スーパーロボット大戦N   作:黒百合蜂

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本当すみません!投稿が大幅に遅れてしまいました…
そして、今回は結構長めです!!


第八話A 雪原に立つ護符

~新幹線内~

辰也「いや~、やっぱ速いよな、新幹線は!!」

 

飛行機に乗った時のように、新幹線の中で辰也ははしゃいでいる。

 

舞人「お褒めにあずかり光栄です。この新幹線も路線も、旋風寺コンツェルンの所有物なんですよ」

 

そんな辰也に対して、キャビンアテンダントのようにかしこまって返す舞人。

 

シズナ「金持ちはスゴいなぁ……」

 

浩一「というか……何でオレ達がわざわざ岩手まで、新たなマキナを確認しに行かなきゃいけないんだよ?」

 

ぶ~ぶ~と文句を垂れる浩一。それに山下達が返答する。

 

山下「えっと、森次さんは会社の取引だとかでいないし……」

 

つばき「地球防衛組やガンバーチーム、ザウラーズは学校……特にザウラーズはゴウザウラーについての説明会があるって話だったわね」

 

鏡「ゴウザウラーは3人に加え、彼らの所属しているクラスの全員が乗ると出力が上がる、との事だったな」

 

イズナ「学校の中に司令室があるライジンオーとは違って、機体の中に司令室がある……そういう造りですからね」

 

ジゼラ「後は……ドランさんと3人の小学生ですが、何処かへ行ってしまったみたいですし……」

 

剣児「柳生さん達は訓練だってな!」

 

浩一「みんな忙しいんだなぁ……」

 

深いため息をつく。

 

城崎「もう1つの理由としては、実際にマキナが存在した場合、起こりうる状況も想定してだと思います」

 

浩一「……それって、戦闘になるってコト?」

 

城崎「はい。まあ、他の人達も用事が済めば来れると思うので、私達は切り込み役という事ですね」

 

切り込み役……か、何かかっこいいじゃねえかよ!!

 

浩一や剣児、辰也がその単語を聞いて浮かれている。それを見てアホらし……と零すシズナ。

 

シズナ「それより、ウチにはもっと気がかりなコトがあんねんケド……」

 

溜め息をつきながら、その気がかりなコトの理由に目を向ける。

 

 

 

 

 

道明寺「全く、旋風寺コンツェルン様々だぜ! ジュースも飲み放題だなんてな!!」

 

その先には、缶ジュースを両手にご満悦の道明寺がいた。

 

城崎「一応、社長曰く『保護者担当』らしいんですが……」

 

あはは……と呆れたように笑う城崎。

 

舞人「喜んでくれて嬉しいよ。でも、飲み過ぎたらお腹を壊すから注意してくれ」

 

道明寺「いや~、爽やかな注意だね社長さん! 流石は嵐を呼ぶナイスガイだ!!」

 

……と喋りながら、道明寺が浩一の隣に座る。

 

浩一「というか、何で同い年の道明寺が保護者なんだよ……」

 

道明寺「そりゃ、あれだな。社長が一目で俺の器に気付いたってコトだな、うん」

 

シズナ「器なァ……ウチには底ヌケのアホにしか見えへんケドなァ」

 

誇らしげな顔で言い切る道明寺に対し、コソリと影でぼやくシズナ。

 

辰也(とはいえ、誠は意外と面倒見がいいんだよなぁ。だから心配はねえんだけど……)

 

……問題は「あそこ」の人達なんだよ……

 

缶をグリグリと押し付ける道明寺、押し付けられるシズナという光景をよそに、辰也が不安を隠そうともしていない表情で斜め後ろを向いた。

そこには……

 

 

 

 

 

竜馬「っかあ~!! 新幹線の中で平日の朝っぱらから呑む酒はうめえぜ!!」

 

酒を呑んで上機嫌な竜馬と

 

隼人「これから任務だというのに呑気な事を……雪山で凍死して足を引っ張るなよ」

 

その竜馬に文句を言う隼人と

 

弁慶「ぬごぉ……ぬごぉ……」

 

鼻提灯を膨らませながら眠っている弁慶が座っていた……。

 

凱「任務の前の休息だ、張り詰め過ぎると体に毒だぜ、隼人」

 

その3人の中に、平然と座っている凱。

 

隼人「だが、こいつらは気を抜き過ぎだ」

 

凱「それは確かにそうだな……」

 

竜馬「ま、いいじゃねえかよ。それよりお前らも飲め。な、隼人、凱」

 

隼人「いらん」

 

凱「俺も遠慮するよ」

 

その光景を、近くで見ている辰也達。

 

辰也「……凱さんを抜いたあの人達に比べりゃ、誠なんてまとも過ぎる位だぜ……」

 

シズナ「確かにおっかない人達の集まりやな……目ぇ合わせんとこ」

 

ジゼラ「……はいはい、もう切り替えましょう! で、その岩手県の山村ですが、何故そこにマキナがあると分かったのでしょうか?」

 

少々強引に話を切り替えるジゼラ。

 

城崎「……ええ、その村は役場の記録では50年前に廃村になったみたいなんですが……どうやら、まだ住んでいる人がいるらしくて……」

 

隼人「そいつはもしかすると……ネットでも目にする『阿戸呂村』という奴か」

 

唐突に、凱とゲッターチームが話に入ってきた。

 

辰也「うおびっくりしたぁ!!」

 

シズナ「何でこないなタイミングで……」

 

隼人「どうした、何をそんなに怯えている」

 

シズナ「な、何でもあらへんわ……」

 

竜馬「おいおい、ビビり過ぎだろシズナ! 俺たちゃ鬼じゃねえんだ、別に取って食おうなんて思ってねえよ! ……ま、こっちには女を食う鬼みてえな野郎がいるから気をつけな」

 

弁慶「な……おい竜馬! 誰の事を言っておる!!」

 

竜馬「てめえに決まってんだろ、生臭坊主!」

 

弁慶「貴様!」

 

隼人「黙ってろ、馬鹿共!」

 

凱「すまない、続けてくれ」

 

突然喧嘩を始めた2人を止める隼人と凱。他の皆は周りに飛び火するんじゃないかと恐れていたが、そんな事はなく安堵した。

 

城崎「は、はい……えっと、その阿戸呂村は、1人の若者によって───

 

 

 

 

 

───村人が全員惨殺された、という噂の村です」

 

物騒な単語が飛び出し、しん……と静まり返る車内。沈黙を破ったのは道明寺だった。

 

道明寺「確か一説によると、そこは鬼を信仰していた村で、その鬼に取り憑かれて殺った……なんて話だったな」

 

浩一「そんな話、信じるワケないだろうが」

 

竜馬「第一、俺達が今まで戦って来た鬼共は知性のねえ獣みてえな奴らばっかだったぜ!」

 

鏡「いや、そうとは言い切れないのではないだろうか」

 

浩一と竜馬の意見に、反論する鏡。

 

浩一「……なんでだよ」

 

道明寺「だってマキナって『鬼』をモデルに造られてんだろ? 特にお前のラインバレルなんか、二本角で牙があって、三つ巴背負ってるワケだし……ありゃあどう見ても『鬼』だぞ」

 

鏡「それに俺達が戦って来た鬼も、確かに知性の欠片もない奴らばかりだったが……もしかすると、それらを統べる鬼がいるのかも知れないからな」

 

凱「かつて日本を混乱に陥れたゾンダーも、その上にいたのはゾンダリアンという知能の高いゾンダー……正確に言えば、ゾンダーに取り込まれた異星人だった。だから鏡の想像も間違ってはないさ」

 

浩一「……そう言われればそうかもしれないケドさ……」

 

隼人「一概にまとめられるとは思わんが、その線もあるな」

 

浩一「だとしたら、その村人を惨殺したのは、マキナとファクターってコトか!?」

 

