牛くん霊衣解放でミノタウロスやりたいんだけどなー、まだかなー。
「クソ、結構な頻度で雑魚が湧いてくるな」
「ですね。今のところ私とデオンさんで対処できてますが、同じ悪魔を二度見ません。こういうのは多いんですか?」
「いや、かなりレアだ。異界の接続領域がデカイんだろうな。アウタースピリッツ特有のものなのかはわからないが、魔界の色んなところと繋がってるから出て来られる悪魔も多いんだろ」
これまで出てきた悪魔は12種類。いずれもアナライズ完了するまで嬲ってから仕留めたため、情報は得た。が、それだけだ。役に立つかどうかはわからない。
「多様な悪魔で弱らせて本丸で叩き潰す。迷宮の構造とは違ってシンプルなやり方だな。教科書通りだ」
「そうなんですか。でも、本丸ってのは?」
「ミノタウルスの亜種、主直々にって所だろうよ」
そこにどうアウタースピリッツが関与するのかは不明だが、虎穴の中で無駄に頭を回すほど意味のないことはない。歩いて進んでブチ殺す。それが基本だ。
『千尋くん、マップ見て』
『何がですか?所長...凄い距離移動しましたね』
『違うって。ワープゾーンだよ、しかも一方通行の』
『分断を狙ったトラップですか』
『あと、悪魔じゃないのがたまに混ざってる。カマキリとかシカとか。殺して食べられなかった』
『アレ、悪魔じゃなかったんですか。こっちでも交戦したんですが、アナライズは通りました。霊的存在なのは間違いないですよ』
『ハリマくんは?食べてお腹壊してない?』
『...特に腹の調子は変わらないな』
『食ったのかよ』
とりあえず、毒とかではないようだ。一安心。
「サマナー、曲がった先に階段がある。下へ降りるものだ」
「じゃあ、ここをとりあえずの合流地点にするか。簡単な結界を張る、警戒頼むな」
エストマストーンを階段前のフロアの四隅に起き、相互作用を起こすようにチョークで陣を描いて起動させる。
MAGはそこそこに使ったので、4時間程度は保つだろう。
「じゃあ俺たちは一足先に休憩といくか。30分交代で見張りな」
「了解です。でも、ハリマさんたちならすぐに合流できそうですけどね。迷宮の壁を無視して真っ直ぐにこっちに来てるんですから」
「だな。所長もその痕跡を見つけたらしいから、3人との合流はそうかからないだろ」
実際、マップを見ると所長とハリマの位置は近づいている。ワープゾーンを踏んだことで逆に合流が近付いたようだ。まさにサイオーホースなり。
「...となると、割とやる事ないな。突入前に準備はあらかた終わらせてるし」
「警戒も、疲れない私がいるからサマナーが警戒し続ける必要もないからね」
さて、思考の整理。この結界にはいくつかの効果を期待した。まずは単純に悪魔避け。それぞれの悪魔に対しての必勝パターンを確定できないこの異界での戦闘はかなり面倒だ。避けられるに越した事はない。
次に、仮拠点としての機能。これから本格的にダンジョンアタックをするにあたって、一時退却ができるかどうかは生存率に直結する。本当は異界の外に出るのが一番なのだが、出れない以上は次善の案だ。
そして最後。これが本命の狙いだったりする。
移動型の主というキーワード。壁となっている石に魔力がこもっているという事実。
それが導くのは、ここが敵の感知領域内部である可能性だ。
そんな所に邪魔な結界でも作られたものなら、短絡的な思考の者なら真っ直ぐに突っ込んでくるだろう。
そして、その策は見事に引っかかった。
「ドタドタドタドタ、足音を隠さないなぁ敵さんは」
「千尋さん、敵ですね」
「ミノタウルスの亜種って奴かね。デオン、縁、階段からだ。上取ってるウチに削れるだけ削るぞ。サモン、雪女郎、オセ、バルドル」
「了解です!サモン、タラスク!」
階段を上ってくる白い毛と二本の角の巨人。顔の半分を仮面で隠している。
「ウヒヒヒヒヒッ!」
アウタースピリッツか、あるいはその能力で作られた魔物か。
何にせよ、手加減をする必要はないだろう。
「弾幕張るぞ、撃ちまくれ!」
いつも通りのP-90の神経弾、雪女郎の狙いすました
取り得る全ての火力で階段を上ってくるのを防ごうとしたが、応えない。全ての攻撃は減衰はあれど力場を抜けているので耐性があるというわけではない。にもかかわらず真っ直ぐにその巨人は上ってきた。
純粋にタフなのだろう。しかも攻撃の雨に晒されても進み続ける筋力もある。
シンプルに強い。
だが、それだけだ。
「サマナー、奴の動きに技巧はない。恵まれた体格任せだよ」
「殺せるか?」
「微妙だね。敵が彼一体とは思えない」
「だろうな、あのナリで歌が得手とは思えない。単純計算で歌女が居る」
火力の雨を突き抜けてミノタウロスがやってくる。
