ジオウトリニティの誕生を祝って前編・中編・後編に分ける事にしましたのでかなり長くなりましたがやっとでけた!
今回は割とライダーネタ含めて結構詰め込みます。
T.M. Revolution、abingdon boys schoolのメドレー聞きながら書きあげました(主にBASARAな曲を)。
「なあ緑谷。」
「ん、どしたの轟君?」
「夏祭りが一週間やそこらで始まるって知ってるか?」
「ああ、うん。海浜公園でやるんだよね?チラシとか見たよ、ド派手な奴。」強面なフォースカインドさんが切島と地道にホッチキス片手に貼っていたのが中々シュールだった為、かなり鮮明に印象に残っている。「それがどうかしたの?」
「姉さんがかき氷のスタンドを出すから俺も来いって言われてな。右の出力目当てなんだろうが、裏方にいてくれりゃ後は何とかするって言われちまったから断れねえし。」
「轟君て、人ごみあんまり好きじゃないもんね。初詣で神社のお参りとか嫌がりそう。」
「寝正月はした事はあるがな。二回だけだが。それで・・・・・・多少急なのは承知の上だが、手ぇ貸してくれないか?売り上げの七割は分割してNPOの各組織に寄付する事になるが残り三割は山分けだからタダ働きさせようって訳じゃねえ。俺が行く分コスパ上がっちまって大した金額にはならねえけど。」
「まあ千円だろうと百円だろうとお金はお金だからね。」特に金にがめついと言う訳ではないが、自分の裁量で自由にしていいお金をある程度持っている事は得しかない。若干動機が不純で意地汚いと自分でも思うが、多少贅沢なデートをする為の費用も必要なのだ。その為ならばプライド程度は喜んで捨てる。「いいよ。頑張ろう。」
「役割分担はおいおい連絡する。」出久が指摘した通り人混みが苦手なのはそうだが、感情が顔に出にくいと言うのもある。体育祭を視聴していた人間からすればクールでカッコいいと言う浅薄極まりない評価を貰うが、姉にも学友に不愛想に見えると言うあけすけなコメントに実際は少なからず心を痛めているのだ。
「分かった。でも、轟君って兄弟いるんだ。知らなかったな。」
「見るか?写真あるから。」
「あ、良いの?」
「写真ぐらい構わねえよ。ほら。」
スマートフォンに保存された写真を幾つか開いて見せた(エンデヴァーと一緒に写っている物は何事も無かったかのようにスルーしたが)。
「お姉さんて、この眼鏡の人?」
「ああ。小学校で教師やってる。贔屓目抜きでも腕が良いからかなり人気らしい。」
「へー、やっぱり理知的なビジュアルが似てるね。お母さんだけ昔と全然変わってないみたいだけど。こうして見るとどちらかと言えばお母さん似なんだね、兄弟全員。」
「やっぱりそう思うか?」
「う、うん・・・・・・あくまでビジュアル的な比率という極めて主観的な意見なんだけどね。」詰め寄られて食い気味に尋ねられ、出久は小刻みに何度も首肯した。
「そうか、お母さん似か。そうか。」
「それがどうかしたの?」
「いや、別に。そう見えるなら、それでいい。」
どこか満足そうな顔に出久は思わず笑ってしまった。「はい、王手!」
「お。」脚付き将棋盤の盤面を見下ろし、逃げ道を探した。しかし、どこにも無い。今や平手で指せる出久は限りなく自分と五分に近い実力に手をかけた事を思い知らされた。悔しい半面、嬉しさもある。「・・・・・・もう一局やるぞ。」
「流石は末っ子、負けず嫌いだね。僕の方が負け越してるのに。」
「うるせえ。」そんな初めて出来た友達と呼べる男との軽口の応酬の心地よさに、轟は小さく笑いながら駒を並べ直した。
夏祭り。普段なら特に深く考えずに練り歩いて一時間もしないうちに帰っている。屋台で出す料理は美味いがやはり多少値段が張る。浴衣などの和服は初詣やら七五三の時に着た経験はあるし今でも着なくはないが、耳郎はあまり好きではなかった。理由は二つある。着付けなどに他人の手を借りる必要があるのと、単純に動きにくいのだ。それに下駄の鼻緒は擦れ過ぎると地味に痛い。