城崎「いえ調査の結果、村人は1人も殺されてはいません。それにその阿戸呂村も普通に残っています」

 

浩一「ほらな! 所詮ウワサ話なんて、そんなモンなんだよ!!」

 

平然と答える城崎。それを聞いて安堵したのか、浩一が声を大にして言った。

 

城崎「ですが外部との交流を避けている事や『鬼』を信仰しているのも事実みたいです」

 

道明寺「そりゃあ岩手って名称自体、その昔人々を苦しめていた鬼が退治されて、二度と悪さをしないよう岩に確約の手形を取らせたコトが由来だからな。鬼を信仰している村があってもそれほどおかしな話じゃないだろう」

 

辰也「やっぱお前……色々詳しいな!」

 

道明寺の解説に、感嘆の声を上げる辰也。

 

道明寺「そんな褒められるコトでもないですよ」

 

シズナ「そんでまぁ、特務室の人間が調査してる最中にオモロい話聞いてん」

 

剣児「そりゃなんだ?」

 

城崎「村から一番近い町で聞いた話みたいなんですが、『阿戸呂村には人に化けた鬼がいて……その証拠に、その人間は年を取らない』という噂を」

 

浩一「……ちょ、ちょっと待ってくれ、それだけの情報で断定するなんて……」

 

山下「前々からJUDAでは各地に伝わる民間伝承や都市伝説も、マキナ捜索の対象に入れてるんだよ。」

 

浩一「……だからってさァ」

 

城崎「もちろん、その情報だけなら私達が動く必要はありませんが……」

 

辰也「が?」

 

城崎「その阿戸呂村を調査していた特務室の人間と、3日前から連絡が途絶えたままで……」

 

話している最中、車内に到着のアナウンスが流れた。

 

舞人「そろそろ着くみたいだ。続きは歩きながらにするとしよう」

 

自分達の荷物をまとめて、辰也達は新幹線を降りた。

 

~岩手・山道~

駅に着いてからはバスを経由し、阿戸呂村へ比較的近い場所へとたどり着いた。

 

つばき「歩いてから2時間くらい経つけど……まだ着かないのかしら?」

 

ジゼラ「そうみたいですね……それにしても凱さんや弁慶さん達は平気なんですか?」

 

凱「俺はサイボーグだから、この程度の寒さはへっちゃらさ」

 

弁慶「寺にいた頃、こんな修行は何回もしたからな……今更どうという事はないわい!」

 

剣児「俺は平気だぜ、何てったって日頃から鍛えてるからな!」

 

鏡「お前の場合、馬鹿は風邪をひかないから……じゃないか?」

 

辰也「そもそも、皆防寒はしてんだし、大丈夫だと思うぜ?」

 

シズナ「せやな。あのアホ共を除いたらやケド」

 

そう話してる後ろでは、道明寺と竜馬が凍えながら歩いていた。

 

道明寺「なあ早瀬……寒さでだんだん体の感覚が無くなってきたんだが……」

 

竜馬「ちっとばかし飲み過ぎたみてえだな……何か出そうだぜ……」

 

そんな2人に一言、知るか、と言い放つ浩一と隼人。

 

城崎「山道から外れてないし、方角的にも間違ってないハズなんですが……」

 

隼人「土地勘も何もない人間が冬の山に入るのが、そもそもの間違いという事だな」

 

イズナ「そうですね……」

 

道明寺「なあ早瀬……体の感覚が……」

 

竜馬「お、俺いい事考えたぜ! 辰也とファクターのガキ共がイールソウルとマキナを呼んで行きゃあいいじゃねえかよ!」

 

舞人「外部との接触を極端に避けてる村ですよ。それを刺激してどうするんですか……」

 

呆れたように言い放つ舞人。

 

辰也「……じゃあ、この跡は何なんだ?」

 

辰也の視線の先には、この雪の中を強引に通ったような物体とタイヤの跡があった。

 

ジゼラ「確かにそうですね……こんな山奥にしては不自然な……」

 

浩一「もしかしたら、こいつをたどって行けば着くんじゃないか?」

 

シズナ「そんな都合のいい話があるワケ……」

 

そう言いかけた瞬間、浩一が何かに気づき、上を見る。

 

浩一「いや、どうやら間違ってないみたいだよ」

 

城崎「え?」

 

そう言い、城崎達も見上げると───

 

 

 

 

 

───そこには、巨大な鬼が、いや……

 

浩一「マキナ……?」

 

マキナが立っていた。

そいつは、跡が続いている方向へと消えていく。

 

浩一「!!」

 

辰也「どうした、浩一!!」

 

突然駆け出した浩一を追いかける辰也達。

そこには、小さな村があった。

 

凱「もしかすると今のマキナは、道案内してくれたという事か?」

 

隼人「だとしたら、俺達が来るのを知っていたという事か……」

 

舞人「とにかく、先に進みましょう」

 

その声と共に、先へと進んでいった。

 

~阿戸呂村~

日が沈む位の長い時間と距離を何とか歩いていった辰也達。

 

城崎「間違いありませんね。ここが阿戸呂村です」

 

道明寺「なぁ、そういえば今日どこに泊まるつもりなのよ?」

 

浩一「あっ……」

 

イズナ「今来た道をまた引き返すのも一苦労ですし……」

 

剣児「この時間じゃ、もうバスもねえよなぁ……」

 

などと話しながら、ふとジゼラとシズナが暗闇の方を向く。

 

ジゼラ「! た、辰也さん……」

 

シズナ「早瀬ぇ……」

 

辰也「ジゼラ?」

 

浩一「何だよ、シズナ……っ!」

 

辰也達もそこを向くと───

 

 

 

 

 

───鬼の面を被った人間が、鍬を持ち立っていた。

 

浩一「ど、どうも……」

 

浩一が顔を引きつらせながら挨拶をしようとすると、同じ様な姿をした人達に囲まれてしまった。

 

浩一「ちょっ……いきなりなんなんですか!?」

 

竜馬「ほう……どうやら、やるしかねえみてえだな!」

 

剣児「上等だぜ、数が多いからって調子に乗んなよ!」

 

戦闘態勢に入る武闘派2名。

 

つばき「待って!」

 

剣児「ああ?」

 

そしてそれを静止するつばき。どうやら、彼らに攻撃の意志はないようだった。

 

隼人「奴らからは殺気は感じられん……殺すつもりはないようだな」

 

凱「ああ。それにこの数だ、下手に刺激すれば返り討ちにされるだろう」

 

つばき「竜馬さんや凱さん、剣児みたいな手練れがいても、絵美やジゼラ達に危害が及ぶかもしれないわ」

 

辰也「じゃあ、今は大人しくしといた方がいいな……」

 

そして辰也達は、囲まれながらどこかへ連れて行かれた……。

 

~阿戸呂村・工房~

前述の場面から、工房に押し込まれた辰也達。

 

道明寺「随分とまあ乱暴だな」

 

城崎「……」

 

苛立ちを隠さず呟く道明寺をよそに、ある一つの場所を見つめる城崎。

 

城崎「青沼さんっっ!! それに……」

 

そこには、柱に縛り付けられているJUDA特務室の青沼次郎と───

 

 

 

 

 

タクヤ「あっ、辰也の兄ちゃん達! オイラ達を助けて!!」

 

カズキ「こら、あんまり騒ぐな!! 下手したら俺達の命がなくなるかもしれないんだぞ!?」

 

ダイ「でも、あの人達は危害を加えてこないし、大丈夫じゃないの?」

 

───同じく縛られているタクヤ達がいた。

 

凱「タクヤ! カズキ! ダイ!」

 

舞人「何で君達がここにいるんだ!?」

 

???「それはこちらで説明します。ひとまずは上がって暖まって下さい」

 

柱からそう離れていない暖炉、その近くにいる男が話しかける。

 

ジゼラ「その……これはどういう事なんですか!?」

 

城崎「青沼さんを解放して下さい!!」

 

