マヨナカテレビを巡る事件が終わり、霧も消えて平和になった八十稲羽。
自称特別捜査隊もリーダーの転校と共に自然と解散になり、残ったメンバーもそれぞれ平穏な日々を送っていたのだが。
陽介とクマは、何故か山中で落ち武者達に追われていた。
落ち武者といっても、モロキンが言うような都会からの転校生なんていう平和なものでは断じてない。言葉通り、どこかの戦場から落ち延びてきたようなちょっとボロい鎧の武者である。
「ああもう、クマ吉、お前のせいだぞ!」
「クマのせいじゃないクマ! ヨースケがオッチョコチョイなのがいけないクマ!」
「オレのせいかよ!? だいたい、テレビの中は平和になったんじゃなかったのか?」
そう、この落ち武者という非常識な存在のいる場所。それはテレビの中だった。何故二人(一人と一匹?)がテレビの中にいるかというと。
高校三年になり、受験勉強でなかなか遊び相手になってくれなくなった陽介に業を煮やしたクマが「おニューのゲームで遊ぶクマ!」と勉強中の陽介を無理矢理ひっぱり、バランスを崩した陽介とクマがそろってテレビに突っ込んでしまった、という割と馬鹿馬鹿しい理由である。
普通ならば揃って頭にたんこぶをつくるくらいですんだのだろうが、幸か不幸か、陽介は例の事件以来テレビの中に入れる体質になっていたし、クマに至っては元々がテレビの中の住人である。そのままテレビの中の世界へと落下していったのだった。
「テレビの中はとっても平和になってるはずクマ! 落ち武者が住み着いたなんて知らんクマ!」
きゅむきゅむと着ぐるみ姿で走りながらクマが言う。役にたたねえ、と心で呟きながら後ろを軽く振り返る。落ち武者が5人ほど、槍だの刀だのを持って追ってきている。山道だから、追ってくる速度が遅いのが救いだが、陽介たちにしても山道なんて歩き慣れているわけではない。このままならば、いつか追いつかれてしまうだろう。
「まてよ……テレビの中、ってことは……」
陽介は自分の右手を見つめる。そして、確信と共に立ち止まり、身体を反転させた。
「ヨースケ!?」
それを見たクマが慌てた声をあげる。陽介は慌てた様子もなく、脳裏に青いカードを思い浮かべる。
以前テレビの中で持ち歩いていた苦無もレンチもないので、相棒にならい手の中に浮かび上がったカードを握りつぶす。
「ペルソナ!」
青い光の破片となって砕け散るカード。それと同時に、陽介のペルソナ<スサノオ>が現れる。
「マハガルダイン!」
スサノオが構えると同時に、渦巻く疾風が落ち武者達を飲み込んだ。
「ヨースケ、容赦ないクマ……」
逆巻く風に吹き飛ばされた落ち武者達は煙のように霧散して消えた。
「あいつら、シャドウだったのか……? 今まで見たことねータイプだったけどよ」
「そうみたいクマね。落ち武者がウロウロしてるなんてテレビの中もブッソウになったクマ」
「まったくだ……こんな山道なんて今までテレビの中で見たことなかったから違うのかと思ったけどそうでもねえみたいだな」
「これなら、いつもの広場まで戻れば帰れるクマ!」
「……で、その広場はどっちになるんだ?」
「あっちクマ! たぶん!」
「適当かよ! まぁ、落ちてからも走り回ったからなあ……」
どうしたものかと考え込む陽介。
「クマっ!」
「どうしたよ、いきなり大声あげて」
「クマクマっ!」
「なに騒いでんだって」
「だーかーらー、クマだクマ!」
「は?」
そう何度も言われ、振り向いたそこには。
陽介の家に居候している着ぐるみのクマではなく、野生動物のクマがいた。
「クマっ!?」
陽介は驚いて叫んだ。なにせそのクマ、二本足で立ち上がっていて、陽介よりも大きかったのだ。
「たたたたた食べられちゃうクマっ!? ク、クマにあったときは死んだふりクマ!」
「ばかクマっ、それよりペルソナを……ああ、そっちのクマじゃなくてこっちの」
陽介も混乱している。
「どうかなさいましたか?」
そこへ涼やかな女性の声が響いた。
「クマじゃないクマも喋るクマ!」
「いや、わかりにきーから!」
そんなことを言い合っていると、動物のクマの後ろに人の姿が見えた。クマが喋ったのではなく、喋ったのは動物のクマの後ろにいた女性らしい。
「五郎丸は理由無く人を襲ったりいたしませんので、ご安心くださいませ」
そう言って姿を現したのは、着物姿の奇麗な女性だった。
「ヨースケ、ヨースケ」
女性の姿を見たクマが陽介の服を引っ張りながら言う。
「なんだよ」
「あの人、クマ見たことがあるクマ」
「見たことあるって……知り合いのシャドウか?」
「違うクマ!」
ぶんぶんと首を横に振るクマ。
「ヨースケとやるはずだったゲームにいた人クマ!」
「え……? えええええええええ!?」
テレビを抜けると、そこはゲームの世界だった。※ボイドクエストではない