白百合の騎士と悪魔召喚士   作:気力♪

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月姫リメイクやりたいなー、と乞食のように呟き続けるスタイル。もはや記憶の彼方ですが、翡翠ルートの琥珀さんが好きなんだよぉ!

あ、CBCガチャはなんとか回していません。ストーリーが進むごとにアラフィフ引きたくなるけどね!


直死の魔眼と巨人たち

志貴くんの状況は、明らかに変だ。

何か切羽詰まった状況に陥っているのだろう。

 

「デオン、周囲の堕天使は?」

「いや、来ないね。戦闘音を鳴らしたのだから殺到すると思ったが、まだ余裕はありそうだ」

「志貴くん。開けるぞ」

 

この魔導結界の構築は、強力だが古い。確かプログラム内にピッキング用の魔法陣を入れていた筈だ。強引だが、引き摺り出そう。

 

「それは困るな、少年」

 

そんな事は、敵はさせるつもりはなかったようだが。

 

「あの子の心に取り入るつもりか、外道」

「いや、あいにくと雇われでね。詳しいことは知らないのだよ。ただ、その土蔵にいる少年を助け連れてこいと命令されただけだ」

「マッチポンプも良いとこだな?」

「同感だ」

 

ピッキングの術式を中止して、戦闘モードに移る。

バルドルとラームジェルグは現在縁の所にいる。使用不可能。

ペガサスは待機しているため、奴を殺すに足る十分なスピードを得るには時間がかかる。

 

こっちの手札は、デオンとサーバ、オセと雪女郎のみ。

 

まず仮定、志貴くんを置いて逃げる。却下だ、敵の計画のピースを埋めさせてどうする。全貌がわからない以上、それが世界の終焉への最後の一手の可能性とてなくはないのだ。

次の仮定、現状の戦力でフィン・マックールを足止めをする。敵の戦力が不明だ。デオンがいる以上詰みにはならないだろうが、向こうは知恵の鮭の力でこちらの戦力を把握しているだろう。

 

つまり、取れる策は本命のみ。

 

「サーバ、説得を頼む」

「...ディムナは、心の底から決めたことを曲げないわよ。それが、彼だから」

「それでもいい、お前の言葉で、お前が話せ」

 

俺の邪心塗れのお節介だけだ。

 

「フィン・マックール。知恵の鮭の力で彼女を見てみろ。」

「見たとも。鹿の角がとってもキュートだ。情報劣化というのも案外悪くないのかもしれないな」

「そう、あなたは変わらないわね。飄々と、華麗で。でも、大切なものを手放そうとはしない。そんな(ひと)のまま」

「お前の目的が何かは知らない。だが、それは彼女に誇れるものなのか?彼女を愛したお前の日々に胸を張れるものなのか?」

「ものだとも」

 

「...サーバ、私は全てを捨てて君を攫ってしまいたい。そう思う気持ちは嘘じゃない。だが、私は歴史に名を刻んだ英霊だ」

 

「故に私は、例えやり方が稚拙でも、足掻き、抗い続けているあの少女の味方をすると決めたのだ。私の、騎士の誇りに誓って」

 

その言葉で、わからなくなった。

アリスの目的を、知恵の鮭の力を持つフィン・マックールが肯定する?アウタースピリッツ確保の為に手段を選ばないあの少女が?

 

「少年、彼女は狂ってしまっている。方法を誤った事も多くあるだろう。だが、それだけだ」

 

「彼女は狂った心でも、尚この世界を救おうと決めて動いている。悪意という泥の中に浮かぶ一輪の蓮の華程度の善性だが、私はそれこそを尊いと思った。故に、私は騎士としてここにいる。それが、フィオナ騎士団団長、フィン・マックールの再びこの世に現れた意味だ」

 

「決意は、硬いんだな」

「ああ、だが一つだけ感謝をしよう、花咲千尋。君のおかげで二度と会えないと思った彼女に会えた。その事は、本当に感謝する」

 

屋根の上から見下ろすフィン・マックール。

戦う以外に道はないようだ。

 

「デオン、実質タイマンだ。やれるな?」

「ああ、やってみせる」

 

連携の訓練を行っていない以上、オセはデオンと並べて使えない。MAGを過剰に込めたチャージからの一撃、それがオセの使いどころだ。

 

「さて、白百合の騎士よ。私の親指かむかむ智慧もりもり(フィンタン・フィネガス)で見た結果、私では君に勝てないだろう。故に、策を使わせてもらう」

 

そう言って、フィンは高純度のMAGの詰まったMAGアブゾーバーをこちらに投げつけてきた。そして、地面にあたりアブゾーバーは砕けて中のMAGは爆発的に広がった。

 

そんな事をすれば、周囲の野良悪魔や堕天使たちはここに集中するだろう。MAGで体を構築している悪魔たちは、自然と高純度のMAGに寄せられるのだから。

 

そして、それを行った理由など明白。野良も堕天使も自分の駒として扱うためだ。

 

「ここで指揮官に集中するのか⁉︎」

「私は団長だぞ?槍働きは下に任せるさ!」

 