凱「タクヤ達もだ!!」

 

城崎と凱にそう言われると、男は彫っていた人形を地面に置き、ゆっくりと立ち上がった。

 

???「待っていたんですよ。あなた達がそうなんですね?」

 

浩一「待っていたって……あなたは?」

 

宗美「僕は中島宗美。あなた達が探しているマキナのファクターです」

 

中島宗美と名乗った男は、辰也達の方へと体を向けている。

 

つばき「……じゃあさっき、私達が見たのが……あなたのマキナなんですか?」

 

宗美「ええ。大方慣れない山道に迷っているのではないかと思いまして、道案内にと。しかし、あの子供達の乗ってきた車の跡がありましたから、少々お節介でしたかね」

 

辰也「いえいえそんな事は……ってそうじゃなくて!」

 

宗美「しかし驚きましたよ。大体のコトは彼らから聞きましたが……まさかあのJUDAが一連の巨大ロボット騒動に関わっていたとは。ところで、そちらのファクター……もといパイロットはどなたでしょう?」

 

辰也「ここにいるほぼ全員……ですね」

 

宗美「……そうですか。あなた方が───

 

 

 

 

 

───僕のマキナ『タリスマン』を破壊しに来た方々ですね」

 

浩一「! 破壊ってなんですか!? オレ達はあなたに協力を求めに……」

 

宗美「嘘だ!!」

 

宗美の喝と共に、バッと農具を構える村人達。

 

辰也「何なんだ……この訳分かんねえ展開は……」

 

宗美「タリスマンが教えてくれました。いずれ自分達を破壊するマキナが現れると」

 

城崎「マキナがあなたに何を教えたのかは知りません……ですが、我々はあなたもあなたのマキナにも危害を加えるつもりはありません! ただ我が社に協力して……」

 

宗美「協力する気は毛頭ありません。無論、黙って破壊される気もありませんが」

 

浩一と宗美の間で睨み合いが続く。その時、突然ガラッと引き戸が開いた。

 

宗美「!! 薫さん!」

 

そこには、薫と呼ばれた老婆が立っていた。

 

宗美「出歩いたらダメじゃないですか! ちゃんと寝てないと……」

 

薫「宗ちゃんが帰ってこないし外も騒がしかったから心配で……多恵ちゃんに聞いたらみんな工房にいるって……あら?」

 

こちらへと気づく。

 

薫「まぁまぁ、随分お若い方達だコト。宗ちゃんのお客様かしら?」

 

宗美「え? あ、えーっと、まぁ……」

 

薫「まぁ大変! それなら急いでお夕飯の用意しなくちゃ」

 

この一連の光景を見て、ポカーンとする辰也達だった……。

 

 

 

 

 

───それからというもの、辰也達は薫さんの夕飯を召し上がり、更に温泉にまでも入れさせてもらった。

 

そこでは、薫がこの村ではなく、東京の出身である事や、病気で無理に動けない体になっている事、また阿戸呂村には宗美以外の若者はいないという事が分かった。

 

ただ、宗美が抱いている誤解については、うやむやにされてしまった。

 

……そして今現在、辰也達は工房に用意してもらった布団にくるまっていた。

 

辰也「というかよ、俺達だけで宗美さんをJUDAに協力してくれるよう説得出来んのか?」

 

山下「最悪、森次さん達に来てもらうって方法もあるよ」

 

道明寺「まぁ、まずはこの村にまつわる噂の元を暴かなきゃいけないんですケドね」

 

浩一「なんだよ? 大体噂って言っても……惨殺事件とかはデマだろ?」

 

ジゼラ「でも、そんな噂が流れるという事は……この村に何かあるって証拠なんでしょうね」

 

つばき「何か……って鬼を信仰してるとか、宗美さんがファクターだって事以外に?」

 

議論の尽きぬ寝室。そしてそれを他所に、道明寺は1人思案していた。

 

道明寺「……老人ばかりの閉鎖された村、鬼を信仰する村民、『阿戸呂村には人に化けた鬼がいて、その証拠にその人間は歳を取らない』らしい。そして、この村の出身でない薫さんの存在と、その薫さんの世話をする村で唯一の若者……中島宗美」

 

浩一「何1人でブツブツ言ってるんだよ」

 

道明寺「やっぱり呪われてるってコトなんだろうなァ」

 

辰也「呪われてるって、この村の事か?」

 

道明寺「ええ。きっとそれは、自分達ではどうにもならない程の呪いなんでしょうねェ」

 

剣児「……ま、難しい話はまた明日にすっぞ! もう遅えんだし、寝ようぜ!」

 

つばき「剣児! 今は真面目な話を……」

 

山下「まぁ、疲れも溜まってるしね」

 

タクヤ「オイラ達も疲れたよ~」

 

凱「それじゃあ、もう寝るとしよう。だが、くれぐれも油断はしないようにな」

 

辰也「分かってますって。では皆さん、おやすみなさい……」

 

こうして彼らはそれぞれ、布団を被って眠りについた……。

 

 

 

 

 

第八話 雪原に立つ護符

 

 

 

 

 

~翌日・阿戸呂村~

浩一「ん……」

 

朝日が照らされた工房で、浩一達は目を覚ました。

 

浩一「!」

 

入り口の前には、道明寺と凱、ゲッターチームが立っていた。

 

辰也「どうしました?」

 

隼人「静かにしていろ」

 

凱「俺達は今、包囲されている」

 

竜馬「ったく、元気なジジイ共だ。早起きな上によくやりやがるぜ」

 

辰也「何ですって!?」

 

布団から出た全員の頭にビックリマークが浮かぶ……と同時に、工房の扉がバン! と開かれた。

そこに立っていたのは、村人達を引き連れた中島宗美だった。

 

浩一「宗美さん……!!」

 

宗美「……僕はファクターとして、否───

 

 

 

 

 

───信仰される鬼として、この村を守らなくてはいけないんです!!」

 

雪景色の中で、銀色のマキナ……タリスマンが、轟音を立てて宗美の後ろに降り立った。

 

浩一「……」

 

道明寺「宗美さんが『信仰される鬼』か……なるほど、読めてきたぞ」

 

隼人「浩一、閉鎖された空間に長居していた連中に正攻法は通じないだろう」

 

弁慶「だが、ああいうのはすがる物をなくせば弱いものよ!」

 

辰也「だから話を聞かせる為にも、お前があの『鬼』を叩き潰してやれ!」

 

ジゼラ「辰也さん達は行かないんですか?」

 

辰也「宗美さんの実力が未知数とはいえ、流石に多対一ってのは卑怯だからな。それに、目には目を、マキナにはマキナって奴だ!!」

 

浩一「クソッ……結局はこうなるのかよ! だったら、来い! ラインバレル!!」

 

浩一はラインバレルを呼び出す。

そして、ラインバレルとタリスマン、2体の鬼が対峙する。

 

道明寺「こりゃまた、今までのとは随分と違う意匠のマキナだな……そんじゃ、今のウチに仕事片づけるか!」

 

カズキ「じゃあ、オレ達も連れて行って下さい!」

 

ダイ「ドランが僕達をここに連れてきたのも、理由があるんです!」

 

道明寺「分かったぜ。ついて来な!」

 

タクヤ「ドランは使わないの?」

 

道明寺「ドランは何かあった時のために置いておく。それにあいつも俺も、目的地はおそらく一緒だからな。じゃ、行くぞ!!」

 

道明寺とタクヤ達がどこかへ行く。その間に、浩一は戦闘を開始した。

 

~戦闘開始~

浩一(初戦闘時)

浩一「面倒なコトになりやがった……まずは動きを止めて、宗美さんを説得する!!」

 

 

浩一(対宗美)

宗美「なるほど、タリスマンより鬼らしいマキナですね……実に禍々しい」

 

浩一「悪いケド、宗美さんがそういう態度ならオレも容赦しませんよ! 力ずくで分からせてやる!!」

 

