やっぱりタイトルが場所の名前になってしまった。
このままでは次のタイトルは『道すがら2』になってしまう……。
こちらはにじさんじさん、当時のにじさんじseedsさんによる声劇『憂う少女のアルカディア』の非公式二次創作となります。二次創作が苦手な方、また理解の無い方の閲覧は御遠慮ください。
原作の登場人物はほぼ全員出ますが、登場人物及び世界観の設定に大幅な追加、改変がされております。そちらも合わせてご了承ください。
『憂う少女のアルカディア』のネタバレを含んでおります。
過激な描写が予定されていますがVliverさんたちは「生きて」いますので、誹謗、中傷等には極力配慮していきたいと思います。しかし私自身のライバーさんたちへの解釈が入っているのでご注意ください。
この作品は過激な描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
時間は少しだけ戻り、鈴木勝が緑仙とドーラに連れられて自宅に連れられている時。
「私の名前は物部有栖よ!あなたたちは?」
勝たちが出会った金髪の少女。
有栖と名乗った少女はいきなり話しかけられてビックリしている勝たちに構わず名前を訪ねてきた。
「えっと俺は勝。鈴木勝だ」
「ワシはファイアードレイクのドーラじゃ」
「……」
「緑仙じゃ」
「おい」
名乗るのを面倒くさそうにしていた緑仙の代わりにドーラが有栖に緑仙の名前を教える。
「別に名前くらいいいじゃろ?緑からは絶対言わないだろうからの」
「面倒ごとを増やしたくないだけ。今僕たちは出雲霞を探すので忙しいだろ」
「まあ!皆さんも誰かを探しているのね!」
有栖が緑仙の言葉を聞いて目を輝かせる。
緑仙は思わず「しまった」という表情をした。
「実は私も探し物をしているの。もしよかったら私もおにいさんと、おねえさんのお探しものを手伝うから一緒について行っていいかしら?」
「いや。僕らは……」
「いいね!一緒に探せば探し物も見つかりやすいだろうし!」
「お前っ、何言って……」
緑仙は有栖の誘いを断ろうとしたが突然横から勝が割って入ってきて有栖の意見に賛成する。
一刻も早く霞を探し出したいと思ったのはコウだけじゃない。
勝だって一人走り出して街中を探し回りたい気持ちなのだ。
だが仮に霞を捜し出せたとしてもマフィアから守り通せる自信が勝にはない。
ならやっぱり暗殺者の二人を頼るしかなかった。
そのためどんな理由でもいいから二人に付いて行く口実が欲しかった。
「ええ、そうね!ぜひご一緒させてもらいたいわ!」
お願いを聞いてくれた勝に有栖は目を輝かせる。
勝にとって有栖の頼みはまさに渡りに船だった。
これなら有栖と一緒に探し物を手伝うという名目で暗殺者2人と行動を共にできる。
「お前……、僕たちの言うことが聞けないのか」
「い、いいじゃんか別に!それにこの子だって放っておけないよ」
緑仙は少し目を細め冷めた声色で問い詰めたが、勝はその威圧感に少し押されながらも自分の意見は曲げなかった。
「仕方ないのう。ま、少しだけなら付き合ってあげてもよいか」
「ドーラ。君まで……」
「別に良いではないか。勝も緑仙に睨まれてちゃんと反抗するとはなかなか覚悟が決まっていると見える。このような状態では、いつコウどののように一人で駆け出してしまうか分からんし、こっちの目の届かぬところで駆け回られるよりはワシらの近くで探させた方がまだ安心できるというもの。有栖どのにしたって幼い女の子を一人にさせておくわけにはいかんじゃろう?日も暮れそうじゃし、もう少しだけ付き合ってあげても良いのではないか?」
「だからそれは、何人も素人が増えたところで……!」
「おいおい、何を感情的になっておる緑よ。いつもの皮肉屋はどうした?それとも……あの未来視の少女に恐れでもなしたか?」
「……!」
自分でも思いもしなかったことを指摘されて緑仙は目を見開く。
緑仙は自分の表情を確認するように手で顔を抑えた。
動揺した様子の緑仙にドーラはクツクツと笑いをかみしめる。