とりあえずの所は遅延戦闘でいいだろう。増援が来るまで殺されずいなし、ついでに余裕があれば殺す。
「デオン、いけるな?」
「当然、捌ききってみせるさ!」
合図と共に戦術をシフト。カラドリウスを召喚し、強化魔法の陣形を取る。
「コロス、コロスゥ!」
「単細胞だな。考える必要がなかったんだろう、幸せ者め」
雪女郎の
「ハァ!」
「ゥウウ!」
階段の下から放たれる二本の大斧によって挟むように放たれる横薙ぎ、それを上段からの踏み込みにて叩き落とすデオン。
だが、デオンの想定ではおそらく斧を地面に叩き落とすつもりだったのだろうが、しっかりと握られたままだった。
『サマナー、筋力だけなら私より上だ!警戒を!』
「強化込みだぞ、化け物が!」
斧を持ち上げる事でデオンを吹き飛ばすミノタウロス。だが、デオンは軽業士のように空中で姿勢を変え、天井に着地、そこから脳天に向けて刺突を放った。
しかし、必殺かと思われたその一撃は反射的に動いたミノタウロスの仮面で受けられた。器用な真似をするものだ。
コレで仕切り直し。
階段の残りは半分ほど、守りの盾はニ撃で破られたためそう時間は稼げないが、一息はつけた。
「上を取っている限り一手で殺されることはない。だが、綱渡りだぞサマナー」
「だな。でもやれるだろ?お前なら」
「命令とあらば、やってみせよう。騎士の端くれだからね」
「なら命令だ。適当におちょくってやってくれ」
「了解だ」
階段をミノタウロスが登ろうとする。戦闘の再開だ。
三種の強化を貰ったデオンが立ち塞がる。今度は縦振り、跳躍からの大上段。それがトップスピードに乗る前にデオンが体を二斧の間に滑り込ませて斬撃を放つ。
ミノタウロスのスピードも乗った斬撃は、頑強な身体を切り裂いて、それ以上に衝撃力を伝えた。
ミノタウロスの体重がどれほどあるかは知らないが、かなり重いだろう。それが空中に飛んでいるのだから、まさに砲弾のようなものだ。
それを、筋力と技巧によって跳ね返すのがデオンの絶技。あの弾幕で崩れなかったミノタウロスを後退させたのだ。
打撃のような斬撃、サーベルに負担をかけるのであまりやりたがらない技術だそうだが、今の状況では最適解だ。
「ウグゥ!」
「クリティカルって所かね!弾幕再開!」
そうして再び稼いだ距離で、再び弾幕を仕掛ける。
一発一発の効果は薄くても、塵も積もれば山となる。
それがわからない敵ではないだろうから、そろそろアクションが起こるはずだ。
そうして、女の鈴の音のような歌が響き渡った。
「これが噂の!縁、無事か⁉︎」
「大丈夫です!タラスク、聞こえてる⁉︎」
「いや、あっしには何も。これが、選択性ってやつですかね」
「私にも聞こえませんわ、サマナー。人だけを狙い撃つ呪詛の歌、面倒ですね」
「デオン、お前はどうだ?」
「聞こえていない。だから大丈夫だ」
つまり、本当に人間だけを狙い撃っているのだろう。なんと面倒な。
だが、歌が作った一瞬の隙はミノタウロスに
アナライズ完了まではあと15%、まぁ充分なデータだろう。
「大体のデータは取れたな。破魔呪殺無効に物理耐性てんこ盛り。弱点属性のパターンは無いあたり、合体で補強されてんのか?...殺すには魔法系攻撃を主体にしたアタッカーが必要だな」
「千尋さん、追わなくて良いんですか?」
「地の利が向こうにあるのにか?俺が死ぬわ」
倒すためのピースは増援の中にある。今は、待ちのタイミングだ。
「とりあえず、休憩の続きと行こうぜ」
「...ですね」
出していた仲魔を
内側からぶっぱしたにしては大した損害はない。効果時間の減少は特に無さそうだ。
「来たよー、千尋くん」
「...すまん、遅くなった」
「構わねぇよ、誰も死んでない。ついでにミノタウロスのアナライズデータも盗めた、攻略前の前哨戦にしては上々だよ。休憩は必要か?」
「私は大丈夫、ハリマくんは?」
「俺もだ、道中食事には事欠かなかったからな」
「...ああ、俺も平気だ。戦闘は大体瞬殺で終わらせられたからな」
3人とも大丈夫とは楽で良い。一番休憩が必要な俺が十分に休めたので、ここからが攻略だ。
「じゃあ、簡単に作戦会議を。ミノタウロスと会うまで所長とハリマを温存して進みます。なんで前衛は縁とデオンの2枚、殿には仲魔のオセを付けます。中衛の順番は俺、ハリマ、所長、志貴くんの順。質問は?」
「戦闘をほとんど2人に任せちゃうけど大丈夫なの?」
「この程度の
「では、バックアタック対策は?オセが優秀なのはわかるが、一体では不測の事態が起きかねまい。何せ、隊列が縦に伸びている」
「そのためにぶっ殺マンの志貴くんを後方に配置してるんだ。言い方は悪いがオセは囮だよ」
「...なるほど、何かされる前に、俺なら殺せるって判断か。でもぶっ殺マンって何だよ」