 

~~~

ラインバレルとタリスマン、両者とも手を緩める事無く剣戟を行っている。

 

宗美「意外と動きが雑ですね……それで僕達を倒すのは難しいですよ」

 

浩一「あなただって、そんな攻撃でオレ達を倒せるとでも!?」

 

宗美「では!!」

 

タリスマンが槍で突くも、それを避けるラインバレル。

だがその槍は、突然展開した。

 

浩一「!?」

 

その瞬間、槍は電撃を放った。

 

浩一「うあっっ!!」

 

電撃をモロに食らうラインバレル。その体は雪原へと倒れた。

 

浩一「一瞬で動きが……なんだ今の!?」

 

宗美「マキナの人工筋肉のみを焼きました。自己修復機能があるとはいえ、しばらくは動け……!!」

 

宗美の話が終わらない内に、立ち上がり刀を振るうラインバレル。

 

浩一「ラインバレルは、そんじょそこらのマキナとは違うんですよ!!」

 

宗美「尋常ではない自己修復力、やはりタリスマンの情報は正しかったようです。しかし!!」

 

そう言うと、何度も電撃を放ち続けた。

 

浩一「……さすがにこう連続で喰らうと……修復が間に合わない!!!」

 

城崎「早瀬クン!!」

 

ジゼラ「このままじゃ、早瀬さんが……!」

 

辰也(浩一はそんなヤワじゃねえ。だけど万が一って事もある、いつでも出撃出来る用意はしておくか……!)

 

電撃を食らい、倒れるラインバレルを見下ろすタリスマン。

 

宗美「どうしますか? おとなしく帰って頂けるのなら、これ以上の危害は加えません」

 

ラインバレルのコックピットの先には、タリスマンの槍。

 

浩一「……わざわざ岩手まで来て『はいそうですか』じゃ、帰れないんですよ!!」

 

宗美「そうですか……できればこんなコトは───したくありませんでしたが!!!」

 

その槍が今にも突き刺されようとされる……が、それは寸前で止められた。

 

浩一「……?」

 

見ると、そこにはタリスマンの槍を長刀で防ぐアルマの姿があった。

 

???「はじめまして、早瀬浩一クン」

 

ラインバレルの方を向き、ご丁寧にも挨拶をするアルマ。正確に言えば、その中のパイロットが、だが。

 

浩一「アンタ……誰だよ!?」

 

ユリアンヌ「アタシは加藤機関七番隊隊長、ユリアンヌ・フェイスフル。故あって、助太刀してあげるわ」

 

ワルター「そして、私はワルザック共和帝国第一王子ワルター・ワルザック。目的の為、彼らに協力している」

 

ユリアンヌのアルマ『ツバキヒメ』の後ろから、後続のアルマやカスタムギアが現れた。

 

辰也「ったく、何でこう次から次へと訳分かんねえ事になんだよ!」

 

ジゼラ「それより何で加藤機関やワルザック共和帝国が、私達の助けに入るんですか!?」

 

ユリアンヌ「アラ、アタシ達はアナタ達を助けるんじゃなくて、ラインバレルを助けに来たのよ。こんな所で壊されちゃ困るもの」

 

舞人「お前達も、宗美さんのマキナを奪いに来たのか!?」

 

ユリアンヌ「奪う? 勘違いしないで。アタシ達はマキナを集めてなんていないわ」

 

ワルター「そのマキナとやらには興味があるが、我々はそれを求めていない」

 

浩一「え!?」

 

ユリアンヌとワルターの発言に、一瞬気が動転する浩一達。

 

ユリアンヌ「アタシ達は、現存する全マキナを破壊したいだけよ」

 

山下「全てのマキナの……破壊!?」

 

ワルター「彼らはそうだが、我々は───」

 

ユリアンヌ「そうそう安心して、ラインバレルだけは特別よ。だから破壊対象には含まれてないわ」

 

ワルター「こらぁ! 私が話してる最中だろう!」

 

ユリアンヌ「うっさいわねェ、誰もアンタの話に興味ないのよ。王子様なんだから黙ってドンと構えてなさい」

 

ワルター「うう、ヒドい女だ……」

 

しくしくと泣き崩れるワルター。そんな事などお構いなしに、話は進み続ける。

 

浩一「待てって!! 特別ってどういうコトだよ!?」

 

その問いかけには答えず、ツバキヒメは長刀をタリスマンに構える。

 

ユリアンヌ「さて、そこのファクターさん。そういうワケだから悪いケド、壊させてもらうわ」

 

宗美「……今話を聞いている限り、どうやら本当に早瀬クン達のお仲間ではないようですね。ですが……僕達の敵であるコトに変わりないのなら!!」

 

タリスマンは槍を向け、突進する。その前方にいるアルマ隊も、長刀で切りかかろうとした。

 

 

 

 

 

───しかし、次の瞬間、宗美の目の前にいたアルマは消え、代わりに橙色の巨人が立っていた。

 

宗美「! あなた達は……」

 

辰也「悪いですね宗美さん。横入りしちまって」

 

山下「ケド、流石に見てられないよ。多勢に無勢、宗美さんがいくら強いとはいえ、瀧城もボク達も卑怯なのは嫌いだからさ」

 

シズナ「せや。それにマキナの全破壊なんて、要は最悪ウチらもやられるってワケやろ?」

 

凱「だからここでお前達を倒す! それだけだ!!」

 

ゴルドラン「それに、ワルザックがここに来た目的は分かっている。だからこそ、お前達の思い通りにはさせない!!」

 

アルマ達の前に、イールソウル、ハインド・カインド、ディスィーブ、ガオガイガー、ゴルドランが立ちふさがった。

 

ワルター「我々の助けがいらんと言うのか!?」

 

凱「悪党なぞに借りる手はない!!」

 

ジゼラ「城崎さん達は村の人達をお願いします!!」

 

城崎「はい!」

 

舞人「こっちは任せておいてくれ!」

 

そういうと、舞人達は室内へと戻っていった。

 

ユリアンヌ「面倒なコトになったわねェ……」

 

ワルター「だが、向かって来るならば相手をしよう」

 

辰也「上等! 返り討ちにしてやるぜ!!」

 

浩一「宗美さん……アンタはまだオレ達を信用出来てないハズだ。ケド、ここは共通の敵を倒すために協力して下さい!!」

 

宗美「……分かりました。ここは一時、手を組みましょう!!」

 

ラインバレルとタリスマンが、白銀世界に並び立つ。

 

ユリアンヌ「アタシ達の助けは求めないくせに、さっきまで戦ってた人とは手を組むのねェ」

 

辰也「少なくとも宗美さんは、お前らより信用出来るんだよ! そんじゃ行くぜ!!」

 

さて……戦闘再開っ!!

 

~戦闘再開~

宗美(初戦闘時)

宗美「まさか、早瀬クン達と一緒に戦うコトになるとは思いませんでしたよ……」

宗美「……行こう、タリスマン! 村を守る『鬼』として、敵を倒すんだ!!」

 

 

宗美(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「アナタの戦い方、マキナの過去の戦闘データによるフィードバックってヤツね。でも、それってアナタの実力ではないのよねェ」

 

宗美「それが何か問題でも?」

 

ユリアンヌ「さあね。とりあえず、そのマキナを破壊させてもらうわ!!」

 

宗美「そんなコトは、決してさせません!!」

 

 

宗美(対ワルター)

宗美「おとなしくこの村から手を引いてください!」

 

ワルター「それはできん。ここには我々の求める宝があるのだからな!!」

 

宗美「だったら、力ずくで手を引かせます!!」

 

 

浩一(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「せっかく助けてあげようと思ったのに……正義の味方は融通が利かないのねェ」

 

浩一「悪いケド、アンタらに助けてもらう筋合いなんてねぇからな! 行くぞ、ラインバレル!!」

 

ユリアンヌ「そう……それじゃあ、おとなしく捕まりなさい!!」

 

 

浩一(対ワルター)

浩一「アンタがこの村に来たのも、ドランと関係があるのかよ!?」

 

ワルター「その通りだ。この地には勇者が眠っている……だから、私が直々に封印を解こうというのだよ!!」

 

浩一「そうかよ……この村には色々あるんだな……ケド、とりあえずアンタらには出て行ってもらう!!」

 

 

山下(対ユリアンヌorワルター)

山下「ワルザックとかいうのと組んだら余裕で勝てると思ったんスか? 加藤機関のオバさん」

 

ユリアンヌ「……」

 

ワルター「ファクターのお子よ! 女性に向かってそのような呼び方は失礼ではないか!?」

 

山下「だってオバさんじゃん……って言うか、そうなるとそっちはオッさんになるんスかね? まぁ……いいコンビだとは思うっスよ」

 

ワルター「な、何ぃ!? このワルター・ワルザックを……お、お、オッさんだとぉぉっ!? どうやら貴様には全身全霊をもって、私とワルザック共和帝国の恐ろしさを思い知らせてやるしかないようだな!!」

 

ユリアンヌ「アタシとしても、レディに向かってオバさん呼ばわりしたコト、高く付かせてやるわ!!」

 

 

凱(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「アナタ、暑苦しいのよ。アタシはそういうの好きじゃないわ」

 

凱「だからどうした! 貴様のくだらん好き嫌いに振り回されるほど、俺は優柔不断ではない!!」

 

ユリアンヌ「そう……面倒くさい性格してるわね!!」

 

 

凱(対ワルター)

凱「ワルター・ワルザック! 貴様が加藤機関と組むとはな……見損なったぞ!!」

 

ワルター「ワルザック共和帝国は利用できる物は何であろうと利用する……たとえそれが悪の組織であろうとな!」

 

凱「だが……駐日大使が犯罪組織と組んでいる事を大っぴらに話すのはどうなんだ?」

 

ワルター「あっ……ま、まあいい! この美しき銀世界に、貴様らごとその事実を沈めてしまえばいいのだからな!!」

 

凱「ならば俺は貴様達の野望を、この雪原に沈めてやるぜ!!」

 

 

ゴルドラン(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「喋るロボット、ねェ……面白いから連れて帰りたいくらいだわ」

 

ゴルドラン「私は主に従うのみ。貴様ら悪党の言葉に耳など貸さない!!」

 

 

ゴルドラン(対ワルター)

ゴルドラン「ワルター・ワルザックよ! この地に眠る勇者の封印、お前に解かせる訳にはいかん!!」

 

ワルター「レジェンドラを守護する黄金の勇者よ! ここに眠る勇者共々、我々の物になってもらおう!!」

 

ゴルドラン「お前の好きにはさせん! この地から立ち去るがいい!!」

 

 

辰也(初戦闘時)

辰也「何とか宗美さんと一緒に戦ってもらえるようにはなったぜ……」

 

ジゼラ「はい、後はあの人に信用してもらうだけです!」

 

辰也「だな。だから、この村を守るために一生懸命戦うぞ!!」

 

 

辰也(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「アナタ、面白い機体に乗ってるわねェ。ラインバレルの次に特別だから、ここで捕獲しといてあげるわ」

 

辰也「悪いけど、あんたみたいなおばさんに、やられるつもりはねえよ!!」

 

ジゼラ「ちょ……おばさんって! 敵とはいえ女性に失礼ですよ!!」

 

辰也「あっ、すみません! つい口に出ちゃって……」

 

ユリアンヌ「……別にいいわよ。その失礼な口を塞ぐコトに決めたからねェ!!!」

 

 

辰也(対ワルター)

辰也「加藤機関と組んで何するつもりだ、この面白王子!!」

 

ワルター「面白王子だと!? この私を愚弄するか、太陽の乗り手!!」

 

辰也「しょうがねえだろ、あんたを見て真っ先に思った事が『面白い』なんだからな!!」

 

ジゼラ「訳の分からない話をしてないで、行きますよ!!」

 

 