瞬間、本家の中から編隊を組んで堕天使が現れる。オリアスかオセを先頭にして、ビフロンスかメルコムが後ろから魔法で援護するという形が一括り、それが10。完全に包囲されている。

 

「デオン、フィン・マックールを独力で抑えてくれ。奴のいる本家の屋根上には敵がいない。一番厄介なお前を俺から引き剥がす策だ。罠だが、乗るしかない」

「了解だ。だが、ひとつ置き土産をしてからにさせてくれ。サマナー、私にMAGを」

「オーケーだ、やっちまえ!」

 

左手のスマートウォッチを操作し、デオンにマグネタイトを過剰に供給する。理論上はできる筈の絶技のエクステンド。それが、この技。

 

百合の花舞う百花繚乱(フルール・ド・リス)

 

剣舞の放つMAGの力場により、レンジの外の敵にさえ剣技の冴えを感じさせるという荒業を持って発動するデオンの対軍魅了技。それが、百合の花舞う百花繚乱(フルール・ド・リス)

 

その絶技に見惚れたのは堕天使もフィン・マックールも同じだった。

 

こちらが、一手先んじれる!

 

「オセ、チャージ!雪女郎、ペガサス、高域攻撃!」

「喰らいなさい、高位高域氷結魔法(マハ・ブフーラ)!」

「ヒヒーン!」

 

収束の魔法陣を通して作られた氷の槍がオセやオリアスに突き刺さる。オリアスへのダメージ量からいって、どうやら弱点のようだ。

 

だが、ダメージは重要では無い。氷結魔法の使える特性は、当たれば動けなくなることだ。

それならば、ペガサスの高域破魔魔法(マ・ハンマ)を回避することはできない。

破魔魔法の力場に弾かれる確率は約7割。だが、逆に言えば当たれば3割は死ぬということだ。なんとも楽な話である。

 

「オリアスは全員落ちたか...破魔弱点だったのか?」

「だが、オセは4匹残っている。俺一人では抑え込めんぞ」

「いいから、貯めた分ぶっ放せ!」

「了解だ...冥界波!」

 

オセを中心にマグネタイトで作られた力の波動が、二刀を媒介として放たれる。距離により減衰しはしたが、それでもこちらを包囲していた悪魔のほとんどの陣形を崩すことに成功した。

 

そして、それだけの隙があれば、屋根上に陣取るフィン・マックールの前にデオンがたどり着くのは容易だった。

 

ついでに、鹿並みの跳躍力を使ったサーバも、デオンの後ろについた。

 

「サーバ、余波で死ぬぞ。戻れ」

「ごめんなさい、サマナー。でも、見ないといけないの。ディムナが、自分の願いを捨ててでも立ち上がろうとしたその理由を」

 

「やれやれだ、頑固なところは変わらないね、愛しのサーバ。なら、なるべく離れていてくれ。私は君を傷つけたくは無い」

 

数瞬、静寂が走る。

 

「英雄、フィン・マックール。君の騎士道はそれでいいのか?」

「あいにくと、終わった世界で道を語る趣味はないのだよ、白百合の騎士」

「ならば、ここで切り捨てる。外道に堕ちた英雄ならば!」

「ヒトのいないこの世で、英雄が何を守るというのだ!」

 

崩れたところから現れる、怒りに身を任せ陣形の崩れた堕天使たちをオセを中心にした防衛で対処する。

その間、完全にデオンは孤立してしまった。

 

フィン・マックールは対悪魔戦のエキスパート、自身の祖となる戦神すら倒した強者だ。

神の力、知恵の鮭、そして剣より長い槍という獲物。デオンにとって不利な条件しか存在していない。

 

だが、そんな事は想定内なのだ。加速の術式を展開し、フィン・マックールの周囲に向けて属性地雷を投げ込む。数は8個。停滞の術式で屋根上にとりついたその不審な石に対して、どう動きたいかは明白だ。

 

知恵の鮭の力でその正体を把握したいだろう。だがそれは、槍から両手を離すという事。そんな隙を白百合の騎士が突かない訳がない。

 

『デオン、地雷はお前のMAGには反応しない。これが最後の援護だ、死ぬなよ』

『了解だ、サマナー』

 

デオンに念話を送ってから、指示を出す。ラームジェルグからの念話によると、向こうは大分数を減らせているらしい。残りはミドルクラスのみだとか。

なら、数分後には援軍が来るだろう。

 

「オセ!近接張ってくる連中は適当にあしらえ!俺と雪女郎でなんとかする!先に後衛狙って数を減らすぞ!」

 

現在の戦況は、正直厳しい。こちらのオセがどんなに巧くても、4匹相手をし続けるのはスペックが足りない。

それを援護できるのが、俺の銃撃と雪女郎の氷結魔法だけ。ペガサスの破魔魔法ももう通用しないだろう。故に今は一撃のために周囲を飛び回らせて加速させている。

 

「雪女郎、撃ちまくれ!」

「ええ、高位高域氷結魔法(マハ・ブフーラ)!」

 

見え見えの氷結魔法。そのままで当たるならミドルクラスの悪魔ではない。

故に、神経弾を装填したP-90を持って()()()()

 

「サマナーが前に出てきやがったぞ!狙え!」

 

当然、罠である。

 