「まぁ警戒アプリもあるし奇襲の類はそこまで過剰に怖がらなくて良いと思ってる。警戒していた堕天使の軍勢は姿を見せないしな」
「待ち伏せからの挟撃は?迷宮の主が向こうなんだからできると思うよ?」
「その時はハリマと所長もカバー入って下さい。温存はミノタウロス攻略の為ですが、万が一に備えてって事でもありますから」
「了解だ」
「うん、即興にしては悪くないね。流石千尋くん」
「所長、こういうのは本来年長者の役割だと思うんですが」
「年功序列なんてこの業界じゃあ流行らないって」
「...それもそうですね」
「納得するのか」
程よく空気が緩んだところで進軍を開始する。MAG由来のトラップなら保持MAGの放つ波がパッシブソナーのサーチに引っかかる。ギミック式のトラップなら、しっかり見ていれば引っかかる事はないし、そう大それた仕掛けにはならない。せいぜいが矢が飛んでくる程度だろう。
床が抜けるとかの大仕掛けはそれだけの準備が必要なのだ。それは異界だとしても変わる事はない。
「うん、こういう複雑な異界に潜ってるとオートマッピングの有り難みが分かるよねー」
「...これが普通じゃなかった時代とかあるんですか?」
「悪魔召喚プログラムが流れる前なら裸一貫で乗り込むことはあったんじゃないか?記録残されてないから知らないけど」
「ああ、合ってるよ。あの頃はネット環境も今ほど整ってなかったから完全に手探りだった。そんなんで戦ってたら、まぁ死ぬよな」
「...なるほど、悟り世代という奴か」
「間違って...ない気もしてきた。志貴くん割と達観してるし」
「人に変なレッテル貼らないで下さいよ」
そんな事を話していると、魔術的に怪しい床を発見。全員に待ったをかけてハイ・アナライズにて解析をしてみる。
反応を解析してみると、地雷系のトラップのようだ、タチの悪いことに細い小道で。MAG量から逆算した想定火力では端を通っても手傷を負わされるだろう。
「まぁ、こういうのの対処は確率されてんだけどなー」
適当な材料の肉に適量のMAGを内包させて作ったミートボールをトラップ床に投げつける。すると、トラップは肉とMAGにより生き物と誤認して発動してしまうという理屈だ。
定石通りトラップは爆発し、安全距離にいた俺たちは無傷で終わる。さて、次に進もう。
「所でサマナー、今の肉何でできていたんだい?」
「知らん、豚か何かじゃないか?」
「...そうである事を祈るよ」
人肉を使っていたのは過去のことだ。今の時代わざわざコストのかかる材料を使う業者はないだろう。
「さてと、と」
ついでに、術式全体をMAG非透過性のビニールシートで覆うことで周囲のMAGの収集によるトラップの再起動の防止。うん、定石だ。
「...先人の知恵って凄いんだな」
「ですねー」
「縁はちゃんと前見てろ。前方からの奇襲防衛がお前の仕事だぞ?」
「すいません、つい」
「...精神的に楽な所で育てたツケかね?」
まぁ、俺や所長、志貴くんもいるのだから特に問題が表面化はしないだろうが、気がかりではある。縁はエンジンがかかるまでに少し時間がかかるようなのだ。
まぁ、エンジン入ったときの根性は流石の高位覚醒者なのだが。
「あ、一応シートは踏むなよー」
「はーい」
小道を通った先には下のフロアへの階段があった。縁と所長に確認を取ってみた所、二人の意見は一致、本丸は下だと。
そして階段を降りた先には、大扉。この迷宮の主の間のようだ。
「戦闘は手筈通りに。ただ、敵には伏兵がいるだろうから無理攻めだけはしないように」
皆の「了解」の声が自然と揃う。
さぁ、まずは牛狩りだ。
扉を開けたその先には、ミノタウロスと
何かとしか認識できない。目の前にあるはずなのに認識がズラされている。
だが、確かにそこに居る。
「...ウゥ、ウゥウ!」
「いい子ね、ミノタウロス」
その何かは、ミノタウロスをなだめていた。
その理由は明らかだ。
ミノタウロスは、先ほどの戦闘で受けたダメージの回復に努めていたのだ。
「あの装束、テンプルナイトか?」
「だろうな、上に仲間がいた」
「さぁ、ミノタウロス。やりなさい。あなたのやるべき事を」
「...ニンゲン、食ウ!」
「そういうのが相手なら、躊躇わなくていいな」
ハリマが一歩踏み出し、自身の心のタガを外す。
肉体は変成し、情報存在である悪魔のものへと移り変わる。
そして、その上にハリマ自身の魂が発現し、本来の悪魔の姿とは違うハリマだけの姿へと変身する。
これが、
そうしてハリマが変わり果て現れたその跡には、紅に燃えるようなコートを纏った長身の人型がいた。
「変身完了。幻魔クルースニク、参る!」
「サモン、雪女郎、バルドル、カラドリウス!」
