コンコン
「ふんふん♪」
カリカリ
「ふんふんふん♪」
グリグリ、カリカリ
「ふふんふふんふーふーん♪」
後ろのベットで寝転がる大型ネコ科動物が鳴いてるけど俺はあえて無視して机についてノートと教科書を見つめて勉強している
この勉強はもう習慣だ
小さい頃から“あの人”に憧れて俺もその人の真似をしていたらいつの間にかその習慣から抜け出せなくなっていた
一定の時間以上勉強しないと気が済まない、日菜先輩もその事をわかっているから勉強の邪魔はしてこないけどいい加減にうるさい
てかなんであの人は自分の部屋に帰らないのだろう?ここにいても面白い事は何も無いのに
“退屈”ってのはこの人が一番嫌いなことだろう
まあいいや、んーこの問題難しいなどうすればいいんだろう?
「ねえホクサイ」
と余計な事を考えていたからか
突然耳もとで綺麗な声とくすぐったい息遣いが来た
日菜先輩の顔がすぐ側にある、それこそ頬と頬が接しそうなほど近くに
吸い込まれそうなほど碧くて大きいその瞳には俺が写っていてどこか水晶玉のように見えた
「う、う、うわあああ!!な、なんだよ!」
俺は上体を横に逸らして日菜先輩と距離をとる
「ん?さっきからずっと止まってたみたいだから教えてあげようかなって思って」
あ、ああ。なるほどそれは有難いけどとても心臓に悪い
もっと普通に声をかけてくれ
耳にさっきの声と息の感覚が残ってかゆい
神経が敏感になってる
近いんだよ!なんだよこの人!少しは恥ずかしがれよ!
「それで?どこが分からないの?」
「え?あ、ああえっとここの数学の問題なんだけど」
んーどれどれと言って日菜先輩は問題を見る
軽く唇を動てブツブツ呟いて、
「るんっ!うん解けたよ!これはねぇまずこれをガシャンとして小さく可愛くするの!さらにパコっとすると一番小さいのが見えて来るからそれが答えだよ!」
うん、なるほど
よしよし分かってきた
最初は何言ってるのか分からなかったけど長年の経験からこの意味不明な擬音も分かるようになってきた
確かに言ってる事は分かりずらいけどよく聞けば理にかなった事を言ってる
アドバイス通りにやってみたら問題は直ぐに解けた
「出来た?」
「ん、出来たありがとう日菜先輩」
「いいよ、それでまだ勉強する?」
壁の時計を見ていたら結構時間が立っていて夕方を過ぎそうになっていた
「ああ、今日はもういいよ」
日菜先輩にはかなりの時間を暇させたみたいだ
「そっか!それじゃどうする?」
「何がですか?」
「夜ご飯はどうするの?また外に食べに行くの?あ!その前にお風呂かな?」
え?
「ん?どうしたのホクサイ」
お前がどうした?なんで夕食まであんたと一緒なんだよアンタの家にも夕食出るだろてかいい加減帰れよなんでまだうちにいるんだ合鍵を返して早くうちに帰れそして俺に安心をくれ
「ねえ?ホクサイ?夜ご飯どうするの?」
「あの〜日菜先輩」
「なに?」
「帰らないの?」
「どうして帰るの?」
???
わけが分からなくて俺はつい首を傾げてしまう
どうにも会話が成立してない
「いや、だからいつまでここにいるの?」
「今日はお泊まりでしょ?」
!!!
今度は驚きで目を見開いた
やっぱり会話が成り立ってない!!
「泊まり?!はぁ!誰がそんなこと言ったんだよ!!」
「私?」
「帰れよ!!絶対に泊まんな!」
「なんでなんでおかしいよ!昔はよくお泊まりしたじゃん!」
「おかしいのはアンタの頭だ!」
なんだ!どうしてだ!俺がおかしいのか?なんで泊まるのが前提で話が進んでいるんだ!絶対にダメに決まってるだろ!
「ダメだ!絶対に泊めせないぞ!」
「なーんーでー!!!いいじゃんいいじゃん!どうしてダメなの?!」
「言わなきゃわからんのか!!」
「わかんないー!!」
分かってるだろ!天才!やめろ!手をブンブン振るな!ただこねても絶対にダメだ!
