遅くなりました
申し訳ありません。
それもこれも、NAROUファンタジーってゲームが悪いのです。面白すぎて執筆時間盗まれました。
猫耳猫の作者さんのラストルーキー更新してないかなーと見たところで、活動報告を読んだのがケチのつき始め。まずみつみつけ というゲームをちょっとやってみて熱中して全エンドコンプしてから、この作者さんゲームも凄いのでは?と思ってやってみたのがアウトでした。
気付けば、あとエンディングは1つ残すのみ。終わらせたいようなそうでないような思いの中でひたすらにドラゴンの巣をループするのでした。
「さて、花咲千尋。物資は無事届いたかね?」
「ええ、正直メギドラストーンまで届くとは思ってませんでしたよ。ありがとうございます。中島さん」
「構わない、どうせ余剰在庫だ」
「引く手数多だと思うんですけどねー」
「メギドラストーンを集めた奴は素で
「会いたくない奴筆頭じゃないですか」
メギドラとか一流の術者が使えば小型核爆弾と同等の破壊規模を繰り出せる程の恐ろしい魔法なのだぞ。それを撃ちまくるってどんな危険人物だ。
「ちなみにそいつは北海道にいる。おそらく会うだろうな」
「嫌な情報ありがとうございます。敵対しない事を祈りますよ」
お互い黒いモヤで顔は見えないが、中島さんがものすごく良い笑顔をしている事は想像に難くない。
「それで、北海道はどうなってるんですか?結界の具合から、悪魔が制圧した!って訳じゃないのはわかってるんですが」
「ああ。だが当然平穏無事というわけではない。機を掴んだのはガイアだ。ヨスガという女が主導して支配圏を広げている。札幌近辺は制圧、改造されガイア教の都市国家となっているな。人類の支配圏となっている稀有な例だ」
「へぇ、そいつは良いな。思想がどうあれ人が生き残ってるのはありがたい。交渉で終わるかもしれないんだからな」
「...まぁ、想像は自由だ。それが現実になるかは別にしてな」
街を形成しているのだ、カオスの権化たるガイア教とて多少の秩序はあるだろう。具体的には強い奴は偉いとか。
「ま、ガイアにはツテがあります。ちょっとそのヨスガって人について聞きにいって来ますよ。幸い、まだ動けませんから」
「...ああ、それと1つアドバイスだ。ターミナルの稼働の際に1人ずつ飛ばすのはやめておいた方がいい。タスクの残留現象により6人飛ばすのには合計で倍以上の時間がかかる」
「...やけにサービスが良いですね」
「それだけ期待しているのだよ。君たちが聖杯を完成させる事を」
「横から掻っ攫うつもり満々の癖に良く言いますよ」
「それはそれだ」
なんだか、鏡と会話している気分になる。思考のパターンが似ているのだろう。
実際、芯にあるものの違いこそあれど目的を達成するためのプロセスに酷く似通ったものを感じてしまう。
これが、一歩踏み外した後か。
だが、だからこそ1つ宣言しておかなくてはならない事がある。
「俺は、手段は選べるなら選びますよ」
「...その結果が、良きものになる事は無いだろうな。少なくともガイアの街においては」
「街の全容を知ってるんですか?」
「いいや、断片的な情報だけだ。だが、それを繋ぎ合わせれば確かな絵になる。あの街は、1つの地獄だよ」
地獄、か...
