長くなってしまったので前半後半に分けました
確か、
どうしていきなりこんなこと考えてるのかというと今のこの状況を考えないようにするための現実逃避だったりする。
この状況、つまり
なぜか放課後のとある教室に俺と羽沢さんの二人でいるというこの状況。
羽沢さんは俺の背中に顔をうずめて、両腕を俺のお腹に巻き付けるこの状況。
さっきから学校の廊下なのに周りの人の気配を感じないこの状況。
そして・・・・・・・・・
ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・・・・ドォーン!ドォーン!ドゴォーン!!
「きゃああああ!!!」
「おぉ、これはまた近いなー」
窓の外では建物も丸ごと吹き飛ばしてしまいそうな雷鳴と、滝のように豪雨が降るこの状況。
「ホ、ホクサイくんゴメンね私のせいで・・・グスっ」
少し泣いているのか、羽沢さんは鼻を鳴らしながら俺に話しかけてくる
「は、羽沢さん。今は何も喋らないでくれ、頼むから!」
え?っという声が聞こえるがなんの反応も出来ない。羽沢さんの涙ぐんだ声を聞く度に理性が消し飛びそうになる。
我慢だ我慢!我慢しろ!俺!落ち着け、冷静に、穏やかに、無心になれ、無我の境地だ!
はあぁぁぁぁどうしてこんな
●●●●●
「今日は朝から雨が降ってて気温が低いから風邪をひかないように気をつけてねーそれじゃ日直さーん」
「きりーつ」
担任の先生からありがたい言葉を頭半分で聴きながら立ち上がる。
「れーい」
「「「あっザーしたー」」」
クラスメイト全員で気の抜けた挨拶をするが担任も慣れたのか気に止めることなく教室から出ていく。
さてさて俺も雨が強くなる前に帰るか。
「おーい!ホクサイ!お前に客だぞー」
ハジメの大きな声が教室に入ってくる、俺に客?誰だろう。このクラス以外に知り合いなんてこの前知り合った宇田川さんぐらいだぞ。
「うーい、今行くー」
ハジメはそのまま走って部活に行ってしまう。
どうでもいい事だが男子バドミントン部は顔と性格と運動神経のいいハジメを目の敵にして「絶対にヤツを倒して、ダサい所を見せつけてやる!」と一致団結して練習に励むようになったそうだ。
頑張ってくれよバドミントン部!俺もあいつが恥をかく姿が見たいからな!
ハジメが出ていった扉から廊下に出ると以外な人がいた。
なんと
思わず手から荷物が落ちそうになった。
この人、二年生だよな?なんでこんな所にいるんだ?ヒマなのか?あ、なんかニヤニヤしてる。これは何かたくらんでる時の顔だ、なんだろう嫌だなぁ怖いなぁ
「ど、ど、どうしたんですか?日菜先輩?俺に何か用ですか?」
日菜先輩はニヤニヤした顔で体を軽く左右に揺らしながらその小さい口を開いて、
「えへへへへーえっとね、・・・・・・来ちゃーった☆」
日菜先輩は自分の両手の手首を顎まで持ってきて可愛くウインクしながらそんな恥ずかしいセリフを読み上げた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ソウスカ。」
「えぇぇ!!なんでそんなに冷めた反応なの?!!」
何言ってんだこの人は?それに質問の回答になってないだろ。なんでって聞いてるのに来ちゃいましたって返答はおかしい。そりゃ来てるだろ。だからこっちは質問してんだろ。
「ねぇあれ、氷川先輩じゃない?」
「あ、本当だ!あの天才少女の氷川日菜さんだよ!」
「うわーすごーい!綺麗な人ー!」
「テストで毎回100点とるんだって!」
「そうそう先輩から聞いたんだけど美術部でもないのに風景画で賞を受賞したんだって!」
「うわーさすが天才さんだね!」
おうおう、すごいすごい。廊下の人間の目線を全て集めてる。本当に流石
氷川日菜は紛うことなき天才だ。
俺は、いや“俺達は”それをよく知っている。
一度見たものはすぐに記憶し、理解し、学習する。
大抵のことなら一度見ればすぐに再現し、二度目にはそれすらも乗り越える、それを全て理屈ではなく感覚で行っているのだ。はっきり言って普通じゃない。
まぁ本人には本人なりの悩みがあるそうなのだが、それはいいや。
「んで、なんかようすか?」
「これならイチコロって言ったのに、リサちーのバカ!もういいやーホクサイ部活一緒に行こ?」
「え?・・・・・・・・・・・・それだけ?」
「え、そうだよ?」
その為だけにここまで来たのか?やっぱりこの人は暇なんじゃないか?