「...行きます!」
ヒトの食い残しを投げ捨ててこちらに向くミノタウロス。
それに対するは、三色の強化を受けた白百合の騎士と新人聖女。
「殺すゥ!」
「やらせない。あなたが散らした命の為に!」
二斧の振り下ろしを縁が
真正面からの力比べの為縁には相当の衝撃が来るが、地面に衝撃を逃がすことで一手完全に防ぎきった。
「続くよ、サマナー!」
「おうよ!」
敏捷性、反応性においてデオンはミノタウロスを上回っている。故に一手取れば先手はこちらだ。
ふわりとの擬音がつきそうなほどに軽やかなステップで背後に回り、足の健を狙った斬撃が放たれる。
それを防いだのは、ミノタウロスから発生した反射現象だった。
「ッ⁉︎」
「ウヒィ!」
狙いすまされた斬撃がそのままの威力をもってデオンに返される。幸い耐久性向上のお陰で致命傷とまではならなかったが、生まれた隙は大きい。
「シネ、シネェ!」
当然放たれる大斧の一撃。それをデオンはサーベルで受け流そうとするも、ダメージが響き踏ん張りが足りない。
まるでスーパーボールのようなスピードで、デオンは迷宮の壁に叩きつけられた。
だが、間一髪生きている。まだ、戦えると言わんばかりにデオンは立ち上がろうとしていた。
『無事か、デオン』
『なんとか、ね!』
「カラドリウス、宝玉配達」
「了解さ!」
そしてその吹き飛んだデオンに対しての追撃をミノタウロスは起こそうとしたが、地面を凍らせ踏み込みをずらす雪女郎のサポートによってミノタウロスはあらぬ方向に飛んで行った。
「総員前進!デオンを戦線の内側に!」
ミノタウロスが立ち直る前に陣形を動かす。考えなくてはならない事はあれど、こんな序盤でエースを落としてたまるか。
「ウゥ、ゥウ!」
「攻撃は二段以上のコンビネーションで!敵側の反射のネタを割るぞ!遠距離組、小手調べ!」
「了解!
「
所長とハリマ、二人の魔法は曲射と呼ばれる高等技術を使って放たれた。力のコントロールによって曲線を描くように放たれる魔法、あれなら反射力場に当たっても真っ直ぐ帰ってくる事はない。
そして、着弾。敵側は術のインターバルか、
原因はわからないが、とにかく当たった。
逸話防御による無敵などでは、ないようだ。それどころか、火炎魔法については力場による減衰が見られなかった。
その現象を見て、ピンときた。
「それで、反射のネタは?」
「...力場のコントロール。どういう術式かは知りませんが、敵方はミノタウロスの耐性を自由に変えられる。とりあえずそう仮定します」
「魔法が当たったという事は無敵ではないようだな。インターバルか?」
「多分な」
力場とは、魂の防御機構だ。悪魔と合体するなどで魂に刺激を与える事で、力場そのものを変化させることは不可能ではない。容易く出来ることだとは絶対に言うことは出来ないが。
それと、ディーヴァと呼ばれたアレのやったことを考えると一つの仮説が立つ。歌によって、魂を改竄する能力。
自我境界とて魂の領分だ、魂を改竄することができれば境界に影響を与える事とて可能だろう。
「つまり、黙らせるべきはあの歌女!サモン、ラームジェルグ!」
「フン!」
陣形から自由な新しい悪魔を召喚し、アレにちょっかいをかけてみる。死兵の役割だが、ラームジェルグは躊躇わなかった。それが必要なのだとわかっているからだろう。
『ミノタウロスに動きなし!そのままぶった切っちまえ!』
『了解だ、サマナー!』
何かがいる地点に対して放たれるラームジェルグの一閃。
この段階まできてミノタウロスはようやくラームジェルグの存在に気が付いたようだ。「オマエェ!」と叫び激昂しているのがわかる。感知能力はそう高くないようだ。
だが、その一閃は何かに当たることなく、
力場による無効化現象ではない。あれは力場の内側にその属性の攻撃を通さないだけだ。
吸収現象でもない。吸収現象は属性を構成MAGに変換する現象だ。だから、攻撃のエネルギーは無くなり、結果攻撃は停止する。
あのようにすり抜ける現象を、俺も海馬の魔術師の知識も知らない。
いや、そもそもがおかしかったのだ。認識阻害の術の類は馬鹿みたくMAGを注ぎ込まなければ覚醒者には通じない。あれは認識のステージ差を利用した術式だからだ。
つまり、姿が捉えきれない時点であの歌女は俺たちの知らない法則を使っているという事だ。
思わず、笑みがこぼれる。未知とはつまり可能性だ。このどん詰まりの世界においての未知の現象は、そのものが世界を救う可能性になるかもしれないのだ。
暴いてみせる。この手で。
「殺すゥ!」
ミノタウロスがジャンプして二斧を叩きつける寸前に、
「んじゃ、良いところにいる訳だし、弾幕といこうか!」