だが、人の世が廃れ悪魔が溢れ出すこの世界こそ、地獄のようなものではないのかと少しだけ思った。
そうしてどちらが言うでもなく、自然と接続を切る。
中島朱実との2度目の邂逅は、そんな言葉を最後に終わった。
遡月のガイア教団の根城は、由緒正しき寺社仏閣...というわけではない。
霊脈の流れの良い場所に建てられた近代的な円筒形のビルディングが、その本拠地だ。
ゴトウビルと、人々はそこを呼ぶ。
「...アポ無しで訪問するのにはちょっと危ないよなー」
「確かに。軽く中を見たが、いずれもかなりの実力者だ。これならカナタを連れてきても良かったかもしれないね」
「いや、あの人がいると死人ばっかり出て話が進まない。それに、欠片の警護もあるんだから事務所から戦力は動かせない...んだが、誰が話通るのか分からねえってのはやっぱ辛いな。シュウでも居てくれれば話は早かったのに」
「連絡がつかないのが辛いね。...そうだ、ここは古典的に手紙でも出してみてはどうだい?」
「良いなそれ。じゃあ、ぽいっと」
ストレージからインク瓶と紙を取り出し、魔法陣展開代行プログラムを用いて必要な分のインクを紙に印字する。
プリンターが壊れた時に作った事務系魔法陣である。
「よし、書けた。じゃ、行くか」
ビルの戸を開ける。すると唐突に飛んでくる火炎魔法。デオンが咄嗟に手を引いてくれたおかげで髪の毛が焦げる程度で済んだが、ちょっとした命の危機である。さすがカオスの巣窟だ。
「敵じゃないですので、とりあえず2発目はやめてくれませんかね」
「阿呆か、敵って言う敵がどこにいるんだよ」
「それもそうだ。デオン、峰打ちで頼みたいが、無理そうなら腕の2、3本ぶった切っていいぞ」
「それは恨まれやしないかい?」
「まぁ、そのくらいなら治せるし」
「言ったな顔無し!炎の乱舞!」
「お前も顔無しだろうが!」
踊るように放たれる5つの炎の弾をデオンもまた踊るように斬りさばく。
そして、すかさずに銃撃を撃ち込む。力場の通りは不可もなく。普通程度だ。そして、弾丸が突き刺さったという事は、当然神経弾の毒が回るという事である。
「チッ、毒かよ」
「そういう事、というわけで寝てろ」
「だったらダブルだ!ペルソナ、バロール!」
「
「異能とペルソナの同時使用ッ⁉︎」
ひたすらのサマナー狙い。前衛であるデオンを封じつつ致命打を狙おうとするその戦術は、間違ってはいない。
俺に、まだ仲魔がいなければの話だが。
「サモン、バルドル」
「...もう盾として出されんの慣れてきたわ」
俺はバルドルの身体に隠れて火炎魔法を躱し、その隙にデオンは信じて刃を突き立てる。
「動かない方がいい。今喉を搔き切るのは容易いからね」
「てな訳で、俺の勝ちな。どうして俺を襲ってきた?」
「...こっちを偵察してくる顔無しのサマナーとか、殺した方が後腐れないだろ」
「まぁ、正論だな。だが、敵って訳じゃないんだよ俺は。俺は花咲千尋。ちょっと人を訪ねにここに来た」
「花咲千尋...千尋ッ⁉︎おまえ顔無しになってたのかよ!どーりで見つからねぇと思ったわ!」
「その口ぶり...まさか⁉︎」
「俺はシュウだよ。なんの因果か顔無しになっちまったけどな」
ちょっとどころでない驚きである。シュウが種無しであるかは聞いていなかったが、まぁ顔がなくなっているというのはそういう事なのだろう。
「てか、なんでペルソナと異能のダブルとかできるようになってるんだし」
「単純だよ」
「
...成る程、顔無しは認識で自分を作り変えられる。それを応用して自分の中に異能を使える機関が存在できるようにしたのだろう。自我境界の崩壊を招きそうな博打だが、成功のリターンは大きい。
後で自分も試してみよう。
「なんともまぁ、綱渡りをしたもんだな」
「おうよ、じゃねぇと勝てなくなってきたからな」
「とりあえず剣を下ろしていいぞ、デオン」
「あー、よく見りゃこっちはあの時見た美人さんか。久しぶりだな」
「ああ、だが1つだけ確認させてほしい。君と私たちが共に立ち向かった彼の名を、君は言えるかい?」
「ああ、当たり前だ」
「青タイツのクー・フーリン。まぁ、悪魔じゃなかったらしいけれどな」
その言葉に、バルドルに準備させていた抜き打ちで撃てるようにしていたメギドを下ろさせる。
どうやら、本当にシュウのようだ。
「お前、ホント油断ならねぇよな」
「お前もだろ。多分掻っ切られてもそのまま反撃に出る手段はあったんだろ?じゃなきゃあんな落ち着いてはいられない」
「ま、また会えて嬉しいけどな。シュウ」
「俺もだよ、千尋」
顔が無くなった俺たちは、それでも友情をもって手を結ぶことができた。
それは、ちょっとした奇跡なのだと思う。こんな世界では特に。
「ふむ、久しぶりだな花咲千尋」
「いや、大将が軽々と外出歩くなよ。ありがたいけどさ」
