バレンタインデー、生協で買ったお徳用チョコレート(自分用)は美味しかったです。
霊基再臨をとりあえず終え、デオンの強化は成功した。
軽く模擬戦をしてみたところ、縁には圧勝、近接距離での所長とは7:3で有利。ただし、空に逃げられた場合は単身での戦闘は不可能と言ったところだ。
デオンに銃でも持たせようかと思うのだが、マスケット銃くらいしか扱い慣れてはいないようだ。
銃の結構な重さを考えると、デッドウェイトになる可能性が高い。俺が支援するというのがいいだろう。今のところ、デオン単身で戦う予定はないのだから。
「動きの確認は終わったよ。特に問題はないね」
「おし、
訓練終わり後のひと休憩。スポーツドリンクの甘さが、疲れを癒してくれる。
「動きの一つ一つが鋭くなりましたね、デオンさん」
「そうだね。厄介どころじゃなくなった。この分じゃ剣の距離ではデオンくんに勝てる人も悪魔もいなさそうだよ」
「それはありがたい言葉だね」
「ま、それは
「...不満そうだね、サマナー」
「そりゃ、剣からビーム出るって最近知ったし」
「アレは所詮伸びているだけだ。命ずるなら払ってみせるさ」
「そりゃ頼もしい。じゃ、お仕事行くぞ」
今日は、久々の探偵の依頼である。正直断りたかったのだが、悪魔絡みの匂いがしたのでそういう訳にもいかない。コレを断るというのなら、何のための探偵稼業だというのだ。信用は実績で稼ぐしかないのだし、稼ぎは悪くとも思わぬ繋がりができるかもしれない。
「千尋さん、私と所長はミズキさんと一緒にパトロール行ってきますね。でも、危険な事だと分かったらすぐに呼んでください。なんか千尋さん、思った以上にすぐ死にそうで怖いです」
「安心してくれ、エニシ。その万が一は、私がゼロにしてみせる」
「...それじゃあ安心だね。じゃあ、行くよ縁ちゃん」
「はい!よろしくお願いします、デオンさん!」
所長たちと別れて、依頼主から教えてもらった区域の捜査をしに社用車に乗る。
今回の依頼は、ストーカーの捜索。
撃退でも、捕獲でもなく、捜索だ。
なんでも、依頼主はそのストーカーに恋をしたのだそうだ。初っ端から飛ばしているな、意味わからん。
ストーカーだと分かった理由は、隠れる瞬間を何度も見たからだとか。ただずっと、自分を盗撮した写真とそれに触れた恋文を届けられ続けて1ヶ月。突然ピタリと、それが途絶えてしまったのだとか。
愛のこもった(婉曲表現)の恋文は、普通なら引くところ依頼主さんの心を鷲掴み。写真のことも自分を見てくれたのだと好意的に受け止めていた。聖人かおのれは。
それが途絶えたのはたったの2日、だが
尚、依頼主さんの魔術的分析を行ってみたところ、呪いの類にかかっているわけではなかった。マジで?と思うが、事実なのだ。小説よりも奇なりとはよくも言ったものである。
「しかし、見つかるのかい?」
「ああ、時期が良い。失踪したのが1ヶ月前とかならどうしようもなかったが、2、3日前くらいならMAGの痕跡はまず残ってるはずだ。その子のいた場所も、写真を撮った位置で検討はつく」
「それでも、往来かなにかだろう?個人を特定できるものなのかい?」
「それに関しちゃ全く問題ない」
「間違いなく写真を撮る時には相当量の感情が動いてるはずだからな。そういう時って人間のMAGは色濃く残るんだよ。...多分だけど、そのMAGを悪魔か悪魔使いに狙われたんだと思うぜ」
だからこそ、そのストーカーの少女を探さなくてはならない。
サマナーネットやヤタガラスのデータベースに、その区域に悪魔の食い残しが出たという報告はない。とすれば、まだ生きている可能性は残っている。
まぁ、悪魔絡みではなく。単に家の都合か何かでストーカーを止めざるを得なかったというのが一番の結末なのだが。
「じゃあ、まずはココ。この茂みから隠れて、登校中の依頼主を撮ったみたいだな。ここからの写真が何枚かあった」