~~~

タリスマン達の攻撃で、みるみるうちにアルマやカスタムギアが減っていく。

 

浩一「すげェ……」

 

辰也「流石だな、宗美さん……」

 

宗美「さあ、どうします? まだ続けますか!?」

 

ユリアンヌ「あら、このぐらいでアタシ達が───」

 

道明寺「ちょっと待ったァ!」

 

なおも攻め続けようとするユリアンヌ。だが、突然横槍が入った。

 

浩一「道明寺!!」

 

道明寺「えー、加藤機関の皆さんもちょっと待っててもらえますかねェ?」

 

雪が溶けそうなほど熱気のこもった戦いを停止させると、道明寺は話を始める。

 

辰也「あいつ……何するつもりだ?」

 

道明寺「なァ、宗美さん。自分は信仰対象の鬼としてこの村を守るとか言ってたが───ありゃあ嘘ですね」

 

宗美「……」

 

道明寺の言葉に、顔をこわばらせる宗美。

 

ユリアンヌ「……なんなのよ、あのコは?」

 

道明寺「それに薫さん。彼女はあなたの祖母でも親戚の叔母でもない。彼女は宗美さん───

 

 

 

───あなたの奥さんだ」

 

 

 

浩一「ええ!!?」

 

ジゼラ「嘘でしょう!? でも、宗美さんは……」

 

道明寺「そう、その宗美さん自身も本当は、70過ぎの爺さんだ」

 

辰也「おいおいマジかよ!? でもそれってどういう───」

 

言い終わる前にタリスマンのハッチが開き、中から宗美が出てきた。

 

~~~

タクヤ「薫ばあちゃん!!」

 

青沼「一体どうしたんだ!?」

 

中島家に、タクヤ達が飛び込むように入ってくる。

 

城崎「さっき突然咳き込んで倒れてしまったんです」

 

そこには、布団で弱々しく横になっている薫と、それを見守っている城崎達がいた。

 

薫「……宗ちゃんの秘密、知られちゃったみたいねェ」

 

つばき「……」

 

青沼「はい」

 

薫「……でも、これで宗ちゃんもやっと、解放されるのね」

 

剣児「バアちゃん……」

 

薫「本当に長かったわ……もう50年以上前のコトだものねェ」

 

その言葉を皮切りに、薫は語り始めた。

 

薫「宗ちゃんはね、この村の先代の村長さんの一人息子で、ご両親からも村の人達からも、それはそれは大事に育てられたみたいなの。でもある時、自分が他の子供達と違うコトに気づいたのよ」

 

青沼「宗美さんだけは、村から出るコトを許されなかった」

 

薫「そう。だから学校にも行けなくてねェ……お父様にも何度もお願いしたケド、最後まで許してもらえなくて───17歳の時、宗ちゃんは村を飛び出しちゃったのよ」

 

隼人「その際、家から持ち出した金で上京……」

 

舞人「高度成長の勢いに乗った東京に魅力を感じたんでしょうね」

 

薫「……そこから色々あって、私と宗ちゃんは出会ったのよ。私が惹かれちゃったのよね」

 

青沼「それで2人は恋に落ちたんですね」

 

薫「そう。それから結婚して、それなりに幸せな日々を過ごしていたわ。でもね、ある日宗ちゃんが事故に遭ったの。それは酷い事故で、助からないだろうと言われたのよ」

 

青沼「……だが、瀕死だった宗美さんは数日で回復してしまった」

 

城崎「!」

 

薫「それから宗ちゃんの体が普通じゃないって気付いたの。私が30歳になる頃、宗ちゃんは29歳……でもね、彼は出会った時のまま……17歳の時とほとんど変わってなかったわ」

 

城崎「まさか……!」

 

