白百合の騎士と悪魔召喚士   作:気力♪

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第1章は毎日定時に投稿するつもりだったんですがねー、やはりスマブラの魔力は凄い。


馬鹿野郎と馬鹿野郎

「それでは、事前説明を行います。改めて、私はヤタガラスのミズキ、こちらはクズノハの術師さんです。名は念のため明かせません」

「我は業斗童子(ごうとどうじ)、此奴は...とりあえずは、付和(ふわ)と呼ぶがよい。」

悪魔討伐者(デビルバスター)の浅田彼方よ」

悪魔召喚士(デビルサマナー)の花咲千尋です」

「えっと、神野縁です。一応聖女やってます」

 

通された会議室にて、ブリーフィングが始まる。

 

「お三方に依頼する内容は、結界のアップデートが終わるまでのアウタースピリッツの討伐、およびそれを利用するダークサマナー、仮称“ネクロ”の調査です」

「討伐までは依頼に含まれないんですか?」

「ええ、敵サマナーは堕天使の軍勢の制御にアウタースピリッツの隷属化。敵サマナーの実力は間違いなく災害級でしょう。それに対抗するには、災害級をぶつけるのが定石。そのためのクズノハです」

 

黒猫を連れたサマナーは、コクリと頷いた。

 

知識としてではなく、この世界に両足突っ込んだ人間として観察した結果でも、その底知れない強さがわかる。

本気で睨まれたら、それだけで殺されそうだ。

 

だがそれ故に分かる。彼なら、大丈夫だ。どんな敵が相手でも負けることは無い。

 

「トルーパーズのIDです。これがあればヤタガラス関係の施設で支給品を受け取る事ができます。今回の特殊装備は、魔力探知機。アウタースピリッツ第1号、玄奘三蔵が力場として発していたMAGとは別の魔力という物質を探知するための機械です」

「探知距離は?」

「約1mです」

「てことは、ほとんど分からんですね。アウタースピリッツの最後の確認に使えるくらいですか」

「ええ、ですがアウタースピリッツは目立ちます。なので、平成結界のゆらぎから大まかな位置を把握して、それっぽいのを半殺しにするのが今のところの定石ですね」

 

なるほど、脳筋だ。

だが、マルタさん、クー・フーリン、メドゥーサ、セミラミス、いずれも一級の概念装備を持っていた。その作戦は理にかなっている。

 

「ですが、結界のゆらぎを生まないネクロマによる召喚では揺らぎを確認することはできませんでした。それは、敵サマナーの方が一手上手ということですね」

「そっちの対策はなにかありますか?」

「今のところは何も。技術班が対策を練ってくれていますが、やはり今のところは虱潰しに探すしかないですね」

 

まぁ、昨日の今日ではそんなものだろう。

 

「敵の目的は、平成結界の破壊と仮定して動きます。なのでクズノハの付和さんにはこの遡月の街にある聖遺物を守っていただきます。敵の探索には主に私たちで行います、質問はありますか?」

「今現在その聖遺物が襲撃される可能性はありませんか?」

「今は、この付和の仲魔が警護に詰めている。案ずるな」

「なら、付和さんがここに来た意味は?」

 

「お前を、見るためだ」

 

しっかりと俺を見据えて付和さんが言う。この言葉は、重い。

 

「それで、お眼鏡には叶いましたか?」

 

1つ深呼吸して、軽口を叩く事にする。飲まれるな。自分を保て。

俺は、悪魔召喚士(デビルサマナー)だ。

 

そうして、少しの間目を見られたあと、付和さんはゆっくりと言葉を紡いだ。

 

「...悪魔と関わる者は、大なり小なり狂わなくては己を保てん。それが道理だ。だが貴様は、()()()()()()()()。それが何よりも異常だ」

 

「慧眼だね」とデオンが呟く。割と残虐非道な事をしまくってる自覚はあるのだが、それは狂ってる事には入らないのだろうか。

 

「...それで結局、俺はあなたの敵ですか?」

「それは、お前次第だ」

 

それは、この世界の事を漏らすなという言外の警告だろうか?