マグネタイトの流れから敵の魔法のラインを認識、安全ルートを走り抜けながら的確にオセに銃撃を叩き込んでいく。神経弾は、当たった箇所から神経毒が流れ込み動きを鈍くさせるサマナー御用達の逸品だ。

氷結魔法を避けるのに意識を割いていた4匹のオセには、しっかりと銃弾の雨をお見舞いできた。これで、徐々に状況は変えられる。

 

そしてその速度のまま、オセたちの裏へと走り抜ける。

反発(ジャンプ)の術式を合間に挟む事でスピードを誤魔化し、続いて後ろについてきているビフロンスとメルコムにマガジンの残りの弾をばら撒く。

 

「このサマナー、速えぞ!」

「だが、狙いが甘い!弾切れの隙にやっちまえ!」

 

メルコムとビフロンスの魔法が俺を狙うのを感じる。どちらも火炎魔法。火炎に特化した相手には、魔反鏡により反射で一掃するのは現実的ではない。だいたい耐性の力場を持っているからだ。

 

なので、ちょっと位置取りをコントロールしてみよう。

 

()()()見えるようにマガジンの入れ替えを行う。この動作ももう慣れたもので、目を瞑ろうが走りながらだろうが問題なくできる。

 

「「「死ねぇ!」」」

 

そして俺を狙う火炎魔法(アギ)高位火炎魔法(アギラオ)の嵐が飛んでくる。その狙いの大雑把さにより範囲攻撃と化しているその炎の波を、空中に置いた反発(ジャンプ)の魔法陣を足場に大ジャンプして回避する。

 

すると、なんということでしょう。俺が上に消えた向こうには、神経弾の毒に苦しみながらも必死に俺のオセに追いすがっていた4匹のオセの姿が。

 

「フレンドリーファイアって、怖いんだよなー」

 

指揮官がいればこうはならなかっただろう。だが、この部隊を指揮していたフィン・マックールは今デオンの相手で手一杯。

 

4匹のオセ達は味方からの火炎魔法により体を焼かれ、その隙を逃さなかったオセの冥界波により命を吹き飛ばされた。

 

これで、戦況は一瞬だが俺たち側に傾いた。

 

「さて、残りの堕天使諸君。命乞いなら今のうちに頼む。面倒だから全員殺すってのも、味がなくて嫌なんだ」

「俺たちに、オセを殺させた⁉︎」

「悪魔だ、悪魔が居やがる!」

「そんな悪魔が、お前達の敵だ。10数える内に投降しろ、最初の一人は生かしておいてやる」

 

その言葉に、目を合わせるビフロンスとメルコム。

 

手前に従うぜ!と残りの全ての堕天使が一斉に投降して来てしまった。予想通りだが、実によろしくない。

 

「最初の一人がわからないから、お前ら全員くたばっとけ。オセ」

「ふん!」

 

再び放たれる冥界波。チャージは乗っていないが、雑魚を纏めてぶち殺してくれた。これだから、広範囲持ちは使い勝手がいい。

 

「オセ、魔石で回復しておけ。冥界波で結構体力使っているだろ」

「かたじけない。...して、あの騎士への援軍はどうする?」

「正直、手の出しようがない。戦場をうまく制限できたお陰で逃げられてこそいないが、速くて巧い。下手に手出ししたら逆に使われる。それに...大物が来るぞ」

 

本家の屋敷の崩れた屋根が吹き飛ばされる。そのパワーは相当なもので、吹き飛ばされた屋根が土蔵の壁に突き刺さっていた。霊的防護も物理防護もあるあの土蔵にだ。

 

来るのだろう、ハイクラス悪魔が。

 

「まったく、雑魚には雑魚を当てれば十分と思ったのですがねぇ。存外しぶとい。人間にしてはよくやりますよ」

「お褒めに預かり光栄至極。って返しと、鉛玉擊ちまくられるのとどっちが良い?」

「それはもちろん、礼儀のなっている方ですよ」

 

その言葉を聞き終わった瞬間に、思念操作でアナライズをスタートさせつつ敵の観察を行う。

 

本家から出てきたのは、羽のついた4足の生き物、恐らくグリフォンにのった緑色の甲冑に王冠を被っているハイクラスの堕天使。

銃弾の効果はなし、力場に全て弾き落とされた。

 

「オセ、止めれるか?」

「やってみせよう。未熟なれど、我が身も剣士なれば!」

「戦場の礼儀を弁えている。実に良いサマナーですね。アリスに縛られていなければ交渉を始めていた所ですよ」

「そりゃ残念。案外気が合いそうなのにさ!」

 

P-90を背中に回し、ストレージから取り出した各種属性ストーンを投げつける。

 

だが、普通に避けられた。グリフォンの機動力はかなり厄介だ。

 

「サマナー、飛ばれては何もできん!」

「引き摺り下ろすさ!空間指定(エリア・ターゲッティング)、起動しろ重力魔法(グライ)ストーン!」

 

重力魔法により堕天使の居る空間に力を加える。空中に着地しているならともかく、飛翔しているのならそれなりの力のコントロールが必要だ。まずはそれを崩す。

 

だが、そんな児戯など意味をなさないと言われているかのように、堕天使は力場を広げるだけで重力魔法を無力化してみせた。

 

