「なるほど、お二方はその『てれび』というものを探されているのですね」
「そうクマ。それがないとおうちに帰れんクマ」
道に迷ったのなら少し休んでいくといいと出会った女性――まつに提案され、陽介とクマは前田家の屋敷にいた。
クマが描いたテレビの絵を見せてまつに訊ねてみるものの、見たことはないと言われてしまった。肩を落とす二人を見て、少し考え込んだまつは何かを思いついたように手を合わせて言った。
「そうです、慶次です! 慶次ならばいろいろな地を訊ね歩いています、その『てれび』を見たことがあるやもしれません」
「えーっと、その慶次さんはどこに?」
陽介が訊ねるとまつは少し眉間にしわを寄せた。怒らせてしまったのかと陽介は慌てたが、
「慶次はまた勝手に家を抜け出して遊び歩いているのです! 犬千代様が探しているのですが……」
どうやらその慶次という人物に対して怒っているということのようだ。
「そろそろ正午、犬千代様がお戻りになられる頃です。昼餉の準備がして参りますので、お二人はしばしこちらでおくつろぎ下さいませ。犬千代様が戻られましたら、慶次のことも何かわかるでしょう」
そう言うとまつは笑顔で部屋を出て行った。
「……で、どういうことだよ、クマ。ここはテレビの中なんだろ? なんでゲームのキャラがいんだよ」
まつが部屋を出てから、陽介がクマに訊ねた。クマは考え込むように答えた。
「たぶんだけど……理由はわからないけど、シャドウたちがゲームの世界を再現しているんだと思うクマ」
「つまり、そのゲームに出てくるやつと同じようなシャドウがどんどんでてくるわけだな? いったいどんなゲームだったんだ?」
「えーと、戦国武将たちがスタイリッシュでババーンと大暴れなゲームらしいクマ」
説明しながらなんとも形容しがたい動きで内容を表現するクマ。
「わかんねーよ!?」
「ヨースケは理解力がないクマねー。わかりやすく言うと、戦国武将が戦って戦って戦うゲームクマ」
わかりやすくと言う割にはあまりわからない説明をするクマ。
「――ってことは、だ。ここから先も、あの落ち武者みたいなのが出てくるってことか?」
「そうなるクマね」
「……つまり、あれと戦いながらテレビを探すことになるわけか。しかも、戦国武将も場合によっては敵としてでてくる、と」
そう言って陽介はげんなりとした。
「そういえば、まつさんの旦那さんも戦国武将だって言ってたよな。旦那さん見ればクマの言うスタイリッシュな戦国武将がどういう感じかわかるわけだ」
「たしかそうだったクマね。前田利家って人って言ってたクマ」
「日本史の授業で聞いた名前だな……いったいどんな人なんだろうな」
そこへ、屋敷の入り口の方から声が響いてきた。
「まつー! 今戻ったぞー!」
「お、噂をすれば
そう言ってクマが廊下に飛び出し、利家の方を見る。
「あ、クマ!」
陽介もそれを追って廊下から利家の方を見た。利家らしき人物は妻であるまつといちゃついているようだった。それはまだいいのだが。
「……半裸?」
「半裸クマね」
「スタイリッシュって、半裸?」
「知らんクマ」
スタイリッシュってなんだっけ、と陽介は固まることとなったのであった。そんな陽介とクマの姿に気づいたまつが笑顔で声を掛けてきた。
「あ、お二方、こちらが犬千代様です。犬千代様、このお二方が山で道に迷われていた方達です」
そんな笑顔のまつに、陽介は心持ちひきつった笑顔を返したのだった。
「それで、その慶次さんは甲斐の方に向かった、と」
食事を済ませ、最後にお茶も一服いただいてから陽介は前田家の二人に訊いた。
「そうだ」
「武田には忍びの方もいますれば、『てれび』の在処を知っているやもしれませぬ」
「ならそこに行ってみるクマ! ありがとうクマ!」
「いえ、困っている人を見捨てては前田の名折れ、お役に立てて幸いです」
そう言ってまつは笑った。その言葉に利家もうんうんと頷いている。
「――それと、できれば道中の安全のためにも武器なんかいただけると助かるんですけど、無理ですかね?」
「武器……」
「こう、苦無みたいなのが、二本ほどあると嬉しいんですけど……」
「忍びの武器は屋敷にはありませんが……まつめが以前使っていた武器でよければ」
そう言ってまつが後ろにあった行李からそれをふたつ取り出した。
「……しゃもじ?」
「はい、そうです」
にこりとまつは笑顔で言う。一方の陽介の笑顔は引きつっていた。それに気づかずに利家が笑顔で言った。
「まつのしゃもじは強いぞ! 慶次を叩きのめしたこともあるくらいだ!」
そうしゃもじの武勇伝を語る利家。陽介はまだ会ったことのない慶次という人物に同情した。――まぁ、陽介も変な武器でシャドウを倒したことはあるのだが、戦国武将がしゃもじで倒されるのはまた別だろう。
そうして陽介はしゃもじ二刀流を使いシャドウと戦いながら甲斐へと向かうことになったのであった。