とりあえず、身の振り方には気をつけよう。

 


 

「それでは、失礼する」と付和さんは去っていった。聖遺物の守護の任を全うするためだろう。

 

「それでは、この支部の案内をしますね」

 

そういったミズキさんの案内の元、ヤタガラス支部の中を歩く。武器庫、回復施設、そして何よりも指揮施設。ヤタガラス支部そのものを魔法陣とした大探査術式の情報が流れていく様は、圧巻だった。

 

「流石人類防衛の最前線、金かけてますね」

「本来は、異界の早期発見を目的にしたシステムです。アウタースピリッツ関連の精度はあまり期待しないでください」

「大体の位置がわかれば御の字ですよ。これでも、探偵ですから」

「でしたね。あなた方の調査能力を信用しましょう」

 

まぁ、肝心な所長は目を逸らしているあたり、やはり自分が頑張らなくてはならないのだなと思い、気合いを入れる次第である。

 

「とりあえず今日のところはこんなところでいいでしょう。拠点機能はあるにはありますが、花咲さんたちはもう拠点を持っていますからね」

「あー、それじゃあ最後に。ヤタガラスのアーカイブへのアクセスって俺らみたいな協力者でも可能ですか?」

「...いいえ、文字により認知される事が出現の条件の悪魔もあるため、閲覧には幹部クラスの許可が必要なんですよ」

「なら、仕方ないですね」

「なにか懸念事項でも?」

「恩人の事を知りたかったってだけです。本人からはあまり話を聞けなかったので」

「すみません、花咲さん」

「いいえ、こちらこそ無理言ってすみません」

 

「ところで、この子無意識に花咲さんたちはって言ったよね」

「所長さん、威厳ありませんから」

「納得いかないなー、もう」

 

とりあえず遡月支部の案内は終了した。俺たち協力者は普段の生活を行いながらアウタースピリッツ関連の事件へと出動する事になっている。俺の情報から本来の計画を大幅に前倒しして作った部隊であり、所詮外様の部隊だ。そんなものだろう。

 

ちなみに、これからしっかりとした対策部隊にするための人員の提案もできればしてほしいとの要請を貰った。恐ろしく急ピッチで作った部隊であるため実は隊長以外全く決まっていないのだ。すげー対策部隊。兵は拙速を尊ぶとはまさにこの事だ。

 


 

そんな事情説明を受け、遡月支部を離れる。

 

堕天使使いのサマナーが魔界を拠点にしている可能性が高い以上、向こうからの意図的な攻撃の頻度は必然的に少なくなる。なにせ、平成結界の内側では時間が加速しているのだ。魔界の時間感覚がどの程度のものか正確に測定した訳ではないから詳しくは言えないが、こちらの時間の方が早く流れているのは実際に魔界から帰ってきたサマナーからの証言で取れている。準備期間程度はあるだろう。

 

「千尋くん、私は事務所戻るけど、千尋くんは縁ちゃんと防具見に行ってくれない?縁ちゃんに渡した装備、ガタがきてそうだからメンテナンスついでにさ」

「了解です。あ、探偵の依頼が来たらすぐ連絡下さいよ?」

「わかってるよ、花咲さん」

「あ、地味に根に持ってる」

 

そんなわけで、画商に扮している防具屋“金栗画廊”にやってきた。

 

「久しぶりだね、活躍は聞いているよ花咲くん。それと、浅田んとこの新しい子たちだろう?名前は?」

「はい!神野縁といいます!」

「私は、デオンという」

「戦闘タイプは?」

「近接型です、ガントレットは自前であるんで、それ以外の部分の装備を見繕って下さいな」

「へぇ、今時珍しいね。わかった、ジュンコに採寸させるから先に奥に入っていてよ。デオンさんは?」

「私は自前の装備があるから大丈夫だ。それよりも、この画廊を見て回っても構わないかい?」

「ああ、どうせ趣味でやってるだけさ。こっちの客からは金は取らんよ」

「ありがとう、店主さん」

「おっと、名乗ってなかったですね。私は金栗十蔵(かなくりじゅうぞう)です。今後ともよろしく」

 

