「どうしたんだホクサイ?死にそうな顔してるぞ?」
トイレから戻ってきた宇田川さんが心配そうに俺に向かって声を掛けてくる
でも正直それに反応する力すら俺には残っていない
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでもない」
「なにかあったようにしか見えないんだけど。ひまりもハジメの隣でニヤニヤしているし、何があったんだ?」
宇田川さんがやれやれっと言った感じで上原さんに質問する、ちなみにハジメの顔は至極真面目な表情だ
「えぇ?巴それきいちゃう?聞いちゃうの?ええ?どうしょっかなぁ?言っちゃっおうかなぁ?」
上原さんがニヤニヤをニヨニヨに変えていく
端的に言ってウザイ
「なんだよひまり?早く教えてくれ」
「えへへ、実はね・・・・・・」
〜〜〜〜説明中〜〜〜〜
「・・・・・・なるほど!ハジメが蘭のことを!」
「ねー!凄いよね!いいなぁ!これぞ青春!って感じで!」
二人とも元気いいなぁ女の子は恋バナに飢えているのかな?
「うん、そうなんだ!だから三人とも協力してくれ!」
「ああ!もちろんだ!」
「うんうん!協力するよ!」
自然と俺も頭数に入った、まあいいんですけど
「とりあえず、何をしたら美竹さんとお付き合い出来る?」
きっとこいつの辞書には羞恥心なんて言葉は存在しないんだろうな
顔色一つ変えないでそんなこと言えるのはこいつくらいだ
「それはズバリ・・・・・・デートだよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
宇田川さんの疑問の声はよく分かる
上原さんも初手から二段も三段も飛ばして行くなぁ
「なるほど!わかった!」
わかるな!なんで理解出来るんだ!アホすぎるわ!
もう無理だよ、追いつけないよ、止められないよ、もうお腹いっぱいだよ
「いやいや待て待て!ハジメと蘭はもう知り合いなのかまだ分からないだろ!」
「あっ、そっか!」
「あ、いや一応美竹さんとは知り合いではあるんだ」
へーそうなのか?あんまり接点があるようには見ないけど、それにしても宇田川さんナイスプレーだ!話の軌道修正はお手の物だな!
「まぁ今はどうでもいいんだ、とりあえずデートだな!」
違う!そうじゃない!一旦そこから離れよう!
「おいおい、落ち着けよハジメ。・・・・・・・・・・・・・・・そうだなぁこんなのはどうだ?」
宇田川さんの真面目な提案は
翌日の昼休み前
授業中なのにハジメはソワソワと頭を右左に動かして忙しない
かく言う俺もそんなに落ち着いてない
何故か先程からチラチラとこちらを見ている羽沢さんも無視して授業に集中する振りをする
宇田川さんの提案は上原さんのよりはマシだったけどそれでもあまりいいものとは言えないんだよなぁ
簡単に言っちゃえばご飯を一緒に食べて親睦を深めようっという感じだ
手順としては
①宇田川さんが美竹さんを昼食に誘う
②俺とハジメが偶然を装い二人の前にでる
③上原さんがこのグループを仲立ちになって一緒に昼食にいく
というイメージ
だけど上手くいくか微妙だな
この計画自体上手く行ったとしてもそのあとはハジメの頑張り次第だ
こいつの事だ、のっけからとんでも無いことを言ってもおかしくない
キーンコーンカーンコーン!!
き、き、来た!
「ホクサイ!行くぞ!」
ハジメが弁当を持って椅子から立って大声で俺を呼ぶ、準備万端か!!授業はちゃんと受けなさい!(自分の事は全力で棚上げ)
「わかったわかった。ハジメ、少し落ち着けよ」
「わかった!落ち着く!」
「分かってねぇよ」
本当に分かってない
俺がカバンからコンビニのおにぎりを取り出してる間に高速で深呼吸を繰り返して(深呼吸する意味が無くなってる)、右手と右足が同時に出てロボットみたいになってる
普段なら絶対に見ない光景だな。カメラで撮ってそして男バドのメンバーに配りたい
もしかしなくてもすげぇ緊張してるなぁ
今までバド部の大会に出場した時はそんなことなかっただろ
「ホ、ホクサイくん!」
ん?後ろから話しかけられた。羽沢さんだな、なんだろう?