「なんの事だ?私はマスクドガイア。後藤大地とは無関係だ」
シュウはガイアでかなりの実力者となっていた為、上に話が通るのはかなり簡単だった。というか、話が通り過ぎた。
まさか一足飛びで大将にまで届くとは思わなかったので、びっくりである。
まぁ、本人は鬼を模した仮面を被った事で変装しているつもりのようなのだが。
ネタか本気か、判断に迷うボケである。
「じゃあ、ガイアさん。ちょっと訪ねたい事があったんですよ」
「ふむ、私で答えられる事ならば答えよう。君のことは気にいっているからな。それに浅田彼方の下にいるという事で、カオスの思想が染み込んでいるのだからな」
「ガイアのトップから見てもそうなんですか所長」
「ああ、元メシアという経歴が無ければ、一部隊任せていた所だ」
「過分な評価をありがとうございます」
後藤大地とは無関係じゃなかったのかこのマスクドガイア。
「にしても、こんなカフェがまだ残ってたんですね」
現在自分達がいるのは、ゴトウビルから徒歩3分のところにある地下のカフェバー。ダンディな雰囲気のマスターがいる、しっとり雰囲気の良い店である。
ガイア教団幹部御用達のカフェがあるとは話に聞いていたが、まさか実在していたとは。
「ああ、資材を投じて再建させた。いい仕事だろう?」
「ええ。まぁコーヒー豆をどこから調達してるのかとか気にはなりますけどね」
「それは企業秘密という奴だ」
コーヒーを一口飲む。豆の種類など分からないが、苦味は少なく風味があり、飲みやすい。きっと良い豆なのだろう。
「じゃあ、本題に入りましょう。あんまデオン達を外に待たせるのもアレですし」
「随分と仲魔思いなのだな」
「まぁ、反逆されるのも馬鹿らしいですし」
「そういう事ではない。デオンは彼らなのだろう?少ないが遡月にも現れ、仲魔になったケースもある。だが、彼らは例外なく暴走していった、知らぬとは言うまい」
「俺とデオンとの契約は、あいつが道を違えそうになった時にきちんと殺してやる事です。だから、心配してるようなことにはしませんよ」
「そして、そんな事になる前になんとかします。俺が」
「なら良い。無用な心配だったな」
口の部分の仮面がスライドして、コーヒーを飲む後藤さん。マジかその浪漫ギミック。俺も作ってみようか。
「北海道にいるというガイア教徒、ヨスガという女について話が聞きたいんです」
「ふむ、何故かは聞いても?」
「...できるなら言いたくはないです」
「ならば聞くまい。だが話そう」
「...良いんですか?」
「私は、あの女が嫌いだからな」
そして、俺は聞いた。ヨスガという女が辿った数奇な運命を。
ヨスガとは、実の所親に付けられた名前というわけではないらしい。
というのも、彼女は生まれてすぐに、悪魔の襲撃で両親を失った悲劇の子だったからだ。
少なくとも、始めはそう思われてきた。
それから、孤児院に入り、その潜在能力を見抜かれてガイア教団にスカウトされた。それが、4歳の頃。
その時点で、ネットを通じて難解な数学やプログラミング、帝王学までを修め始める天才だった。
その潜在能力の高さと聡明さから、後藤さんの側室にどうかという話すら浮かんでいたらしい。後藤さんは一目で合わないと分かり断ったそうだが。
そうして遡月のガイア教団で力を蓄え、満を持して帝都のガイア教へ赴き、事件を起こした。
ガイア教徒300人を生贄にしての大儀式、自分より弱い者も、自分より強い者も全て騙して贄としたその儀式は成功を収めて彼女は超強力な悪魔の力をその身に宿した。
そして、その責任を問われて彼女は北海道のガイア教団に移動させらた。それは仕方のない事だと本人も分かっていたのか、あるいはその力の矛先を求めていたのか、当時メシア教団の影響下にあった北海道へと赴き
たった2年で、その勢力図をガイア教団のものに塗り替えた。
それから北海道のガイアのトップとなり、おそらく今でもその力を振るい続けているのだろうと思われている。
それが、ヨスガという女性の話だった。
「...なるほど、分かりました」
「ほう、そこまで言及はしていないのだがな」
「両親を襲った悪魔からヨスガって人が生き延びられたのは運だとかそんなものじゃない。
「ヨスガは、何者かの転生者。それも幼児期から力や知識を獲得している。だからこそ大儀式によって悪魔の力を手に入れるまでの最短ルートを取る事ができた」
「その通りだ。だから、私は奴が好かんのだ。ガイアのカオスは弱肉強食。しかし、それは人類をより高める為のものでなくてはならない。どんな手段をも使ってより強くなるのは悪しき事ではない。しかし、そのために他の可能性を摘み取ってしまう事のどこに自由があるのだろうか」
「...自由」