今、俺たちとミノタウロスの直線上に何かはいる。ミノタウロスに攻撃しつつ反応を見るチャンスだ。
「撃ちまくれ!」
アナライズを起動させながら指示を出す。
火炎魔法、疾風魔法、氷結魔法の三色に確実にダメージを与えられる万能属性魔法が一種。弾幕としては悪くない。
できれば水撃魔法や重力魔法、地変魔法といったマイナー属性魔法も混ぜたいところだが、それは高望みというものだ。
「ウォオオオオ!」
ミノタウロスは、両手の斧で魔法を力尽くで弾き、時に体で受け止めることにより歌女へ攻撃を通さなかった。しかも、弾幕の途中から明らかに力場の耐性が変化した。火炎、疾風、氷結は無効耐性になってしまった。バルドルの万魔の乱舞がなければ釘付けにする事は出来ていなかっただろう。
「でも、よく考えれば妙な話だよな。初めから全部の耐性に無効を付けていないって事は。つまり、お前の耐性変化の絶対値は決まってる。どっかの属性に耐性を得たら、どっかの属性が弱点になる。多分、最初に会ったときも重力魔法あたりが弱点だったんだろうな。」
あの時のアナライズ完了度は85%、優先順位を低くしているマイナー属性魔法への耐性解析は後回しにしていたのだ。
「それが今では三色無効なんて強靭な耐性を得ている。とすれば、割を食うのは残った属性だよな!」
「ッ⁉︎ミノタウロス、避けて!」
「もう遅い!
閃光が、ミノタウロスを襲う。
「グウゥウウウ⁉︎」
あれだけの弾幕に晒されて尚立ち続けていたミノタウロスは、電撃魔法の感電効果によってようやく膝をついた。
瞬間、爆ぜるように皆が飛び出す。
まず届いたのが所長、疾風魔法をブースターにした超速飛行にて、最速最短でクレイモアを叩きつける。
痺れで握りの硬く
痺れで握りの硬くなっていた大斧が一つ弾き飛ばされる。
「ウグゥ⁉︎」
「ついでだ、もう一本も貰っていく!」
次に届いたのは志貴くん。地面を這うような奇妙な体術により高速で接近し、左腕の肘先あたりにナイフを通した。
ぼとりと落ちる巨腕。これで、両腕。
「ミノタウロス!」
「「遅い!」」
何かが咄嗟にミノタウロスを呼ぶ。だがそれは選択性のある歌でミノタウロスの耐性変化を行なっていないという事。
「アナライズ結果、打撃は通る!」
そんな事実は知らないとばかりに先走っていた縁とハリマはタイミングを合わせて拳を放つ。ハリマはクルースニクの変身能力にて左拳をゴリラのものに変身させ、縁は右拳に光波の力を集約させて、二人の全力を持って解き放つ。
その二撃の衝撃で、ミノタウロスは吹き飛んでいく。
宝玉により治療され、ここぞとばかりに構えていたウチのエースの所へと。
「決めろデオン!構成要素、解体、抽出、装填!
吹き飛ぶミノタウロス、痺れがある上に空中では身動きは取れない、そこを狙い撃つかのように、MAGの込められた一撃が直撃する。
オセの技術、冥界波である。
「
会心の一撃だった。
速度、破壊力、タイミング。全てが完璧だった。
この一撃を食らってはタダで済むまい。俺たちの勝利だ!
「サマナー、アホな事考えてないで戦いの続きを。まだ、歌女が残っている」
「いや、多分アイツは何もできない。アイツは歌を使っての呪いって鬼札を持ってるがそれだけだ。実体はここにはないよ」
「...どうしてそう思うんだい?」
「俺ならミノタウロスに宝玉投げまくる。大体のサマナーがアイテム係なのは、それが最強のスタイルだからなんだよ」
「なるほど、道理だ」
ミノタウロスから光の粒子が浮き上がってきている。アレもアウタースピリッツだったのか。異世界の英雄とは、人食いも居るのか。
「マダ、マダダァ!」
致命傷を負いながらも吠えるミノタウロス。
光の粒子の流出が、一瞬止まった。
「デオン、もう一発」
「それで良いのかサマナー。いや、最適解なのはわかるが」
躊躇わず放たれる二発目の冥界波。狙いは違わずミノタウロスを捉え
そのエネルギーは反射され、再びデオンへと襲いかかった。
まぁ、想定していたらしくあっさりと躱すのが、シュバリエ・デオンという奴なのだが。
「ウォオオオオ!!!!!」
ミノタウロスが吠え、残った力をもってまず孤立しているデオンを殺そうと走る。まるで鉄道のような重量感だ。
だが、両手を無くした今のミノタウロスの攻撃方法など数えるほどしかない。パターンを見抜き命を断ち斬るのはデオンの得意分野だ。
それは、どんなに筋力のある相手でも変わらない。どんなに頑強な体を持つ相手でも変わらない。
「さらばだミノタウロス。君の動きは良く見えるよ」
すれ違いざまの一閃。それがミノタウロスの胸を切り裂き、その霊核を破壊した。
「ナン、デ...?」
「一つだけ言わせてもらおう」
自分の死が信じられないミノタウロスに対して、ハリマが言葉を紡ぐ。
