こちらはにじさんじさん、当時のにじさんじseedsさんによる声劇『憂う少女のアルカディア』の非公式二次創作となります。二次創作が苦手な方、また理解の無い方の閲覧は御遠慮ください。
原作の登場人物はほぼ全員出ますが、登場人物及び世界観の設定に大幅な追加、改変がされております。そちらも合わせてご了承ください。
『憂う少女のアルカディア』のネタバレを含んでおります。
過激な描写が予定されていますがVliverさんたちは「生きて」いますので、誹謗、中傷等には極力配慮していきたいと思います。しかし私自身のライバーさんたちへの解釈が入っているのでご注意ください。
この作品は過激な描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
「お前ら、本当に霞を守ってくれるんだろうな!」
静かな教会の礼拝堂。
厳かで静謐な空間に鈴木勝の荒げた声が響き渡る。
状況は非常に緊迫していた。
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その日、勝はいつものように卯月コウと出雲霞、同い年の二人と一緒に学校の帰り道を歩いていたのだが。
「見ぃつけたぁー!」
いきなり二人組の男女に声をかけられたのだ。
二人は共に見た目は二十代でスーツを着込んでいる。
男性の方はスーツ姿が良く似合っていて、あのような状況でなければどこかの企業で働いている普通のサラリーマンに見えただろう。
だが女性の方はスーツこそ着ているが、全身にまとっている雰囲気はとても一般的な会社で働いているような人物には見えなかった。
なによりその身に染みついているかのような狂気を感じさせたし、何より……。
ウィィィィィイイイイイイイイイイイィィィィィンッッッッッ!!!!!
女性がその手に持っていたのはスーツにはとても似合わない得物、チェーンソーだった。
本来なら木を切り倒すのに使われる道具だが、どう見たって本来の使い方をするためのものではない。
「君が予知能力を持った少女ってヤツ?うちのボスがさ、霞ちゃんのことすぅっごく欲しがっててぇ?だがらさ……大人しくついてきて欲しいんだけど」
「アズマ。少し喋りすぎだ」
堅気の人間ではないことは誰の目にも明らかだった。
それに予知能力を持った少女……。
それは間違いなく霞のことだ。
信じられないような話だが、出雲霞には予知能力がある。
その力は間違いなく本物で、勝もコウもその力には何度も驚かされた。
だがそれゆえに霞は学校で気味悪がられることが多かった。
根拠のない謂れや理不尽ないじめを受けることもあった。
それを勝とコウは良しとしなかったのだ。
なにより三人は昔から一緒の友達で、友達が不条理にさらされるなんて許せなかった。
勝はそんな霞を守りたかったし、コウも気持ちは同じはずだ。
だから……。
「二人とも……、逃げて……!」
霞がそんなことを言ったからといって、見過ごす二人ではなかった。
「馬鹿ヤロウ!」
「みんなで逃げるんだよッ!」
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そうして勝たち三人はぎりぎりで近くの警察署に駆け込み、その警察官の紹介で今この教会にやってきていた……というわけだ。
どうやらこの教会でお金さえあれば要人警護をしてくれる人たちがいるらしいのだが。
まず出迎えたのは教会のシスター・クレア、そしてシスターが案内してくれたのは勝たちと同じくらいの年の性別不詳の緑髪チャイナ服と真っ赤な髪をした革ジャンの女性だった。
チャイナ服の名前は緑仙、革ジャンの方はドーラという名前らしい。
この緑仙とドーラが霞の警護を担当するというのだが、勝は正直不安だった。
見た感じこのあたりのマフィアらしいあの二人組、とくにチェーンソーを持っていた女性の方は戦闘力も高そうだが、なにより普通の生活では絶対に経験することはない狂気のようなものを感じたのだ。
勝は自分の趣味で楽しいからという理由で人を殺してしまうみたいな、そんなマンガの中にしか出てこないようなサイコパスを初めて見た気がした。
おまけにその手にしていたチェーンソーだ。
あのチェーンソーは絶対に人を殺すために使っているとしか思えない。
実際にあの高速回転する刃が人に対して用いられる場面を勝は想像もしたくない。
それだというのに……。
「友達だってサー。笑える」