「では、サマナーのお手並み拝見といこうか」
「散々見せてるだろうが」
魔導技術を使った非物質性ボーリング技術により、地面のMAGの痕跡を探知する。最近で一番大きいMAGの残り香はデータに取れた。念のためそれ以外のデータも。
消された痕跡はないため、普通に信用できるだろう。
「んじゃ、次行くぞ」
「...もう終わったのかい?」
「ああ。しかも予想以上にMAGの残り香がある。もう2、3点で同じ反応が出たら、当たりとして動くぞ」
「...サマナー、その魔導技術というのは、私でも使えたりはするのかい?」
「...多分無理だな」
「そうか...」
「デオンの場合は、魂が肉の器に上手いこと入ってるせいでMAGの発露が起き辛いんだよ。それが燃費の良さの原因でもあるから、一長一短だな」
「成る程、そんなものか」
「そんなものさ」
デオンの車に乗り、次のポイントに向かう。
今度の場所でも、MAGの痕跡は強く残っていた。波形パターンも同一なため、ほぼ間違いなくコレがストーカーの少女のモノだろう。
「うん、次のポイント行くぞ。そこでも問題なきゃ、アクティブソナーと聞き込みの始まりだ」
そう括っての三つ目のポイント。
そこには、明確にMAG痕跡が消された後があった。
「サマナー、君は狙って貧乏籤を引いているのかい?」
「...いや、そんなつもりはないんだがなぁ」
残存MAGから、術式を推定。これは、風水の類か?
悪魔がいた痕跡を、気の流れをコントロールすることにより霧散させている。だが、簡単な術式であるが故にこの術者の甘さが見て取れる。
微量ではあるが、染み付いているMAGの中に少女の物を発見した。
敵の術師のレベルは、そう大したものではない。
あるいは、そう思わされているか。
「とりあえず所長に連絡だな」
「エニシにじゃないのかい?」
「所長のこの辺の判断力をアテにしたいんだよ。腕利きを釣るための罠か、単なる雑魚かな」
あの人、魔導理論などの知識は普通くらいだが、こと戦闘に関わる事の勘に関しては超一流なのだ。
それが、撫で斬りカナタの一流たる所以なのだ。
デオンに周囲の警戒を任せ、所長に連絡を入れたところ
「んー、嫌な感じがする。こっちでのパトロール範囲に近いから様子は見に行けないことはないけど、行くなら準備はしっかりね」
などという恐ろしい言葉を貰った為、生体エナジー協会にて貯金のマッカをMAGに両替し、自室のNC彫刻機で量産していたストーンの素にMAGを込めて即席のストーンの素を取り出す。車での移動中に術は込めればいいだろう。
「今までのストーンはこうやって作られていたのか。このNC彫刻機というのは、ちょっと面白そうだね」
「おー、色々作れるぜ。まぁ、所詮石を削り出してるだけだから、素材的に無理なことがあるけどさ」
プリンターに装填されている石の在庫とドリルの損耗具合を確認し、オートで石を作り続けるプログラムがしっかりと動き続けていることを見てから部屋を出る。
シバブーストーン、マリンカリンストーンに各種属性魔法ストーン。装備はとりあえず整えた。さぁ、少女を助けに行こう。
「ところで、少女の居所に検討はついているのかい?」
「カラドリウスを飛ばして周囲の異界を探索させたんだが、事件現場からそう遠くない所に人造っぽい異界が入ってる建物があった。十中八九だが、そこだろうよ」
「流石サマナーだ、抜かりないね」
「ただ、細かいミスは割とやるから、そこはフォローしてくれよ?」
「それは任せてくれ。私はサマナーの仲魔だからね」
カラドリウスの情報を元に異界の入ってる建物近くに車を止める。
道中に、ストーンの作成は終了した。相変わらず、魔法陣作成代行プログラム様様である。
そうして廃工場の手前まで来たところで、嫌なものを見つけた。術師は、稚拙だが面倒なものを張っている。
「サマナー?」