恐らく、ここに居る中で唯一ミノタウロスの気持ちがわかるハリマが。
「お前は人食いをした。それは是とも悪しとも言えん。だが、お前は味を覚えて堕落したな?」
「...」
「人食いは、魅力だ。だからこそ俺たちはそれを抑えなくてはならない」
「それが、人と交わり生きるという事だ」
「...シッテタ、ハズナノニナァ...」
その言葉を最後に残して、ミノタウロスは光の粒子となり消えていった。
「ミノタウロス...」
思わず皆の目線が認識できない何かに集中する。
情くらいはあったのだろうか、どこか悲しげな声だった。
「どうする?サマナー」
「ここにいない奴を殺す手なんざほとんどない以上、黙って見てるしかないさ」
瞬間、異界全体に地震が走る。異界討伐後の収縮現象だ。
そう遠くないうちに現実に弾かれて、あの変なのは見失ってしまうだろう。
だから、行くのは今しかない。
「志貴くん」
「...ああ、手傷くらいは負わせてやるさ!」
志貴くんの異能、直死の魔眼。存在しているものに必ず訪れる死を見るその目。
一歩駆け、二歩で飛び、三歩であの何かにナイフを通した。
だが、かき消えたのはあの何かだけ。本体にダメージが行ったかは不明だ。
「志貴くん、手応えは?」
「...躱された。俺が走り出した瞬間から奴の体の線はブレ始めてた。多分、接続みたいなのを切断したんだと思う」
「ま、上々だろ。テンプルナイトを殺せるほどのカードは倒し、向こうの切り札である耐性変化まで見抜けたんだ。向こうにも相当の被害を与えられた筈だ」
「...そうだな」
それにしても長い。異界の消滅からの排出はパッと起きるものなのだが。
「サマナー、上を!」
「...マジか?」
天井にヒビが入り始めている。これ、崩れる奴...ッ⁉︎
「全員、逃げろぉおおおお!」
脱兎のごとく、走り出す。
「千尋くん、入り口なんて見つけてた⁉︎」
「見つけてないです、やばいですよ!この異界の目的は!あの歌女が本体でこの場所に来ていなかった理由は!入り口をワープゾーンで隠し、深いところからの探索開始にさせたのは!」
「この迷宮の特性により、関係者を全滅させる事ッ!」
なんて厄介な策略を考えていやがるんだあの歌女!
「どうする、花咲!」
「合流したフロアまでは最短路直進!そっからは運任せだ!」
「千尋くんが考えること止めてる⁉︎」
「仕方ないでしょう!そんなことより走った方が速いんですから!」
道中道を塞いでくる悪魔をそれぞれの判断によって瞬殺していく、ペース配分を考えない馬火力ぶっぱなので、悪魔どもはあえなく爆発四散する。命乞いをしてきた奴もいるが、そんなのに構っている余裕はないのでやっぱり殺す。畜生、勿体ない!
「こっちだ!」
階段を上がった所で声が聞こえる。見れば、テンプルナイトの装備を着た男がいる。脱出ルートを見つけたのか⁉︎
「信じて行く、それでいいな?」
「ああ、それでいい」
走る、走る、走る。
ハリマと志貴くん以外会ったことのない人を、その人の善意を信じてひたすらに。
「道中にワープゾーンは⁉︎」
「無い!コイツらが必要な所をぶち抜いてくれていたからな!」
「残りの距離は⁉︎」
「ここは地下3階、残りは2フロアだ!ペースを乱さなければ崩壊まで間に合う!」
「ありがとうございます!」
「貸し借りを作りたく無いだけだ!異端のシフターなんぞにな!」
志貴くんのぶち抜いた壁を真っ直ぐに抜け、上に登る階段へと真っ直ぐに進む。
「人間、マグネタイト寄越せェ!」
「邪魔です!」
崩壊を理解できてないオニが襲いかかり、それを縁が一撃で粉砕する。スピードの変化は最小限の良い動きだ。
「サマナーか⁉︎ここから逃げる為の道を教えてくれよぉ!」
「異端は死ね!」
命乞いをしようとしたウコバクがメシアンの人の斬撃に倒れる。戦力強化のチャンスだったが、やっちゃったものは仕方ない。南無。
「ここからはダークゾーンが混じる。が、壁をぶち抜いたあの方法なら最短路で抜けられる!やれるか?」
「ああ、この壁の死は見えてるよ!」
ナイフを3振り、恐らくダークゾーンの道を回らなければ通らなかった道を壁を抜いて直進する。これで、かなりのショートカットだ。
だが、それをあざ笑うかのように上に登る階段が崩れ落ちていた。
「何ッ⁉︎」
「他に道は⁉︎」
「このフロアに他に上に上がる道は無い!」
「了解!全員、力仕事!ここをこじ開けるぞ!」
バルドルの万魔の乱舞と志貴くんの“殺し”によって落ちている天井だったらしい瓦礫を小さく刻み、それをほかの皆で階下に投げまくる。
続いて起きる大きな振動。どうにも、本当に残り時間はないようだ。
「人が通れりゃそれで良い!最小限の仕事でこじ開けろ!」
「任せろ!