「もう!ホクサイのバカ!もう知らない!」
日菜先輩は部屋の扉を出てドンドン音を鳴らしながら階段を降りて行った
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
肺の中にある空気全部を吐き出したかのような深いため息が出てきた
タラララ〜♪タラララ〜♪タラララッタラ〜♪
あ、風呂が入った
入るには少し早いけどまあいっか、熱いお湯に浸かろう
俺は風呂が好きだ、少し熱いお風呂に入ると身がほぐれる気がしてとても気持ちいい
少しウキウキしながらタンスから寝間着と下着を取り出して脱衣所に向かう
けどその途中で日菜先輩に遭遇した。この人まだ帰ってなかったのか
「ホクサイ、お風呂入るの?」
「え、ええそのつもりですけど」
さっきの怒った感じとは違って至って冷静に日菜先輩は俺に質問してきた
もう怒ってないのか?
「そっか!」
なんか笑顔で返事をしてきた
やだなぁこんな顔する時は何か嫌なことを思いついた時だよ
脱衣所に向かう俺
その後ろに日菜先輩
ガラッ
脱衣所の扉を開ける俺
その後ろに日菜先輩
脱衣所に入る俺
その後ろに日菜先輩
ふぅぅぅー
「あの日菜先輩」
「どうしたのホクサイ?」
「日菜先輩は風呂に入りたいんですか?」
「うん、そうだよ」
なぁんだ!良かった良かった!日菜先輩もお風呂に入りたいのか!あははは!
「それじゃあごゆっくり俺は部屋で待ってますので」
脱衣所を出る俺
その後ろに何故か日菜先輩
????
振り返る俺
俺と目を合わせる日菜先輩
「日菜先輩」
「なに?」
「風呂に入るのでは?」
「ホクサイが入るんじゃないの?」
「え?日菜先輩は風呂に入りたいのでは?」
「そうだけどホクサイが入るんじゃないの?」
「俺が入っていいんですか?」
「いいよ!」
そうなのか?さっきの口ぶりだとてっきり日菜先輩が先に入るのだと思ってたけど、なぁんだ先に入って良かったのか!
再び脱衣所に入る俺
後ろに再び何故か日菜先輩
「どうしたのホクサイ?お風呂入っていいよ」
ふぅぅ
まあ待て待て落ち着け俺そうだ慌ててもいいことないぞそうだ心を穏やかにして冷静になるんだ
「日菜先輩。俺は風呂に入っていいんですよね」
「うん!そうだよ!」
「じゃあなんでここにいるんだよ」
「一緒に入るためだよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おっといけないあまりのバカ発言に思考が吹っ飛んだ
違う違う俺の想像とは全く違うことを言っているんだよきっとそうだ何かの聞き間違いだそうそうまさか高校生にもなって一緒にお風呂に入るなんてそんなバカなことが・・・
「よいしょ」
「ってなにやってんだああぁぁぁ!!!!」
そうやって思考に没頭していたら日菜先輩がシャツの裾を捲し上げてきた
シャツの中から見えたのは綺麗にくびれた白いお腹
ついでに上の方に青い布のようなものが見えたが無理やり顔を両手で目を遮る
「え?お風呂に入るんだから服を脱ぐんだよ?」
「やめろ!直ぐに手を離して服を元通りにしろ!お腹!お腹が見えてる!見えてる!早くしまえ!」
日菜先輩が服から手を離すとシャツの裾が元に戻ってお腹を隠す
はぁはぁはぁ
いきなり叫んだせいで息が荒くなった
「どうしたのホクサイ?そんなにはぁはぁ言って?」
「アンタのせいだわ!何考えてんだよ!一緒に風呂?!入るわけねぇだろ!馬鹿か!一人で勝手に入れよ!!」
「なんでなんでおかしいよ!昔はよく一緒にお風呂入ったじゃん!」
「いつの話をしてんだ!!それ幼稚園児の時だろ!!」
「なーんーでー!!!たまには一緒に入ろうよー!ほら!私が背中を流してあげるよ!!」
「いらねぇよ!そんなサービス!!どこの痴女だアンタ!!」
絶対にダメだ!こればっかりは絶対にダメだ!!泊まるのは百歩譲っていいとしてもこれは断固拒否だ!
その後もアホすぎる討論を三十分ほど繰り返し、俺はやっと日菜先輩を脱衣所から追い出すことが出来た