こちらはにじさんじさん、当時のにじさんじseedsさんによる声劇『憂う少女のアルカディア』の非公式二次創作となります。二次創作が苦手な方、また理解の無い方の閲覧は御遠慮ください。
原作の登場人物はほぼ全員出ますが、登場人物及び世界観の設定に大幅な追加、改変がされております。そちらも合わせてご了承ください。
『憂う少女のアルカディア』のネタバレを含んでおります。
過激な描写が予定されていますがVliverさんたちは「生きて」いますので、誹謗、中傷等には極力配慮していきたいと思います。しかし私自身のライバーさんたちへの解釈が入っているのでご注意ください。
この作品は過激な描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
俺は金持ちだ。
俺には金しかない。
そう言ってくる奴は沢山いる。
高価な靴、沢山のゲーム機、毎日高級なお弁当を教室で食べ、自宅から学校まで直接迎えの車がやってくる。
元々家が大金持ちなうえに破天荒で、今度は俺のために遊園地まで作ってくれることになっている。
同じクラスメイトから疎まれることは日常茶飯事。
小学生の低学年の頃は俺が何かやったわけでもなく気に食わないと言われたことが悔しくて、自分の部屋で一人っきり泣いていたこともあった。
俺が何でだよ、と言っても誰も納得してくれない。
それは生まれながら俺についていた付加属性だった。
生まれついた時からずっと一緒に歩んできたレッテルなのだ。
皆どうしたって俺を見る時には「金持ち」というフィルターがかかってしまう。
これは子供も大人も例外がなかった。
卯月財閥の御曹司という立場上、社交的な場は一通り経験している。
大人にもなるとさすがに分別がついていて、子供の様に嫌な顔を向けたりあからさまな悪口を言ってきたりすることはないが心の中は子供とそう大して変わらない。
羨むか、妬むか。
それらがごちゃ混ぜになった妙な空気が俺の目にはいつも透けて見えている。
要するに、子供も大人も関係なく俺と出会った人間は、半数が俺を嫌って避けたりコソコソ陰口を言っている奴ら。
もう半数が俺にすり寄ってきて媚を売ってくる奴ら。
だが、中にはそうじゃない人もいた。
俺の「金持ち」というフィルターを取っ払って見ることのできる奴。
いわゆる善人という奴だ。
小学校の担任にそういう人がいた。
爽やかな雰囲気の、現代の熱血教師と呼んでいい人だった。
正直気持ち悪かった。
その先生が、ではない。
先生は良い人だった。
授業に熱意があふれていて、面倒見もよく、生徒からも先生からも保護者からも信頼された人だった。
だが、その先生と話していると俺の気分が悪かった。
俺は金持ちだ。
それは俺が生まれた時から貼られたレッテルだ。
だがレッテルそのものが嫌いなわけではない。
嫌いなのはそれを疎む者たちであって、俺はむしろ自身が金持ちであることを自慢に思っている。
そのお金は俺の親や、そのまた親、さらに上の先祖が努力を重ねて必死に築き上げてきた財産だ。
そして今度は俺が継承し、世の中を変えるために使っていく。
誇りに思わなくてどうする。
俺は金遣いは荒いが、ちゃんと買った分より多くの収益が来るようになっている。
だから俺は、この年齢ではむしろ少なくない経済を回しているとでさえ思っている。
俺は既に「金持ちの」俺ではなく、「金持ちの俺」なのだ。
俺が金持ちであることをまったく考えないで接してくる人は、逆に俺の誇りを貶されているようで気分が悪い。
そもそも俺は人付き合いが得意な方ではない。
あんな心が澄み渡っている連中と一緒にいて平気でいられるか!