「へいへいじゃあ行きましょうかー」
「うん!一緒に行こう!」
まるで花が咲くかのような笑顔を日菜先輩は向けてくれた。
さっきのよりこっちの方が可愛いな、調子に乗るから絶対に本人には言わないけど(恥ずかしいからでは無い)
俺達は部活棟の『天文部』の部室に来ていた。今では二人しかいないこの部活だが昔はそれなりの活動をしてたらしい。らしいって言うのは、まぁ部屋に置かれた部日誌見ただけなんだけど。
部屋は小さい。
中央にあるのは一つの長机に壁に立てかけられた折りたたみ式の椅子。本棚には星について書かれた本や、写真集それから先代が残した部日誌のノート。
日菜先輩は立てかけられた椅子を一つ出して机の傍に座る。
「ところで日菜先輩は今日は用事がないんですか?」
そうこの人は俺を入部させたあと、バイトか何かを始めたらしくて部活に来ていなかったのだ。だから俺は一人でこの部室で勉強してただけで部活動なんて一切やってない。
「ううんあるよーもうあと10分もしたら行かなきゃ行けないだーはーめんどくさいよー」
「だったらもうその用事ってやつに行けばいいじゃん」
「それはダメだよ、ここじゃないと二人になれないんだもん」
この人は二人になって一体何をするつもりなのだろう。新手の嫌がらせか?それとも別のイタズラか?流石にカツアゲはないと思うけど、ついつい顔をしかめてしまう。
「その顔ひどいよー別になにかしたりしないって。ただ一緒にいてくれればそれでいいの。・・・・・・・・・それだけでいいの。」
俺も日菜先輩に習って椅子を出して机を挟んで日菜先輩の前に座る。
「・・・・・・・・・それだけでいいなら。」
この人は変わったな。小さい頃は俺を振り回していおもちゃみたいにしてたのに今ではそれもしない。
動物園にいるじゃれてる子供のライオンが野生のライオンになったみたいだ。
調子が狂うけど俺の平穏が保たれるなら別にそれでいいか。
まあその後は何も無く10分が過ぎた。日菜先輩は「じゃーねーまた明日ー」と言って部室から出ていき、部室では俺だけとなった。
今日はここに寄らないでそのまま帰るつもりだったんだけどここに来ちゃったからなぁ勉強でもしてから帰るか。
ここで勉強するのは凄くはかどるから好きだ。狭い空間に一人、吹奏楽部の練習がいいBGMになってよく集中出来る。
さてさて今日は数学と化学の授業が難しかったからそれから復習するかーよし!やるぞ!
ふむふむ、
「・・・・・・・・・ホ・・・くん」
中性が7でそれ以上だとアルカリ性、それ以下だと酸性か
「ホクサイくん?」
単純な電池の構造はこうなのか。なるほど
「ホクサイくん!」
「うわああ!な、何?!!」
俺のすぐ横に立っていたのは俺の教室では隣の席の羽沢さんだった。
は?な、なんで羽沢さんがここに?!え!まさかまた下校時刻になっているのか?!や、ヤバい!また迷惑をかける!
急いで壁についてる時計を見ても来てから一時間しか立っていない、時間にはまだ余裕があった。
あ、あれ?じゃあほんとになんで?
「ごめんね勉強してる最中なのに、あの氷川先輩って今部活に参加してるかな?」
「え?日菜先輩に用事?」
「う、うんそうなんだ。実は部費の決算報告が提出されてなくて、会計さんに様子を見てきてくれって頼まれて」
「えぇー何やってんだよあの人は」
少し大人しくなったと思って関心してたのに後悔してきた。
やっぱりこの自由奔放な所は何も変わってない。
「ご、ごめん、実は日菜先輩用事があるらしくてもう帰っちゃったんだよ」
「そ、そうなんだ。こっちこそ邪魔してごめんね。会計さんも優しいから言えば待ってくれると思うから大丈夫だよ」
「ほんとにウチの部長がすみません」
俺が椅子から立ち上がって羽沢さんに軽く頭を下げる。羽沢さんは気にしないでと笑ってくれた、
「もしかしたら探せばその提出物が見つかるかもしれないなぁ」
俺はそう言ってさして広くない部室の奥の方に進む。
その時、
窓の外で雷が鳴り出した。
「きゃああああ!!」
うわ!ビックリした!雷よりもその悲鳴に驚いた。
「は、羽沢さん?大丈夫?」
傍に近寄って見ると羽沢さんはその場に座り込んで両手で耳を塞いでいたちからいっぱい目をつぶっていた
うむ、やはりリスだな
「ご、ごめんねぇ私、雷だけは本当にダメでぇ」
本当にダメらしい、その声はいつもより弱々しく、瞳は潤んでいた。
うむ、可愛い。
じゃなくて!
何とかしたいけど、流石に天気はどうにも出来ないからなぁ。俺はウェザー・リ●ートじゃないからなぁ
と変なことを考えているとまたさっきよりも大きい雷がなって、
「きゃああああああ!!!」
プツンと言って部屋の電気が消えた。停電した!
流石にこれはまずいな、先生を呼んで復旧してもらおう。
そう思って部室を出ようとしたら、
トンと、背中に何か当たって来た
「ど、ど、どこ行くの?・・・・・・行かないでぇ独りにしないでぇ」
と羽沢さんが俺にしがみつきながらそう話しかけてきた。
ええええええええええええぇぇぇ!!!!!