服選びに於いてファッションは勿論、
――かと言って・・・・・・普段着で行くのも味気無いし。いっその事男装スタイルで甚平着て行こうかな?ストローハットはおっさんから借りれば済むし、履く物もスポーツサンダルで敢えて外していくスタイルもあるわけだし。
別にパジェントに出る訳ではないし別段目立ちたいわけでもない。出久の目に留まりさえすればそれでいいのだ。それに典型的な『女っぽさ』が女を決める訳ではない。でなければ宝塚劇団の男装麗人が根強く人気を誇る事などなかったのだから。
しかし模様や色はどうしたものか?スマートフォンの液晶に映し出された通販サイトのページと睨み合いながら数ある柄や折り込まれた模様を吟味していく。夏祭りに行くのだから派手な事は良い事だが、何事にも限度という物がある。悪目立ちすればただのイタイ女でしかないし、逆に地味過ぎれば和装パジャマを着たまま祭りに来たのだろうかと思われる可能性だってある。
下へ下へとスクロールしていき、枝垂桜、紅薔薇、よろけ縞、麻の葉など、模様の候補を幾つかスクリーンショットで保存していく。生地の色は藍色や空色、黒などの落ち着いた物に限定している。
「ホント、マジでどうしよう・・・・・・?未だに好みが分からんて・・・・・・ウチ彼女失格じゃんっ!」
元々彼は質素でオールマイトグッズ以外の物に関しては障子程ではないがかなり物欲が低い。服装に関しても多少気を使う様に矯正する事は成功したが、安くて着られるならば構わないと大概無頓着な所はまだある。しかしデートの時になると途端に更に向こうへリミットブレイク、超変身としか形容出来ない程に見た目も性格も様変わりする。今回もそれを多少なりとも期待しているのだ。
かき氷のスタンドでしばらく手伝うと言っていたが、オーソドックスに甚平で来るのか?浴衣か?それとも斜め上の意外性を狙って作務衣か?
毎度ギャップ萌えを体験出来る事に関しては感謝しているが、今はそれを激しく恨んでいる。おかげで彼の好みの詳細が行方不明だ。しかし時間を押している状況が状況である為、あまり長考はすべきではない。当日になっても注文の品が届いていないとあっては笑い話にもならない。
女子に自分の彼氏の好みを聞いた所で意味は無いし、かといって男子に聞いた所でからかわれるだけで時間の無駄に終わるだろう。
「こういう運任せで選ぶって言うのは好きじゃないんだけど・・・・・・」
立ち上がり、ペン立てに使っているマグカップに入った鉛筆を取り出した。中学以来使っていないサイコロ鉛筆だ。候補として絞り込んだものが五つある。六つ目はワイルドカードで別の案にすればいい。
「No fear, No pain・・・・・・」
相手は多少なりとも勝手知ったる彼氏なのだ。恐れる事は何もない。筈だ。
「えいっ。」回転をかけた鉛筆が、耳郎の手を離れた。
「あれ?轟、もう出んのか?」法被に捩じり鉢巻きと既にやる気満々な切島が寮の玄関口で座っている作務衣姿の轟を見て尋ねた。
「こっちは準備があるからな。姉さんに早めに出る様に言われてんだ。」
「轟君、お待たせ。ど、どうかな?肩の辺りが物凄く楽でちょっと違和感あるけど。麻の生地で出来てるからか、滅茶苦茶スースーするし。」灰色の甚平姿の出久が小走りで玄関まで移動し、落ち着かなそうに肩を回していく。
「若干デカいが問題ねえ。夏兄の古着しかなくて悪ィな。生地が傷んでねえ奴、それしか残ってなかったんだ。」
「貸して欲しいって言ったのは僕なんだから選り好みはしないよ。」
「おお、気にしなくても全然イケてんぜ緑谷、全然!シンプルな紺色と背中の雪の結晶の刺繍、男らしいぜ!で、その傘どしたんだ?」切島は出久が肩に担いだ番傘を顎で示して尋ねる。