「侵入探知の結界が張られてる」
「解除はできるかい?」
「無理だな。結界の基点を探ってみたが、しっかり内側だけで完結してる。風水の強みだな。気の流れを見てるだけだから、外側に何かする必要がないんだよ」
というわけで、諦めてペガサスを召喚。
「こっそりは無理だから、正面から堂々と、最短最速で行くぞ!」
「了解だ、サマナー!」
アクティブソナーを起動。反響から、異能者を特定。ペガサスの最速で、廃工場へと突入する。
正面をぶち抜いて、堂々と。
「何者だッ⁉︎」
「通りすがりの
シバブーストーンを投擲、起爆させて悪魔の召喚を封じる。
そこにデオンがすかさず首元に剣を当てて、制圧完了だ。
どうにも、こいつはこの異界の見張りのようだ。
「さて、そこで首を切り離される前にいくつか聞きたいことがあるんだが、いいよな?」
「...なんだ⁉︎」
「ファントムがこんなトコで何やってんだ?ヤタガラスが動き回ってるのを知らない訳じゃないだろうに」
「...上の事情なんざ知るかよ、金になるから仕事をしてんだ」
適当にカマをかけたが、やはりファントムソサエティか。あの組織も、息が長い事で。
「まぁ、通りすがりとして、お前たちの企みは潰させてもらう。一応聞くが、遺言はあるか?」
「...ねぇよ、んなもん。クソみたいな人生だったってぐらいだな」
裏の世界に生きる者に、刑務所はない。
道を違えた者に対する処置など、一つしかないのだ。
「...私がやろうか?」
「流石にそこを任せるようなクソ野郎じゃねぇよ」
しかし、躊躇いはなかった。P-90にて力場を抜いてから、引き金を引く。
男の頭蓋を、弾丸が貫いた。
やはり、ここに躊躇いを持てない俺は何処かおかしいのだろう。
だが、付和さんは俺が正常だと言った。それは何故だろうか。
まぁ、そういう哲学的なことは後でいいだろう。
今は、この異界の調査だ。
「デオン、行くぞ」
「ああ」
所長に位置データの連絡を入れてから異界侵入プログラムを走らせて、中に入る。
人工異界の例に漏れず、無機質な空気だった。
「サマナー、妙な匂いを感じないかい?」
「...パッシブソナーに感ありだ。ここの空気、MAGを含んでる。性質は、興奮系だな。中でお楽しみ中とかやめてほしいんだが」
「対策は?」
「今組み上げた。濃度の濃い所まで行ったら起動する。一応聞くが、この空気、お前の自己暗示で弾けるか?」
「...試したことはないが、おそらくできるだろう」
「じゃあ、相変わらず前は任せるわ。でも駄目そうだったら言えよ」
「ああ。行こう」
異界の探索を開始する。本格的な異界討伐には探索などが必要だが、今回は人工のものだ。オートマッピングで事足りるだろう。
「まずは、密度の薄い方に行くぞ。物資の類はそっちにある」
てくてくと異界を歩く。パッシブソナーに異常は無し。エネミーソナー、百太郎の稼働も問題無し。
数度異界に湧く悪魔と戦闘にもなったが、ペガサスとデオンだけで充分に対処できるレベルだった。
「しかし、これが物資の倉庫なのかい?」
「ああ、ストレージ機能があるから。MAG発電機とパソコンってのが一番効率いいんだよ。使い勝手もいいしな」
ざっとパソコンを確認。MAGコーティングなし。いただきます。
「サモン、グレムリン」
「...知性派のオイラに言わせてもらうと、今回の件って結構場当たりなんじゃないの?」
「かもな。まぁ、その辺は別にいい。首謀者を捕まえて吐かせれば終わりだしな」
内部データをハッキングし、有用な物資を引っこ抜く。MAGに魔石に宝石、メパトラストーンに特殊弾などがわんさかあった。やったぜ。
ついでにこの異界のマップデータもゲット。セキュリティ甘いなー。
「じゃあ、濃い方行くか。多分、マップのこの位置が主の間だ。んで、その近くのこの部屋がヤリ部屋って所だろうな」
