「・・・・・・・・・・・・・・・・・・むっ・・・・・・朝か」
カーテンから日差しが入りこんでくる。外からはスズメのさえずり聞こえ、家の中からは水が流れる音や食器が動く音が聞こえる。
目を動かして壁にかかってる時計を見る、現在の時刻AM8:30
思ってたより早く起きた、まあもう一回寝ればいいか。なんてったって今日は土曜日だ。いくら寝ても誰にも怒られない!控えめに言って最高だ!!
はぁー今日は10時まで寝たらその後少し勉強して、昼飯を食べてそしてまた、勉強しよう。そのあとは〜部屋で〜ゴロゴロ〜する〜
誰にも邪魔の入らないこの感覚、はぁぁぁ至福だ
っドバン!!!!
「どっかああああああああん!!!!」
「うわあああああああああ!!!!な、なに!!?」
強烈な勢いで開いたトビラから一人の女の子が俺の部屋にやって来た。な、なんでよりにもよってこの幸せな日にこの人が来るんだ!!この人が来るならハジメが来た方がまだマシだ!
「アッハハハハハハハハ!!おはよう!ホクサイ!」
ヤツは腹を抱えながら俺の事を笑って、笑いすぎて目尻に涙を浮かべている。
薄青の髪をショートカットにしているその人は俺の知りうる限り最強の
氷川日菜は俺の一つ年上の幼なじみというやつだ。
彼女とは小さい頃から良く遊ばれた。というのも、ウチの両親が出張が多かったため小さかった俺は良くお隣の氷川家に預けられる事が多かった事が理由だ。
俺はそこで様々なトラウマを受け取った。
例えば一つ絵を描けば不名誉なあだ名を付けられ、またはおままごとで泥団子を本当に口に突っ込まれたり、さらには三輪車で引かれる。などなど正直もう散々である。
それでもそんな奇行は小学校までで中学に入ったら随分穏やかになり、俺もある程度のことを自分でやれるようになったから氷川家にお邪魔することも無くなったのだが・・・・・・
「はあぁー面白かった!すっごいるん!ってしたよ!さすがホクサイだね!」
「それ褒めてるんですか?氷川先輩?」
「むうううーー!その『氷川先輩』ってのはダメ!全然るん!ってしないもん!」
どうやら気に入らないらしい、でも実際高校の先輩だし なぁ。
「昔みたいに『日菜ちゃん』って呼んでよ!」
「嫌だよ!恥ずかしい!」
この人はいきなりなんてこと言い出すんだ!やめろ、そんな目で見るな!ブーたれても絶対に呼ばないからな!
「それで氷川先輩」
「日菜ちゃんって呼んで!」
「氷川先輩」
「日菜ちゃん!」
「氷川先輩!」
「ひーなーちゃーんー!!!」
や、やめろ!腕をバタバタ動かすな!なんなんだよー!呼び方なんてなんでもいいだろ!なんで気に入らないんだ?あぁじゃあ・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・ひ、日菜先輩?」
「うーーん、る〜んって感じだけどまぁ今はそれでいいや」
どうやら悪くないけどもう一歩って感じらしい。
「それで日菜先輩、何か用があったんじゃないの?」
「ああ!そうそう!ホクサイ今日はどこ行く?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
待て、まぁ待て。落ち着け俺、そうだ素数でも数えるか。えーと2、3、5、7、11、13、17、・・・
「ねぇねぇホクサイ無視しないでよ。あ、どこ行くのか考えてるの?」
「考えてねぇよ!!いきなり何言ってんだアンタ!今日はどこにも行かねぇよ!」
「えええ!!なんでなんで?!おかしいよ!」
おかしいのはアンタの頭だよ!なんでだ?なんで今日はこの人と出かけることになってんだ?そんな予定入れたか?いや、絶対に入れてない!俺はこの一週間で最強のこの日には絶対に外に出かける予定を入れたりしない!
「なんで俺が出かけなきゃ行けないんだよ!そんなこと一体誰が決めたんだ!」
「え?私だけど?」
「帰れ、俺は寝る。」
布団に入って目を閉じる、耳栓もしたいところだけど今はないものねだりしてもしょうがない。
「ええーー!なんでなんで?お出かけしようよーー!!ねえねえ!」
俺の肩を掴んで揺らして来るけど無視だ無視。流石のこの人でも諦めるだろう。
「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえねえ」
現在の時刻PM1:00
どうしてこうなったのか?
