月に寄りそう乙女の作法2~二人の小倉朝日~   作:ヘソカン

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遅れてしまった事と、クリスマスに投稿できずに申し訳ありません。
また、区切りが良いので短めになっています。
お気に入りと評価をしてくれた皆様、本当に感謝いたします。

烏瑠様、秋ウサギ様、獅子満月様、誤字報告ありがとうございました!


十月上旬4

side才華

 

 9月を過ぎて遂に10月になった。

 これまでの人生の中でも、今僕は大変忙しい日々を過ごしている。それは年末に向けての準備だけじゃなくて、日常でも変化は起きていた。

 

「ヘイ、ハニー! メールで大体のデザインも揃ったって連絡が届いたから、今日の放課後にでも一度打ち合わせ……うわ、なんだこれ!? 生徒の数が多すぎて何処にハニーがいるか分からない! 子猫ちゃん達、これは一体どういう事だ?」

 

「ジュニアさん……うぅ、最近では、私達ですら近づく事が出来ません」

 

「文化祭以降、お姉様の人気が爆発的に上がってしまい、小倉お姉様が学院に来られなくなった事でお姉様に熱を上げる生徒が増えてしまったみたいなんです」

 

「姉御が学院に来てないのは知っているけど、それだけでこんなに変わるものなのかい?」

 

「勿論、小倉お姉様の事ばかりが原因ではありません。他にも理由はあります。それは……」

 

「エストさん! こっち向いて! きゃあ、あのスタイル神だよ神! 流石は海外の貴族だよね!」

 

「本当に絵に描いたようなお姫様……この前、一般の食堂で見たけど、食事をしてる姿すら神々しかったよ!」

 

「キリッ!」

 

 褒める声に僕の主人は凛々しい顔を向けた。因みに聞こえて来た一般食堂での食事は、マルキューさん達と打ち合わせの為に訪れていたので、エストには本来の食事姿は全力で阻止させて貰った。

 

「キャアー! こっち向いてくれた!」

 

「ああして普通に歩いているだけで、あのランウェイが目に浮かぶ……最高だったね、文化祭の日のエストさん!」

 

 余りその件は褒めないで貰いたい。

 一歩間違えていたら、エストにとってこの天国のような道のりが地獄の道のりに変わっていたから。

 

「フフ、とうとう私にもファンが……これはクラブエストの発足も笑い話ではなくなって来たね」

 

 この主人、完全に調子に乗ってるね。なら、現実を少し教えてあげよう。

 

「発足してもお嬢様が関わる事はないと思われます。むしろ蚊帳の外で寂しい思いをするだけですよ」

 

 現に僕と小倉さんのファンクラブである『コクラアサヒ倶楽部』に関わった事がないよ。

 部長であるアトレや、倶楽部に所属している飯川さんと長さんから活動内容を聞くぐらいだ。

 

「そんなことはどうでも良いの。今まで、まるで主従が逆転しているような立場に置かれていたけど、漸く私と朝陽を見る世間の目も正しくなりそうだね」

 

 確かに僕個人としてはエストを主人として敬っていたけど、周囲の人達の大半はエストを主人として見ていなかった。エストの言っていることはあながち間違ってはいない。

 しかし、今は文化祭のコンペに出場した事で評価は大きく変わった。貴族らしからぬエストの行ないも……。

 

「朝陽のいう事を聞いていれば、私に大して教養がないこともバレないでしょう。やったあ。『コクラアサヒ倶楽部』に続いて、巨大ファンクラブの誕生だね」

 

 ……無理じゃないかなあ? だって……。

 

「あの、エストさん。その『コクラアサヒ倶楽部』ですが、先日の文化祭にて『コクラアサヒ倶楽部』は学院外の方々も加わり、部員数が2000名を突破いたしまして、関西の方でも支部を作ろうという話が出ているのですが」

 

「あれれ! 小倉さんを含めてだとしても、もはや何馬身か数えるのも億劫なほどに、手の届かない存在になってしまったの!?」

 

「お嬢様。今はこれだけの人数に囲まれていますよ」

 

「うん。嬉しい……あれ? 今、報告してくれたのって、九千代さん?」

 

「そう言えば、そうですね」

 

 今更ながら僕も気がついて、何時の間にか傍にいた九千代に目を向けた。

 何時もなら『コクラアサヒ倶楽部』に関する報告は、部長を務めているアトレがしてくれる筈なんだけど。

 