「金に糸目はつけるなよ?」と言い含めるのは忘れずに。

 

「意外だね。君も絵を嗜むのかい?」

「いや、全然。なんとなく好きだってぐらいだよ」

「私は少し違うね。昔、とある学校でこういった教養を学んだんだ。描くのはそう得意ではなかったが、美醜を見分けるくらいはできるようになったのさ」

「へー、それがお前の多芸の理由か」

「でも、こうして絵を見るのは好きになってきたね。繋がってきた人の歴史が、技術としてこうして現れているんだから」

 

「僕も、そうあれたら良かったのにな...」

 

その呟きのような声は、多分仮面から溢れた甘えだったのだろう。デオンの見ないようにしている事、それに対しての。

 

だから、少し言葉が溢れてしまった。

 

「デオン」

「...サマナー?」

「お前は、その行動で人の心に繋がってる。だから、わかる人にしかわからない絵よか上等だぜ?」

「...そうだといいね」

「きっとそうさ」

 

その言葉を少しの間噛み締めてから、デオンはまた仮面を被りなおした。騎士然とした凛々しく美しいあの仮面を。仮面が被れるのなら、上等だろうよ。

 

「奥が騒がしい。どうやらエニシに何かあったようだ。行こう、サマナー」

「今度は何やらかしたんだ?アイツ」

 

そうして奥に入ると、なにやら神聖な空気の鎧を持って縁があたふたしていた。

 

「千尋さん!」

「花咲さん、聞いていませんよ?この子、まさか100人殺しの呪いの鎧を浄化してしまうなんて」

「呪いの浄化は良い事ではないのかい?」

「呪いってのは効かない奴からしたらボーナスなんだよ。だって呪いに染み付いた怨念が本人に力をくれるんだから」

「...そんなものなのか」

 

「弁償、してくれるよね?」

「いくらですか?」

「2億、ローンは認めない」

「じゃあ、事務所当てに領収書切って下さいね」

 

そんなわけで、縁の借金は2億ほど増えた。コイツ、聖女のくせに運なさすぎだろう。

 


 

神野の新装備は、軽装だ。

神聖な祝福をされた修道衣を改造したもの。これはメシアンローブを動きやすく調整したものだろうか。呪殺防御のペンダントはそのままに、新たに服装でも呪殺防御を仕込んでいるな。

 

「どうですか?千尋さん」

「軽く型やってみろよ。どっか引っかかるかもしれないぜ?」

「そうですね!」

 

『サマナー、そこは素直に似合っているよ!と言うべきだよ、紳士としてはね』

『なんで職場にんな面倒なものを持ち込まなきゃならねぇんだ』

 

始まる縁の演舞。質実剛健、されどどこか神聖さを感じさせる技術だった。聖女マルタの教えがなければここまで練り上げられるまでに相当の時間がかかっただろう。あの出会いには、本当に感謝だ。

 

「一通り動いてみましたけど、大丈夫そうですね」

「...想像以上だよ、神野ちゃん。格闘技じゃないね、悪魔との戦いを想定してる」

「はい、師匠からは、“ヤコブの手足”という格闘術だと教わりました。由来を教えてもらう前に、逝ってしまいましたけど」

 

「うん、わかった。神野ちゃんは常連になりそうね。今後ともよろしく!」

 


 

事務所へと帰るゆったりとした夕暮れ時。

縁とデオンと、他愛のない会話をしながら歩いていた。

 

「んで、そこでその子がご飯にザバーっとかけちゃったんですよ!」

「あー、やりたい気持ちはわかるかも」

「サマナー、君は案外マナーとかを覚えるべきかもしれないね」

 