「重力魔法か、珍しいものを使うなサマナー。だが、無意味だ」

 

そんな事は言われるまでもなくわかっている。次だ。アナライズの過程を見る限りでは、打撃に耐性はない。最高速のペガサスの一撃が決まれば大ダメージは与えられるだろう。だが、それだけだ。

 

奴を殺すには、火力が足りない。

 

そんな時、思考の外に置いていた土蔵から何かが崩れる音がした。

振り返ればそこには、霊的防護ごと扉を斬り開いた志貴くんの姿があった。

 

その両手を血に濡らし、涙を流しながらも目だけは真っ直ぐに堕天使を捉えていた。

 

「...これが、ヒトの力か?」

「そんな事は知らない。ただわかるのは」

 

「この衝動は、止められないって事だけだ」

 

瞬間、志貴くんが掻き消えた。

 

スピードは、高位覚醒者レベル。目で追いきれないほどだ。

 

本家の壊れた屋根を足場にして、一路堕天使の元に襲いかかる志貴くん。だが、滞空時間が長すぎる。堕天使が腰の剣を抜き切り返そうとする寸前、以前繋いだラインを使って志貴くんの目の前に弾性術式(クッション)を張る。速度の落ちた志貴くんは首を刎ねられるのをなんとか回避し、空中での体さばきにより堕天使の腕にナイフを沿()()()()

それだけで、奴の両腕はポロリとまるで当然のように地面へと落ちていった。

 

志貴くんはその交錯で命を取れなかった事に苛立ちを感じたのか、舌打ちを一つした後にまた掻き消えた。

 

そして再び飛びかかろうとするのを『殺せる策がある、乗るか?』なんて甘言にて止める。

 

堕天使の腕を切り落としたのはどういう理屈かは知らない。だが、今の志貴くんはハイクラス悪魔を殺す手段を持ち合わせている。

 

これは、チャンスだ。

 

だが、そう容易くはいかないもので、妨害のない事を良いことに堕天使は魔法のチャージを進めていた。高位クラス以上なのは間違いない。

 

「これが、アリスの求めた魔眼!侮っていましたよ。まさか両の腕を取られるとは!ですが、それもこれまで。戦士として分が悪いなら、術師としてやり合うまで。広域死霊召喚魔法(ネクロマ・オン)!」

 

堕天使が使った魔法は屋敷全体を覆った。

 

その後の光景は、目を疑いたくなるものだった。

 

オセが、欠損した部位をそのままに起き上がってくる。

オリアスが、氷結により凍らされた足をそのままに起き上がってくる。

メルコムとビフロンスが、ちぎれた体を補填しながら起き上がってくる

 

皆、殺したはずの悪魔だ。

 

「我が名はソロモン72柱が1柱、地獄の大公爵ムールムール。死霊魔術は我が得手よ」

 

死んでいたはずの、殺したはずの悪魔が地より蘇ってくる。その総数は、数えるのが馬鹿らしくなるほとだ。

 

思わず舌打ちしかけたが、自制する。意味のないことにタスクを割くな。

 

向こうの目的はどうであれ、死霊召喚によりこちらの戦況は圧倒的に不利になった。

 

作戦を練り上げる前に、実行に移すしかない。

 

『志貴くん。俺のペガサスがムールムールに一撃を当てる。その後のトドメを任せる。足場は、この位置に』

『...ああ、わかってる。アレを殺すには、衝動だけじゃあ足りない』

『決まりだな。頼むぞ少年!』

 

「ペガサス!」

 

本家を大回りに旋回して加速していたペガサスに、指示を出す。

命令はシンプル。突撃せよ。

 

待ちに待ったと言わんばかりに、ペガサスはスピードを寸分も緩めることなくムールムールへと襲いかかった。

 

十全のムールムールなら何かしらの対応をしていただろうが、あいにくと今は()()()()()()()()()()()()。そんな状態でのグリフォンさばきなど、大した事にはならない。

 

「速いかッ!だが、軽い!」

 

ムールムールはグリフォンを操り、あるいはグリフォンに任せてペガサスに対してカウンターを行った。神速の突撃に対しての前蹴り。

それを当てる技術は凄まじいものを感じるが、その程度だ。

 

()()()()()()()()()()()

 

ペガサスが通った道、志貴くんを中心に広げた範囲。

 

それだけあれば、反発術式(ジャンプ)の魔法陣を敷き詰めるには十分だ。

 

だが、そんな精密な術式操作をしている俺は格好の的であり、死霊魔術により蘇った者達にとっては格好の餌だ。位置取りも、深く入りすぎている。

 

だが、指示をするまでもなく一瞬なら稼いでくれると信じられる仲魔がいるので、実の所そんなに心配はしていなかった。

 

高位広域氷結魔法(マハ・ブフーラ)!」

「力よ爆ぜよ!冥界波!」

 

もっとも、さっき仲間にしたばかりのオセがカバーに入ってくれるとは流石に考えてはいなかったが。オセの評価爆上がりである。主人公か。

 

「行け!悪魔討伐者(デビルバスター)!」

 

無言で、志貴くんはトップスピードに乗った。

 