「お2人とも、おはようございます。今朝はアトレお嬢様の代わりに報告をしに参りました」

 

「おはよう、九千代さん」

 

「おはようございます、山吹さん……その、桜小路お嬢様はどちらにおられるのでしょうか?」

 

「アトレお嬢様でしたら、彼方の方におられます」

 

 九千代さんが示した方に顔を向けてみると、僕らの周りを囲んでいた生徒達の壁の先にアトレが暗い顔をしながら立っていた。

 ……やっぱり、まだ元気は戻っていないか。お父様が頑張ったおかげで学院に来られるようにはなったみたいだけど、それが限界だったみたいだ。

 

「その、九千代さん。アトレさんはまだ?」

 

「未だ元気を取り戻せてはいません。学院に来られるようにはなりましたが、『コクラアサヒ倶楽部』の部長の座を別の方に渡そうかと悩んでおります」

 

 小倉さんの心の傷を更に傷つけた自分には、部長の資格はないと言う事か。

 この件に関しては、流石のお父様でもアトレに元気を取り戻し切れないのは無理がない。僕だって、状況が状況だから立ち止まっていられないだけで、平時だったらアトレと同じように落ち込んでいただろう。

 流石のエストも他人の心を傷つけた問題は下手に介入できないと判断しているのか、口出し出来ずに難しい顔をしている。いや、寧ろ彼女の正義感からすれば、小倉さんを傷つけた相手を糾弾とまではいかないでも問いただしに向かっていたに違いない。

 それをしないのは、僕が止めているのと、アトレもエストに取って友人だからだ。

 

「……もう10月なんだよね」

 

「はい、10月になりました、お嬢様」

 

 月が変わっても小倉さんは学院に来ていない。

 いよいよ休学から退学になるのではと、僕らを含めたクラスメイトの誰もが戦々恐々としている。朝のホームルームで、紅葉が『小倉さんは学院を退学しました』なんて言うんじゃないかと怯える日々だ。

 もしそうなってしまったら、アトレは引き篭もってしまうかも知れない。出来る事なら、早く小倉さんがどうしているのか知りたいけど、流石にこの件はお父様に頼める問題じゃない。

 失敗したら伯父様とお父様の間で、あり得ないと思うけど喧嘩が起きるかも知れないから。

 祈る事しか出来ない自分が歯痒くて仕方がないよ。

 

「……あ、いえ、鞄は朝陽さんに持って貰いますから。ええ、大丈夫です」

 

 少し憂鬱になっている僕と違い、エストは貴族らしく振舞いながら周囲にいる生徒達に対応している。

 その姿は、正しく僕が理想としていた低俗さが消えた貴族としてのエストの姿だ。

 人生で初めて嫌いになった彼女の姉なんかとは比べるのも失礼なほどに、今のエストは誇り高い。きっと彼女が心の中に抱えていた憂いが消えたからだろう。

 

「あの文化祭以降、ハニーのご主人も随分と人気が上がったなあ。ご主人も良い髪を持っているし当然か。俺の友達もセット出来て喜んでたしなあ」

 

「そう言えば、文化祭でのエストさんのセットを行なったのはジュニアさんの御友人だとお聞きしました」

 

「その通りだぜ。ハニーからセットを頼まれて紹介したんだ。本当なら俺がしても良かったんだけど、年末に向けて友人の実力を教えておきたくてね」

 

「お姉様達はフィリア・クリスマス・コレクションの総合部門参加を目指しているんでしたね……そのせいで最近はお忙しい様子で」

 

「下手に声を掛けて邪魔をしたらと思うと、声が掛け辛くて……こうして沢山のファンも増えましたし」

 

「ま、でも、君達教室で会えるんだろう? だったら良いじゃないか。今は声が掛け辛いのは仕方ないにしても、ハニーはちやほやする人数が増えたからって、以前から慕ってくれていた君達を疎かにする人じゃないさ。姉御だって、戻って来るに決まってるからさっ」

 

「ジュニアさん凄く優しい……」

 

「分かりました。これからもお姉様を追い続けます。それに小倉お姉様も必ず戻って来てくれると……えっ?」

 

「どうしたの、長さん? そっちに何か……あっ」

 

「ん? どうしたんだい、子猫ちゃん達? 何かそっちに……おいおい、噂をすれば、か」

 

 はて? どうしたんだろうか?