「緑の気持ちも分かるぞー。あの未来視は底が見えんから恐ろしい。ワシも内心ちょっとびびっておる。だがな、それで冷静な判断が出来なくなるようなことはいかんぞ?」
顔に手を当ていて表情が硬くなっている事に気づいた緑仙は体の緊張を解くため、長い息を吐いた。
「あー、分かったよ。確かに感情的になっていたかもしれない。……でも判断能力が鈍ったつもりはないし、間違った判断をしたとも思っていない。この子の提案を受けるのは僕らにとって何の得にもならない」
「緑は意地っ張りじゃなあ。今回は一本取られたと思って有栖どのついていってもよかろう?」
凄くイヤな顔をした緑仙だったが、これ以上引き下がっているのはみっともないと考え、2度目のため息をついた。
「……わかった」
とうとう折れた緑仙を見て勝が嬉しそうな顔をし、それを見た緑仙がまたまたため息をつく。
一方ドーラは面白いものが見れたと腹を抱えて一笑いした後に、有栖の方へ向かうと大きなリボンのついた鮮やかな金髪を撫でた。
「では有栖どの、共に向かうとするか。……しかし小学生がこんな時間まで出歩いて家の者は心配せんのか?」
「あ、ドーラさんそれは冗談でもきついわよ。有栖はJKじゃい!」
「む?そうであったか。それはすまん。人間の年齢は見分けるのが難しいのー」
「大丈夫よ!ふふっ。分かってもらえたのなら良いわ」
そうして緑仙たちは有栖と行動を共にすることになったのだった。
緑仙たちの方は行くアテがなかったので基本的には有栖について行くことにする。
有栖が向かったのは街の大通りに面している所で、そこに並んでいる店のショーウィンドウを眺めて回っていた。
太陽は建ち並ぶ建物の陰に隠れ、街は夜の準備のために照明を灯し始める。
店の看板が光り始める瞬間という普段めったに見ない光景の中で勝は少し幻想的な雰囲気に包まれているようだった。
そんな街の中を歌を口ずさみながら歩いている金髪碧眼の少女というのもさらに幻想的だった。
まるで童話の中に入ってしまったかのようだ。
「ハンプティダンプティ、塀の上♪ハンプティダンプティ、まっ逆さ♪キングとナイトは大騒ぎ♪ハンプティダンプティ、ぺっしゃんこ♪」
「さっきから歌ってるそれって何なの……です?」
ここに来るまでずっと繰り返し歌っていた有栖の歌が気になって勝は彼女に歌について聞いてみる。
皆より先頭を歩いていた有栖がこちらに振り返り、頭のリボンを大きく揺らす。
「とっても素敵なお歌でしょ?」
「うん。まあ……そうだね」
有栖は満面の笑みでそう返したがそれは勝の質問には答えていない答えだった。
はぐらかされた、という訳でもなさそうだったが。
曖昧な答えに勝もどう反応したらいいか困ってしまう。
「有栖はね、友達のプレゼントを探しているのだけれどなかなか見つからないのよ。勝くんたちも探してくれると嬉しいわ」
「うん。わかった……ました」
ちなみにさっきから微妙に歯切れ悪い語尾は、実は自分より年上だった有栖にどう接したらいいのか分からなくなってしまっているからである。
有栖は気にしなくて良いと言ってくれているが、勝はそのあたりのけじめはしっかりするべきだと思ったのでちゃんと敬語を使うようにしている。
ようにしている、というだけで実際はできていないのだが慣れるようになるまで気をつけようと思ったのだ。
「良いって言ってるんだし、諦めたら?正直見苦しいんだけど」
緑仙が呆れた様子で勝に言う。
「うっさい!……あ、そういえば有栖さんが探しているプレゼントって具体的にを探しているん……ですか?」
強引に話題を変えた勝だったが、その話にドーラも緑仙ものってくれた。
「おー、それを聞くのを忘れておったのぉ」
「確かに」
勝が質問するとドーラと緑仙も興味深そうに有栖に聞いてきた。
有栖は少し考えるそぶりを見せる。
「うーん、そうねえ……。友達のために何か買いたいのだけれど、買いたいものが決まっていないのよ。だからこうやってお店を回りながら決めたいのだけど。……なかなか良いのが見つからないのよね」
「決まっていないんだ。プレゼントなら俺も相談に乗ろうか?」