「緑は友達いないからなー」
「ドレイクうるさいよ」
「おっ、図星じゃ図星」
さっきからこの二人はこんな調子で軽口をたたいてばっかりだった。
どうやら緑仙は中か服の見た目通り拳法の使い手で、ドーラの正体はファイアードレイクらしい。
緑仙はかなり華奢だしドーラはファイアードレイクと名前は凄いが今は人間体だ。
あのチェーンソー相手にどこまでやれるのか。
それにマフィアはあの二人だけではないはずだ。
戦闘要員の総数は相当な数になるだろう。
なのにこの二人はなぜこんなにも余裕なんだ。
「ふふっ、二人とも相変わらずですね」
そんな二人を見ていたシスターもシスターだ。
シスターは清廉な雰囲気をまとっていて、らしいというか、これほどシスターが似合っている人もいないのではと思う。
だから余計に緑仙やドーラといった汚れ仕事も請け負う二人と自然に一緒にいるのが違和感だ。
「お前らのこと、信用してもいいのか?」
コウが少しイラついたようにそう言ったのも、勝と同じくあのマフィアと本当に戦えるのか疑問を感じたからだろう。
「当たり前だろ。お金はそこの御曹司から十分すぎるほど貰ったし、安心していいよ。僕たちはどんな相手でも負けないから」
緑仙が涼しい顔をしてそう言ってのける。
「相手はどうやらこの街の地元のマフィアらしいしのぉ。噂には聞いておったが相当腕はたつようじゃし。ワクワクするのぉ」
ドーラの方もむしろ楽しみで仕方ないといった風な様子だ。
霞がそんな二人に質問をする。
「あの……、もしかして相手は結構有名なんですか」
「ああ、そうじゃよ。マフィアOTN組。裏の世界に片足突っ込んでおれば嫌でも噂に聞くことになるくらいには有名じゃな。ま、有名といっても当然裏の世界じゃし、悪名じゃがな」
「チェーンソー持ってたってことは『サイコパスのアズマ』かな。OTN組の中でも特に有名なやつだね。あと有名なのはボスの『食人鬼のゆず』とか。他にもいろいろいるみたいだね。良く知らないけど」
「……そうなのか。とんでもないやつらに霞は目を付けられちゃったんだな」
「だからさ。安心していいって言ったじゃん。どんなやつが来ても僕たちの敵じゃない」
勝の弱気な発言に緑仙が反論する。
勝たちを信用させるため、ではなく信用されていないのが気に食わないといったかんじだ。
「ま、いざとなったらクレアが助けてくれるからのー」
「カミへのお祈りとやら、で?」
「こーら、緑ぃー?」
「……この人たちのノリがわからない」
やっぱり不安だった。
「大丈夫だよ。ドーラちゃんも緑仙も、すっごく強いんだよ」
シスターが元気づけようと声をかけてくれる。
「でも、死ぬときは死ぬし。その時はお前らも一緒な」
「緑仙!……大丈夫。二人がいればきっとあなたたちのことを守ってくれます」
「クレアさん、ありがとう。でも私……」
シスターにお礼を言った霞が急に頭を押さえた。
「うっ。頭が……痛い……」
「霞!?」
「おい、大丈夫か!?」
苦しそうに頭を抱える霞に勝とコウが駆け寄った。
二人が慌ててる中、シスターが霞の肩を支える。
シスターは霞が落ち着くまで、怪我をした子供をなだめるように声をかけ続けた。
「霞ちゃん。大丈夫、大丈夫……。私たちがあなたたちの未来を変えてみせる。だからそんなに怯えないで」
「……うん。クレアさん」
どうやらシスターの呼びかけによって霞はいくらか落ち着いたようだった。
「……おい、出雲が心を許したぞ」
「うん」
コウが勝にそっと耳打ちし、勝がうなずく。
霞は未来視の能力のせいで周りから忌み嫌われることも多いため、本人の方から人を避ける場合がほとんどなのでこれは本当に珍しいことだった。
霞からも信用される人望はさすがシスターといったところだろうか。
「あのシスターはいい人みたいだ」
勝のつぶやきに緑仙が鼻を鳴らす。
「で、僕たちは悪者か……。ま、いいけど。それじゃあ、君たちを護衛するための部屋に案内しなきゃね。じゃないとこっちとしても守りづらい。クレア、談話室を使ってもいい?」
「そうだね。さっそくですが、こちらについて来て下さい」
シスターに連れられて出雲霞、卯月コウ、鈴木勝は教会の奥の方の部屋に向かって行った。
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「それで、のこのこ戻って来たってわけね」
「なぁんか話が違うんじゃなーい?」
