菜々華「あっちは映画とかで有名になったクマノミ」
あれは俺でも知ってる魚だ
菜々華「イソギンチャクとセットでいるのが愛らしいのよね」
イソギンチャクの中から少し顔を出していたりするのはとても可愛らしい
伊織「さすがプロ、詳しいですね」
菜々華「あはは、どうもありがとう」
菜々華さんの説明はとてもわかりやすく面白い
伊織「俺も少し魚の種類でも勉強してみようかな」
菜々華「気に入ったの?」
菜々華さんは嬉しそうに聞いてくる
伊織「いえ、俺も泳げるようになって魚に詳しくなれば水の中が楽しいものになるのかと」
菜々華「あ、そういう事。う〜ん・・・」
菜々華さんは少し考える
菜々華「伊織君は難しく考えすぎだと私は思うよ」
俺は菜々華さんが何を言っているのか理解出来なかった
伊織「そうでしょうか」
菜々華「うん、そんなの私も千紗ちゃんも考えた事ないもの」
伊織「それは二人とも泳げて魚に詳しいからで・・・」
菜々華「違うよ伊織君」
菜々華さんは俺の少し前を歩いているため表情がわからない
菜々華「誰だって最初は泳げないし魚にも詳しくないもの。だからまずは単純に感じ取って欲しいな」
伊織「感じ取る?何を?」
菜々華「な〜〜んにも難しい事なんて考えないで頭を空っぽにして」
暗いトンネルを抜ける直前
菜々華「――こういう、水の中の世界を」
その瞬間、暗いトンネルを抜ける
抜けた先はドーム状になっていて前も後ろも頭の上まで水の中に入っているような世界だった
伊織「ぅお・・・!」
菜々華「凄いでしょ」
俺は圧倒的な景色に声が漏れる
菜々華「横だけじゃなくて頭の上にも水の世界が広がってるなんて幻想的だと思わない?」
伊織「これが水の中の世界」
菜々華「ううん、違うわ伊織君」
伊織「?」
菜々華「これでもまだ『水の中に近い世界』なのよ」
俺は見上げたまま動かない
菜々華「世界にはここよりもっと凄い景色を全身で感じられる場所があるんだから」
伊織「ここより、もっと」
俺はそんな世界を感じてみたいと心底思った
菜々華「実はね、ここに伊織君を連れて行くよう言い出したのは千紗ちゃんなの」
俺はここで思ってもいなかった人物の名前が出て驚く
伊織「え?千紗が?どうして?」
菜々華「伊織君にダイビングを好きになって貰いたいからじゃない?」
伊織「?なんでそんな事を?」
菜々華「それは知って貰いたいから。伊織君が苦手な水の中にはこんなにも綺麗な世界があるんだって。千紗ちゃんだけじゃなくて時田君も寿君もそう。だから、あんなに一生懸命ダイビングを勧めているの」
――そうか
誰だって自分が好きなものは他の日に否定されたくない
感動を共有したいと思う
面白かった映画の感想を語り合うように
楽しかった野球の試合を振り返るように
ダイバーは海から上がって仲間たちと水の中の話をするのだろう
そういう仲間は一人でも多い方がいい
自分も楽しい
相手も楽しい
菜々華「私も伊織君に水は怖いものだけどそれだけじゃないってわかって欲しいな」
伊織「・・・そうですね」
俺は今までの考えを改める
伊織「少し興味が湧いてきました」
菜々華「そっか、それは私も嬉しいな」
菜々華さんはとても優しい笑顔で笑いかけてくれた
伊織「千紗!」
俺は菜々華さんと水族館から帰ってきて真っ先に千紗の元へ行く
千紗「何?」
伊織「はい、これお土産」
俺は水族館で買ったタコのキーホルダーを渡す
千紗「私がどれだけあの水族館に通ってきたと思ってるのよ」
伊織「まあ、感謝の気持ちだよ」
千紗「・・・感謝?」
伊織「おう、俺をあそこに連れて行くよう菜々華さんに頼んでくれたんだろ?」
千紗「・・・・・・ダイビングをバカにされたままなのも癪だから」
伊織「そっか、とにかくやるよ」
千紗「・・・・・・」
千紗は無言で受け取ってくれる
伊織「じゃ」
千紗「ちょっと待って」
俺は部屋に戻ろうと思うと千紗に呼び止められる
伊織「ん?」
千紗「・・・でどうだったの?」
伊織「何が?」
千紗「水の中」
伊織「うーんそうだな、苦手意識は変わらないけど」
俺はさっき起きた心境の変化を素直に伝える
伊織「次はもっと近くで見てみたいかな」
千紗「・・・・・・あっそ」
千紗は少し驚いたような表情をしたが直ぐに戻る
伊織「だからそれプレゼント」
千紗「・・・・・・」
明らかに可愛くないといった表情になる
伊織「ありがとうな千紗」
俺は感謝の気持ちを伝えると部屋から出ていく
ー千紗サイドー
千紗「あ・・・ちょっと」
私は呼び止めようとするが出ていった伊織には届かなかった
千紗「それならもっと可愛いのを寄越しなさいってのよ」
私は伊織から貰ったタコのキーホルダーを改めて見る
千紗「バカ」
ちなみにこの後私はこのタコをカギにつけるかケータイにつけるかで軽く二時間悩んだのは秘密
群武「祝!1巻終了!」
伊織「長かったな」
明久「20話使ってまだ1巻って」
伊織「いつまで続くのやら」
群武「読んでくれる方がいるなら限界まで続けます」
明久・伊織「「こいつ就活から逃げやがった」」
本作に出して欲しいキャラ※やってみたかったのでやってみます
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久保くん
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玉野さん
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根本くん
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清水さん
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鉄人又は高橋先生かババ長