「...サマナー、どうしてそう少女が拐われた理由を決めつけて考えてるんだい?」
「異界の匂いだよ。ここは、人を食い物にして保ってる。でも、血の匂いがしないんだ。怨霊の類も出ないしな。なら、異界の維持に感情の昂りを利用してるって考えるのが合理的だ。んで、ここを造ってるのがファントムの下っ端と考えると、気にくわない答えになるんだよ」
いや、正直この手の異界は面倒極まりないが、有用なのだ。実際、俺に金と権力があればMAG大量生産用に造ったかもしれないほどには。
「それにしても、なんでストーカー少女を新しく攫ったんだか。なにか見られでもしたかね」
「...あるいは、単純に好みだったとか?」
「うわー、ありそう」
目の前にやってきた邪鬼ラームジェルグの群れをペガサスの
すると、運が良かったのか一匹だけ生き延びていた。
「待て、お前サマナーだな?仲魔は要らないか?」
「条件次第だな。とりあえずお前の手持ちのマッカ全部出せ。そうしたら二発目の破魔魔法を撃たないでやる」
「...わかった、くれてやる」
そう言って投げ渡されるマッカ。1200マッカ程度だ、なかなかに溜め込んでいたなコイツ。
「この異界を潰したい。協力してくれ」
「理由は?」
「...言いたくない」
『サマナー、あからさまに怪しいが、切るかい?』
『いや、ここで嘘を言わないのは、かえってプラスだよ。なにせ、殺さないで済む』
「オーケーだ。その要求に応えよう。
「邪鬼ラームジェルグだ。よろしく頼む」
契約は結ばれた。念のためラインを通していつでも縛れるように術式を仕込んでから、先に進む。
このラームジェルグは、斬撃と打撃耐性の力場を持っている。前衛に出すにはもってこいだ。術に弱いのが欠点ではあるが、奇襲の類はアプリで防げるので問題はない。
これは、なかなか良い拾い物をしたかもしれない。
「こっちだ、サマナー」
ラームジェルグの先導で向かうのは、ヤリ部屋と目されていた部屋だった。
った。
だが、流石に見張りが死んだのはもう知られているようで、通路から顔を出した瞬間から銃撃の雨が飛んできた。全員ハンドガン、機関銃の類は無し。
その程度の弾幕ではデオンを抜ける訳ない。
銃撃を華麗な剣舞で全て斬りはらうデオン。そして、その剣舞からは白百合の花の幻想が見え始めてきた。
デオンのMAG供給を増やし、その絶技の支援をする。
白百合の花を描くような美しき剣舞。知らぬ間に見惚れ、戦うことすら忘れてしまうその絶技。
「
スタートは、それに敵が見惚れた瞬間だった。
「サモン、雪女郎!合わせろ!」
「了解です、サマナー!」
「「
アクティブソナーで感知した異能者の力場反応にターゲットを合わせて、氷結魔法を放つ。2人は力場により術を弾いたが、それでも1人は一撃目で無力化できた。
そして、氷結魔法の目的は攻撃するためだけではない。力場に弾かれてなお、氷結魔法は残るのだ、光を乱反射する障害物として。
そこに、ペガサスに咥えられたラームジェルグが投げ込まれる。
放たれる魔法は、
衝撃と、氷の破片のコンビネーションにより、先程力場で弾いた2人も相当量のダメージを受けたのを確認した。
だが、死人は出ていないと見た。
戦いは、ここからだ。
「サモン!イッポンダタラ!」
「ペルソナ!ヨモツイクサ!」
そして、発動されるメディラマストーン。立て直しのための範囲回復は、決して悪手ではない。
こちらが、その回復を上回る火力を持っていない場合に限ればの話だが。
「雪女郎、タルカジャ!ペガサス、羽ばたき!デオン、突っ込め!」
ペガサスの羽ばたきがペルソナ使いとイッポンダタラとサマナーを襲う。筋力向上を受けたその羽ばたきは、ちょっとした暴風だ。
そしてその風に逆らう事なく、デオンとラームジェルグは近接距離に入る。
ダメージの残る体で両者は反撃を試みるも、絶技
これで、残りは奇襲を受けて血濡れの一人。終わりだ。
