第1巻 第336話 アジトニ
2017年11月10日(金) 18:00
桐崎邸(きりさきてい)
楽 「え?
俺たちのアジト?」
楽はその日、
大学の講義が終わった後に、
再びアーデルトに呼び出されていた。
アーデルト 「ああ。
君たちで、若手星神のチームを組む事になっただろう?
だったらもちろん、アジトも必要になってくる。」
楽 「確かにこの前、
アジトを手配するっては言ってましたけど………。」
千棘 「でも、
そんなところどこに作るの?
パパ。」
アーデルト 「ああ、それなんだけどね。
凡矢理大学の裏山のあのペンションを使おうと思うんだ。」
千棘 「え?
あのペンションを?」
楽 「え?
ペンションって、何の事だ?」
鶫 「ああ、それなら私も聞いた事があります。」
蒼也 「楽、
お前が通っている凡矢理大学の裏山に、
ビーハイブが所有しているペンションがあるんだ。」
楽 「え?
あの大学祭のサイクリング大会の会場になった裏山にか?」
アーデルト 「ああ。
あそこには、僕たちが日本に来た時、
あそこらへんを拠点にした任務があった時に、
街全体を見渡せるのと、
山奥だから場所が分かりづらいのが良くて、
あそこの土地を少しだけ買って、
ペンションを建てておいたんだ。
結局、使われないままだから、
君たちにあげるよ。」
楽 「そうなんですか………。
ありがとうございます、親父さん!」
アーデルト 「それで、
随分と埃(ほこり)も被ってて汚れているから、
明日と明後日は丁度(ちょうど)、土日だし、
君たち、掃除と整理をして、
君達のアジトに改装するといいよ。」
楽 「分かりました!
千棘、鶫、蒼也、
頑張ろうぜ!」
千棘・鶫・蒼也 「おーー!」
第1巻 第336話 完
第1巻 第337話 ウラヤマ
2017年11月11日(土) 9:00
凡矢理大学裏山、正式名称:凡矢理山(ぼんやりやま)
千棘 「へーぇ。
改めて登ってみると、中々大きな山ね。」
楽、千棘、鶫、蒼也の4人は、
昨日アーデルトに言われた通りに、
楽の通っている凡矢理大学の裏山、
凡矢理山に来ていた。
鶫 「お嬢、大丈夫ですか?
お水をどうぞ。」
スッ
鶫は、千棘に水の入ったペットボトルを差し出した。
千棘 「ありがとう、つぐみ。」
スッ
ゴクゴク………
千棘は、
鶫からペットボトルを受け取って飲んだ。
鶫 「やはりお嬢に山登りなど………。
もし、足が太くでもなられましたら………。」
千棘 「そう?
私、このくらいの山、全然へっちゃらだけど………。」
楽 (そりゃそうだろ………。
千棘のやつ、普段からもっと激しい運動してるだろ………。)
蒼也 「それにしても、
俺もこの山には久々に来たが、
やはり中々、雰囲気があるな。」
そこ、凡矢理山は、
凡矢理大学の裏側にそびえ立つ山で、
頂上からは凡矢理市内ほぼ全域が見渡せる。
しかし、
山道の通路が複雑で観光地としてはあまり知られていない為、頂上への道は分かりづらく、
日中でも、大きな木に遮られてやや暗い場所や、
鳥や獣の鳴き声も聞こえる。
ザワザワ………
カーカー………
千棘 「なんだか………。
山を登るのは別に大丈夫だけど、
流石(さすが)にこの山、雰囲気あるわね………。」
蒼也 「お嬢、
こういう人があまり入らない山だからこそ、
ボスはアジトの1つとしてこの山のペンションを選ばれたのです。
それに、山のように高い場所は、
星神のアジトとしてはうってつけです。
高いから星の光が良く集まりますからね。」
千棘 「そ、そうなんだ………。」
カタカタ………
千棘は、
少し震え出していた。
おそらくは、山を上の方に登るたびに暗さが増して行き、暗所恐怖症の彼女にはキツいからだ。
楽 「千棘、大丈夫か?」
千棘 「うん。
このくらい大丈夫だよ………。
暗い所はそりゃ苦手だけど、
そんな事であんたや鶫や蒼也君に、
あんまり迷惑かけたくないもの………。」
楽 「そ、そうか………。」
ガサッ
千棘 「ひいっ!?」
ザザッ
ウサギ 「キーー、キーー………。」
茂みから出て来たのは、
ただのウサギだった。
千棘 「何だぁ、ウサギかぁ………。」
楽 「……………。」
楽 「千棘………。」
千棘 「え?
なーに………わわっ!?」
グイッ
ガジッ
楽は、千棘をおんぶした。
千棘 「ちょっと、楽!?」
鶫 「お、おい!
一条楽?」
蒼也 「……………。」
楽 「やっぱり、怖がってるお前を見てると、
ほっとけねーんだよ。」
千棘 「い、いいわよ!
このくらいの暗さでおんぶなんてして貰わなくても!
それにあんたは、またこんな人前で私をおんぶなんてして………。」
楽 「お前が頑張るのを見るのも好きだけど、
やっぱり俺は、お前が怖がってるのをほっとけねーんだよ。
その………彼氏としてな。」
千棘 「楽……………。」
楽 「別にいいよな、鶫、蒼也。
お前らの前で千棘をおんぶしても。」
蒼也 「俺は別に………。」
鶫 「私も。
お嬢、お気になさらずに楽しんで下さい。」
千棘 「もう、分かったわよ………。」
千棘 (楽の背中、あったかいな………。)
第1巻 第337話 完