 耳に届いていたジュニア氏と飯川さん、長さんの声が聞こえなくなった。直前まで聞こえて来た話の内容だと仲良くしていたみたいだし、僕と小倉さん関係で宿敵みたいな関係になっていたけど、最近は仲良さそうにしていたから大丈夫だと思う。

 しかし、こうして沢山の人に囲まれていると、以前のようにジュニア氏と朝の会話をするのが難しい。

 文化祭前ならともかく、年末のショーのメイク担当のリーダー的立ち位置の彼とは朝の時間帯で話をしておきたいのに。メールでは簡単なやり取りしか出来ないし、流石に昼休みに『女の園』と言える服飾部門棟に来て貰うのも、申し訳ない。

 上の学年の数少ない男子生徒達も、かなり肩身の狭い思いをしているらしいそうだし。

 ジュニア氏なら僕が頼めば来てくれるかも知れないが、服飾部門の女生徒達の反応が怖いので止めておこう。

 だけど、放課後は僕らが忙しい。

 あああ、彼との打ち合わせはやっぱりしておきたい。此処は、エストに頼んで。

 

「あっ、おはようございます、エストさん、朝陽さん」

 

「お二人ともお元気そうで何よりです」

 

「おはよう、小倉さん! クロンメリンさん!」

 

「おはようございます、小倉お嬢様、クロンメリンさん」

 

 丁度、僕とエストの横を通りかかったのか、小倉さんとカリンが挨拶をして………待て?

 今、僕とエストは一体誰に挨拶をした?

 ギリギリと音が鳴りそうな動きで、僕とエストは揃って先ほどの声の主のいる方に顔を向けた。

 

「あ、あの、皆さん。申し訳ありませんが、少し通して貰っても良いですか?」

 

 背後に少女と見間違えてしまう金髪の女性を従えた黒髪の女性が声を掛けると、一斉に僕とエストの周りを囲んでいた生徒達が下がった。

 まるで道を遮るのも失礼だと言わんばかりの動きだが、心からその動きに同意してしまった。この人の道を阻んではいけない。

 ゆっくりと、その人は開いた先にいるアトレと九千代に向かって歩いて行く。

 アトレと九千代は心底驚いたというように目を見開いて固まっている。僕とエストだって、きっと同じ顔をしているに違いない。

 だけど、その人は僕らの葛藤など構わずに、自然にアトレと九千代に挨拶をした。

 

「おはようございます、アトレさん、九千代さん」

 

「あっ、ああ……あああっ」

 

 様々な感情が心の内で荒れ狂っているのか呻くような声しか出せず、今にもアトレは泣きそうに……。

 

「アトレさん」

 

 優しさに溢れた声と共に、アトレの肩に小倉さんは手を置いた。

 

「大体の事情は貴女のお父様から聞いて知っています。急に休学する事になってしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 

 声を出したら泣いてしまうのか、アトレは首を何度も振って小倉さんの言葉を否定しようとする。

 僕もアトレと同じ気持ちだ。小倉さんが謝る必要なんて、本当にない。悪いのは……。

 

「もうすぐ授業が始まりますから、詳しい話は放課後にしましょう。授業が終わったら桜の園に行きます」

 

 泣きそうになりながらも、黙って何度もアトレは頷いた。

 小倉さんは最後にアトレに向かって優しく微笑むと、カリンを伴って教室に向かって歩いて行った。

 

「……何て慈愛に満ち溢れた方なの。あの方が……」

 

「ええ……小倉朝日さん。彼方のエストさんの隣にいる御方が妖精なら、女神のような方なのよ。休学されていたと聞いていたけど、今日から復帰されたのね」

 

「ああ、小倉お姉様がお戻りになられた。しかも前よりも美しくなられて」

 

「本当。長さん! すぐに他の倶楽部のメンバーに、この大ニュースを伝えないと!」

 

「ええ! そうね、飯川さん! ジュニアさんがさっき言った通り、私達は教室で会えるんだから、此処に来れない他の皆に伝えましょう!」

 

「ハハッ、子猫ちゃん達を一瞬で元気にさせるなんて流石は姉御。にしても親父も人が悪いぜ……それに姉御の髪が以前よりも艶々していたように見えたような……おっと、俺はハニーの髪一筋だ」

 

 ホールにいた誰もが小倉さんの話をしている。

 

「わ、私の人気が一瞬で消えた。朝陽っ!」

 

