「・・・・・・・・・・・・・・・くん」
随分イヤな夢を見たなぁ、まああれからまだ二週間しかたってないんだから当たり前といえば当たり前なんだけど。
「お・・・・・・てよ・・ホク・・・くん」
はあなんて言うか、俺ってイタイやつだったんだなぁ。あろう事か自分が好きな人が当然のように自分のことも好きでいるなんて馬鹿みたいなことを考えていたんだから。
「起きて!ホクサイくん!!」
耳元で大きい音が聞こえた。いや聞こえたって言うか聞かされたってのが一番適切な表現だけど、
「はっ!な、なに!」
その声に驚いていきなり立ち上がってしまう。
目に広がったのは最近来るようになった部活の部室、机の上には教科書と落書きのようなミミズが書かれているノートと俺の筆記用具
そして普段俺以外誰もいない部室にいた一人の女の子
大きくてクリクリとした茶色の瞳に同じ色の髪を肩にかからない程度の長さで切りそろえた女の子。
なんかリスっぽい。
確か同じクラスの・・・・・・
「良かったー起きてくれて。大丈夫?随分うなされてたよ。」
「あ、ああ大丈夫。ちょっと夢見てただけだから気にしないで!」
名前を思い出す前に話しかけられてしまった。えっとえっとなんて名前だったかな?
は・・・・・・はね?・・・・・・・・・いや?
はぐき?だっけ?・・・・・・・・・
いや違うだろ!なんで
「そうなんだ。でも起きていきなりで悪いんだけどそろ そろ下校完了時刻だからそろそろ校門に行かないと。」
ああそっか。
やっと頭が回転してきた。そうだ俺は放課後になって強制に入部させられた(なお入った当時の記憶はない)部活に参加してたんだ。って!!
「げ、下校時刻!うそぉ?!!」
壁にかけられた時計を見ると確かに下校時刻になりかけていた。
いつから寝てたんだ俺、まったく記憶にない。
「職員室の先生達がね、ここの電気がいつまでも消えないから気にしてたんだよ。」
「そ、そうなのか。いやごめんなさい、何だか手間を取らせたみたいで。」
「ううん!大丈夫だよ。これもお仕事だから!」
他称
「ん?お仕事?」
「うん!私これでも生徒会に入ってるんだよ。知らなかった?」
うん!ごめん全然知らない。
てかまだ名前すらも思い出せていない。
えっと、頭文字が『は』なんだよ!そこまでは思い出せてるだけど!ここまで出かかっているだよ!ああ寝起きで頭が動かない〜確か・・・・・・
「え、えっと起こしてくれてありがと。『
「えっ?」
「いや、本当に助かったよ『羽川さん』!もうすぐで先生達に怒られる所だったよ〜!あはははは!」
「えっと、えっとね。」
「いやー何?ちょっと勉強しようとしたら眠たくなっちゃってさ。休憩してたらこんな時間になってたよ〜!」
「あ、あのね!」
「いやーありがとうございます!『羽川さん』!!あっははははは!!!」
「あの、私の名前『
「あはははは〜っは?・・・・・・・・・」
「いやだから私の名前は『羽沢つぐみ』って言うんだけど・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
空気が凍りついた。
てかこの部屋の時が止まった。
うわぁースゲー承太〇はきっとこんな気持ちになったに違いない。
動きたいのに動けないってスゲー怖いなぁ
目の前の『羽沢さん』はアハハと苦笑いを浮かべる。
俺も苦笑いを浮かべる。きっと目の前の彼女よりもひどい顔なのは間違いないな、やばい体は全然暑くないのに背中と手から酷い量の汗が流れてきてる。
「えっ、えっと大丈夫だよ!気にしてないから!そうなんだ私って結構地味でよく名前間違えられることあるから!だから・・・・・・」
羽沢さんは名前を間違えた俺の事をフォローしようとしてくれてる。なんていい子なんだ!!
ああ、もう死にたい。こんないい子の名前すらも覚えていない俺なんて、いいんじゃない?もう死んでもいいんじゃない?ねえ!ごーとうへーるしちゃってもいいんじゃない?!
「あの!聞いてる?!大丈夫?本当に気にしてないよ!大丈夫だから!ねぇ!聞いてる?あのー?・・・・・・」
そうか今思い知ったよ。俺は勘違い野郎と言うだけでなく、人の名前も覚えない馬鹿野郎でもあったのだ。
はあ、これじゃ“あの人”にフラれるのも当然だなぁ