「ああ、予報で雨が降るかもって出てたから、轟君のお姉さん――冬美さんが持って行きなさいって。降らないなら降らないに越した事は無いけど夏祭りにビニール傘じゃ風情が無いから。」
「へ~・・・・・流石部屋を和室にリフォームした奴の姉貴だ。なあ、緑谷。一回傘開いて轟の隣に立ってくんねえか?一回だけ。こう、若干斜め向いて。」
「室内でやってもあんまり意味無いと思うけど、いいよ。」意外に慣れた手つきで緋色の番傘を開いた。若干首を傾け、切島の方へ目配せする。「こんな感じ、かな?」
「うぉ~~~・・・・・・・すっげえ絵になるな。どこの二代目組頭と補佐官だよ?」
「失礼な!僕そんな怖い顔してないから!髪型変えただけで普通そこまで言う!?」それに切島もフォースカインドを親分とするなら彼は若衆と言うか、舎弟だろう。あちらの方がもっとその形容がしっくり来る。
「そうだぞ。緑谷は補佐官じゃねえ。と言うより、アレだ、仲が良い別の組の二代目だ。」
「そっち!?」
「誉められてんだよ、良いだろうが別に。」ぶつくさ文句を言う切島を尻目に二人は寮を出た。しばらくは下駄がアスファルトに当たる小気味のいいカランコロンと言う音が夜の道に響き渡る。
「なあ緑谷。」
「ん?」
「差す必要あるのか、ソレ?」雨も降っていないのに傘を開きっぱなしにした出久を轟は不思議そうに見た。
「あ、これ?これは気分の問題。」
「気分、か。」
「うん。轟君こそ浴衣じゃなくて作務衣で良いの?お祭りが終わったら即修行にでも行きそうな感じだけど。」
「しねえ、帰って寝るだけだ。」
「そんな勿体無い・・・・・・」
「親父も他のスタンド手伝いに来いって姉さんに言われてんだよ。まかり間違って出くわしたらどうするつもりだ・・・・・・・」
――なるほど、エンデヴァーもか。だから行きたくないのか・・・・・・で、士気を上げる為に僕を誘ったと。
不器用なりに何とか関係修復に漕ぎ着けようとしているのだろうが、感情の距離感を掴むのが壊滅的と言える程に下手糞なのは親が親なら子もまた子なのだなと出久は思わされた。まだ道程は長く、厳しい。
海浜公園での設置は既に七割近く進んでいるらしく、中央には和太鼓を幾つも載せた櫓と連なった提灯が幾つも見える。屋台も焼きそば、カステラなどの食べ物から金魚すくいなどの的屋も揃っている。波打ち際で線香花火を楽しんでいる子供たちの引率はマニュアルが務めており、浜辺ではセルキーとギャングオルカが締めに見せる打ち上げ花火をモーターボートに詰め込む算段をしていた。
「あ、来た来た!」桔梗柄の浴衣を着たショートヘアーの女性がパタパタと手を振って駆け寄った。轟と違って髪は白の度合いが高く、赤い部分少ししか無いが、顔の形などは彼によく似ている。「おー、緑谷君も甚平似合うわね。その傘も。焦凍と一緒にやくざ映画にでも出てそう。」
「言うなよ、さっき出る前にそれ言われてんだ。」
しゃがみこんでオールマイトの似顔絵を指で描き始めた。それも無駄に上手い。彼がいる一か所だけが真冬に変わった様に熱が消えて行く。「はぁ~、どーせ僕なんか・・・・・・・ねえ、笑ってよ轟君。彼女が出来て髪型と性格が少し変わったぐらいでこの言われようの僕をさあ。笑ってよ、一思いにさあ。ねえ。鼻でさあ。」
「見ろ、緑谷もへこんで不貞腐れちまっただろ。結構デリケートなんだからディスるなよ。」
「ごめんなさい!そこまで気にしてるとは思わなくて…‥‥でも二人ともカッコいいから、一応褒めてるんだよ?」
「一応でも方向性が違ぇだろ。で、俺はとりあえず氷作ればいいのか?」
「うん、このカップの形の奴ね。出来るだけ均等にヨロシク。緑谷君は機械の方担当ね。必要な事はこれにメモしてあるから、頑張りましょう。」
「はい・・・・・・」
氷かき器は全部で四つあり、シロップはオレンジ、レモン、メロン、チェリー、ピーチにミゾレの六種類ある。
――これは・・・・・・僕より障子君の方が適任なんじゃ?