「どうかしたの羽沢さん?」
「え、えっとその・・・ホクサイくんは今日のお昼はどうするの?」
「え?あぁ。ハジメと宇田川さん達と食べるよ」
「そ、そっか!それなら私も一緒してもいいかな!」
「え?!」
ま、不味い!これはヤバい!問題発生だ!いきなり計画に無いことが起きたぞ!この計画は最終的にはハジメと美竹さんの親睦を深めるためのもの!その為には出来るだけ二人だけにする必要がある!
いや、羽沢さんになら説明すればこっちに協力してくれるかもしれない!・・・あ、待った昨日この人色々変なことを言ったせいで周りの人から変な目で見られた前科があるな
今回も同じことが起こるかは分からないけどリスクは少ない方がいいだろう
なら!
「ご、ごめん。今日はちょっと・・・・・・俺、美竹さんと宇田川さんに用があるから」
「え?・・・・・・・・・蘭ちゃんと巴ちゃんに?・・・」
良し!羽沢さんがぼーっとしている、ここしかない!
「お、俺たち急ぐから!それじゃ!」
理屈ぜめされる前に戦線離脱だ!ごめん羽沢さん
さっきからハジメが左手に『人』って字を書いては飲み込んでいる、何人食べる気だよ?!
もう百人ぐらい飲み込んでる
いやいや切り替えろ!きっと宇田川さんは美竹さんを昼食に誘ってるだろう
ガラッと教室の扉を開けて廊下に出ようとする
「やっほー!ホクサイ!ご飯食べよう!私ね、今日はホクサイのためにお・・・」
なんでココにいやがる!
なんなの!暇なの?!そっちは暇でもこっちは暇じゃないんだよ!友達の恋がかかってんの!!
「俺達急ぐから!じゃあな!」
「・・・弁当をってええ!ちょっと、ホクサイ!」
即答する、慈悲はない
「ちょっと!ねぇ!ホクサイ!」
「ひ、ひ、日菜先輩じゃないですか!奇遇ですねぇ!どうしたんですか?」
ナイスだ上原さん!そのまま日菜先輩を抑えててくれ!
それじゃ!と言って俺とハジメは隣の教室に行く
ハジメの動きがトロい、錆び付いたロボットみたいな動きしてる
廊下には既に宇田川さんと美竹さんが立って俺たちを待っている
どうでもいいけどこの二人が並ぶと目立つなぁ
宇田川さんと目が合う、俺達はお互いにコクリと頷き合う
「や、や、やあ!宇田川さんと美竹さん!偶然だな」
やべぇ!どこか芝居っぽい!ゴメン宇田川さんフォローして!
「ほ、ほ、ほ、本当だぁ!ホクサイ!なんて偶然なんだろう!!」
アンタもかい!
初手からミスった!どうする?美竹さんが凄い疑いの顔して宇田川さんを見ている
つか!計画だと上原さんが俺達を繋ぐ役割だったろ!あの人どこいった!
・・・・・・・・・・・・あ
日菜先輩を捕まえてた!
やべぇやべぇ!どうしよう!計画のかなめが消えた!宇田川さんも困り顔だ!
「みみ、み、みみみ、み、美竹さん!!!」
ハ、ハジメ?!どうした?なにする気だ?!
「え、なに?えっと確かアンタは・・・・・・」
美竹さんがハッとした表情でハジメを見ている
「お、お、お、俺とデートしてください!!」
「え?嫌です」
バタン!!!
ハ、ハ、ハジメが死んだ!!