「それは助かるわ!えっと、いつもお世話になっているお友達にお礼の気持ちで渡したいのだけれどどんな物が良いかしら?」
「友達へのプレゼントなんだ。……何が良いかな?どう思う二人とも?」
「こっちに振るのかよ。まあ良いけど。……ドーラは何かある?」
「緑もこっちに振るんかい!?まあ良いが。んー……、ワシの場合そういう時は食べ物を送ることが多いかのぉ。何か記念日という訳でもないし、後に残らないくらいがちょうど良いと思う」
「まあ!じゃあ有栖お菓子が良いわ!」
ドーラの意見に有栖が目を輝かせる。
「みんなお菓子は大好きだもの。みんな喜んでくれるわ!ありがとうドーラさん!」
「ん。参考になったのならワシも嬉しいぞ」
「それじゃあさっそく美味しそうなお菓子を探しに行きましょう。お金はそんなに持っていないから今日は買えないけれど、美味しそうなものが売っているお店を探したいわ」
「うむ。それじゃあ探しに行くかの」
そうして一行はまた店を探し回る。
今度はお菓子を売っているお店を中心に、ケーキ屋やパン屋の菓子パン、ドーナツ屋などを巡っていった。
美味しそうなお菓子を見つけるたびに有栖は目を輝かせ、肩に掛けていたポシェットからメモ帳を取り出して何かを書き込んでいる。
他の三人はそれを見て微笑ましい表情になっていた。
「そう言えばおにーさんとおねーさんたちは誰を探しているの?」
またしばらくしてから、今度は有栖が訪ねてきた。
「ワシらか?ワシらはこの勝の友達の出雲霞という少女を探しておる。ワシと緑の二人はそのお手伝いじゃ」
「まあ!行方が分からないの?」
「うん、まあ……」
勝は口ごもった。
「行方が分からないって言うか逃げ出したんだけどね」
「こらっ、緑」
「……」
緑仙がポロッと口にした言葉にドーラは叱咤したが、勝は俯いてしまう。
(本当に霞は自分の意志で逃げ出したのか……。だったらどうしてそんなことを)
答えの出ない考えが勝の頭の中でぐるぐると回り始める。
どんどん良くない方へ考えてしまう。
「あら、喧嘩でもしたのかしら?」
「さあ……、俺には分からない……」
有栖の質問にも答えられない。
教会を出てからずっとため込んでいた思いが言葉になって漏れ出てしまう。
「分からない……、俺には分からないよ。霞が何を考えているのか分からない。小学校からずっと一緒で、親友だと思っていたのに、俺は霞のこと何もわかっていなかったのかもな……。コウもどこかに行っちゃったし」
「まあ!それなら話は簡単よ!」
「……え?」
悩む勝に対して簡単だと有栖は言った。
何でもないように言った。
「あなたがその子にあったら何があったのか、ちゃんと話し合えば良いんだわ」
「……そんなんで良いのかなあ」
「話でなら簡単よ。でも実際やろうとするのは物凄く大変だわ。それでもちゃんと話し合わないとお互いの気持ちは理解できないものよ」
「そうなのかな」
「大丈夫よ!あなたその子のこと大切に思っているの伝わってくるわ。言葉にして伝えればその人にもちゃんと伝わるはずよ」
「うん……、ありがとう」
勝は少しだけ心が軽くなった気がして微笑んだ。
「もう少しだけがんばりましょう!もしかしたら見つけられるかもしれないわ」
「そうだね。がんばろう」
有栖に励まされて勝が元気を取り戻した時だった。
「水を差すようで悪いんですが。今日のところはもう遅いでしょうし、お帰りになった方が良いかと思いますよ」
「えっ、誰?」
いきなり後ろから知らない男性の声が聞こえて勝は振り返った。
他の3人も同様に振り返ったが、有栖以外の3人はぎょっとした。
そこにいたのはピエロだった。
「えっ、誰!?」
勝はさっきと全く同じセリフを言った。
ただしさっきよりも驚き成分が多く含まれているが。
ピエロによくありそうな赤い鼻は付いていなかったが、白色に塗った肌に髪は虹色のくしゃくしゃパーマで目の周りは黒の線と睫毛で物凄く強調されている。
横に細長くひかれて常に笑っているように見える青い口紅に赤色の涙も描かれているので、間違いなくこれはピエロだろう。
服も白い背広にピンクのシャツ、ネクタイとハンカチの柄は……睫毛か?