 エストが泣きついてきた。だけど流石に相手が悪すぎるよ、エスト。

 確かに君も以前よりも素晴らしい貴族になっているけど、僕と言うサポートがまだ必要な君と違って、あっちは自然に出来る人なんだから。

 それにしても、僕も心から驚かされた。後でお父様に抗議のメールを送っておこう。

 

「でも、小倉さん、元気そうで良かったね」

 

「はい。とても元気そうでした」

 

 伯父様やお父様の話では危ない状態だったらしいけど、どうやら小倉さんは乗り越える事が出来たみたいだ。

 心の底からホッとした。出来る事なら詳しい話を直接小倉さん本人から聞きたいが、それは流石に今の僕の立場で聞ける領分を超えている。

 それに文化祭の件を人がいる場所で謝罪したりすると、主人であるエストにも責任が及んで、小倉さんに謝罪しなければならなくなってしまう。個人の謝罪はプライベートの時にだ。

 しかし……。

 

「……」

 

「あれ? 朝陽どうしたの? 早く教室に行って小倉さんと話をしよう!」

 

「あっ! はい、すぐに行きましょう」

 

 エストに促されて僕も教室へ急ぐ。

 ……アトレを慰めている時の小倉さんの姿。まるで子供の頃の僕らを慰めてくれているお父様にソックリだった。

 いやいや、僕は何を考えているんだろうか? 小倉さんとお父様は別人。

 ただ何故だろうか? 以前よりも小倉さんがお父様と重なって見えたような気がした。

 

 

 

 

side遊星

 

「えっ!? 黒い子!?」

 

「小倉さん!?」

 

 教室に入ると共にジャスティーヌさんと伊瀬也さんを筆頭に、教室にいたクラスの皆全員が驚いた顔をして僕を見てきた。

 

「皆さん、おはようございます。急に休学してしまい、大変ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

 

 軽く頭を下げて謝罪する。

 クラスの皆が僕を心配してくれていたのは、桜小路遊星様が持って来てくれたお見舞いの品の数々で分かっている。

 フィリア女学院の時なら絶対にあり得なかった事だなと思いながら、カリンさんが両手に持った荷物を机の上に置いてくれた。本当だったら僕も一緒に持って来たかったんだけど、カリンさんが駄目だと言うので諦めた。

 

「あの皆さん、此方お見舞いの品のお礼です。どうぞ、受け取って下さい」

 

「そ、それよりも! 小倉さん! 本当に大丈夫なの!?」

 

「はい、私はもう大丈夫です、伊瀬也さん」

 

「黒い子! 何で急に休学なんてしたの!?」

 

「すみません、ジャスティーヌさん。プライベートな事なので流石にその件は答えられません」

 

 僕の事情だけじゃなくて大蔵家も関わっているので流石に話せません。

 ジャスティーヌさんも分かっていたのか、それ以上聞かないでくれた。内心で感謝しながら伊瀬也さんとジャスティーヌさんにもお礼の品を渡した。

 

「あれ? これって私が送った品よりずっと良い物なんじゃ?」

 

 ……お父様。

 入院していたからお見舞いの品をお父様に頼んだのは、間違いだったかも。

 

「まあ、良いんじゃないの。このお土産って凄く美味しいってお店の品だし。興味あった物だから私は嬉しいよ」

 

 あれ? 何だか前よりも伊瀬也さんとジャスティーヌさんの仲が良くなっているような気がする。

 気になってジャスティーヌさんの机の方を見てみると、一枚のデザイン画が置かれていた。

 

「このデザインは?」

 

「あっ! それ! 私のデザインなんだけど、どうかな?」

 

「えっ!? このデザイン! 伊瀬也さんが描いたんですか!?」

 

 驚いた。

 文化祭前に授業で描いていたデザインよりも、ずっと良くなっている。

 

「いせたん、違うでしょう。それ私がいせたんのデザインを見て、手を加えたものだからね、黒い子」

 

 ……なるほど。

 でも、本当に2人の関係は前よりも良くなっているようだ。

 わざわざジャスティーヌさんが伊瀬也さんに手直しのデザイン画を描いてくれているんだから。

 

「カトリーヌさん。電話に出られなくて申し訳ありません」

 

「い、いえ! 気にしなくていいます! お家の事情とかがあるんだと思っていたますから」

 

「そう言って貰えて少し気が晴れました……また、宜しくお願いします」

 

「こ、此方こそお願いします!」

 