~~~

道明寺「老いるコトもなく、どんな病気やケガでもすぐ完治してしまう。昔は噂が流れるのも早いから、さぞ周りから気持ち悪がられたでしょう」

道明寺「そんな環境にいられなくなったあなたは結局、薫さんを連れてこの村に帰ってきた。それからのコトはここに書いてありましたよ」

 

そう言うと、あの祠から見つけて来たであろう本を道明寺が掲げる。

 

浩一「おい道明寺! さっきから話が見えないぞ!!」

 

道明寺「いいか早瀬、そして皆。宗美さんは先代村長の実の息子じゃないんだよ」

 

浩一「え……」

 

宗美「……彼の話した通りです。30年前に父である先代の村長が亡くなる前、僕は真実を告げられました」

 

昔を振り返りながら、淡々と語る宗美。

 

宗美「『お前は自分の本当の子ではない、霊山に眠る大鬼様から授かった子供だ』とね。そしてその言葉通り、大鬼様……タリスマンの眠っていた霊山へと向かいました」

宗美「……あの日、あの瞬間から僕は信仰されるモノになりました。それまで信仰していた大鬼の中から現れた僕はいわば神様の様なモノ……自分達がすがる存在として都合良かったんのでしょう」

 

吹雪の音が一面に響く。そんな中でも、宗美の声はよく耳に入った。

 

宗美「結局、今も昔も、僕はただ利用されているだけなんですよ。この村を維持していくための象徴として、僕は必要とされていた……それでも、僕は感謝しているんです……話から察するに、おそらく僕はこことは違う別の世界から来た人間なのでしょう」

宗美「ですが、そんな素性も分からない僕を、この村の人達は受け入れ、育て、必要とさえしてくれたんです……ならば、たとえ自由を奪われ、この村に縛り付けられたとしても、その役目を果たすコトが自分の成すべきコト!!」

宗美「だから僕は、この村を守っていかなければいけないんです!!」

 

宗美の悲痛な叫びが木霊する。

 

道明寺「それはアンタの勝手な見解だろうがよ」

 

……しかし、道明寺はそれを切り捨てるかのように、冷ややかに反論した。

 

道明寺「宗美さんが物心付く前から、この村の人達は、あなたが普通の人間とは違うコトぐらい、とっくに気付いていた───だから彼らはこう判断したんですよ」

 

この子は村から出て、生きては行けないだろう

 

だから自分たちが守ってやらねば

 

道明寺「……とね」

 

宗美「!!」

 

その事実に対し、衝撃を受ける宗美。

 

宗美「……そんな……馬鹿なコト……」

 

道明寺「要するに宗美さんを信仰対象にした本当の理由は、ファクターであるあなたを守るために村で編み出した苦肉の策ってワケです。つまりあなたは何も守っちゃいない───あなたがずっと守られていたんですよ」

 

宗美「……」

 

道明寺「それにあなた、自由を奪われ縛り付けられたと言ったが───薫さんや他の人達の自由を奪い、村に縛り付けていたのは……あなたの方ですよ」

 

突きつけられた現実……自分が守られ、そして周りを縛っていた存在だと知った宗美は愕然としている。

 

ユリアンヌ「ヘェ~、あの子言うじゃない」

 

宗美「……そんな、どうしてそこまでして僕のコトを……」

 

微かに声を絞り出し、問いかける。それに1人の村人が答えた。

 

村人「……だってそりゃあ……同じ村の人間として、当たり前のコトだと思ったから……」

 

宗美「……っ!」

 

宗美の目に、涙が浮かぶ。

 

タクヤ「お~い、みんな! 大変だよ~!!」

 

……そんな中、唐突につばきとタクヤ達が走ってきた。

 

つばき「薫さんが……!!」

 

それを聞いて一転、顔色を変える宗美。と同時に、家に向かって駆けだした。

 

道明寺「クソッ! あの社長め……面倒なコトに首突っ込ませやがって……こういうのは全然面白くないって……」

 

カズキ「道明寺さん……」

 

ワルター「くぅ……何という泣ける話……これを聞いたらもはやパワーストーンなど……って、そうは問屋が卸さんぞ!!」

 

ユリアンヌ「お涙頂戴の茶番劇はもう終わりかしら? こっちもそろそろ行かせてもらうわね!!」

 

瞬間、カスタムギアとアルマの増援が襲来した。

 

辰也「更に来やがったか!!」

 

凱「多勢に無勢か……だが、やるしかない!!」

 

~~~

宗美「薫さんっっ!!」

 

息を切らして、宗美が飛び込むように家に入る。

 

薫「……宗ちゃん……全部……バレちゃったわね」

 

宗美「……」

 

薫「宗ちゃん……私、不自由なんて感じなかったわ、本当に幸せでしたよ」

 

宗美が薫の手を握る。それに応えるかのように、薫も手を握り返す。

 

薫「だって……好きな人とずっと一緒にいれたんだもの……それでね、これ以上宗ちゃんを独り占めにしてたらバチが当たると思うの……だから、もう───宗ちゃんを自由にしてあげる」

 

宗美「……そんな……っ!!」

 

薫「こんなお婆ちゃんになるまで一緒にいてくれて、本当にありがとうね」

 

薫の握る手の力が、弱まっていく。

 

薫「これからは……宗ちゃんを本当に必要としてくれる人達のために……生きて……守って……あげて……」

 

宗美の両手に添えられていた手が離れる。

 

舞人「薫……さん……」

 

弁慶「……南無阿弥陀仏……」

 

宗美の目には先程とは比べ物にならないほどの涙が浮かび、溢れていた。

 

宗美「……違う……違うよ薫さん……」

 

微かに温もりのある薫の手を、強く握る宗美。

 

宗美「僕の方がキミの自由を奪っていたんだ……いや、薫さんだけじゃない……父さんやこの村の人達、みんなの自由を僕が奪っていたんだ……僕を守るために……僕が普通の人間と違うから……」

 

宗美の手に、大粒の雫が何度も滴り落ちる。

 

宗美「……でも……僕は……僕はこんなコト望んじゃいなかった!!

 

 

 

僕はただ……キミと一緒に、歳を取りたかっただけなんだ……」

 

 

 

……静寂が訪れる。城崎やつばきは静かに泣き、それ以外もただ黙っていた……。

 

竜馬「……行くぞ、てめえら。俺達にも、できる事があんだろ」

 

隼人「……ああ」

 

宗美「……」

 

~~~

浩一「クソッ! なかなか減らねえ!!」

 

シズナ「面倒やな、コイツら!!」

 

タクヤ達が家から出ると、浩一達が激しい戦いを繰り広げていた。

 

ダイ「タクヤ君、カズキ君! このままじゃ皆がやられちゃうよ!!」

 

カズキ「ああ……だから行け、タクヤ!!」

 

タクヤ「うん、分かってるよ!!」

 

その瞬間、タクヤが天に向かって青い宝石を掲げた。

 

ワルター「! あれは!!」

 

タクヤ「黄金の力守りし勇者よ!! 今こそ蘇り、我が前に現れ出でよ!!」

 

そして、パワーストーンが青く輝き───

 

 

 

───中からSL機関車が飛び出し、人型に変形した。

 

 

 

アドベンジャー「鋼鉄武装!! アドベンジャァァァーッ!!!」

 

 

 

───新たな黄金勇者の復活である。

 

ゴルドラン「おお、アドベンジャー!!」

 

カズキ「あれが2番目の勇者か!」

 

タクヤ「ちょ~かっちょいいじゃん!!」

 

ワルター「あのお子共……また勇者を! しかし、パワーストーン捜索隊を秘密裏に派遣していた筈だが……」

 

カズキ「ああ、あれ全部道明寺さんと青沼さんが倒しちゃったんだ」

 

ダイ「道明寺さんはともかく、青沼さんがあんなに活躍するなんて思わなかったよ」

 

ワルター「どしえぇぇぇーっ!?」

 

そして、ヴァーダント、エルドランロボ、ビルドエンジェル隊、勇者特急隊が現れた。

 