彼ならほぼ無尽蔵に腕を複製してペースに淀み無く作業を続けられるだろう。しかしやると言ってしまって会場にも到着している以上、もう後には退けない。祭りが始まるまで残り一時間弱だ。
「にしても・・・・・・」
「ああ・・・・・・注文の量が半端ねえな。」左の炎を『個性』伸ばしの合宿である程度使いこなせるようになったおかげで体に霜を下ろさずに氷を作り出せるようになってはいるが、それを維持する多大な集中力と夏祭りの賑わいはかなり相性が悪い。
普通の祭りと違い、プロヒーローやその卵達が厳しい監督、指導のもとで『個性』を使ってコスト削減に努めている為、安い値段と人気にどこもかしこも八岐大蛇すら凌駕する長蛇の列が出来上がっており、一向に短くなる気配が無い。
出久は長い間筋トレで培った集中力とスタミナが削られて行くのが分かる。指先も大分感覚が無くなってきた。かき氷を作り、運び、戻ってはまた作を繰り返す立ち仕事は、楽しさこそあれど正に試練だった。
「これは・・・・・・割ときついね。」
「もう少しだけ我慢して。十分もすれば応援が来るはずだから。」
「応援?」
「夏とお母さん。」
「な・・・・・・お母さんが、来るのか?てか来て良いのか?!病院とかの許可は・・・・・・?!」姉の言葉に動揺が走り、冷熱のバランスが途端に崩れ、氷塊がどんどん溶けて水と化していく。
「轟君のお母さんが・・・・・!?って轟君!?溶けてる溶けてる!氷溶けてるから!」
「っ、悪い。すぐ直す。」再び均衡を保たせようと意識を氷に向け直し、溶けた氷が元通りの均等な氷塊に戻って行く。
「病院からちゃんと許可は貰ってるから大丈夫よ。このお祭りも一夜限りだし、それぐらいは許してくれるわ。門限はあるからずっとはいられないけどね。お父さんと顔合わせちゃったりしたらアレだけど、そこら辺は私が上手く誘導するから。二人共もう少ししたら交代して休憩に入って。」
「ありがとうございます。」
そして九分三十八秒が経過したところ、轟姉弟の母と思しき空色の浴衣を着た白髪の女性がどことなく髪型が若かりし頃のエンデヴァーを思わせる(ただし白髪)轟と同じく作務衣姿の男と一緒にスタンドの裏手に回って来た。
「夏兄、お母さん・・・・・・」
「冬美さん、僕ちょっとお腹空いたんでお店回ってきますね。」答えを聞かずに出久は席を外した。
『ワッセイワッセイ!サァッ!サァッ!サァッ!ワッセイワッセイ!ソレソレソレソレ!』
いつの間にか盆踊りが始まっており、えらく威勢のいい掛け声が聞こえる。空にはどこから集めたのか細やかな花びらが辺り一面に舞っていた。どこかに士傑高校の夜嵐イナサがいるのだろうか。
「・・・・・思わず持ってきちゃったな、
とりあえず手っ取り早く脳のガソリンであるブドウ糖を手っ取り早く補給出来る、味が濃い物を食べたい。
「緑谷サン、コッチにカムヒアプリーズ!」
「この独特な訛りの喋り方・・・・・・角取さん?!」
振り返ると、見覚えのある一対の角を生やした普段着の上に浅葱色のだんだら模様の法被を着た角取ポニーが手を振っていた。
「はい、イッツミー!ジャパニーズパラソル、トテーモ綺麗です。それと私の事はフランクにポニーと呼ぶ、オッケーデス。アンダースタン?」
「・・・・・・善処します。あ、ホットドッグ二つ貰えないかな?お腹空いちゃってさ。」無言で差し出されたホットドッグはシンプルながら肉のジューシーな旨味がケチャップとマスタードに絡んでくる。パンも温かい。「あ“-・・・・・生き返るぅ~~。」普段は食べないジャンクフードの美味さが染み渡る。
「緑谷サン、私はトフィー・アップルが食べタイです!」
「トフィー・アップル・・・・・あ、林檎飴の事ね。それならたしか砂藤君がカステラ作ってる隣の屋台にまだ――」
「トフィー・アップルが食べタイです!」
「何故二度言う・・・・・・ホワイ トゥワイス?」
