もう二度と勘違いしない   作:ホモ・サピエンス

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基本ノックは三回!これは世界の常識

 

 

 

俺の目の前には黄色い引き戸の扉がある

 

 

 

 

羽沢さんが病院に搬送されてから約一日、俺は羽沢さんが入院している病室の前に来ていた

 

 

 

昨日が金曜日で助かった、おかげで今日ここに来ることが出来たから

 

 

 

女の子に会うのだからそれなりの格好をして、一応デパートで適当なものを見繕ってきたが本当にこれでいいのかな?羽沢さんの嫌いなものじゃなければいいけど

 

 

 

 

だけど、それより

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そもそも俺が来て良かったの?

 

 

 

 

もう、本当にそれだけだなんだよ!俺が来ても良かったの?俺と羽沢さんはもう本当になんでもないじゃん!クラスメイトなだけじゃん!席が隣なだけじゃん!

来てよかったのか?!ダメじゃね?もう俺は回れ右して帰った方が良くね?でもお土産をもう買っちゃったからなぁ、これ結構高くて良い奴なんだよなぁこれで俺が帰ったらこれどうすんの?俺が食べるの?オカンは食べるかもしれないけど絶対に「どうしたのこれ?」って聞いてきたら俺はどう答えるの?どうしよう?どうしよう?どっちに転んでもなにも言えない気がする!もうなんで俺はお見舞い来ようなんて考えたんだ?もうそっからだよ!昨日の勢いのままここに来てるけど後悔し始めた、

ああああああああもう嫌だああああああああぁぁぁ!!!!どうしたらいいんだああああぁぁ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ちくしょう!もういい!!覚悟をきめろ!!行ってやる!行ってやるぞ!

 

 

 

 

いざ!南無三!!

 

 

 

 

ガラッ!!

 

 

 

 

 

その時俺は頭がとんでもない回転をしていたにも関わらず常識的なマナー、『ノックをする』ということを忘れてしまったのである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」「あら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり目に入ったのは白い肌

 

 

 

 

 

 

羽沢さんはシミのない綺麗な肌色の背中を外にさらして羽沢さんのお母さんに背中を拭いてもらっている最中だった

 

 

 

「あ、あれ?」

 

 

 

つい目を見開いてそれを眺める

 

 

 

こっちを振り返った羽沢さんは俺の顔を見て一瞬キョトン?とした表情を浮かべたあと、どんどん顔を赤くしていって・・・

 

 

 

 

 

「・・・・・・す、す、すみませんでした!!!」

 

 

 

 

 

バタン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし、腹を切るか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラッ

 

 

 

目の前の黄色い扉から羽沢さんのお母さんが出てきた

 

 

 

 

「あ、あの、すみませんでした!!!」

 

 

 

「いや、私に謝られても。それに背中見たぐらい気にしない気にしない!」

 

 

 

そんなざっくりでいいのか?!!

 

 

 

「その紙袋はつぐみに?」

 

 

 

羽沢さんのお母さんは俺の手持っている袋を指さして聞いてきた

 

 

「ああ、はい一応お見舞いの品のつもりで」

 

 

 

「そう、ありがとうホクサイくん。私は飲み物を買って来るから先に中に入っててくれる?」

 

 

 

「ええ?!入ってもいいんですか?」

 

 

 

「入らないと謝れないわよ」

 

 

 

ぐうの音も出ない程の正論であった

 

 

 

それじゃっと言ってどこかに行ってしまった

 

 

 

 

ぐああああああああぁぁぁ行きたくない行きたくない行きたくない行きたくないよー!!!!ああああああああぁぁぁ嫌だあああああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ははぁぁぁぁ

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

「は、はい!ど、どうぞ!」

 

 

 

今度はしっかりとノックをしたら中から返事が返ってきた

 

 

 

ガララッ

 

 

 

ベットにいる羽沢さんはしっかりと服を着て、顔を赤くして座っていた

 

 

俺はベットの傍にある椅子についた

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

二人とも無言で俯いている

 

 

 