山下「森次さん!!」

 

森次「すまない、遅くなってしまった」

 

マイトガイン「遅延してしまったが、大丈夫だったか、舞人!!」

 

舞人「……ああ、大丈夫だ!」

 

バトルボンバー「舞人……」

 

ガードダイバー「何かがあったのですね……」

 

柳生「剣児、つばき、鏡! ビッグシューターを用意したぞ!!」

 

つばき「はい……」

 

鏡「……」

 

門子「何だいてめえら、辛気臭い面だなぁ!!」

 

剣児「……誰が辛気臭い面だ、牛姉ちゃん!! 行くぞ、つばき、鏡! 今は俺達のやるべき事をやるんだ!!」

 

つばき「……分かったよ、剣児!」

 

鏡「いつまでも引きずる訳にもいかん……か!」

 

仁「ゲットマシン持って来たぜ、ゲッターチームの兄ちゃん達!!」

 

竜馬「……おうよ、今行くぜ!!」

 

隼人「竜馬……」

 

弁慶「あいつも悲しんでいる……」 

 

飛鳥「竜馬さん達、泣いてるのか……?」

 

吼児「うん……多分だけど……」

 

竜馬「へっ、ガキがいっちょまえに人の心配すんじゃねえ! 隼人、弁慶! あいつらにぶちかましてやろうぜ!!」

 

隼人&弁慶「「……ああ!!」」

 

イエローガンバー「あれ、新しいマキナか?」

 

レッドガンバー「そう見えるけどな」

 

宗美「……」

 

ブルーガンバー「あの人、なんか悲しそう……」

 

宗美(薫さん……だったら、僕はあなたの遺言通りに……!)

 

拳一「ゴウザウラーの出力はバッチリだぜ!!」

 

五郎「僕達がついてる、だから安心して戦ってくれ!!」

 

教授「私達で拳一君達をサポートします!!思いっきりやって下さい!!」

 

しのぶ「ありがとう、教授!!」

 

辰也「……全員、揃ったみてえだな!!」

 

ジゼラ「ええ! ここから反撃開始です!!」

 

浩一「やってやるよ、悪党共!!」

 

そして、戦闘を再開した。

 

~戦闘再開~

宗美(初戦闘時)

宗美(僕を本当に必要としてくれる人達のために……分かりましたよ、薫さん)

宗美「今まで僕は薫さんの言う事を聞いてあげられなかった!! だから……せめて最期のお願いだけは、全身全霊で全うします!!」

 

 

宗美(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「別れの挨拶は済んだかしら、お爺ちゃん?」

 

宗美「ええ……後はあなた達を倒して、早瀬クン達と共に行くだけです!!」

 

 

アドベンジャー(初戦闘時)

ゴルドラン「久し振りだな、アドベンジャー!!」

 

アドベンジャー「その声はゴルドラン! 先に目覚めていたか!」

 

ゴルドラン「その通りだ、起きたばかりですまないが、主達の為に戦ってくれ!!」

 

アドベンジャー「元よりそのつもりだ! 行くぞ!!」

 

 

アドベンジャー(対ワルター)

ワルター「おのれ……またあのお子達に先を越されてしまったか!! ならば……迎え撃つのみ!!」

 

タクヤ「よ~し、アドベンジャー! あいつらコテンパンにやっつけろぉ!!」

 

アドベンジャー「了解! さて、行くぞ!!」

 

 

森次(初戦闘時)

森次(彼らとの取り引き、もとい情報提供もなかなか骨が折れるな……だが、これも大切なコトだ)

森次「では、早急に終わらせてもらうぞ」

 

 

森次(対ユリアンヌ)

ユリアンヌ「森次ちゃんじゃないの。社長さんがお世話になっているわねェ」

 

森次「話の意図がよく見えんな。何を言っている?」

 

ユリアンヌ「それはまた今度分かるわよ。ただ……今は敵同士ね!!」

 

森次「……そういうコトか。だが、今は遠慮なくやらせてもらう!!」

 

 

舞人(初戦闘時)

マイトガイン「舞人……あまり無理はするなよ」

 

舞人「大丈夫さ! 俺は嵐を呼ぶ勇者なんだ、こんな所で立ち止まっている訳にはいかない!!」

 

マイトガイン「……ああ、それでは行くぞ! 我々の力を奴らに思い知らせるんだ!!」

 

 

舞人(対ワルター)

ワルター「勇者特急隊……その力も黄金勇者に引けはとらん! 我々の力とさせてもらうぞ!!」

 

マイトガイン「生憎だが、悪の味方をするAIは搭載されてないのでな!!」

 

舞人「勇者特急隊を貴様らの手先になどさせない! ワルザック共和帝国よ、これ以上悪を突き通すのならば、容赦はしないぞ!!」 

 

ワルター「であれば、叩き潰すのみだ!!」

 

 

仁(初戦闘時)

仁「こんな朝っぱらから来やがって……こっちはまだ眠いんだぞ!!」

 

飛鳥「全くだね。だから早く蹴散らすぞ、仁!!」

 

吼児「戦いを終わらせて、ゆっくり寝よう!!」

 

仁「ああ! 眠いけど頑張るぞ、ライジンオー!!」

 

 

イエローガンバー(初戦闘時)

イエローガンバー「今日が休みだからいいものの、眠くて眠くてしょうがねえな~!!」

 

レッドガンバー「今日は野球をしたかったけど、お前達の相手をしてやるぞ!!」

 

ブルーガンバー「早く終われば寝れるし遊べるよ! だから頑張ろう!!」

 

イエローガンバー「よぅし! 行くぜ!!」

 

 

拳一(初戦闘時)

五郎「お前達には戦闘経験があるとはいえ、油断するなよ!!」

 

拳一「そんなん分かってるぜ!!」

 

しのぶ「そっちも、初めてで大変だろうけどサポートをお願い!!」

 

浩美「それじゃあ行くよ、拳一君!!」

 

拳一「おっしゃあ! ザウラーズ全員揃っての初陣、熱血最強で行くぜ!!」

 

 

エルドランロボ(対ワルター)

ワルター「前は気付かなかったが……貴様らはエルドランに託されたロボット!! その力、我々ワルザック共和帝国の物とさせてもらおう!!」

 

仁「やだね~、誰がお前なんかに渡すもんか!!」

 

イエローガンバー「これはエルドランが俺達に託したロボットだ! 悪の手先になんてさせない!!」

 

拳一「そうだそうだ! それでも奪おうってんなら、容赦しねえぞ!!」

 

ワルター「何と恐ろしいお子達だ! しかし、私は負けんぞぉ!!」

 

 

竜馬(初戦闘時)

竜馬「さてと……借りを返してやるぜ、悪党共!!」

 

弁慶「ああ、薫さんを弔うためにも、こいつらを叩き潰してやるぞ!!」

 

隼人「平穏な村に貴様らの存在は似合わん……消え去れ!!」

 

竜馬「おうよ! てめえら全員……ぶっ飛ばす!!」

 

 

剣児(初戦闘時)

剣児「薫のバアちゃん……あんたの優しさ、俺は忘れねえ……」

剣児「……さてと、あのバアちゃんがゆっくり眠るためにも、悪党共は俺が打ち砕いてやるぜ!!」

 

 

鏡(初戦闘時)

つばき「薫さん……本当にありがとうございました……!」

 

鏡「……弔いの邪魔をするなよ、悪党共! お前達を蹴散らし、この村に平穏無事を取り戻す!!」

 

 

柳生(初戦闘時)

身堂「あいつら……顔つきが変わったな……」

 

門子「そうか? でも、確かに前よりはまともになったよな!!」

 

柳生「面構えを変える何かがあったんだな……我々も負けてられん、行くぞ!!」

 