俺と今まで出会った奴は約五割が妬む者、もう五割が羨む者、そして数パーセントの善人。
そして。
そのどれにも当てはまらないのが、鈴木勝と出雲霞だった。
わざとでも、わざとでなくても俺が金持ちであるが故の話を持ち出すと、二人とも呆れた顔をして俺を見る。
二人とも俺を金持ちというフィルターを取っ払って見ることはできていない。
だがそれだけ。
それだけだった。
それだけしか反応しないということが、どれほど俺にとっては衝撃的なことか。
嫌味を言う訳でもなく、俺を避けるわけでもなく、ただ一緒にいるだけ。
初めて俺が卯月財閥の御曹司だと知った時も「へえ、そうなんだ」と言っただけ。
御曹司あるあるを語る、いわゆる金持ちジョークだって二人だけはいちいち冗談として受け取ってくれるのが正直嬉しい。
あの二人は俺が金持ちであることを、ただの個性として受け入れてくれていた。
故に。
俺はこの二人との関係だけは絶対壊したくないと決めていた。
御曹司であるせいで少なからずトラブルを抱え込みやすい俺は、二人がそれに巻き込まれないよう慎重に行動した。
汚い奴らは誘拐なんて平気でやる。
誘拐されるのが俺ならまだいい。
だが世の中には俺の友人という理由だけで襲う連中もいる。
正直な話そんなことをされても卯月財閥の人は何も動じない。
二人は完全に部外者なのだ。
トカゲのしっぽですらない。
それでもそれを理解しない連中は多い。
仮に勝や出雲が危険な目に会ってしまったら俺は二人に顔向けできないだろう。
だから、二人には内緒でそれぞれSPを配置してもらっている。
特に出雲には厳重に。
未来視の能力は露呈してしまえばあまりにも多くの魔の手を引き寄せてしまう。
下手すりゃ研究施設のモルモットになってしまうかもしれない。
俺は金持ちだ。
俺には金しかないかもしれない。
だが、金ならある。
要は使い道だ。
金で買えないものもあるが、金で買えるものは沢山ある。
俺は二人を守るために金を使う。
ずっと前、自分自身にそう誓った。
そのためには手段は択ばない。
なりふり構っていられない。
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「なー、ハルタ。ハルタ宛に手紙が来てるぞ」
書斎で公務をこなしていた春崎エアル王子は扉がノックされたので返事を返したのだが、家臣ではない者の声が聞こえてきて少し驚いた。
とは言っても知らない人という訳ではないので驚いたのは一瞬だけ、そのあとすぐに別の疑問が沸き上がってきて王子はすぐに返事を返す。
「入ってきていいよ」
「ほーい」
少し重い扉が開かれると王子の友人である成瀬鳴が爽やかな笑顔で入ってくる。
これは聞こえてきた声で分かっていた。
疑問に思ったのは別のことだ。
「どうして鳴が手紙を持ってきてるの?そういうのはうちの人がやるはずなんだけど。客人に手紙を運ばせるなんて……」
「いや、遊びに来たら頼まれちゃったんだよ。ハルタ全然休んでないんだろ?みんな心配しちゃってさ。俺が来たら仕事を一旦止めるんじゃないかって」
「……そういえば休憩時間からとっくに過ぎていたね」
「それにほら、手紙の差出人も俺らのよく知っているやつらだぜ」
王子は鳴から手紙を受け取り、差出人を見るとそこに書かれていた懐かしい名前に思わず笑みがこぼれた。
「ああ、そういえば久しぶりだなあ」
「だろ?」
「じゃあ丁度きりも良いし、手紙を読みながら休憩しようかな」
そう王子が言った瞬間に扉の外から給仕係……つまりメイドさんの声が届く。
「王子、ただ今お茶とお菓子をお持ちいたしました」
「あ、お願いしまーす」
王子ではなく鳴が返事を返す。
おいおい、と王子が何か言う前に扉が開かれメイドさんがワゴンにティーセットとお菓子を乗せて運んできた。
このタイミングの良さ、絶対に扉の前で待機していたに違いない。
鳴に手紙を持たせるのもお茶をするのを断れない空気を作るためか。
(別にそんな遠回しなことしなくても、言われればちゃんと休憩するのに)
王子がジト目を向けているのを気づかないフリをして、メイドさんは部屋の中央に置かれた机にお菓子を並べ、紅茶を注いでいく。
そして机の横、対になっているソファへ二人を手招きした。
「どうぞこちらへ。お二人ともお座りになってゆっくりお寛ぎ下さい」
「ありがとうございまーす」
やはり、王子ではなく鳴が返事を返してソファに座る。
鳴は鳴でこの状況を面白がっているらしかった。
王子はため息をつくと作業中の書類を机の脇に置く。
そして手紙を持って鳴とは反対側にあるソファに座った。
その間、給仕が紅茶を入れ終わり「では何かあったらお申し付けください」と部屋から下がっていった。
「何か、ハルタにしてはお菓子が少なくない?いつもホールケーキ食ってるイメージあるんだけど」