などと話していると、正面にふと、男が現れた。

予兆はなかった。ほんとうにいつのまにか彼はそこにいた。

 

そして、流れるように縁へと近づいてきて

 

「お嬢さん、俺と一晩を共にしないか?」

 

などとのたまった。

 

当然のように縁の鉄拳聖裁をボディに貰ったが。

 

「凄えぞこの男。右も左もわからない状況で女を口説きにかかりやがった。しかもド直球で。男の中の男か」

「はっはっはっ!良いなぁ、良き拳だ!それなら良き子を産めるだろうよ!」

「まだ言いますか!変態!上半身裸のくせに、一端の紳士気取りですか!私はまだ14です!子供は早すぎます!」

「14では、十分だろう?子を産める体ではないか」

 

その台詞で、意味がわかる。それはこの男がこの時代について知識を持っていないことの証明だ。

 

「...うん、わかってたけどコイツアウタースピリッツだ。」

「そうだね、英雄色を好むという奴かな?」

 

そんな会話をしながら、威嚇している縁に笑いながら近づく変な男を見る。筋骨隆々、体型良し。飄々としているが、俺に対しての警戒を切ってはいない。一手動けば、拳か、あるいは獲物で命を取られかねないだろう。

 

「そちらのお嬢さんも、今夜一緒にどうだ?」

「あいにくと、私は女性ではない」

「顔が良ければ問題はない!」

「...手がつけられないね」

 

デオンが自然に前に出る。だが、とりあえず彼は無闇矢鱈と人を殺す邪悪の類ではないのは間違いない。

 

なら、交渉で物事を有利にするのか悪魔召喚士(デビルサマナー)だ。

 

「良い娼館を知ってるんだが、いっしょに来るか?この2人、脈なしみたいだし」

「良し、行こう!」

 

「サマナー⁉︎」とデオンの驚く声が聞こえる。要するにこの男は、ヤリたいだけなのだ。友好を深めるには野郎同士の猥談が一番、古事記にも書いてある。

 

悪魔召喚士(デビルサマナー )花咲千尋だ。あんたは?」

「フェルグス・マック・ロイ。まぁ、ただの女好きさ」

 

そう言って、デオンに縁を任せて娼館へと向かう。道中でこの世界についての説明を挟みながら。

 


 

「むぅ、流石にそれは死ぬしかないな」

「納得するんですか?」

「そりゃあそうさ。世界からの違和感のようなものは感じてはいるんだ。それが世界に害なす者が故と聞いてむしろ納得したほどだ」

「じゃあ、フェルグスさん。あなたは俺が殺します。でも、約束は約束なんで、しっかり娼館には連れて行きますけどね」

「お主、そっちが本命だろ」

「バレましたか。このタイミングなら、経費で娼館代が落ちるので、No.1の子の指名とかできちゃいそうなんですよ」

「お主、意外と悪よな」

 

それからは、フェルグスさんからさまざまな話を聞いた。女を口説く為に玉座を放り投げたこと、影の国と呼ばれる場所で良い女の元で修行をしたとのこと。そこに、クー・フーリンもいたこと。

 

「ああ、クー・フーリンならこの前戦いました」

「なんと!どうだったあやつは、強かっただろう?」

「数でゴリ押しているのに一手違えば死んでた自信はあります。強かったですよあの槍使い」

「そうだろうそうだろう!」

 

フェルグスさんは、我が事のように喜ばしげだ。

 

「仲、良かったんですね」

「ああ、身内だからな」

 

そんな会話を最後に、辿り着くはガイアーズ系列の娼館。房中術を得意とする者達による快楽の坩堝だ。

 

フェルグスさんと目を合わせ、共に娼館のドアを開く。いらっしゃいませの声がない。雄を見る目に長けた女傑たちだ。一目でフェルグスさんが只者ではないと気付いたのだろう。

 