ハリマの体が小さな蛇に変わる。瓦礫の隙間に体をねじ込むようだ。
「
そして、その状況から体の大きい象へと形を変える。すると、蛇の状態で上に乗っていた瓦礫が全て押しのけられる。そして、象の股下には人が抜けられるほどの空間が生まれた。
「先に行け、花咲!」
「サンキュー、続くぞ皆!」
股下から全員が抜けたのち、ハリマは象から人に戻りそれを所長が引っ張り抜くことで瓦礫の山を抜け出した。
振動が激しくなってきている。あと5分と保たないな。
「走ってください、メシアの人!」
「ああ!テンプルナイトが体力でフリーの連中に負けるものか!」
異界を揺らす振動の中、走り続ける。残りの戦闘は殆ど所長が飛びながら疾風魔法を放つ事でなぎ払ってくれた。ここまで上層だと雑魚しかいない。
走り、走り、そして到達する。入り口の青い大扉だ。
重傷を負いながらも入り口を守ってくれていたテンプルナイト連中に感謝の意を込めて一つ礼をして、異界の出口の扉をデオンが蹴り飛ばした。
出口は、そこにあった。
そして走る速度的に殿になっていた俺がゲートを抜ける。振り返ってみると、迷宮が虚数空間か時空の裂け目か、計測結果を見ないとわからない認識外の領域に飲まれているのが見えた。
「マジでくたばる5秒前かよ...」
「私たちは幸運だね、サマナー」
「本当にな」
異界が終わり、元の世界へと戻っていく。
これで、この迷宮は完全に踏破した。俺たちは、生き残った。
扉を抜けた先には、ヤタガラスとテンプルナイトの合同封鎖、というか睨み合いが起こっていた。
「花咲千尋一行ですね?」
「はい、お勤めご苦労様です」
「いえ、こちらこそ感謝しています。なにせ、100%無事では帰れない死地に赴かずに済んだのですから」
仮面を被ったヤタガラスの使いさんは、割と愉快な人のようだ。
左手の方では、テンプルナイト連中がメシアンの司祭と思われる人に報告をしていた。あっちはあっちで絞られるのだろう。
「それで、この異界に干渉している何者かは発見できませんでしたか?」
「...いえ、この辺り周辺は式神を使い満遍なく捜索しましたが、何も。異界の中には?」
「術者の...なんて言うんでしょう、意思みたいなものはいました。歌を使っての干渉も確認できてます。ですが、本体はどこにも。異界の崩落に巻き込まれて死ぬとは思えないので、現実のどこからか術を飛ばしているのだと考えてました」
「...謎だらけですね。報告書が面倒なパターンです」
「詳しい話はヤタガラスの本部で話します。今はとりあえず、この緊張状態をどうにかしなきゃなりませんから」
「...ですね。まったく胃が痛い」
ヤタガラスの面々とメシアンの連中は、互いに牙を剥く一歩前の緊張状態になっていた。それはそうだろう、デビルシフターという爆弾を、メシアンは異端として殺すのが正解で、ヤタガラスは情報を抜いてから決めるのが正解なのだから。その食い違いは、いつ殺し合いが始まってもおかしくない現状に繋がっている。
そんな中、メシアンの一人が前に出た。左腕の装備を外されている、重傷を負ったのだろう。
「デビルシフター」
「.,.なんだ?」
「お前の施しのお陰で、俺は生きている。だが、貴様は異端だ。だから、
「...その次が無いように、祈るとしよう」
「異端に祈る神などいるのか?」
「ああ、あるさ」
「様々な出会いをくれた、運命という奴にだよ」
「...主の威光を解さぬ異端め、せいぜい神罰に怯えて暮らすが良いさ」
そんな言葉を言って、男はメシアンを連れて去っていった。どうやら、そこそこの大御所だったようだ。
「情けは人の為ならず、といった所だろうか」
「じゃないか?知らんけど」
ひとまず、メシアンとヤタガラスの確執が生まれるという事は無くなった。
今回の件はひとまず終わりと言っていいだろう。
謎は多いが、それは明日の自分に任せればいい。
きちんと身を休めて、明日に備えよう。
それからのこと。
メシアンとの事が終わってすぐにヤタガラス支部に召喚された俺たちは異界であったことを語った。他の皆の話が信じられるものかは不明だが、自分は異界での行動記録をパッシブソナーのログデータとして残している為説明は楽だった。
まぁ、正直「何で生きてるんだお前?」との目はやめて欲しかったか。自分でも何回「あ、死んだ」と思ったかわからないのだから。とくに脱出の時とか。
そのあたりは、メシアンに貴重な物資を分け与えたハリマのハリマらしさに感謝だ。まさしくサイオーホースなり。
「千尋さん、終わりましたー」
「神野さんもか、俺も終わりましたよ」
「お疲れさん。でも志貴くんはもちっとかかると思ったがな」
「さぁ、なんとも。俺はやった事を言っただけですから」