「トフィー・アップルが――」
「三回目!?分かりました、行きます。皆まで言わなくていいですよ。」
――いいよ?いいですよ、別に?売上貢献イコール募金貢献ですからね。奉仕活動即ちヒーロー活動の一環ですからね。世の為人の為ですからね。
「二種類あったけど、どっちが良い?」
「両方お願いシマス、プリーズ!買ってくれた分はキッチリとリターンします。」意外に食いしん坊な様だ。しかしこのスタンドには見たところ彼女一人しかいない。離れる訳にも行かないのだろう。林檎飴二つで済むなら安い物だ。
「んじゃ行ってきまーす。」
「指さしサツジン超特急でお願いシマスです!帰って来ないとバルスします!」
「『確認』ね、『確認』!サツジン、SATSUGAIは駄目、絶対!」全く一体どこからあの言い回しが出て来るのだろうか、出久は甚だ疑問だった。「てかバルスするって・・・・・あれか、滅ぼすって事なの?」
幸いと言うべきか、林檎飴を売っているスタンドの列はそう長くはなく、無事に青林檎と赤林檎の飴を一本ずつ買う事が出来た。
「・・・・・・何で相澤先生がこちらに?」
「仕事だ。」
「いや、でも先生が法被なんて――」
「仕事だ。」それ以上は、俺に質問するなと眼力が語っている。
「あ、ハイ。」大方リカバリーガール辺りに童心への理解を深める為にもやる様に言われて断り切れなかったのだろう。合理性に関しては意志堅固な彼も、純真無垢な子供にはやはり勝てないらしい。服装は代わり映えのしない黒いヒーロースーツの上下に捕縛布とゴーグル、更にその上に蛍光イエローの法被を羽織っている。デザインからしてプレゼントマイク辺りに着せられたのが容易に想像できる。ちぐはぐさは否めないが、恐らく最大限譲歩した結果なのだろう。という事は、自動的にもう一人いる事が推察できる。
「デクさん!久しぶりです!」
「やっぱりいたね、壊理ちゃん・・・・・」花火模様の浴衣を着て、袖は邪魔にならない様にたすきで結んである。角もギンガムチェックの三角巾で隠しているが、何一つ彼女の可愛いらしさを損なってはいない。そう言えば彼女も林檎が好きだったのを出久は思い出した。たしか、雄英ビッグ3のミリオにも文化祭の時に林檎飴を強請っていた。「売り上げ、どう?」
「そこそこ大丈夫です!」
「そっか。頑張って!」
「はい!」むふーと笑いながら手を振り、見送ってくれた。
「お待たせしました。林檎飴二つ。」
「アリガトウございまーす!ところで、一つギモンです。何故グリーンカラーなのに青林檎と言うのデスか?信号もここでは青信号、アメリカでは見た色のまま、グリーンライト言いマス。緑と青、ゼンゼン違います。ホワイ、ジャパニーズピーポー?!」
「角取さんも一応日系だからね?まあ確かにそれは分かるけど。ほうれん草とか緑色の野菜は全部青菜って呼ばれてるし、その名残があるんじゃないかな?詳しい事は言語学者に聞いて下さい。じゃあ、僕は他のところ回ってくるから。また後で。」
「イッテラッシャーイ!」
「さてと・・・・・・響香さんを探さないと。」甚平のポケットを探り、しまったと額をぴしゃりと打った。気を利かせる事にばかり気を取られてスマートフォンをかき氷のスタンドにタオルなどと一緒に小さなカバンに置きっぱなしにしたまま出て来てしまったのだ。誰かに獲られる可能性は無いが、今からまたあそこに戻るのはこの人だかりでは難しい。ワン・フォー・オールを使えば一気に飛び越えられるが、それも法律上出来ない。「参ったなぁ・・・・・・絶対コレ怒ってるだろうなあ。」
「よ~~く分かってんじゃん。流石はウチの彼氏。」
――ガッデムシット・・・・・・絶賛絶滅タイムがスタートアップしたよ!僕の命がタイムブレイク待ったなしだよ!十秒もかかんないよ!
聞き覚えのある、怒気が滲んだ女の子の声と共に出久はゆっくり傘を下ろした。