「・・・・・・・・・その、」

 

 

 

「は、はい!何?羽沢さん」

 

 

 

 

「その・・・・・・見えた・・・・・・かな?」

 

 

 

 

「い、いやむしろタオルでなにも見えなかった!ほんとほんと全然だよ!!」

 

 

 

 

「そっかぁ良かったぁーそれなら安心だね!」

 

 

 

羽沢さんは赤くした顔を平常に戻してあはははーと笑った

 

 

 

 

 

 

 

嘘です

 

 

 

しっかりと羽沢さんの綺麗な背中をこの目に焼き付けました

 

 

 

ご、ごめん羽沢さん!!本当にすみません!!

 

 

 

このままじゃあダメだな!とりあえず渡したいものを渡してすぐに帰ろう

 

 

 

「これお見舞いに持ってきたから良かったら食べて!」

 

 

 

「あ、ありがとう!ホクサイくん!これはチョコレート?」

 

 

 

「あ、ああそんな大したものじゃないけど」

 

 

 

「ううん!ありがとう!私甘いもの好きなんだ!」

 

 

 

良かった気に入ってもらえたみたいで、

 

 

それじゃあミッションコンプリートだ

 

 

 

「それじゃあ、俺はもう帰るよ」

 

 

 

俺は椅子から立ち上がる

 

 

 

「っえ!もう?!」

 

 

 

「ああ、羽沢さんも病み上がりだし、あんまり無理させるのも悪いし」

 

 

 

「え?でも・・あの・・・」

 

 

 

「おーい!ホクサイくーん両手が塞がってて扉が開けられないんだけど開けてくれなーい?」

 

 

羽沢さんはなにか言いかけるけどその時扉の奥から羽沢さんのお母さんの声が聞こえた

 

 

「は、はい!」

 

 

 

扉を開けたら羽沢さんのお母さんが両手でコーヒーを持っていた

 

 

 

「ゴメンねあ、これも持って?そうだつぐみ!」

 

 

 

それでそのまま俺にコーヒーを持たせてきて、

 

 

 

「何、お母さん?」

 

 

 

「さっきお父さんから電話があってお店を手伝ってくれって言われたから戻るね?」

 

 

 

「ううん!大丈夫だよ!お父さんによろしくね」

 

 

 

「はいはーい!それじゃあホクサイくん!つぐみのことよろしくね!」

 

 

「は?・・・・・っえ?なんで?」

 

 

 

でわでわ〜っと言って行ってしまった

 

 

 

ええぇぇ!!!!

 

 

 

行動が唐突すぎる!あんたは日菜先輩か!

 

 

 

いや!でも羽沢さんはもう寝ないとダメだろ!

羽沢さんもニヤニヤしないで早く寝なさいよ!なんでそんなに嬉しそうな顔してんだよ!

 

 

はぁぁぁ

 

 

 

「さ!ホクサイくん!座って座って!」

 

 

 

そう言って羽沢さんは椅子をポンポン叩いて俺に座るように促す

 

 

 

俺はまた椅子に座って羽沢さんにコーヒーを手渡す

 

 

 

「はい羽沢さん。それで俺は何をすればいいの?」

 

 

 

「ありがとう、うーん何しよっか?」

 

 

 

あはははと羽沢さんは笑ってる

 

 

 

いや、俺が聞きたいんだけどね!まぁ背中を見てしまったこともあるから出来ることはするけどさぁ

 

 

 

たださっきから羽沢さんの笑い方が不自然だとは思っていた。教室とは違ってぎこちない

 

 

 

「羽沢さん、大丈夫か?」

 

 

 

「あ・・・・・・・えっとね・・・・・・」

 

 

 

羽沢さんは笑顔をすぐにしまって、落ち込んでしまった羽沢さんのお母さんはこれを見越していたのかもしれない

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

病室の窓からは綺麗な空が見えていて雨なんか降りそうにない

 

 

 

「私ね、ホクサイくんに言われて頑張ったの。みんなに勝てなくても自分が上手くなるために頑張ったの」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「でも無駄にしちゃった、私は私の頑張りを無駄にしちゃったよホクサイくん」