「そんなことより、所長とハリマさん大丈夫ですかね?」
「うん、所長は事情聴取慣れてるからもうすぐ来ると思うぞ。あの人問題の数なら業界トップクラスだし」
「何をしたんだあの人は」
「悪徳メシア教会の十字架ぶった切って信者をぶちのめすオモチャにしたり、比較的善良なガイアの闘技場の選手を皆殺しにしたり、ヤタガラスの修練場の主をノリで殺したりってのが俺の知ってる範囲のやらかし。まぁ、所長だな」
「なんかどれも考える頭があればやらないような事な気がするのは俺だけか?」
「いや、俺もそう思う」
「...でも、所長さんは良い人...ですよ?」
「「疑問形かい」」
噂をすればなんとやら。事情聴取が終わり所長が廊下に出てきた。
「お疲れ様です。どうでした?」
「んー、負けた」
「はい?」
「ハリマくんの身柄はウチで預かるって落とし所にしたかったんだけど、信用足りないって言われちゃったよ、酷い話だね」
「酷いのはアンタの素行だよ。それでハリマはどうなるんですか?」
「...必要だからとは言ってもファントム系列の依頼を受けてたのはヤタガラス的には微妙だからね。しばらくは監視付きで放置だってさ」
「意外と有情ですね」
「そりゃ、人食わずの
「...ですね」
「あの、シフターが人を食べない事って何かおかしいんですか?」
「ああ、単純な話。MAG存在の中で食べると一番栄養になって美味しくて、かつその人の力の一部を取り入れられる。そんな食べ物が人間なんだよ。シフターにとってはさ」
「それって...」
「ああ、だからあいつは凄いんだよ。悪魔の体になっても、自分は人間だからって」
だから、人を守る仕事で生きる糧を稼いでいる。それがハリマだ。
「類は友を呼ぶ。そういう事じゃないかな」
「成る程」
「そこ、変な納得するな」
「いや、あながち変なものでもなかろう。俺は異端でお前は異常、似たようなものだ」
「ハリマお前...んで、どうだって?」
「ああ、ヤタガラスの方の依頼も受けられるようになった。監視はつくが、悪い事ばかりではない」
「だが許せ、打ち上げには行けそうにない。身体の検査をするそうだ」
「じゃ、時間の空いた別の日にラーメンでも食い行こうぜ」
「それは楽しみだ。ではな」
術師の人に連れられてハリマは行く。
それに背を向けて、トルーパーズの本部へと向かう。
「そういや、ハリマが賞金首になったのはどうなったんですか?」
「メシアンが取り消したんだってさ。連中もシフターってだけのを殺しにかかるほど暇じゃないみたい。」
「じゃあ、安心ですね!」
「いやー、アイツこれから大変だと思うぞ?メシアンの敵!ってことはガイアからの勧誘酷くなるだろうし。戦って蹴散らしても多分連中喜ぶだろうし。」
そうして本部として使っている第3会議室に到着する。どうにも、来客中のようだ。中で話し声が聞こえる。
「ノックしてもしもーし」
「花咲さん達ですか。入ってください」
中にはミズキさんの他に、いつかやりあった忍者ペルソナ使いの風魔薊と同じ高校の占い師カオルがいた。
「紹介します。トルーパーズの新メンバー、風魔薊さんとサポートメンバーとして契約をしてくださった占い師のカオルさんです」
「風魔薊よ、いつかは迷惑かけたわね」
「気にしてない。むしろ心強い限りだ。このチームに足りないのは、
「ちょっと、私は無視?」
「できれば無視したかったな。関わるなって言ったつもりだったんだが」
「仕方ないじゃない。私が動かないとこの世界滅びそうなんだから」
「...何を見た?」
「
「そう遠くないうちって...まさか⁉︎」
「ええ、平成結界を更新し、令和結界を敷くその時でしょう」
「黄金の王による虐殺を防ぐ事、それがトルーパーズに課せられたミッションです」
ごくりと、誰かの息を飲む音が聞こえた。
人に害をなすアウタースピリッツ。その本格的な攻撃が始まろうとしていた。
「ミノタウロス...」
少女は、心を痛めていた。あんなにも
あの一行は許さない。来たるべき日に必ず殺してみせる。
そう決意を決めて、今の自分が
「あー、早く次の仕事こないかなー」
閉じられた空間の中で、意識だけを飛ばして自由に飛び回る。
閉じられた籠の中を、それでも自由に。
この世界のテンプルナイトは正義の騎士団。思想はヤベーし行動もヤベーのだが、邪悪でないものに対しては一瞬剣をを振るうのを止めるのだ。
尚、本当の邪悪に対してはガイアが引くレベルに手段を選ばない。聖戦だもんね!
調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。
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