「Hi ジョー児!」
「じ、ジョージ……?」
じょーじって誰?と勝が目をぱちくりさせた。
「おっと失礼。これはついつい言ってしまうのですよ。口癖というかお決まりの挨拶というか私を象徴するセリフというか……。それより有栖ちゃん、探しましたよ。さすがにもう遅い時間なのでお迎えにあがりました」
「あら、もうちょっと粘ろうと思ったのに見つかってしまったわ」
有栖が悪戯の見つかったような表情でピエロに駆け寄る。
「家の方だって心配しますからねえ。そりゃ私だって頑張って探しますよ」
「……もう少しだけ時間をもらえないかしら。この人たちのご友人の行方が分からなくて探すのを手伝っているの」
「さすがに遅すぎます。さっきも言いましたがご両親が心配しますから今日のところは帰りましょう」
「うーん……何とかならないかしら」
「あー、話の腰を折るようで悪いんじゃが……」
帰る、帰らないとお互い譲らない口論を交わしていた二人にドーラが割って入った。
「ワシはドーラという。さっき有栖どのが言った通り、有栖どのにはワシらの探し人を探すのを手伝ってもらっていたのじゃが、おぬしは有栖どのとどういう関係なんじゃろか?ワシらと有栖どのも先ほど知り合ったばかりじゃが、その……。おぬしはちと見た目がな……」
どうもこのピエロは有栖の知り合いで有栖を連れ帰ろうとしているようだが、あまりに怪しすぎて「はい、どうぞ」と有栖を任せることはできなかった。
「ああ、これは挨拶が申し遅れました」
ドーラに質問されてピエロは慌てたように有栖以外の3人に向き直る。
そして一歩足を引くと仰々しい態度でお辞儀をした。
「私の名前はジョー・
「は、はあ……」
ドーラは間の抜けた返事しか返せなかった。
勝と緑仙も若干呆れて何も言えない状態だった。
「私と有栖ちゃんは家がご近所なんですよ。昔から有栖ちゃんのご両親からは大変お世話になっていましてね。そのご縁でよく有栖ちゃんが小さい頃からよく遊んでいたんですよ」
「そ、そうであったか。まあ有栖どのの反応を見てもよく見知った仲のようじゃし、預けても良いか……?」
まだ少しだけ疑ってはいるものの、ドーラは力一に有栖を任せることにした。
「ご安心ください。見ての通り、私は怪しい者ではありません」
「「「それについては同意しかねる」」」
「あらら……」
力一の言葉に勝、緑仙、ドーラのツッコミが重なる。
「でも、探している人は良いの……?」
「心配してくれてありがとう有栖どの。じゃがそこの力一が言う通り、もう時間も遅い。ワシらもそろそろ引き上げるとしよう」
有栖がドーラに心配そうな顔をしたが、ドーラはにっこり大丈夫だと笑った。
引き上げると言ったドーラに対し、勝は少しだけ何か言いたげだったが有栖と有栖を心配している力一を見て、ぐっと堪える。
「心配するでない。ワシらは探し物をするのには他の人よりちょっぴり得意でな。明日また探し始めるとしよう。じゃが有栖どのが手伝ってくれて、すーっごく助かった!」
「……本当?」
「ホントじゃ本当。探している人が見つかったら有栖どのにもちゃんと教えるから、その時はまた会おう」
「わかったわ!探している人が見つかるように私も祈っているから!」
「それでは失礼しますね。有栖ちゃんを無理やり連れだすような形になってしまいましたが、私もあなたたちのご友人が見つかることを心より願っておりますので」
そうして勝たちは力一に連れられて行く有栖を見送った。
傍目から見ると完全に不審者が女の子を騙して連れて行っている様にしか見えなかったが。
「あ、そうそう」
少し遠ざかったところで力一が思い出したように振り向く。
「探している女の子もですが、
「剣?」
「ええ、剣があれば倒せる敵もいます。ブージャムであれば話は別ですが、今回はそういう訳でもないようですので。それではまた。どこかで出会えることがあれば」
「……?」
力一は何か意味ありげに言っていたが残された3人は言われた意味がさっぱり理解できなかった。
「ハンプティダンプティ、塀の上♪ハンプティダンプティ、まっ逆さ♪キングとナイトは大慌て♪ハンプティダンプティ、ぺっしゃんこ♪」
さっきも聞いたへんてこな歌を今度は力一と有栖の二人で歌っていた。
「なあ、今言ったこと理解できた?」
「いや……」
「全く」
勝が一応聞いてみたが緑仙もドーラも話が全く理解できておらず、二人とも首を横に振った。
3人そろって首を傾げていると有栖と力一が去って行った方向とはまた反対側から声をかけられた。
「今の方がおっしゃっていたことが知りたいんですか?」
「わっ!こ、今度は誰!?」
勝がまた知らない男性から声をかけられて、慌てて振り向く。
「ああ、すみません。驚かせるつもりはなかったんですが。私は情報屋をやっております神田笑一と言います。何かお役に立てることがあるかもしれませんよ?」