そう思って部屋の中に侵入する。毒の中和術式を展開しながら。
そうして、中を見て絶句した。
壁際にて裸の女性が6人、男が5人。ただひたすらにまぐわっていた。
興奮で頭がどうかしているのだろう。なので、とりあえず寝かせておくが吉だ。そう、思考が一瞬逸れた時だった。
「動くなぁ!」
血塗れの男が、まぐわっている少女に銃口を向ける。
確かに、奴の今のダメージ量ではまともな戦闘は不可能だ。故に人質という手は決して悪くない。
もっともそれは、人質が有効なお優しい人間が相手の場合に限る。
無言でP-90の銃口を向け、引き金に指をかけ、引きしぼる。
「おい待て、ちょっとはッ⁉︎」
「躊躇うくらいなら撃ったほうが速いだろ」
力場に多少弾かれながらも、P-90のファイアレートにより血塗れの男は絶命した。
そして、今際の際の銃撃を受けた少女は脇腹に銃弾を受け
それを、カラドリウスの
「...最後の一撃外すのか...いや、お陰でこの子は助かったんだけどさ」
そうごちると、駆けつけられなかった事を悔いているのか、少し暗い表情でデオンがやってきた。
少し、暗い決意のようなものを目に据えて。
「...サマナー、今の行動であの少女が死んでいたらどうするつもりだったんだい?」
「どうもしねぇよ。種無しである事に賭けて地返しの玉を使うくらいはするけどな」
「...種無し?」
「ああ。まぁざっくり言えば、悪魔に近い人間だよ。だから、魂と肉体を再結合させる蘇生魔法が通るんだ」
「その、種無しである確率はどのくらいなんだ?」
「出産記録全部調べたわけじゃないから概算だが、まぁ9割くらいだよ。種付きの方が珍しい」
彼らが何故種付きと呼ばれるかは、言わない方が良いだろう。デオンにこれ以上の無駄な情報を与えたくない。
デオンがこの真実に耐えられるかどうかは、まだ分からないから。
「コイツが狙いを定める前に撃てば、即死の確率は減る。もし即死でも、9割で蘇生できる。分の悪い賭けじゃないだろ」
「...君はそんな簡単に、他人の命を賭けるのかい?」
「それしかないならな。まぁ、今回のは生きてたコイツから一瞬意識を逸らした俺のミスだ。幻滅したか?」
「...少しね。僕は君を、少し色眼鏡で見ていたようだ」
「君は、どこまでも
「ああ、正義の味方じゃなくて悪かったよ」
「...今はいいさ。それよりも先に行こう。この異界の主を倒して、人々を解放しないと」
「...だな」
そんな会話と共に、とりあえずこの異界でまぐわっている人たちの主へのMAGラインを断ち切るために、11人に
その眠りの顔は、やっと解放された事によってか、穏やかに見えた。
「貴様らかぁ!儂の儀式を邪魔しおったのは!」
「ああ、そうだ。ついでに言うなら、お前を殺す外敵でもあるぜ」
アナライズ完了、異界の主は邪神、疾風と衝撃と電撃に耐性を持ち、破魔と呪殺を無効化するというかなり優秀な力場持ちだ。だが、氷結弱点というのが、運が悪い事だろう。
『雪女郎を中心に攻める。デオンとラームジェルグは最前線、ペガサスとカラドリウスは中衛から援護を。後衛の俺と雪女郎でデカイのをぶちかます。行くぞ』
「我は邪神!ミシャグジ様よ!」
「そうか、死ね」
ミシャグジ様から放たれる
いきなりの広域攻撃に少し驚いたが、デオンもラームジェルグも危なげなく回避した。デオンはともかく、ラームジェルグはなかなかやるな。
「ペガサス、GO!」
ペガサスが、術を撃った後の隙を突くように最速の突撃をかます。
それをモロに食らったミシャグジ様は体勢を少しグラつかせ、そこにデオンとラームジェルグが斬りかかる。今日仲魔になったばかりとは思えないほどの良い連携だ。互いが互いの隙をカバーしている。
そして、二人が足をそれぞれ1本ずつ斬りはらい、ついでに指定していたポイントから離脱した。
「サマナー、今です」
「わかってる。行くぞ!収束術式、展開!」