 

~~~

宗美「行かせてもらいます!!」

 

アドベンジャー「うおおおっ!!」

 

タリスマンやアドベンジャー、その他の攻撃で、アルマやカスタムギアを殲滅していく。

 

アドベンジャー「さて、とどめだ!!」

 

そう言うと、アドベンジャーの体から大量の火器が出現した。

 

アドベンジャー「ギャラクティカ……バスタァァァーッ!!!!」

 

それは、ワルターのカスタムギアへと放たれる。数多の銃撃を受け、カスタムギアは爆散した。

 

アドベンジャー「鋼鉄武装、アドベンジャァァァーッ!!!」

 

雪原をバックに、ポーズを決めるアドベンジャー。

 

ワルター「おのれ~……一度ならず二度までも!! 覚えておれぇ~!!」

 

捨て台詞を吐きながら、ワルターは撤退した。

 

浩一「さて、残すはあなただけですよ」

 

ラインバレルがツバキヒメに刀を向ける。

 

ユリアンヌ「はぁ~全く……面倒臭いわねェ……」

 

浩一「だったら、終わらせてやるよ!!」

 

ラインバレルが刀で斬りつける。しかし、ツバキヒメには当たらなかった。

 

浩一「……消えた!?」

 

辰也「上だ、浩一!!」

 

ラインバレルの前から消えたと思ったツバキヒメが、コックピットを狙い上から攻める。

 

ユリアンヌ「覚えておきなさい、アタシの『ツバキヒメ』は機動性だけならマキナさえも凌駕しているのよ」

 

両手に装備したチェーンソーでコックピットを無理矢理斬り裂こうとする───

 

 

 

 

 

───が、それは奇襲して来たタリスマンによって防がれた。

そして、槍による攻撃を顔面に食らうツバキヒメ。

 

ユリアンヌ「チッ、同時にマキナ2体の相手は分が悪すぎるわね……脱出出来る者は直ちに実行!! 撤退するわよ!!」

 

ツバキヒメや倒されたマキナからコックピットが飛び出し、空へ消えていく。

 

浩一「ふぅ~、助かったぁ~」

 

目の前の危機が去り、安堵する浩一。それを横目に、ぽつりと宗美が口を開いた。

 

宗美「……僕にも……」

 

浩一「!」

 

宗美「……こんな僕にも本当に……『何か』が守れるんでしょうか?」

 

そう話す宗美の目からは、涙が流れていた。

 

浩一「……何言ってるんですか、宗美さん。今、オレを守ってくれたじゃないですか」

 

優しく諭すような浩一の言葉に、宗美はまた静かに涙を流す。

 

辰也「……で、もう敵は来ねえみたいだな」

 

森次「ああ。では我々も落ち着くとしよう」

 

森次の指示でそれぞれが機体から降りた。

 

~~~

タクヤ「いや~、アドベンジャーはかっちょよかったぜ!!」

 

カズキ「悪太のカスタムギアをぶっ飛ばすなんてな」

 

ダイ「新しい勇者の誕生だね!」

 

アドベンジャー「ありがとう、私もこれからは主達の為に戦うとしよう」

 

ドラン「ああ、お前のパワーがあれば百人力だ。頼むぞ、アドベンジャー」

 

そう言うと、ドランとアドベンジャーが握手をする……が体格差があるのでドランが引っ張られるような形になった。

 

ガイン「あまり無理するなよ、ドラン」

 

凱「こう見ると親子に見えるな、ドランとアドベンジャーは」

 

ドラン「我々にそのような差はない。皆同じ志を持つ仲間だ」

 

凱「フッ、そうだな」

 

その近くでは、春風小学校6年2組の面々を新たに加えたザウラーズ達が話していた。

 

舞人「しかし、ゴウザウラーも強くなったな」

 

しのぶ「6年2組の皆が一緒に戦ってくれたので、前よりも強くなれました!」

 

教授「ゴウザウラーを内部からサポートする役は、我々が引き受けます」

 

五郎「皆さんの迷惑にならないよう、ザウラーズ一同で頑張らせていただきます!!」

 

仁「まぁ、学年は下でもエルドランに選ばれた小学生としては俺達が先輩だから、何でも聞いてくれたまえ」

 

拳一「あんま調子に乗るなよ、仁!!」

 

お互い軽く喧嘩をする仁と拳一。

 

飛鳥「全く、仁は……」

 

金太「楽しそうだな、拳一のやつ」

 

洋二「なんかとんでもない事に巻き込まれたような気がするけど……」

 

エリー「とにかく、頑張りましょう!!」

 

そしてその近くでは……

 

辰也「そうか……結局薫さんは……」

 

薫の訃報を聞き、悲しくなる辰也達。

 

つばき「ええ……でも、最後はとても幸せそうだったわ」

 

ジゼラ「あの、宗美さん……私達で薫さんのお葬式を開いてもいいですか? 少しの間ですが、お世話になりましたし……」

 

シズナ「確かにいい考えやな。しかもこっちにはお坊さんもおるし」

 

弁慶「お、おお……」

 

ちら……と目を向けられ、半ば困惑する弁慶。

 

宗美「いえ、お気遣いはありがたいのですが、我々だけで開きたいと思います。ですが、皆さんの気持ちだけで薫さんも喜びますよ」

 

鏡「確かに、俺達がいるとかえって大変だろうしな」

 

道明寺「分かりました。それじゃ俺達はここで帰りますね」

 

青沼「僕はまだやるコトがあるから2~3日したら宗美さんを連れて帰るよ」 

 

山下「フラフラしてないで早く帰って来て下さいね」

 

青沼「はいはい」

 

浩一「……そういやさぁ……宗美さんが歳取らない理由って分かったの?」

 

それを聞いてぎくりとする城崎。

 

城崎「そ、そうですね! 帰ったらそれも含めて宗美さんに聞きましょう!」

 

ジゼラ「城崎さん、どうしました?」

 

つばき「な、何でもないわよ! ね、絵美!!」

 

門子「お前ら変だぞ?」

 

身堂「あまり突っ込んでやるな、早乙女」

 

浩一「……まあいいや。それにしても今回は道明寺が役に立つなんてな」

 

少し不審がるも、深追いしない浩一。

 

青沼「そうだね。本当に感謝するよ」

 

道明寺「次郎さんが見つけて来た宗美さんの親父さんの日記があったからですよ。ていうかアレ、どこで見つけたんです?」

 

青沼「あ~あれね……あの洞窟内にあったお父さんの墓の中」

 

浩一「ええぇーっっ!?」

 

墓荒らしのような行動……というか墓荒らしをした青沼に、驚きと侮蔑の念を向ける浩一。

 

青沼「いや荒らしてないよ……その、ちょっと掘ったら見つかったんだよ」

 

道明寺「……世間ではそれを荒らすっていうんですよ、次郎さん」

 

カズキ「でも、それがなかったらアドベンジャーは見つからなかったからなぁ……」

 

皮肉な話だ、と呟くカズキ。

 

森次「……では、我々はそろそろ去ろう。青沼さん、後は頼みました」

 

アドベンジャー「帰るのならば、私が引率するぞ!」

 

そう言い、列車に変形するアドベンジャー。

 

舞人「宗美さん、ありがとうございました」

 

宗美「こちらこそありがとうございました。しばらくしてからそちらへ行くので、その時はよろしくお願いします」

 

そして、全員を乗せたアドベンジャーは、雪原を駆けていった……。




中断メッセージ(宗美さんとゲーム)
宗美「はい、今日のゲームはこれでおしまい。ありがとうございました……えっ、どうしてそんなにスパロボが上手なのかって?」
宗美「……それはもちろん、タリスマンが教えてくれたからですよ。色々物知りですよね、タリスマンは」
宗美「そのうち、僕と声が似ていて、なおかつゲームが上手い人と会えるかも知れません……その時が楽しみですね!」
宗美「……おっと、話しすぎました。皆さんとまた会う日を楽しみにしてますよ!」

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