 カリンさんとカトリーヌさんの仲もどうやら大丈夫なようだ。

 また、この教室の皆と一緒に過ごせることに喜びを感じていると……。

 

「こ、小倉さん!」

 

「エストさん。どうしました?」

 

 教室に入って来ると同時にエストさんが慌てて僕に近寄ってきた。

 その背後には才華さんの姿もある。

 

「どうしたって……本当に小倉さん、大丈夫なの? そ、その……朝陽から聞いた話だとかなり深刻な事になっているって話だったから」

 

 ……どうやら詳しい事情は話していないみたいだけど、深刻な事が起きた事までは話したみたいだ。

 とは言っても、ジャスティーヌさんと同じでエストさんにも詳しい話は出来ない。此処は……。

 

「心配してくれてありがとうございます、エストさん。ですが、その件に関しては一先ずの解決を終えましたので大丈夫です」

 

「そ、そうなの?……うん、小倉さんがそう言うなら良いけど」

 

「お嬢様。心配なのは分かりますが、余りプライベートな事情に関わるのは逆にご迷惑になってしまいます」

 

「……そうだよね。でも、何か困った事があったら言ってね?」

 

「ありがとうございます、エストさん」

 

 その気持ちだけでも本当に嬉しいです。

 それにしても……何だかエストさんも以前よりも明るくなった気がする。それに何だか、才華さんとの距離も前よりも近いような?

 お父様の話だと、文化祭ではモデルの入れ替わりが起きそうだったみたいだけど、どうやら才華さんと一緒に乗り越えた事で2人の仲も以前よりも良くなったのかも知れない。

 ……まさか、桜小路遊星様とルナ様のように、2人が何時か男女の恋愛関係になるとかはないよね?

 もしそうなったら……個人としては祝福しよう。2人の道の前に必ずあの人が立ち塞がるだろうけど。

 

「皆! 小倉さんが戻って来て嬉しいのは分かるけど、そろそろホームルームを始めるよ!」

 

 何時の間にか来ていた樅山さんの呼びかけに、皆自分の席に座った。

 

「それじゃあ皆。今日から10月の授業が始まるんだけど、先月から話している通り、総合部門への参加の締め切りと年末に行なわれるイベントへの参加申し込みの締め切りは、もうすぐだから参加する人は早めに申請してね」

 

 そうだ。

 先ずは樅山さんに参加を申し込まないといけない。うっかり参加申し込みを忘れたりしたら大変だ。1限目の授業が終わったら急いでしないと。

 そう思っていたら制服の袖をジャスティーヌさんに引かれた。

 

「ねぇ、黒い子。私、白い子が考えた総合部門の内容に参加する事にしたんだけどさあ」

 

 驚いた。

 才華さんが総合部門にジャスティーヌさんを参加させようとしているのは知っていたけど、まさかそれをジャスティーヌさんが了承しているだなんて。

 ……どうやら才華さんが僕に相談した時よりも、総合部門の内容は良くなっているみたいだ。

 そうでなければジャスティーヌさんが参加しようと思うはずがない。どんな内容なのか少し気になる。

 

「それで良かったら黒い子も……」

 

「誘ってくれるのは大変嬉しく思います。ですが、以前お話した通り、私は年末は目標としたイベントに集中したいと思っています」

 

 樅山さんの話だと、2、3年生の方では応募者が多いそうだから、此方も全力を尽くさないといけない。

 お父様の課題も、イベントの製作者に選ばれる事だ。ジャスティーヌさんも参加を決意した才華さんが考えた総合部門の内容には興味があるけど、其方に気を取られる訳にはいかない。

 僕の決意の固さを感じたのか、ジャスティーヌさんは残念そうに溜め息を吐いた。

 

「やっぱり駄目か」

 

「すみません」

 

「謝らなくて良いよ。駄目もとで聞いた事だし。だけど、黒い子が参加しなかった事を後悔するようなショーをするからね」

 

「楽しみにしています」

 

 素晴らしいショーが行なわれるのは、とても楽しみなので期待させて貰います、ジャスティーヌさん。

 才華さんはどんな舞台を考えたのかなあ? フィリア・クリスマス・コレクションへの期待を募らせながら、僕は久しぶりの授業の為の準備を始めた。




次回はアンケートの結果を話で出して、そして朝日とアトレの話になります。
年内投稿にしたいのですが、来年投稿になってしまうかも知れないので、今の内に、皆様、今年はありがとうございました!
来年も宜しくお願いします!
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