足場に乗るまでに数十匹の悪魔が道を塞ぐように現れる。だが、志貴くんは欠片もスピードを落とす事なく切り裂き、切り抜けた。

 

ミドルクラスの悪魔も混ざったあの連中を、ただナイフと素手で殺し抜けたのだ。

 

蜘蛛のように地を駆けて、撫でるように命を絶つ。それが七夜の退魔術。それをもう既に身につけているとか、将来有望どころの騒ぎじゃない。

 

そうして、反発(ジャンプ)の魔法陣の敷かれた空中へと躍り出た。もはや何者も彼を止めることは出来ない。

 

「...死が迫ってくるとは、こういう事でしょうね。だが、私もただでは死なない!受けなさい、高位広域電撃魔法(マハ・ジオンガ)!」

 

足場の限られている空中では、高域魔法を躱すことは出来ない。

志貴くん自体はスピードこそあれど耐久力のあるバスターではない。受ければ死ぬだろう。

 

「ペガサス!」

「ヒ、ヒン!」

 

だからこそ、読んでいた。死霊魔術に秀でている堕天使が攻撃魔法の一つや二つ持っていない訳はないと。

 

本来なら、魔法の迎撃をそのままカウンターにするために持たせていたアイテムだが、臨機応変にだ。

 

「遠隔起動、魔反鏡!」

 

志貴くんを中心に球を描くように魔法反射障壁を展開する。

その意味を知ってか知らずか、志貴くんは何のためらいもなく電撃の波の中に突っ込んで行き

 

そして、ただのナイフでムールムールの体を二つに両断した。

 

「見、事...」

 

それが、堕天使ムールムールの最期の言葉だった。

どうにも今日の堕天使は、誇り高い者が多い。ムールムールも出来れば仲魔にしたかった。それほどに、惜しかった。

 

程なくしてネクロマにより立っていた堕天使達は死に直し、戦況は一時収束となった。

 


 

上空から舞い降りて力を流す着地術を行った志貴くん。動きの下地は野山を駆け回るフリーランニングか。

 

「お疲れさん、志貴くん」

 

その言葉への返答は、向けられたナイフだった。

 

「俺の心が止まらないんだ。悪魔は、殺す」

「随分な台詞だな。悪魔っても色々だぜ?全部殺すんじゃあ手が足りねぇよ」

「でも、この衝動だけが正しいんだ。魔を祓えと語りかけてくる。俺の視界が狂ってたんじゃない、狂ってるのはこの世界で、この世界でヒトと名乗ってる悪魔なんだ」

「...極論だな」

「でも、もう止まったりは出来ない。悪魔を殺さないと、辻褄が合わない」

 

「ならば、私と来るがいい。少年」

 

屋根上から飛び降りてきたフィン・マックールがそんな事をのたまう。

 

『デオン、無事か⁉︎』

『すまないサマナー、シンプルに足で逃げられた!』

 

「ウチのデオンとやりあって生きてるとか、お前は悪魔じゃあないのか?」

「確認してみればいいさ。少年、君の衝動で」

 

「君の血筋は悪魔を見抜き、殺してきた。退魔衝動というらしい」

「...やっぱり、この世界にはもう悪魔しかいないんだ」

「早合点するな、コイツは堕天使側の敵だ!」

「...ああ、成る程。まずはそこを正さないと話は進まなさそうだな」

 

「私の今の主、アリスと名乗るあの少女は堕天使とは反目し合っている。かつて道を同じくしていたのは本当のようだが、最期の時を支配して終わろうとする堕天使の考えと未来を繋ぐ彼女の考えは合わなかったようだ。故に彼女は、魔王の仲魔となっている」

「魔王?」

「情報が断たれていても名前くらいは伝わるだろう?悪魔王ルシファー。それが彼女の協力者にして、人類を可能性に導かんとする存在だよ」

 

これは世界規模の話だ。どんなに強大な悪魔が関わっていたとしてもおかしくはない。だが、よりにもよって悪魔王とは大きくでたものだ。

 

悪魔を統べる王の存在は残っている知識の隅々に示唆されている。嘘八百というわけではないだろう。

 

「それで、ルシファーさんとやらはどういう世界が望みなんだ?」

「それはあいにくと知らないね。なにせ、昨日今日入ったばかりの新参なのだよ私は」

「それもそうか」

 

「関係ない、悪魔なら殺す。それが王であっても」

 

志貴くんは、完全に退魔衝動とやらに呑まれている。中の人を俺が殺したというあの言葉、それが真実ならば覚醒した事により血の記憶が呼び起こされ、悪魔の混ざった人々を殺してしまったのだろう。

 

「それでいいと、本当に思っているのか?少年」

 

だが、そんな悩みをこの英雄は押し留めた。

 

空気を読まずにデオンがフィンの首を取りに来るが、槍を構えて華麗に流した。デオンの剣の理が見切られてるな。おそらくそれも知恵の鮭の力。

 

「遅くなった、サマナー」

「いいさ、タイミングとしては悪くない。対応した向こうがおかしいだけだ」

 