街の一角に店を構える『チャイカバー』。
お昼過ぎの今は営業時間外だが、店の中では店主のオカマがカウンター席に座った三人と会話をしていた。
「すまん……!警察に駆け込まれてしまってな。これ以上面倒な事にはしたくなくてな」
「あ~!ごめんね~!ゆずぅ~!」
その内の二人は霞を狙った二人組。
パソコンを使って情報収集をしている社築とバーには余りにも不釣り合いなチェーンソーを脇に置いている名伽尾アズマ。
社は本当に申し訳ないようにしているが、アズマは反省しているのかしていないのか分からない様子で隣の少女に泣きついている。
「いいよー、アズマちゃん!……おい、社!お前は何のためにここにいるのぉ?あたしちゃんの願いをかなえるためでしょう?つまんねえ仕事ばっかして脳が腐ったか?」
四人の中では最も幼いながらも尊大な態度をとっているのは八朔ゆず。
でかい態度をとっていても誰も不審に思わないのは彼女がこの街の地元マフィアを束ねるボスで、三人の上司だからである。
そして白くて若い女性の肉を好む食人嗜好を持った食人鬼でもある。
ゆずは社に対して不機嫌であるという態度をまったく隠そうともせず、カウンターを叩いて声を荒げた。
「あたしちゃんの食料にもならない能無しがここにいる資格なんてないんだけど?」
「っ!……すまない」
社は返す言葉も見つからず謝ることしかできないようであった。
ゆずはため息をつく。
「はぁ……。最近はきな臭い匂いしかしないから、未来視の能力を味方につければ楽できるなーって思ってたのにぃ」
「それについても詳しい情報を集めているところだ。もう少し待って欲しい」
「あー?きな臭いって何のことだっけ?」
「アズマ、あんたこの前の話聞いてなかったの?」
アズマが頭に疑問符を浮かべているのを見てチャイカは呆れ顔になった。
そこで社は情報をもう一度整理するため、……本音はご機嫌斜めなゆずの気をそらしたいという思いで状況の説明を始めた。
「今、状況は非常にややこしいことになっている。規模は不明だが関西で幅を利かせているヤクザ組の一部が東に向かって進行中との情報が入った。それとほぼ同時刻、今度は東側のマフィアも西に向かって来ているらしい。二つの情報が確かなら、その二大勢力はちょうどこの街で衝突する計算になる」
「えー!それってこの街メチャクチャになるってこと!?そんなの許せないんだけど!」
「その通り。ここは俺たちのシマだ。好き勝手させるわけにはいかない。ただこのままだと俺たちは二つの勢力を同時に相手にしなければならない。いくら俺たちでもかなり厳しい戦いになるだろうし、もし切り抜けられたとしてもうちの組の損害はとんでもないことになってしまう。そのために未来視の能力は喉から手が出るほど欲しいものだ」
「そっか。その子に未来を見てもらえば私たちがどうやってピンチを抜けれるかがわかるもんね!」
「ま、別に未来視なんてなくてもあたしちゃん好みの女の子だから、どうしても欲しかったんだよねー。どっかのシャチクさんが逃しちゃったけどぉ」
「と、とにかく!今私たちが優先すべきことは未来視を手に入れることだ」
社が冷や汗をダラダラと流しながら強引に話を続けた。
「そして最優先はあの少女だが、それとは別に俺たちにとって有益な存在がいる。アズマ、あの未来視の少女と一緒にいた金髪の少年を覚えているか?」
「覚えてない」
「おぼっ!?」
即答だった。
社は思わずずっこけそうになったのを抑え、努めて冷静に見えるようにすることで精一杯になる。
「いた。いたんだよ金髪の少年が。いかにも金持ってそうな奴だ!……まあいい。とにかく今言った金髪の少年。『卯月コウ』が俺たちの第二目標になった。チャイカ、説明を頼む」
「わかったわ」
話を振られたチャイカが説明を引き継ぐ。
「実はついさっき、警察から電話があったのよ」
「警察?なんで?」
アズマは訳が分からないという表情になった。
このマフィアに警察が連絡を入れるのは珍しい。
マフィアなので他所といざこざがあったり、ゆずが腹をすかしてちょっと散らかしてしまったりした時にお世話になりそうになることはあるが普段は目立った行動はしていない。
むしろチャイカが空き缶やタバコのポイ捨てをゴミ拾いをしたりして地域に貢献しているため、一部の地元住民からは慕われていたりする(もちろんそれらは、チャイカの本当の仕事をまったく知らない人たちだが)ので、現行犯でない限りは警察も手を出してこないはずだ。