 

 

ベットの白いシーツにいくつかシミが出来ては薄れて消える

 

 

羽沢さんは両手で包むように持ったコーヒーを震わせていた

 

 

やっぱり羽沢さんは()()()()()()()()()

 

 

 

「羽沢さんってリスだよね・・・北海道のエゾリス」

 

 

 

「えっ?リス?」

 

 

羽沢さんはキョトンとした表情を浮かべた

 

 

 

「知ってる?エゾリスは秋になると地面にドングリを植えて、そしてそれを掘り返して冬を凌ぐんだ」

 

 

 

「う、うん知ってるけどなんでそんな話を今するの?」

 

 

 

羽沢さんの疑問の声はあえて無視する

 

 

 

「でもその植えたドングリは何個かはそのまま忘れられて埋まったまま食べられないんだ」

 

 

 

「・・・そっか、なら確かに私はリスなのかもね。努力してドングリを植えたのにそれが結果にならない」

 

 

 

羽沢さんは流石に頭がいい、その通り。でもあと一歩足りない

 

 

 

「でもその植えたドングリはいつか芽吹くんだ」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「当たり前だろ?ドングリって要は種なんだから地面に植えたら必ず芽吹くんだ」

 

 

 

「・・・・・・そっか」

 

 

 

「その努力はいつか大きな木になってまた沢山のドングリをつけるんだ。そう努力は絶対に無駄になんてならない」

 

 

 

 

 

 

 

そう確かに今回はダメだったかもしれない

 

 

だけど

 

 

 

「羽沢さん、失敗してもずっと()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

リスが植えたドングリは掘りだせなかったとしてもそれでもドングリは木になる

 

 

失敗は失敗であり続けない

 

 

 

失敗(掘り出せない)はいつか成功(巨木)になる

 

 

「羽沢さんは自分の努力を誇っていい。自分で自分を褒めていいんだ」

 

 

「・・・・・・そっか私頑張って良かったんだ・・・・・・」

 

 

 

羽沢さんはゆっくりと自身に言い聞かせるように呟いた

 

 

その綺麗な茶色の瞳から一筋頬に伝っていくものがあった

 

 

「あぁそっか、ぞっうなんだぁ、ううぅぅぅグスっ」

 

 

ちょ!ちょっと!ちょっと待って!!

 

 

 

「ご、ごめん!俺そんなつもりじゃなくて!」

 

 

 

「ご、ごめんなざい、ちがくでそうじゃなくて」

 

 

「羽沢さんご、ごめん!本当にごめんなさい!」

 

 

 

「ちっちがくでそうじゃなくてずっと誰かにそう言って欲しかったの」

 

 

 

羽沢さんはボロボロと涙を流しながら両手で顔を覆いながら声を出して泣いてしまった

 

 

 

どうしよう?どうしよう?本当にどうしよう?なにしてどうする?

 

 

 

ええいままよ!!

 

 

 

俺は羽沢さんの頭に手を伸ばしてそのまま頭を撫でた

 

 

 

ヨシヨシ

 

 

 

「・・・・・・え」

 

 

 

ヨシヨシヨシヨシ

 

 

 

って俺は何してんの?!?!

 

 

 

確かに羽沢さんは驚きのあまり涙は止まったけど!これってもしかしなくてもセクハラなんじゃ??!

 

 

 

「こ、ご、ごめん!!」

 

 

手をはなそうとしたら羽沢さんの手に捕まる

 

 

え!?な、なに?は、はなして欲しいです!

 

 

 

「・・・・・・・・・して」

 

 

 

「え?なに?」

 

 

 

「・・・・・・・・・もう一回して?」

 

 

 

羽沢さんは涙の溜まった瞳のまま上目遣いで俺に頼んできた

 

 

 

 

 

それを振り払って帰るなんて俺には到底出来ない事だった

 

 

 

 

 

 

かわああああああああああああああいいいいいいいいいいい!!!!

 

 

 

 

 

 







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