「いらっしゃいませ、お客様。当店にはどのようなご用件で?」

「当然、やる事は1つでしょう」

「おうさ!事前に説明を受けたから、ちゃんと爪は切ったぞ!」

「ならば、言うことはありませんね。ただ、そちらのサマナーには別室で少しお話がありますので、カタログを読んで呼ぶ子を決めてください」

「それも聞いた。呼ぶ女なら決まっておる」

 

「全員纏めて相手にさせてもらおう。なに、金ならチヒロが払う!」

「フェルグスさん⁉︎裏切ったか!」

「女子たちの目線が、ヤリたいと告げているのだよ。今回は諦めろ、チヒロ」

「この、悪魔め!」

「はっはっはっ」

 

なんて言いつつも、予定通りだったりする。ここの女性達は房中術、性行為によるMAGのやりとりのプロだ。ヤレばヤルだけフェルグスさんは存在に使うMAGを削っていかれる。全員を相手にしても大丈夫なイメージはあるものの、それでも弱体化は必須だ。

 

我ながら、即興にしては良い作戦を練ったものよ。

 

知り合いの事務員の人に、「何人持ちますかね?」「ウチの子たちなら、どんな巨漢でも3人で倒せますよ。なにせ、鍛えてますから」なんて話をしてから3時間。フェルグスさん、やべー。

 

「これ、AVとして世に出すべきだと思います。フェルグスさんの漢らしさが女の子たちを惹きつけてヤベー感じになってますよ」

「いえ、流石に監視カメラ映像の流出はしませんよ。プライバシーありますし、モザイク編集面倒ですし」

 

さて、そろそろ戻ってこれなくなりそうな女の子か出てきそうなので、ここいらで止めるとしよう。連絡して戦闘ポイントにミズキさんたちを待機させているのだし。

 

「じゃあ、行ってきます。でも、領収書の先間違ってませんよね?ヤタガラスだなんて」

「良いツテができたんですよ」

 

そんなわけで、フェルグス・マック・ロイ、今日は見事全員切り達成。絶倫の男だ、あやかりたい。

 


 

「遅いです、千尋さん!そんなに女の人とイチャイチャするのが楽しかったんですか!」

「残念ながら、女性は全員フェルグスさんに食われた。おこぼれすらなかったよ」

「それは...ご愁傷」

 

「ふむ、これがこの時代の勇士たちか。女子が多いな。そういうものか?」

「いえ、たまたまです」

 

無警戒にフェルグスさんに背中を向け、デオンたちのいる方へと向かう。やはり、不意打ちはしないようだ。

 

「それでは、これからあなたを殺します」

「だが、戦いを楽しまずに死ぬつもりはないぞ?チヒロ」

「こっちもです」

 

「あなた程度倒せなきゃ、この世界を守れはしませんからね!」

「良くぞ吠えた!さぁ、行くぞ!」

 

フェルグスさんがドリルのような大剣を取り出す。一目でわかる。あれは、特級の概念装備だ。

 

「デオン、前に!サモン、バルドル、雪女郎、ペガサス、カラドリウス!」

「術式の準備は終わっています、お好きに!」

「ありがとうございます、ミズキさん!」

「こちらも続きましょう。サモン、斉天大聖、猪八戒、沙悟浄!」

 

デオンが大剣を華麗に捌き、大技を使う為のMAGを貯めさせないように立ち回っているところに、バルドル、雪女郎が悪魔合体により継承した補助魔法と、カラドリウスの反応性向上(スクカジャ)をかける。だが、フェルグスさんはその強さに即座に対応して、肉を切らせて骨を断つ戦法に変えてきたようだ。

 

だが、それは悪手だ。なにせデオンは、あんな華奢な見た目で業師の癖に超パワータイプなのだ。

 

やばいと感じたフェルグスさんは大剣でサーベルを受け止め、その渾身の力により予定されていたポイントに吹き飛ばされた。

 

「サマナー!」

「術式展開!拘束術式第3号、縛鎖(ばくさ)!」

 

丁寧にルーンを刻んだ鎖を事前にこの区域に刻んでもらった魔法陣により異空間収納(ストレージ)の応用で射出し、フェルグスの拘束をする。

 

「こんな、ものでぇ!」

 

両手両足を縛られたフェルグスさんは、その拘束を力尽くで無視して大剣を地に刺してMAGを集中させた。

 

大技が、来る!