出されたお菓子はクッキーだった。
王子が超甘党であることを知っている鳴は自分と同じ量しかない王子のお菓子を見てふと思いついた疑問を口にする。
「どんなイメージだよ。さすがに公務の合間に食べたりはしないって」
「……その話だと、仕事の時間じゃなければ食っている様に聞こえるんだけど。って何で今目をそらした?」
「いや……実は昨日の夕食後のデザートでさ」
「食べたの!?」
呆れた、と鳴はソファに深く座りなおす。
「別に良いでしょ。好きなんだから、甘いもの」
「いやあ、そこを非難するつもりはないけどさ?」
「じゃあ良いじゃん」
からかうように顔を覗き込んできた鳴に王子は口を尖らせる。
何となく照れ臭くなった王子は手紙をさっさと読むことにした。
その間、鳴は特に茶化すことなく王子が読み終わるのをただ待っていた。
黙って手紙に集中させてくれる鳴の人の好さに感謝しつつ王子は手紙を読み進める。
「どうだった?なんて書いてあった?」
一通り手紙を読み終えた王子が手紙を机に置くと鳴が質問した。
「うん。向こうの近況について色々。今日中には返事を書かなきゃ。鳴のところにも来てるでしょ?」
「まだ今回の分は来てないよ。今夜か明日あたりにポスト確認する」
「そっか。……紅茶入れなおそうか?」
自分のカップの中が少なくなり、鳴のカップも中身がなくなっていることに気がついて王子はそう提案した。
鳴の返事を聞き終わる前に少し急いで机に置かれたティーポットを持つ。
「おっ、サンキュー」
鳴がお礼を言った瞬間、王子の予想通り部屋の扉が少し開き中から先ほどのメイドさんが顔をのぞかせた。
「あっ。……失礼いたしました」
そうして謝ったかと思うとすぐに扉を閉めて引っ込んでしまう。
状況が読み込めず鳴が目をぱちくりさせて王子に質問する。
「今の……何?」
「ああ。あの子、僕のお茶を入れたり他にも色々身の回りの世話を焼こうとするんだよね。僕が一人でできるからいいって言ってるのに聞こうとしないから……。仕事を取らないでください!って言われちゃうんだよね。自分自身の身の回りのことはできるし、いちいち大変だろうから焼かなくていい世話は焼かなくていいとおもうんだけど」
「もしかして、ずっと扉の前で待機してる……?」
「待機って言うか……。もうへばり付いているんじゃないかな?扉に」
「うわぁ。……見た目は可愛いし凄く仕事できそうに見えるのに」
鳴が呆れた声を出した。
「あの子は最近来た子なんだけど、実際に仕事は凄く丁寧だし有能なのは間違いないんだけどね」
「ははっ。家来の人たちからも好かれてるんだね。さすが王子」
「んん?そういう話になっちゃうの?」
まさか自分が褒められる流れになるとは、と困惑した王子を見て鳴が可笑しそうに笑う。
「皆ハルタの助けになりたいんだよ。だってさ、毎回ここに来る度に皆ハルタのこと褒めてるんだぜ?聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらいにさ」
「もう……。何言ってるんだか……」
王子は赤面しているのを誤魔化すために話題を変えることにした。
「そういえばさっき、卯月財閥の御曹司から連絡があってさ」
「卯月財閥!凄いところから声かかったな!割と近所だけどさ」
「うん。なんでも緊急の要請みたいなんだけど……」
「待った」
嫌な予感がして鳴は王子の話を遮る。
「それ、俺みたいな部外者が聞いていい話なの?」
「いや。ダメだよ?」
「ええ……」
ドン引きした様子になる鳴。
鳴は友人ではあるが王子の仕事に関しては完全に部外者だ。
これから話すことはちゃんと理由があるので話すのだが、わざと相手がしり込みするような話し方をした。
王子としては散々からかってきたお返しをしようという思惑があったので、今はそれが成功して十分満足している。
なのできちんと状況を説明することにした。
「本来はこっちで色々協議してから話すものだけど。でも緊急だし鳴にも行っといた方が良いと思ったから」
「んん?どういうこと?」
「卯月財閥の御曹司はまだ中学生なんだけど、一緒に通っている友達が行方不明みたいなんだよ。それを探すためにこっちでも協力してくれって。うちお抱えの部隊を出すかどうかみたいな話はこれからだけど、人探しなら鳴にも協力してくれないかなと思ってさ。積極的に探すじゃないにしろ、それっぽい子を見つけてくれたら報告してもらえると助かるんだよね」
それを聞いて鳴はうーん、何か悩むように腕を組んだ。
「わざわざ友達探すのにハルタのところにまで声かけたんだ?フツーに警察とかに頼んだ方が良いと思うんだけどなあ」
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某所
「はーい。私もコウくんに頼まれて霞さん探してるの神ですよ。まあ面倒なので勝くんの周りしか注意を払っていません。つまりサボってます。はっはっは!」