「さて、本題だよ七夜志貴くん。君のその退魔衝動と直死の魔眼の力、人類救済のために使ってはくれないか?」

「...人類なんてどうでもいい、悪魔の存在を俺は認めない。人を、悪魔にするなんて事をしたお前たちを殺して終わらせる」

「それは、君が手を汚してしまったからかい?気にすることはない。この世界のヒトは大体が悪魔が皮を被ってるだけだ。君の行動も、君の衝動でそれを暴かれただけに過ぎない」

「デマ吹き込んでんじゃねぇよ英雄。不純物が入ってても、人は人だ。それの証明は肉体じゃなくて魂でするもんだろ」

「やはりそう言うか、花咲千尋。だが、少年は分かっているのだろう?心で感じたのだろう?」

 

「あれらは人でなく、悪魔なのだと」

 

返答はなかった。

確かに、出産器の発生以降人という生き物は変化している。だが、その魂は人のものである筈だ。

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「...人のフリをした悪魔が、他にも居るのか?」

「君の目は見た筈だ。あの世界こそが真実の姿。今は、邪悪の企みにより覆い隠されているがね」

 

邪悪の企み?

 

まずい、天秤ができた。このまま志貴くんへの勧誘を立ち聞きする事で得られる情報量と、志貴くん自体を守ること。どちらの方が重い?

 

殺してしまえば情報は得られない。

だが、言葉を紡がせ続ければ俺たちは確信に迫る事ができる。

 

この世界について俺たち人類よりもよく知っているアリスの知識を使って。

 

『サマナー、甘言の類だよアレは。止めろと命じてくれ』

 

デオンが行かせろと言う。だが、俺の心は情報を抜けと囁いている。

それ以上に、選択の自由を守れと囁いている。

 

故に、答えは決まった。

 

『...志貴くんに判断は任せる。口を挟むのは嘘の時だけだ』

 

信じよう。たった一度会っただけのあの少年が示してみせた善性を。

 

「邪悪の企みって?」

「どうやら噂を利用した大規模認識捜査術のようだ。誤魔化されているものは多すぎて詳しくはわからぬが、悪魔が世に潜むのに使われているのだよ」

 

「世界規模でね」

 

その言葉に、ここにいる皆が息を飲んだ。

ふと、志貴くんの言葉とあの日見た夢を思い出して顔を触る。問題のない人の顔だ。とりあえず、自分は除外できる。

 

「それで、俺に何をさせたいのさ?」

「解錠と、暗殺だ各地に眠る聖遺物を停止させるためには、それを保管してある祭具殿に赴かなくてはならない。だが、各地には常に最新の魔導技術による結界が張られている」

「それを、殺させようっての?」

「そうだ。あとはおまけ程度ではあるが、人のフリをした悪魔を見抜いて殺してくれると助かるね」

 

「こちらからの要求は以上だ。それを飲んでくれるのならば、新世界でありとあらゆる報酬を約束する。まぁ、多少の遠慮はしてほしいとはサマナーは言っていたがね」

「俺は...」

 

「説明する気がないみたいだから言っておく。アリスと堕天使、組んでないにしても繋がってはいるだろ。タイミングが良すぎる」

「千尋さん?」

「...さてな、あいにくと私も新参だ。その手の謀には詳しくない。だが、サマナーのこの世界を守りたいという思いは本物だ。堕天使どもとは相容れないさ」

 

「言葉は尽くした。さぁ少年。君の選択で決めるんだ。君の行くべき道を」

 

「何カッコつけてんのよ、この職務怠慢絶倫馬鹿男!」

 

屋根の上からサーバがフィンに向かって飛び蹴りを放ってきた。

槍をふらりと動かすことでその蹴りはあっけなく防がれたが、その激情は伝わったようだ。

 

「どうかしたかい?愛しのサーバ」

「ディムナ、あなた自分の選んだ道の納得をこの子に押し付けてどうするの!それが貴方の誇れる道?ふざけないで!」

 

サーバの言葉で、ずっと感じていた違和感に得心がいった。

このフィン・マックールという騎士は、納得を求めていたのだ。

 

おそらく、目的と結果だけを見たら間違いなく人類存続に繋がるとわかってしまったが故だろう。智慧だけを与えられた者同士として、なんとなく、そんな共感を覚えた。

 

「私の愛したディムナって(ヒト)は、馬鹿だったけど愚かじゃなかった!自分の道をまっすぐ歩いて私を選んでくれた!だから私も貴方を選んだの!」

「...サーバ、私はあの日の若造ではない。時に自分の心よりも正しいことがあると知ってしまったんだ」

「嘘、ディムナはディムナよ。だから、誰かの言葉じゃなくて貴方の言葉で話してよ」

 

「それなら、私も力になるから」

 

完全に戦場の空気が止まった。

 

今のうちに志貴くんを守れる位置に移動する。

フィン・マックールは、それを黙って見過ごした。

 

「...私の望みなど一つしかない。サーバ、世界の終わりを君と迎える事だ」

 

「だが、それだけで満足できるほど私は無欲ではなかった。世界の終わりを、少しでも先延ばしにしたいと思ってしまったのだよ」

 