「電話なんて今までしてきたことなかったじゃない」
チャイカはバーを経営しているため、店の電話番号なんてすぐに調べられるだろう。
だから電話がかかってくること自体は驚くことではないが、今までそのようなことはなかった。
「ワタシも最初は怪しいと思ったんだけどね。でも話を聞いてみるとこれがなかなか美味い話だったのよ。簡単に言えばお金儲けの話ね」
お金、という単語にアズマが目を輝かせる。
「おぉ!アズマお金大好きー!」
「卯月コウはあの卯月財閥の御曹司らしくてね。誘拐すれば身代金たっぷりってわけ。警察側としては卯月財閥が建設予定しているウヅコウランドの立地問題でいろいろあるみたいね」
「難しい話はどーでもいーよ!要するにさらう人数が一人から二人になっただけでしょ?」
「ま、そーゆーこと」
「とはいえ、まだ楽観できる状況ではない。現状は何も解決していないわけだし、なるべく迅速にことを進める必要がある」
楽観視しているアズマに社が注意を促すと、今まで興味がなさそうにしていたゆずが退屈そうに話をまとめ始める。
「何にせよ、あたしちゃんの思い通りにならないなんてことは有り得ないから。とっとと捕まえる算段をつけろよ、社」
「もちろんだ」
上手くゆずの気を逸らせて機嫌を損なわさずにすんだことに社は内心ほっとしつつ、たった今思いついたばかりの作戦をこの場の全員に話すことにした。
「皆、聞いてくれ。たった今情報が入って未来視の少女が匿われている大体の場所がわかった。それで作戦についてなんだが……」
「さすが社、いつも仕事が速いわね」
「うっし。お前ら円陣組むぞぉー!」
ゆずの号令にチャイカを始めこの場の全員がニヤッと笑う。
「アレをやるのね?」
チャイカがカウンターから出てきて四人は慣れたように綺麗な円陣を組む。
「よーっし。せーの……」
「お金の為なら四人そろってぇ!」
「なかよ し なか よ しィ !!!」
「 な か よし なか よし !!!」
「 な か よし なか よ しぃ !!!」
「 なかよ し な かよ しーーーーーーーー!!!」
「あはっ!バラバラやん!」
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また場所は戻り教会
談話室へ案内した後、部屋へシスターだけを残して緑仙とドーラは教会の外へ出ていた。
二人はとりあえず教会周辺の見回りをしていたのだが、さっそく何人か斥候と思われる人たちを発見し始末したばかりだった。
「もうここまで嗅ぎつけられているとは恐れ入ったのぉ。さすがこの街を牛耳るマフィアというわけか。地の利では向こうにあるかもしれないの」
「いや、それよりも何ですぐに殺しちゃうの?尋問すれば有益な情報を得られるかもしれないのに」
「あー、すまんすまん。人間はあまりにも脆いから手加減が難しいんじゃよ」
「しょうがないなあ……」
緑仙はドーラにジト目を向けたがドーラ本人はカラカラと笑っているだけだった。
しかしドーラの言う通り、すでにこの教会へ人が配置されていたことについては緑仙にとっても予想よりだいぶ早いくて少しだけ驚いている。
「油断はできないね……」
「心配はいらんじゃろう。実際に殺り合うことになったらワシらは負けはせん」
「ハ、それはもちろん。……でも、素早く仕留めたからまだ感づかれてはいないと思うけど、敵も馬鹿じゃない。連絡が途絶えれば何かあったと感づかれるはずだ」
「それもまた好都合というもの。敵が向こうからやってくるんじゃからな。奇襲を受けるよりは迎え撃つ方がやりやすい。今度は殺さずに生け捕ることもできるしの」
「それもそうか」
二人がこれからの動きについて相談していた時。
「ま、待ってください……!」
教会の方からひっ迫した声があがった。
「今の声は……」
「クレアだ。様子を見てみよう」
何があったのかと二人が急いで教会の中に戻ると。
「待って!外は危険です!」
「それはあいつも同じだ!」
「そうだよ!俺たちが行かなくちゃいけないんだ!」
扉の前でコウと勝の二人がクレアの制止を振り払おうとしていた。
「クレア、これはいったいどういうこと?」
「そうじゃそうじゃ。何かあったのか?」
「緑仙!ドーラちゃん!大変なんです!」
クレアが二人の姿を見ると、余裕を失った様子で駆け寄った。
「霞ちゃんがどこかに行ってしまったんです!行方不明なんです!!」