「緩いわ!たたり生唾!」
ミシャグジ様の頭部から、白濁色の弾が飛んでくる。あのタイプは、おそらく万能属性。ひ弱な人間でしかない俺がアレを喰らえばまず死ぬだろう。
今までの戦闘は、サマナーである俺から仲魔を引き剥がすための作戦だったと考えられる。
なかなかに、恐ろしい悪魔だ。
だが、やはり切り札というものは取っておくものだ。俺はこの異界に入る前から、奇襲に備えての盾を常に準備していたのだから。
万が一の為の、召喚待機のMAGが無駄にならなくて何よりだ。そんな事を、思考のどこかで思った。
「簡易召喚。バルドル」
白濁色の弾丸を、銀の体で受け止めるバルドル。契約に守られたその体には、傷一つつかなかった。
「また盾かよクソサマナー。ちっとは俺に暴れされろ」
「お前が暴れるとMAGが無駄にかかるんだよ。今の貧乏サマナーには、お前を暴れさせる余裕はない」
「チッ、まぁ今回は我慢してやるよ」
「ではサマナー、終幕と致しましょう」
「ああ、合わせろ!雪女郎!」
「「
ミシャグジ様の周囲を広域氷結魔法が覆い、それが一気に収束する事で多方向からのブフーラを連続で受けた。
ミシャグジ様は、その連射に耐えきれずに崩れ落ちた。
「デオン!」
「了解だ、サマナー」
そうして崩れ落ちたその首を、デオンの斬撃が切り飛ばした。
「良い手際だよ、デオン」
「まぁ、鍛えているからね」
ミシャグジ様の死亡と共に、異界が崩れ始める。これで、この騒動は終わりだ。ミシャグジ様というハイクラス悪魔にMAGを集めるために、人々を拐い、まぐわらせていた。そういう事だろう。
だが、これが所長の警戒するレベルの事件か?と考えると、どうにももう一戦ありそうだ。
「皆、集まってくれ。所長の勘だが、もう一戦ある」
「当たんのか?ソレ」
「あの隠れ猪突猛進な所長が生きてる理由が、勘が冴えてるってのだからな。周囲の警戒しつつ、備えろ」
そうして異界から弾かれると、目の前には青い着物の少女と、それを従えている巨漢のサマナーがいた。
「あらあら、ミシャグジ様を殺しちゃうなんてやるわね貴方」
「仲魔には恵まれてるもんでね」
とりあえずの観察結果、女言葉を使う理由は不明。オカマか?
使用COMPは左腕にはめているガントレットが怪しい。が、ガントレット型は硬いし強い。COMP破壊は無理と見る。
青い着物の少女は不明。筋肉の付き方から言って近接型ではない。が、存在そのものに違和感がある。擬態の類か?
「...ここの事は誰かに話したの?」
「そりゃ話すさ。天涯孤独つっても、遺骨くらいは拾ってほしいからな」
「...面倒ね。清姫ちゃん、頼って良い?」
「構いませんわ、サマナー。貴方には安珍様を見つけるまで生きていてもらわなくてはなりませんから」
少女が扇を振るう。それだけで高位魔法クラスの火炎が飛んでくる。
バルドルを盾にして防ぐが、それにより一手向こうに与えてしまったようだ。
「サモン!ホルス、ラクシャーサ、ヴィヴィアン!」
「バルドル、デオン、ラームジェルグ、前衛に!雪女郎、カラドリウス後方支援!ペガサスは上空から隙を狙え!」
敵の悪魔は、鳥形一体、妖鬼一体、妖精一体、人型一体。人型は見たことのない術を使う。あれは、術というより異能に近いか?
なんにせよ、対サマナー戦だ。
油断はせずに、敵の手札を把握し、こちらの勝ち筋を押し付けよう。
次回、VSダークサマナー
オカマは強いの法則に漏れず、今回も強敵です。
5/28 微修正
ドリルで削るアレってプリンターではないのだなーと感想欄で指摘があったのです。知識不足はアレですねー。
調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。
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