「だから、サマナーの甘言に乗ったのだ。私の智慧を持って、最も長く世界が続く可能性が高いのは彼女のプランだからね」

「そのプランってのは?」

「流石にそれは言えないな。他の者ならともかく、術を知り、悪魔を知り、世界を知る君ならば対抗策を打ち出してしまうかもしれない。そう、私の勘は言っている」

「...智慧じゃあないのか?」

「あいにくと、わからない事をわかる力ではないのだよ、私の親指かむかむ智慧もりもり(フィンタン・フィネガス)はね」

 

「じゃあ、お前の知るプランより人類存続の可能性の高いプランを提示できたら、お前は寝返るのか?」

「いいや、それはない。騎士は誓いを破りはしないものだよ」

「それじゃあ、やっぱり殺すしかないな」

「そのようだ。もっとも、武力で勝てない私は目的を果たしたら逃げるがね」

 

再び戻る緊張状態。

 

志貴くんの答えが、全てを決める。

 

「正直、世界の話は全然わからない」

 

「けど、誰を信じるかって事ならもう決めてる」

 

「俺は、千尋さんを信じる。恩人だから」

 

「いろいろ考えることはあるけれど、今はそれでいい。そう、俺の魂が言ってるんだ」

 

「顔の見えない誰かより、貌の狂った優しい人を信じたいって」

 

その言葉は、ヒトを殺した直後の志貴くんから出たとは思えないほどひどく冷静で、でもどこか希望を持った言葉だった。

 

「...仕方がないな。サマナー、説得は失敗だ。無理やり連れて行くにも戦力が足りない。力を貸してくれ」

「そうね、花咲千尋一行が来たのは予想外。貴方に責はないわ」

 

ふと、どこからともなくアリスが現れた。

空間転移の類の予兆はなかった。とすれば虚数異界を使った技術だろう。

 

「志貴くん、見てくれ。あの女は人間か?」

「...ああ、人間だ。多分、あの縁さんって人と同じくらいに」

「そうよ、私はこの世界で唯一の人間。もっとも、肉体の方は大分改造したから証明はできないけど」

 

今の言葉で、アリスは縁の事を知らないと自白した。なら、誰が縁を狙う?平成結界のバックドアを作るための純人間の魂を求めているのは誰だ?

 

「じゃあ、行きましょうフィン・マックール。力尽くは芸がないけれど、後から命令をする方法はいくらでもあるわ。サモン、呂布奉先」

 

「■■■■■■■■■■■―――!」

 

またしても現れる2m超えの巨漢。今度は赤銅色の衣服を纏っている。アリスはそういうのがタイプなのか?いや、少女に巨人の組み合わせは確かに映えるのだが。

 

そんなどうでもいい事を考えていると、フィン・マックールが親指を噛んでいた。知恵の鮭で勝率を確認しているのだろう。

 

「駄目だサマナー、後一騎英霊を出せ。向こうにはもうじき増援が来る、手数で押し切らなければ即殺は不可能だ」

「...注文多いわね。でも、あなたの言葉なら信じてあげる。...正直、コイツは出したくなかったんだけどね。サモン、スパルタクス」

 

現れたのは、灰色の肉体を持つ巨漢。相変わらずの2m超え。だからどんだけ巨人好きなんだよ。

 

「サマナーよ、圧政か?」

「ええ、あのサマナーは無知な少年に圧政を強いている。敵よ」

「あいわかった。では、叛逆と行こう!」

 

敵アウタースピリッツは3体。まずは無敵の智慧フィン・マックール。次に赤銅色の矛のようなものを持つ巨人。あれは矛に見えるがかなりのギミックがあると見た。理性はないようだが、武器の使い方なんぞ身体が覚えているものだ。油断はできない。最後に灰色の筋肉の小剣使い。圧政というワードが気になるが、あいにくと知識の中に該当する悪魔や英雄のデータはない。

 

屋上から降り立つ3体の英雄。

 

優先順位を考える。まず、絶対に放置してはいけないのがフィン・マックールだ。奴は魔術を使う。魔術師というわけではなくとも、状況をひっくり返す小技の2、3は持っているだろう。故に、フィンにはデオンを当てる。

次に、矛の巨漢。あの武器を使いこなした逸話があるのなら、力だけでなく技も一流だろう。オセと雪女郎の即席コンビにカラドリウスを召喚してのサポートで対応する。

最後に、灰色の筋肉。獲物の長さは最も短く、速さも最も遅い。つまり何かある。その技か逸話の正体を探るために、コイツには俺が対応する。というか、持ち駒的に俺がしなくてはならない。ペガサスは、迎撃要員として矛と小剣のどちらにも対応できる位置に置いておく。

 

『志貴くん、いいか?』

『千尋さん?』

『あれは悪魔じゃない。でも、殺せるか?』

『そうしなきゃならないなら、やる』

『なら、頼む。...正直、辛いだろうが言わせてくれ』

 

「俺の命、君に預けた」

「...ああ、やってやる!」

 

正直、俺のやることは外道のそれだろう。傷心の子供を戦力として扱うなど、あってはならない。

 

さて、所長たちが援護に来るまで俺たちは死なずに済むだろうか。

 


 

「圧政者よ、叛逆の時間だ!」

「お前から叛逆を受ける謂れはない!」

 