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「僕もそう思ったんだけど、あの御曹司から頼まれごとなんて今回が初めてだし何か事情があるのかも。かなり慌ててたみたいだし」
「ふーん……。あっ」
そこで鳴は何を思いついたのか王子の方へ身を乗り出した。
「俺も一緒に行くから、ハルタも探しに行こうぜ!」
「はあっ!?」
「休暇だよ休暇。名目は現地の捜索隊隊長ってことでさ。ハルタも一緒に行こうよ!」
「それはとても良い考えだと思います!」
扉が勢いよく開け放たれたかと思うと先ほどのお姉さんが部屋に乗り込んできた。
「うわっ!出た!?」
鳴ももちろん予想していなかったようで、オバケでも見たかのような反応を見せた。
王子ももちろん目を見開いて驚き、言葉すら出ない状態だ。
そんな二人にはお構いなしにお姉さんは話を続ける。
「最近の王子はろくにお休みも取れず、外に出る機会もほとんどないじゃないですか。この際仕事は我々に任せて、鳴さまと一緒にお出かけになってはいかがでしょう?私、雨森小夜もご同行させて頂きます!」
「えぇ……?」
そうして王子と鳴、そして小夜も事件の渦に巻き込まれることが決定した。
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「それじゃあ皆いきますよ?手をハートにしてー。アキニウム光線!光線…こうせん…コウセン……」
鈴谷アキはネットアイドルである。
今日もアキくんはネットを通じてファンであるアキネコの皆にアキニウム光線を振りまいている。
アキニウム光線とはアキニウムが120%込められているアキくんの必殺技だ。
アキニウムはアキくん由来の成分でアキネコが摂取することで強力な癒しの力を得ることができる。
過剰摂取は禁物な代物ではあるが、今日も世界の平和のためアキくんは皆にアキニウム光線を届けているのである。
つまりアキくんかわいい。
「皆さんお疲れ様でした。まったねー」
今日の配信を無事終えてアキくんはパソコンの電源を落とす。
アキくんが配信を終えたのを見て、ひとりの人物がアキくんの部屋にあがってきた。
「お疲れ様アキくん」
「あ、ハジメお兄ちゃん。うん、今ちょうど配信終わったところだよ」
渋谷ハジメはアキくんの隣に住んでいるご近所さんで、機械全般に強いためアキくんの配信の手伝い、主に機材関連のサポートをしている。
「今日もアキくんは人気者だねぇ」
「うん。皆が応援してくれるおかげだよ。応援してくれるからボクも頑張ろうって思えるんだ」
そう言ってアキくんは嬉しそうにはにかむ。
かわいい。
「もう夕ご飯の準備しておいたんだけどハジメお兄ちゃんも一緒に食べる?」
「え?俺の分?」
と、ハジメは意外な顔をした。
「今日はカレーを作ったんだ。多めに作ったからハジメお兄ちゃんの分もあるよ」
「そっかぁ。……ごめん。せっかくで悪いんだけど」
ハジメはスマホを取り出してそこに映し出された画面をアキくんに見せる。
そこにはとある口座の明細が記載されていた。
アキくんはそこに振り込まれていた額を見て「あっ」と声を上げる。
「これ。2434円の振り込み!これって秘密の依頼、合言葉みたいなものだよね」
「そうだよ。さっき来たんだ。限られた人にしか知られることのない、俺に宛てたメッセージ。送ってきたのは……卯月コウ?卯月財閥か」
どこから振り込まれたのかを見たハジメはじっとどこかを見つめ、物思いにふけった顔になる。
「……ハジメお兄ちゃん?」
「いや、何でもない」
心配するアキくんに気づいてハジメは何でもない風に首を振った。
「とにかく、これから御曹司にコンタクトをとってみるよ。秘密の合言葉を知っているってことはハッカーとしての渋谷ハジメに対しての依頼のはずだから。だからせっかくのお誘いだけど夕食はパスにするね」
「ハッカー……。まだ、その仕事続けてたんだね……」
暗い表情になったアキくんにハジメが慌てて弁明する。
「いやいや!もう昔みたいにやんちゃはしていないから!安心して。ちゃんと選んで仕事してるから危険はないよ」
「そっか……。何か手伝えることがあったら言ってね」
「うん。その時は頼りにしてるよ」
取りあえず安心してくれたようでハジメもほっとため息をつく。
そのままハジメは挨拶を残してアキくんの部屋を出ていった。
アキくんと別れたハジメはすぐに自分の部屋に戻りコウからの依頼内容を確認する。
「やっぱりな……」
ハジメも直接事件に関わっていくことを決意した瞬間だった。
そのままキーボードを走らせ、探査プログラムを使って何かを調べ始めた。
しばらくして遂に、ハジメは目的のものを見つけ出す。
「あった!こいつだ。……神田笑一」