俺は今街にある大きめのデパートに来ていた。もちろん隣には
なんのつもりなんだ?買い物ぐらい独りで行けばいいのに、なんで「こっちの服とこっちの服どっちの方がるんってする?」っていちいち聞いてくるんだ?
あ、また服屋入るのか、これで三件目だよ。
「ねえホクサイ!この右の服と左の服どっちの方がるんってする?あたし的には右の方が好きなんだけどホクサイはどっち?」
日菜先輩の両手にはそれぞれ別の服が握られている。右が暗いクールな印象の青いチェック柄の服、左は清潔感のある白地に小さい花の刺繍が入ったの服
「いちいち俺に聞かないで自分の好きな方を買えばいいじゃん。別にどっちでもいいよ」
「ええーホクサイが選んでよー」
「なんで?」
「・・・・・・ホクサイに選んで欲しいの」
・・・・・・・・・・・・
その真剣な顔はやめて欲しい。どうしたって似ているから、“あの人”に。どうしてもあの時を思い出してしまうから。
「・・・・・・はぁどちらかって言えば左かな?左の方が日菜先輩に合ってると思う。」
俺がそう言うと日菜先輩はもう一度服を見直して、
「そっかぁーホクサイはこっちなんだ。うん!やっぱり面白いね!じゃあコレ買ってくるね!」
「ええ!本当に適当に選んだだけなんだけど?!いいの!!」
「いいよ!だってホクサイが選んでくれたんだもん!」
日菜先輩は右手の服を元に戻してスキップしながら白い服を握りしめてレジに向かった。
ふむ、やっぱり分からない。
まぁあの人は
デパートの帰り道、俺は日菜先輩が買った物を持って歩道を歩いている。
先程とはうってかわり、日菜先輩はうつむいて黙って歩いている。時折視線を感じるから何か話しかけようとしているんだと思うんだけど、一向に話しかけて来ない。
なんなんだ?いつもならもっとストレートに聞いてくるのに。
「ホ、ホクサイ。」
「んーなんすか?日菜先輩」
「そ、そのこの前のお弁当、」
べ、弁当?なんの事だ?
「弁当がどうかしたんですか?」
「あ、いや、その、あの」
うーとかあーとか言って全然会話になってない。
なんだろう、煮え切らないこの感じ。イライラしてきた。
「なんなんだよ、ハッキリ言ってくださいよ!」
少し強い口調で喋ってしまう。それでも日菜先輩はうつむいたままだ。
「・・・・・・・・・ハンバーグ」
「何?聞こえない?」
「だから!ハンバーグ!入ってたでしょ!!」
「え、ええまあ入ってましたけど」
なんでこの人は俺のうちのお弁当事情知ってるんだ?
「ど、どうだった?美味しかった?」
「え?はい美味かったですけど」
ガバッ!
急に日菜先輩がうつむいていた顔を見上げてこっちを見つめてきた。な、何?怖い
「本当に?嘘じゃない?本当の本当に?」
なんだ?なんでそんなに気にしてるんだ?
「ええ、まあお弁当なんで冷めてましたけど十分に美味かったですよ。」
「そっか、そっか、そっかぁー!!美味しかったんだぁー頑張って良かったぁ」
んー?なんか機嫌が良さそうだな。なんだ?ウチのハンバーグが美味しいと日菜先輩になにかいいことがあるのか?はっ!なるほどねぇ・・・・・・
「そんなに食べたいなら今度ウチのオカンに頼んで作って貰うよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っは?」
「いや、だからそんなに食べたいなら頼んでおくって言ってる・・・・・・」
なんだ?日菜先輩の機嫌が急降下したみたいだ、さっきまで機嫌良かったのになんで?!
「ホクサイの・・・」
「ん?なに?」
「ホクサイのバカアアアァァァー!!!!!」
えぇぇ??
顔を赤くして日菜先輩が荷物をそのままに走って帰ってしまった。
訳が分からん。(いつもの事)