「そうだ、ガイアの歴史はもはや根源を知ることは出来ない。だが、それが立ち上がったのはメシアからの圧政に対しての反逆だと私は思っている。だから、多くの者が自分の宗教の自由を元に立ち上がり集まったのがガイア教団だ」
「だから、我らカオスの徒は自由を重んじるのだよ」
「けどそれって、ヨスガの行為も認めていませんか?」
「言っているだろう?好かんと。否定はしてはいない。ただ好かんだけだ」
だからそんな貴重な情報を惜しげも無く投げ捨てるのだろう。まぁ、俺の事を信じてくれていると思えばそれもプラスなのだが。
「それで、奴が宿した悪魔というのは?」
「さぁな、特に拷問をした訳ではないので詳しくは知らん。慎重な奴なので特にデータがある訳でもないだろう。むしろ、メシアの方が詳しいデータがあるやも知れんな」
「...メシアですか、行きなくないんですよねー」
「それが正解だ。あそこはテンプルナイトどもがクーデターを起こして占拠している。ガイアに近いお前が行けば、その命を落として終わりだろう」
「ロウのメシアで、クーデター?」
「ああ。信じられんが、奴なりの正義があったのだろうよ。全く、そんな思想があるのなら、ガイアに来れば良いものを」
そんな貴重な情報を貰えて、しかも美味いコーヒーを奢ってもらった。今日はちょっと良い日なのかも知れない。
「それでサマナー、どうして坂の上に向かっているんだい?」
「いや、テンプルナイトの占拠した教会ってどんなもんかと興味本位。あそこなら、東区の街を一望できるからな」
そうして見た光景は、まぁ予想通りの光景だった。
顔無しで、頼れる者が他に居ない様に見える避難民たちがひたすらに祈りを捧げ、それをMAGに変換して戦いの武器にしている。
教会の中に入りきらなかった避難民達は、仮設住宅を作って敷地内になんとか住み込んでいるようだ。
あれだけの避難民を抱えていては、攻勢に出るのは難しいだろう。テンプルナイトは強力な戦力だが、数は多くないのだから。
「とりあえず、遡月は安定してるな。薄氷の上な気がしているけれども」
「そうだね。だが、この世界では誰もが心の安定を望んでいる。そんな力が公になれば、荒れるよ。間違いなく」
「やっぱ、鍵は聖杯の欠片か」
これが公になるのは、そう遠くのことではないだろう。探索に行くメンバーと残すメンバー、戦力のバランスを考えなくてはならないだろう。
「次のグレイルウォーは、荒れるかね」
「荒れないとは思えない。サマナーだってそう思っているのだろう?」
「ま、そうだけどさ」
もうすぐ日が暮れる。事務所に戻るとしよう。
「本当に私が行かなくてよろしいのですか?」
「ああ、真里亞には遡月で欠片を守っていて欲しい。...というよりも、ガイアの占拠してるだろう街では錦の御旗は通用しないだろうから、地盤固めの方に力を注いで欲しいんだ」
「...分かりました。では、必ず約束してください」
「帰って、来てくださいね。友人がいなくなってしまうのは、嫌です」
「任せろ。必ず、聖杯を盗ってくる」
そうして、俺、デオン、所長、縁、内田、志貴くんの6人でターミナルを起動する。
向かう先は、北海道。かつて札幌のあった街だ。
そうしてターミナルの転移現象に身を任せ
気付いた時には数人の研究員らしき人物たちに囲まれていた。
「作戦通りに!最悪殺してでも抜けるぞ!」
その言葉に、反応する皆。ターミナルでも待ち伏せは想定していた。そして、相手がこれから敵対するであろうガイアの連中だとわかっているのが大きい。
そうして、5分と待たずに旧ヤタガラス札幌支部から抜ける事となった。
見えた世界は、様変わりしていた。
整然とした街並みには、どこか清潔感がある。
街を歩くのは、人と悪魔が半分くらい。だが、歩いている人はどこか下卑たる笑みを浮かべているように見えた。
そして、問題なのは歩いていない人。力のない人。
ある人は、首輪をつけられて犬のように振る舞うことを強いられていた。
ある人は、鎖で体を縛られて、バイクで引きずられていた。
ある女性は、路上で体を汚され傷つけられ、力のない目で空を見ながら横たわっていた。
弱肉強食、カオスの負の面、言葉にするのにはいくつもあるだろう。
だが、少なくとも俺の目にはここがある種の地獄にしか見えなかった。
ガイアの街での戦い、グレイルウォー第2戦目が始まった。
次回からグレイルウォー第2戦、ガイアの街編です。
街の性質上R-18ギリギリを攻めていくことになりますが、アウトになったらどうしましょうかちょっとビビっています。
調整平均8.9とかいう作者的にはヤバイ数字出しているこの作品の評価について、評価機能がどれほど使われているのかの個人的興味からのアンケート。暇な時にでもどうぞ。
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