 

「バルドル、GO!」

「はっ、待ちくたびれたぜ!」

「無駄よ!虹霓剣(カラドボルグ)

 

大地が、割れる。虹の光が、あたりを包む。

 

あれを受けていたら死人が出ていただろう。だが、ここで大技を使うことは()()()()()

 

縁の刃を通さぬ竜の盾よ(タラスク)により俺たちは守られ、雪女郎の高位広域氷結魔法(マハ・ブフーラ)により作られた足場を行くバルドルが、本命の拘束術式を込めたルーンストーンをフェルグスに叩き込む。大技を打ち切った後の隙だ、躱すことは不可能だ。

 

「術式展開、拘束術式第1号起動!シバブーダイナマイト!」

 

バルドルごと緊縛魔法(シバブー)のMAGに包ませる事により、完全にフェルグスの動きを停止させる。

 

あとは、MAGのチャージをしていたミズキさんと所長の出番だ。

 

「斉天大聖、沙悟浄、猪八戒!」

「「「西遊記、三位一体!」」」

 

三体の悪魔がフェルグスさんとバルドルを囲み、万能属性打撃により三方向から同時に攻撃する技のようだ。それを応用して上空に吹き飛ばし、空中からの疾風を纏った大上段を所長が仕掛ける。

 

フェルグスさんは、今際の際だというのに笑っていた。あれが、英雄の精神性なのだろう。その点は、かなり憧れる。ああいう強い漢になりたいものだ。

 

フェルグスさんを脳天からかち割った所長はクレイモアを一振りして血を払い、言った。

 

「勇士フェルグス。これが、今の時代の人間の戦い方だよ」

「誠、面白き、時代だな」

 

その言葉と共に、フェルグスさんは光となって消えていった。

ネクロの存在を警戒して、完全に消滅を確認するまでは目を離せない。だが、ネクロの存在がなくても目を離すことはできなかっただろう。

 

「さらばだ、遠き時代の友よ」

「...応!」

 

その言葉と共に、光は消えた。フェルグス・マック・ロイ。彼がカラドボルグを周囲の事を考えなしにぶっ放していたら、天災規模の被害が出ていただろう。それだけ、あの技は驚異的だった。

 

彼が彼でなければもぎ取れなかった勝利。それをしっかりと噛み締めて、事務所へと戻る。

 

とりあえず、何故だか機嫌の悪い縁の機嫌を取るために、ケーキ屋にでも寄るとしよう。

 


 

「それにしても千尋くん、ガイアーズの娼館だなんてどこで知ったんだい?」

「黙秘権を行使します」

「即答⁉︎」

「まぁ、サマナーも男だ。これくらいの汚点は人間らしくていいものだと思うよ?」

「そんなものなんですかね?」

 

あの娼館は野郎どもとの絆の証だ。たとえ所長たちが相手だとてその場所は明かせない!

 

なお、念のため後日娼館に行き魔力探知機でフェルグスさんとヤった人たちを検査したが、問題はなかった。だが、あの男性は次いつ来るの?という質問を何度されたかは、途中から考えるのをやめた。

 

あー、俺もあんな漢になりたいものだ。




フェルグスの叔父貴は本当に良い漢。好きです。
でもこの作品好きなサーヴァントを数の暴力で殺すのが基本なのでちょっともにょる。タイマンでやらせてあげたかった!

まぁ、勝つために全力を尽くすのが人間なので、大怪獣決戦は付和さん(正体バレバレ)の活躍まで待っていて下さいな。

調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。

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