オセと雪女郎の即席コンビは、オセの技量をカラドリウスの反応性向上(スクカジャ)により上げる事でどうにか渡り合えている。あの分なら、あと3分は持つ。

 

デオンは問題ないが、それが問題だ。殺しはされないが殺しもできない。2人の巨人の余波によりたまに生まれる隙を、アリスの呪殺魔法と思われるトランプのナイフの雨がカバーしている。

 

そして俺たち。近接担当が居ない以上、俺のやるべき事は明白だ。

 

「圧政!」

「クリーンな職場を心がけてるよ畜生!」

「それを判断するのは付き従う者たちである!」

「仰る通りで!」

 

この筋肉との近接戦闘である。

 

初撃、小剣での突きからの払い。運動速度と握り方からその剣筋を見切った俺はストレージから取り出した切り札を持って対処に当たる。

 

「取っておきたい取っておき、だったんだけどな!」

「...まさか、圧政者ではないのか?だが、圧政を感じる」

「圧政って感じられるのか...」

 

取り出した切り札は、ショートソード。

 

()()()()()()()だけの特注品。俺が所長から生き残るための術理を教わりきった卒業証書のようなものだ。自腹だが。

 

巨漢の初撃は、小剣による突き。速度は同等、威力は異常。

初速から着弾タイミングを計算した俺は、その突きにショートソードを添えることで最高速に達する前に逸らす。

 

ショートソードを添えた事で伝わる力で、自分の体は浮き上がり吹き飛ばされた。

 

だが、計算の範囲内だ。

 

あらかじめ用意していた弾性術式(クッション)で力を抜き、反発(ジャンプ)の術式で空を足場とし、すぐそこまで来ていた筋肉の斬撃を見る。

 

突進のスピードをそのまま載せた一撃は、受けるのは不可能だろう。

この一撃は致命のもの。だからこそ意味がある。

 

「物反鏡!」

 

その致命の斬撃を、物理反射障壁をもってこちらの武器にする。

 

斬撃に込めた運動エネルギーをそのまま返された筋肉は吹き飛び、赤銅の巨人へと衝突した。これはラッキー。

 

だが、俺にとっての致命の一撃は敵にとってそうであるというわけではなく、筋肉には大したダメージは見られなかった。いや、今のは死んどけよ。

 

「■■■■■■■■■■■―――!」

「なんたる叛逆か!圧政者ながら見事なり!」

 

「サマナー、濃いのを2倍にしてどうするんですか!」

「すまんが、赤銅の武人一人で手一杯だ。あの()()()()()()筋肉は相手にできんぞ」

「ダメージ反応で回復と強化か?やめてくれ、ただでさえ強いのにさらに強くなるとかちょっと大概にしろよ異世界英雄」

 

「行くぞ、我が愛を受け取りたまえ!」

「■■■■■■■■■■■―――!」

 

物反鏡は使い切った。もう反撃の余地はない。

()()()

 

風王斬撃(エアリアルザッパー)!」

 

上空から重力加速度を十分に乗せたその大上段は、隙を見せていた筋肉の兜をかち割り、その命を奪いきった。

 

()()()()()

 

「良き剣だ。だが、その剣からは愛が足りない!」

「なぜそこで愛⁉︎とは聞かないよ叛逆筋肉!」

 

殺しきれなかったことを手応えで感じていたのか、所長の斬撃は首を狙って放たれていた。

 

それを小剣で受け止める筋肉。

 

暴風解放(ブラスト)!」

 

クレイモアに込められた疾風魔法を解放して筋肉の体を切り刻む所長。だが、それを受けても尚奴は笑っていた。

 

「フハハハハハッ ゆくぞ、我が愛は爆発するぅッ!!」

 

MAGとは違う何かが、爆発的に集まっていくのを感じる。

これが、魔力。世界を犯す、力の根源。

 

来る。

 

技はない。ただの魔力の爆発。

 

それだけで、周囲すべてが吹き飛んだ。

 

今の一撃の余波で、オセと雪女郎が消し死んだ。上空にいるペガサスとカラドリウスは大ダメージこそ受けたが、なんとか生きている。

 

「さぁ圧政者よ、叛逆はここからだ」

 

敵アウタースピリッツは3体、いずれも健在。

敵サマナー、健在。

こちらの戦力、戦えるのは俺とデオンのみ。所長は安否不明。

 

「いつも通り、ハードな展開だな!」

 

増援が来るまでの時間は不明。だが、たとえ10秒後に来るとしてもまともに戦えば俺は死ぬだろう。

 

策を練ろ、頭を回せ。

戦いは、これからだ。

 

 




高速で上空に到達→隙だらけの筋肉見つけたのでアンブッシュ→ちょっと頭をずらして兜で受けられる→クライングウォーモンガーぶっぱ→死屍累々

ちなみに、スパさん敵味方関係なくぶっ放したので呂布は激おこです。特に理由もなく叛逆しようとしてたマンのリミッターが取れます。貂蝉似じゃないから...

なお、デオンとフィンの斬り合いがカットされてるのは演出の都合です。デオンが押してファンが捌くってだけなので魅力的に書くのは難しいのだ。

あと、何話してるかわからない方が後で楽しいからね!

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