俺がアイツに対しての第一印象は『うるさそうで馬鹿そう』だ
それ自体は間違いじゃないが当然それだけでも無い
小五の時、俺は放課後だけでなく休み時間も紗夜さんに褒められるために勉強していて日菜先輩と紗夜さん以外の人間とろくに会話していなかった
いじめはなかったがやっぱりどこか寂しい思いがあって当時の担任も俺に誰かと遊ぶように声をかけてくれたが意地になってシカトした
結果俺は孤立した、今風に言えばボッチだ
そんな俺に声をかけてくれたのがハジメだった
その時はきっと俺が可愛そうとか寂しそうとか色々思ってくれたんだと思う
けどハジメが俺に向けての第一声が面白くていつも思い出し笑いをしてしまう
アイツは顔に泥を付けてサッカーボールを抱えながら俺に
【オイお前!勉強ばかりしているとバカになるぞ!】
その発言自体がバカだなと思った、言わないでおいたけど
それが俺とハジメが会話を始めたきっかけだ
俺は孤立しなくなった
というかしたくても出来なくなった
さすがに気持ちが悪いから言わないが俺はハジメのその優しい一言にとても感謝しているんだ
とても嬉しかったんだ
●●●●●
キーンコーンカーンコーン
あぁぁーやっとテスト全部終わったぁー!手応えとしてはまあまあってところだろう、いやーもう今日は勉強しないで遊ぼう!
今日は早終わりでショートホームルームもないしすぐに帰ろう、この後は何しようかなぁ?そういえば明日の夜にはオカンとオヤジが帰ってくるのか
なら今日で一人暮らし(仮)は終了だな、大変だったけどまぁいい経験だったかな?お土産はなんだろう?
ズカズカズカズカ!!
派手な足音が聞こえる、何度も聞いた事のあるアイツのヤツだ
なんだろう?当たり前だが嫌な予感がするな
「ホクサイ!どうか俺の相談に乗ってくれ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・じゃあなーまた明日ー」
いつともように俺はハジメの一言目をシカトする
「・・・・・・待ってくれ、真剣な話なんだ」
ハジメは頭を下げたまま俺に話し続ける。まるで俺が立ち止まるのを分かっていたみたいに
教室のみんなはザワザワと言いながら俺たちを見ている
はぁぁぁぁ
多分だけど本気の相談事だな、いつもふざけている奴だが真剣とこいつが言えば真剣な話をするんだろう
「話を聞くだけなら別にいいけど」
「悪い、助かる」
悪いと思うなら俺に相談すんなよ
そのまま黙って俺とハジメは俺の家近くのファミレスに入って店員にドリンクバーを注文する
ハジメはコーラ、俺はコーヒーを机に置く
その時もハジメは気難しい顔をしている、そんな顔されるとこっちも緊張しちゃうだろ
「それで相談ってのはなんだ?」
「あぁ、実はな」
シュワシュワとコーラの炭酸が弾ける音がして、ドアが開いて店員の明るい挨拶が聞こえる
意を決した用にゆっくりとハジメはその重たい口を開いて
「実は好きな人が出来たんだ!」
なんて事を言ってきた
ふむふむなるほど
好きな人ね
ふーん
・・・・・・
「って!はあああああああああああ!!!!」
思わず大声を出したせいで周りのお客や店員がこちらを振り向いてきた
「ホクサイ!声でかい!」
「わ、悪い。けどえ?お、お、おま!お前
「ああ
うわぁ本気だよ、この男!本気で俺に恋愛相談しようとしてやがる!
「ハジメがそんなこと言ってくるなんて信じられない。今までそんなこと言ったことなかったじゃねぇか!」
周りから
「ああ、俺も初めての事で戸惑っているんだ。だから頼む!」
全然戸惑ってるように見えない
バン!と手と頭を机にぶつける、お辞儀のつもりなのか?
ハジメはモテる
顔良し、性格良し、運動神経良し、と三拍子そろったイケメンだ
だけど女子からの人気が高い割に本人の恋愛への興味のなさと鈍い勘から数々の好意を無下にしてきた男だ
そんなコイツに「好きな人」なんて驚いた!
で、でも俺に恋愛相談なんて・・・・・・悪いが俺はハジメの力になれそうにないな
ここは断って・・・・・・
「ねぇねぇ!それほんと?!」
いきなり後ろのテーブルからこの場に似合わない可愛らしい声が聞こえた
「ハジメくんに好きな子が出来たってほんと?!」
なぜここにいる?!!
「うお!ひまりちゃん!どうして!」
「えへへーバンドの練習まで時間あるからここで巴とご飯食べようと思ってね、入ったらホクサイくんが大きな声出てたからさぁ〜気になっちゃって!」
後頭部を手でかきながら笑う上原さん
うわ、マジか!俺のせいだ!ゴメンハジメ!
「それでハジメくんに好きな人がいるって本当?!」
うわー嬉しそうな顔でこっちを見るなぁー楽しそうーしかも一言目からガツガツくるなぁー
流石のハジメもこれは嫌がるだろう
「ああ!ただいま絶賛初恋中だ!!」
「きゃあああ!そうなの?!すごーい!!」
・・・・・・・・・・・・お前には羞恥心ってものがないのか?俺の心配を返せ
上原さんも嬉しそうに手をぱちぱちと叩くのはやめようよ、おもちゃのお猿さんみたいだぞ
「そういう事なら私もハジメくんを応援するよ!」
「おお!本当か!実は女の子の意見も聞きたいと思っていたんだ!助かるよ!」
確かにな、俺以外に相談相手がいるのはいい事だ。でもなぁ〜嫌な予感がするんだよなぁ〜なんというかどうしようもない罠に自分からかかりに行っているみたいな気分だ。
「それでそれで!ハジメくんの好きな子の名前はなんて言うの?」
当然のように上原さんが隣に座ってきてハジメに向かい合う
そういえば宇田川さんはどこに言ったんだろう?早く戻って来て欲しい、俺ではハジメの相手は出来ても上原さんの
ハジメは「うっ」と少し息に詰まりながら先ほどよりも低い声でボソッと、
「み・・・んさんだ」
「ん?誰?」
「聞こえないぞハジメ」
あまりにも小さい声だったから聞き取れない
しかしハジメは意を決したようにカッ!と目を見開いて
「俺は美竹蘭さんが好きなんだ!!」
「うえ?」「は?」
ハジメは顔を赤くして俯いてしまった
けど俺と上原さんにはそんなアイツのフォローをする余裕がない
上原さんは驚きのあまりワナワナと口を動かして信じられない顔をしている
きっと俺も同じような顔をしているだろう
とりあえずこの後俺達が何を言うのかは予想が着くだろう、先ほどよりも大きい声で!
「「はあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」」